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451話 PTご一緒よろしくです

 



 ♪♪♪~

 「っと……すみません、ちょっと電話出てきます」

 「おう、倉庫内はうっさいから外行った方が良いぞ。まぁ、あんまり変わらないかもだけどな」


 そう言って少し退室すると口にした。明人さんは自分が書いた発注書を事務へと届けに行くようで先に車の所へ行っててくれとの事だ。大剣や盾の確認をしてもらわないとな。

 言われた通りに倉庫の外へと急ぎ足で向かった。やっと連絡が付いたのだし待たせるのも悪いからね。


 「はい、もしもし石田です」

 『おはようございます、石田さん。もしくはこんにちはですね』

 「おはようで大丈夫かと。米田さん、今ダンジョンから戻ってこられたんですか?」

 着信相手は米田さんだった。夜には電話をしようと思っていたけど向こうからかかって来たのなら好都合だ。


 『数回着信があったみたいだからさ。なにかありましたか?』

 「いえ……米田さん達って3層攻略の2回目も行かれますか?」

 『ん? まぁ、行くつもりだけど……それがなにか?』

 「え~っと……実は私も3層の攻略に行こうかなぁって思っていたんですけどタイミングが……。1日目のお昼にダンジョンから戻ってきたんですけど、丁度その日の朝に攻略が始まってしまったようでして。

 依頼なんかも見てみたんですけどPTの募集も無くて行くに行けませんで。ソロで動いてるとこの辺りが不便で仕方ないですよね……」

 『なるほど、お話は理解しました。でしたら私達のPTで良ければ一緒に行きますか?』

 「是非!」

 理解が早くて助かったと、ホッと息を吐きながら胸を撫でおろした。


 『でしたら申請もしたいので管理部まで来れますかね? 私達はこれから食堂でお昼でして』

 「用事が終わり次第向かわせていただきます。助かりました」

 『いえいえ、石田さんならちゃんと戦力になるのも確認済みですからね。あ、討伐班ですけど大丈夫ですよね?』

 「ええ、そこは大丈夫です。一応経験はさせてもらいましたから」

 『では食堂で待ってますので。出来れば塚田さん達がお酒を飲み始める前に来ていただけるとこちらも助かります……』


 いやー……それは難しいんじゃないかなぁ? 塚田さん達なら食事と同時にお酒も解禁だろうし。

 正確に言うのであれば酔い始める前に話題の矛先として来てくれることを望むといったあたりだろうか? PTに参加させてもらうとなれば自分に対して話が向けられるだろうし。

 もしくは場を抜け出す為の口実として自分の参加申請を利用させてもらうといった感じかもしれない。申請から戻ったらまず間違いなく飲まされるとは思うんだけどね。


 「ちょっと武器の事で知り合いの工房に行ってまして。ほとんど用事も終わったのでなるべく早くに向かわさせてもらいます」

 『ではお待ちしてます、っと……もう食堂に向かうみたいなので……』

 「あはは……これから自分がやって来るからとかなんとか言って持ちこたえてください。食堂についた瞬間駆け付け1杯とかにならないといいですね」

 『いやー、無理だと思うなぁ……。戻ってくる辺りから何の銘柄がいいかとか議論してたからさぁ……』


 電話の向こうで小さく溜息を吐くのが聞こえた。広場の攻略をしてきたこともあって塚田さん達飲む気満々だろうし。せめて軽いアルコールで乾杯を乗り切ればいいんじゃなかろうか。

 まだ自分の分があるうちはそう勧められる事も無かろうと、助言になるかどうかはわからないが酒飲みへの対処法を教えておく。向こうも出来上がるまではそう勧める事はしてこないだろうしな。

 電話の向こうで「何とかそれでごまかしておくかぁ……」と再び溜息が。それに昼間だからね、まだ夜で無いだけマシかもしれない。

 

 「それでは管理部で」

 『ええ、それでは』

 そう言うと向こうからの着信は切れた。3日ぶりのお酒と言う事もあって昼間から絶好調で無い事を祈るしかないね。向こうに着いた時に米田さんが潰されてないと良いのだが……。


 「まぁ、なるようにしかならんか。こっちも用事を早めに終わらせて向かうとするかね」


 そう呟くと車を止めた所に向かう。サイズを測るだけだからそんなに時間はかからんだろうと米田さんの無事を祈る。

 ストッパーに田淵さんや宮田さんもいる事だしと、自分の話を出して抑えに回ってくれることを期待した。適当に飲み食いでもしながら待っててもらうとしようかね。





 「お待たせしました。すみません……お食事の途中でしたでしょうに」

 「いやいや、むしろナイスタイミングかと。自分のお酒が尽きかけてきた所だったので危うく飲まされる頃合いでね。丁度到着の電話を貰って助かったかな」

 「潰されてなくて自分も助かりましたね」

 「全くねぇ……。席に戻ったらなみなみ注がれたコップがあるかもしれないけどさ」

 「ははは……まぁ、チビチビと飲まれてください。ともかくお疲れ様でした」

 ダンジョンの攻略然り、酒飲みとの打ち上げ然りだ。複数の意味合いを含めてお疲れ様と口にした。


 「打ち上げはここからが山場な気もするけどね。お酒も入ってきてる事だし。

 石田さんが一緒に潜るってなってその話もするだろうからまだまだこれからってね。あ、そう言えば石田さんお昼はもう食べた?」

 「これからですね。打ち上げでまだ飲み食いをしてるだろうから一緒に取ろうかと」

 「ツマミ系のおかずがまだあるからご飯だけで良いかも。それと汁物とか?」

 「では御相伴に預からせていただきます。ともかくまずは申請ですか」

 「ええ。さっさと終わらせてしまいましょうか」


 そう言って米田さんと受付けに向かって3層攻略の参加申請を済ませる。これで明後日出発する準備はOKだな。

 タグの確認等をしてパパっと申請を済ませると食堂へ戻っていく。米田さん的にはお酒が注がれたコップが有るか無いかが気がかりなのだそうな。自分としても駆けつけ1杯をされそうだなぁ……と、車どうしようか? ということを考えながら食堂へと足を進ませた。

 そして食券を厨房に出して米田さん達の居る席へと到着した。


 「よぉ、石田さんっ! 話はリーダーから聞いてるぞぉ! 席は取ってあるから座れ座れ!」

 「こっちこっち!」

 「……こんにちは。では失礼して」


 よりにもよって空いてる席は塚田さんと前田さんの隣だった。これは絡まれた際逃げ辛いな……。

 場所的に何か謀られた感があるが、空いているのがそこだけな以上そちらに座る以外の選択肢はない。椅子を引いて2人の間の席へと腰かけた。


 「んじゃまぁ、PT参入の前祝いって事でだ! いっちょグイッといってくれ!」

 「はい、これコップね~」

 「ははは……どうも」

 「リーダー、申請は問題なし?」

 「そりゃ問題が起こるもんでもないしなぁ……。

 しいて言うなら石田さんが初心者探索者(ルーキー)ってことぐらいだろうけどそれだって既に参加経験があるわけだし? ちょっと忠告されたぐらいじゃね?」

 コップに酒を注がれている反対側の席でそんな会話がされていた。


 「田淵さんの言う通りだねぇ。討伐班への参加経験もあるからってそこまで何か言われる事は無かったかな。

 倉田さんも結果報告で問題なしって言ってたんだと思うよ」

 「普通に戦力になってたしなぁ……」

 「あれならそう報告してるわよね」

 

 米田さんは自分の席の前にお酒が注がれたコップが無かった事で上機嫌になったのか、先程申請して来た時の様子を笑顔でそう報告する。米田さんの所へ行くはずだった酒が自分の所に回されでもしたのだろうか……。

 自分に注意が向いてないと知り、水が入ったコップを持つ反対の手でグッと親指を立ててこちらにアピールをしてきた。上手いこと躱せたからってなぁ……。


 「よし! こんなもんでいいだろう。リーダー! 乾杯の音頭を頼むぞ!」

 「そうだね。

 それじゃあ、無事3層攻略1回目終了お疲れ様と石田さん参入を祝してって事で……乾杯!」

 『かんぱーい!』

 「ははっ……かんぱーい」

 

 なみなみ注がれた酒を零さないようにと、のろのろとした動きで腕を上げる。塚田さん、ほんと目いっぱい入れ過ぎだって……。

 零れる前に啜って少し量を減らす。そこまで度数が高くない酒なのがまだ救いか。

 そしてこれがまだまだこれからという事を思いながらコップから口を離した。一応7割程度までは減ったか。


 「ツマミもあるから適当に取って食ってくれ! 酒も無くなったら追加を頼むしな」

 「ビールもあるからこっちが良かったら注ぐわよぉ! 面倒だからもう注いじゃおうか!」


 そう言って前田さんから別のコップが渡された。この2人の間に席を用意したの絶対謀っただろ! 

 目の前でニマニマと笑っているであろう3人に目を向ける。箸を持つ反対の手でグッと親指が立っているのを見て確信した。話の主題が自分だからと押し付けられたわけだ。

 打ち上げに参加することでなんとなくこうなるかもとは思っていたがまさしく想像していた通りだ。どうにか明日に響かない程度で切り抜けようと思いながら、なみなみと注がれたビールへと口を付けた。 





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