471話 ダンジョン3層(PT) 広場での戦闘 決着
「すまん、遅れたな」
「お疲れ様です。一応言われた通り場は整えておきました」
到着した福田さん達にこちらの陣地を確認してもらう。多くはあちら側が受け持つそうなので自分達は外側に居る奴を引っ張ってきて相手にするらしい。こちらは囲まれない程度の陣地を作製出来ればそれでいいという話だ。
「……ミノタウロスとタイラントスネークはもう片が付くところです。私達にはラットや軍隊蟻を倒して欲しいと」
「大物は逃したけど相手には困らなさそうだな。
琴田、あっちに今到着と伝えてくれ」
「あ、もう伝えてあります。それで到着早々早速で悪い後ろから削っていって欲しいと。無理のない範囲で倒してくれとの事です」
「OKだ、遅れた分の仕事をしようじゃねぇか。
近接班はあの通路状の所で迎撃だ。遠距離班は高台に登って撃ち下ろしを頼む。石田さんのゴーレムは……もう出てるな。んじゃあこっちも出すか」
そう言って各自に役割を伝える福田さん。ゴーレムを駒から出すと陣地の外に配置させた。自分のゴーレムもそこに居るからな。
近接班には自分が以前戦ったように一本道の通路を用意した。これで囲まれる事無く対処が出来るはずだ。横の壁には手投げ用のスパイクも用意しているので遠距離で仕留めたい場合はこれを使ってもらえばいい。
遠距離班には以前の陣地内防衛の際にも使用した高台を用意してある。防壁に取り付いた奴や取り付こうとしている奴をここから狙えるだろう。
「空の人手は足りてんだよな? 2人がそっちに行かないって事はあれで良いって事か。
理香さんと石田さんには空中からの援護を頼む。陣地周りにはゴーレムを置いておくが回ってくるようなのが居たらそっちを優先で排除してくれ。
まぁ……モンスターが居るど真ん中でああして暴れてるから俺達の方にどれだけ意識を向けてくるかはわからんがな」
福田さんのその言葉にモンスター達がいる中央へと目を向ける。
そこにはミノタウロスやタイラントスネークを片付け終わった大型ゴーレム達6体がモンスター達を蹴飛ばしながら歩いていた。ヘイトを稼ぎまくってるな……。
「歩くだけでもあいつらにとっては脅威だからな。踏みつぶしをしてないだけあれでも手加減してるわけだが」
「それをしたら魔石が壊れてしまいますからね。蹴り飛ばしたり大盾で地面を撫でるように動かすだけでもかなり致命傷ですが」
「防御力があるゴーレムじゃないとあれは出来ませんねぇ……」
「全くな……。
よしっ! こうしてても仕方ないから動き出すぞ! 空を飛べる2人でモンスターを釣ってきてくれ。外側にいる奴等に適当に攻撃を仕掛けて誘導を頼む」
『了解!』
そして自分達も主戦場での戦闘に参加開始となった。基本は釣ってきて陣地で迎撃し、そしてまた釣って来るの繰り返しだ。
中央で暴れている大型ゴーレムの影響か、外側にいる奴を釣るのはそう難しい作業ではなかった。石で出来た弾を適当にばら撒いてやれば痛みを覚えたモンスターがこちらへと向かってやって来る。陣地に居る皆で始末をするのはそう時間のかかる戦闘ではない。
数が多いと聞いていたことも有り、広場のような開けた所だと四方八方から狙われるのをイメージしていたのだが予想とはだいぶ違った。これも中央で暴れさせているゴーレムが居るからとの事だ。今までだともっと多くを相手にしていたと理香さんから教えてもらう。
ゴーレムの代わりだと飛行出来る者がその役を担っていたそうだがあそこまで堂々と暴れるわけにもいかない。回避の事も考えないといけないわけだし。ヘイト集めとしてはかなり役立ってくれているとのとこだった。
そんな釣っては始末、釣っては始末を繰り返しているとモンスターの数もだいぶ減ってきたように思った。半分以上はこれで倒せたんじゃないのか?
そして再び釣る作業をしようと動き出したところで琴田さんから待ったがかけられた。
「地上のモンスターもだいぶ減って来たので先に上の女王を片付けるそうですっ!」
「そう言えば……あれどうやって倒すんですか?」
視線を上に向ける。そこでは、飛行班が地面へと向かわせないように牽制しながら女王蟻と戦っている姿が見受けられた。陣地の上に降りてくるのを防いでいるらしい。低空だと他のモンスターを巻き込まない距離で酸を使ってくるようでそれも防いでいるのだとか。後は飛んでいる位置が陣地の真上というのも倒すに倒せない理由なんだそうな。
「大型ゴーレムを引かせてあちらで一時的に地上のモンスターの面倒を見るそうです。それと土の能力者をこちらに送るので私達は逆にあちらの迎撃に加わって欲しいと」
「移動は石橋でも架ければ何とかなるか。全ゴーレムに俺達が移動するのを援護させよう。武田さんは土の能力者を集めてどうするつもりだ?」
「まぁ、見てろ……との事です。こちらの指揮は倉田さんが取ります」
「何をやるのかあっちで見させてもらうとするか。それじゃあ石田さんと理香嬢、俺達の足場は頼んだぞ」
「わかりました」
皆してこちらの陣地を離れあちらの陣地へと近づいていく。モンスターに近づきすぎない位置でストップするとそこで待機だ。あちらの用意が出来次第橋を作るとの事。
そして琴田さんに連絡が来た。それと同時に、地面に柱が出来モンスター達も急いでそこから退避し始めた。
柱が出て来たと同時にゴーレムの方も攻撃が激しさを増す。注意はこちらで引き受けるとばかりに暴れ始めた。
「柱の上にあちらまでの橋を作って欲しいそうです。向こうもあちら側から作っていくと」
「わかりました」
「……私が石田さんに合わせます」
「お願いします」
フォローはするからとの事なので自分のイメージで橋を作っていく。簡単に大きいスロープ状の坂道でいいだろう。
柱を支えに向こう側まで石の板を架けていく。渡るにしても幅があれば横から落ちる事もないだろうしこれでいいかな?
とにかく手短に終わらせようとそんな簡素な石橋を作った。厚みもそれなりにあるしそう簡単には壊れないと思うんだけどね。
そんなこんなで向こうとつながり橋が完成した。後は土の能力者と福田さん達が行き来するだけだ。
橋が出来たと同時に福田さん達があちらへと駆けだしていく。向こうからも待機していた人員が来たようでこちらに駆け下りてくるのが見えた。
幅もあるのですれ違いも大丈夫だろうと倉田さん達が来るのを待つ。どういう手段でアレを倒すんだろうな?
「待たせたな」
「お疲れ様です、倉田さん。黒田さんも」
「おう! 石田さんの方も増援ありがとうよ!」
こちらに渡り終えた倉田さん達を出迎える。倉田さんと黒田さんと……もう1人は武田さんのPTメンバーの人かな?
「君が石田さんか……あの大型ゴーレムを作ったのは君だと聞いている。初心者探索者とは思えない戦力を持っているな」
「ありがとうございます? えっと……」
「織田 仁という。武田さんのPTメンバーだ」
「織田さんですね、よろしくお願いします」
互いに目礼だけで挨拶を済ませる。詳しい自己紹介はここが終わってからだな。
「……これで全員ですか?」
「いや、後1人……来たな」
織田さんが上に視線を向けながらそう口にした。もう1人か。
「やあ、お待たせした。抜け出すタイミングをどうしようかと思ってたら最後になったっぽいね」
「知らないのは石田さんだけだな。アイツは和田 信二だ」
「君が石田さんだね。上でもあの大型ゴーレムの事は話題になってたよ」
「はあ……」
そう言って地面に降りてくる和田さん。どんな話がされてたんだろうな……。
「よし、それでは全員集まったようなのでさっそく作戦開始だ。この6人である物を作る」
「ある物?」
いったい何を作るのかと思いながら倉田さんの説明に耳を傾ける。6人もいるのでそれなりにでかい何かを作るために集まったようだが果たして何を作るんだろうか?
「太い鎖がつながった大きい投げ槍だ。それを空中に居るあいつにぶん投げる」
「鎖がついた投げ槍ですか?」
「……作れなくはないと思います」
「投げるのは……あの大型ゴーレムにやらせようって事か?」
「物理的に大きいと怪力の能力者でも上手く投げれないか……飛距離は何とかなるかもしれんが」
「あの大型ゴーレムサイズの投げ槍ねぇ……クジラにでも撃ち込む銛って感じ?」
「そんなものだ」
案というのはそれをぶっ刺して鎖で引きずり下ろすという物らしい。確かにそんなものが刺さっていたら今までみたいに飛んでられないだろうな。
抜けないように反しもしっかりと作るようだ。和田さんが言うようにクジラへと撃ち込む銛だな。その先が大型ゴーレムに繋がっているとなれば逃げられるわけがないか。
「6人もいる事だし手分けしてさっさと作るぞ。牽引用に鎖を作った事はあるな?」
皆があると頷く。要はそれの大きい版だ。
倉田さんが例を作ったのでそれを真似して作ればいいようだ。特に困難な作業でもないし問題はないだろうね。
「それよりも投げて当たるのか? パワーに関しては疑いようもないが」
織田さんがせっせと鎖を作りながらそう問いかけた。
「今まで低空に近づいてきた牽制を無くしてやればいい。奴も近づく機会はずっと待っていただろうしな」
「確かに降りてくるならその分狙いも正確になるね。念力持ちや結界持ちで制限を掛けてやれば当たるんじゃないかな。何なら突っ込んでくる場所にでっかいスパイクでも作ってやりゃあいい。流石に地面へのダイブも躊躇せざるを得ないし」
「動きを阻害する手があるのなら余計当たりやすくなりますね。その後は地面に引きずり下ろしてから倒すと」
どうやら問題はなさそうと皆が鎖を作る手を急がせる。最後に投げ槍本体にくっつければ完成だ。
皆はこれが女王蟻に刺さった場面を想像したのか口元をにやっとさせた。あれさえ倒してしまえば残りは地上にいるモンスターだけだ。先程までの倒しっぷりを考えると何も問題はないように思える。
広場の攻略もこれで決まると、鎖の作成スピードを速めていった。
そしてしばらくして投げ槍は完成した。後は投げるだけだな。
「準備完了だ!」
≪了解だっ!≫
持っていたトランシーバーで準備が出来たとあちらに連絡を送る。モンスターから離れた大型ゴーレムがこちらへとやってきた。
「投擲用意ッ! 奴の動きが止まったところで合図を出すっ!」
大型ゴーレムの手には先ほど作った投げ槍が握られていた。下手したらこれを投げた威力でそのまま倒せるんじゃないかと思ってしまうほどの大きさだ。大型ゴーレムサイズの投げ槍だからなぁ……。
当たると同時に鎖を引く手はずになっている。これで死んでも陣地の真上に落ちるのは防げるはずだと。
空中班の牽制が目に見えて緩くなった。むしろ自分達も真下に向かいこっちに来いと誘ってるようにも見える。
今の今まで散々手を焼かせた相手と女王蟻は飛行班の後を追った。行き先も自分達が行こうと思っていた低空なので好都合とばかりに地面へと近づいていく。これなら陣地の所じゃなくても追いかけてきたんじゃなかろうか?
女王蟻が陣地近くまで近づいたところで飛行班の動きが止まった。どうやらそこで動きを制限させるらしい。トランシーバーから武田さんの「用意ッ!」という声が伝わってきた。
降りてきた女王蟻の進路上に何やら不思議な模様が出来た……物理的な結界だ。田町さんも使ってた奴だな。
それにより女王蟻の効果は遮られ結界に乗っかかる形で動きを止めた。緊急着地とでもいうのだろうか。
「今だっ!」
そして女王蟻の動きが止まった所に投げ込まれる鎖付きの槍。大型ゴーレムの力で投げられた6本の槍がイメージ通りに飛んで行った。
少しの間を置いて女王蟻の腹部へと突き刺さる投げ槍。刺さった衝撃によって、2体の女王蟻は着地していた結界から吹き飛ばされる形で地面へと落ちていく。パニックを起こして再び動かしていた羽も止まったようだ。
「引けぇぇっ!!」
手元に残っている鎖を持ち勢いよく引っ張る大型ゴーレム。反しがしっかりと体へ刺さっているのか、勢いよく引っ張っても槍だけが抜ける事は無かった。落ちていく女王蟻が大型ゴーレムの力によってこちら側に寄せられる。
相当なダメージを受けたのか、再び飛び立つ様子も無く少しして地面へと落ちていく女王蟻。その衝撃で更にダメージを受けたらしくすぐに動き出す気配はない。足は動いてるので死んではないようだが……。
墜落した女王蟻に飛行班が群がる。また飛ばれては面倒だと、まずは羽が根元から切り離された。これで生きていたとしても飛ぶ事は無くなった。
羽が落ちた痛みで女王蟻も覚醒したのか、弱弱しくだが再び動き始めた。だが、その動きは飛行班に比べてあまりにも遅すぎた。
首を目掛けて風の刃が幾多も放たれる。あまりにのろのろとした動きで外すという方がかえって難しいといったものだ。対象も大きいしな。
女王蟻の墜落後、少ししてその首も地面へと落ちた。それでも動いているのは流石昆虫系といった所か。なんにしても女王蟻はこれでおしまいと見ていいだろう。鑑定で死亡と判断されるまでそう時間はかからないと思えた。
「よしっ! 陣地へ戻るぞ! 最後の詰めだ!」
『了解ッ!』
女王蟻への対処もこれで終了と、石橋を渡って陣地へ戻る事になった。後はそこで残りのモンスターを迎え撃つというようだ。
大型ゴーレムには再びモンスターの真っただ中を進ませるよう指示を出す。今度はそれに加えて飛行班が空からモンスターを狙う。飛んでくる攻撃は大型ゴーレムが盾をかざして防ぐことが出来る。飛行班は安心して地上の攻撃が可能だった。
大型モンスターも全て倒し終わって残りはこいつ等のみだ。
戦いは数が大事だが質も重要となる。そしてその質に関しては自分達の側に分があった。何倍もいたはずのモンスターも次第にその数を減らしていくことになる。最後なんて近接班は陣地の外へと打って出たからな。
探知を行える人間が広場を索敵した。モンスターの反応で動いている物は1つとて見つからなかった。
「よぉぉしっ! 皆ご苦労だったっ!」
『おおぉぉぉっ!』
広場攻略はこれにて一段落だ。3層に来て最初の広場はこうして終わりを迎える事になった。




