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42話 マイペースといえど必要最低限は…



 管理部から帰ってきた将一は、部屋に戻ると田島さんに聞いたテレビ局がダンジョンの特番をやっているかもしれないという言葉に期待し、備え付けされていたテレビでいろんな番組を見ていた。


 「ブラウン管のテレビとかなんかすっごい久しぶりだなぁ…昔はこのごついので見てたけど最近は薄型のばっかりだったからなぁ。こっちの世界でもあと何年したらそうなっていくのかねぇ…。

 それにしても…この時間帯にはやっぱりやってないのか? こんな世の中になっちまった所為かお笑い番組が多いように感じるな。こういうのより世界のダンジョン紹介とか能力を使った番組とかマジックアイテムの性能紹介とかそういう感じのことやってないかねぇ」

 

 テレビをつけたはいいが、この世界ならではといった放送はこの時間ほとんどやっておらず、もっぱらニュースのチャンネルしか見るものがなかった。

 確かにニュースも見ようと思っていたけど何か当てが外れた気がした将一だった。


 「お笑い番組より合間に挟んでるCMのが今の自分には楽しめてるってなーんか違う気がするんだよなぁ…。

 お? これ自分が買った車じゃん。新車として紹介されてるとこんな感じなのね。ふんふん…魔石の消費が従来より1ヶ月UPの約3ヶ月分、見やすいウィンドウ、ナビも最新…確かに店で紹介された内容だな。魔石車から乗り換えでウォッシャー液とハンドルのすべり止めと車のストラップをプレゼント…か。これと比べると普通車からの乗り換え特典はやっぱすごいもんだったんだな」

 

 小魔石1個という破格な特典があり、いざという時の燃料として大変ありがたかった。

 それにやり方はわからないが、土魔石のエネルギーを補充できるならその小魔石1個は別の事に使える。今は特に思いつかないが、腐るもんでもないし使うまで寝かせておくかと考えていた。


 「まぁ…ダンジョンに潜れば魔石もこれからいろいろ手に入るだろうし、探索者からしたらお得だったのかどうかはわからんな。

 あ! そういや帰ってきたらタグいじろうと思ってたんだっけか。首用と腕用で鎖つけなきゃな」


 そう思い転送を使って掌の中にタグを2枚持ってくる。もう慣れたもので、物を思い描けば無詠唱でも出せるようになった。まぁ、でかいものはちょっとイメージが大きくなるから言葉にした方が確実なんだけども…。

 手の中に出したタグをよく見てみる。貰った時はサッッとしか見ていなかったからな。


 「んーっと? 自分の名前と数字の10か? それと裏面に生年月日と今日の日付? 探索者になった日ってことかな?

 端っこに穴空いてるし、ここに鎖なり紐を通せってことか。切れにくいなら鎖の方がいいかな」


 将一はどのように鎖を通すかと考える。少し考えるが、シンプルでいいかと使いそうなものを召喚魔法で呼びだす。

 まずはキーホルダーなどによくついているキーリングを2つ。これを隙間を作ってタグに入れる。


 「これ意外と力いるんだよな…まぁその分強力で引っ張っても取れないだろうからいいんだけどさ。タグ無くしたらやばいってことだし、強力な分には良いか」


 タグにリングを2つ取り付け、次に首用と腕用の長さの鎖を用意する。

 首用は頭から通すため少し長めだ。ネックレスのように後ろで止めるタイプは止める部分に力がかかるとちぎれる可能性もあるので、少し長くなろうとも頭から通すようにしておきたい。これならそうそうどこかに行くこともないだろう。


 腕用はどうしようかと考えた。正直こちらもごつくすることはできるが、重くなるし長袖を着る場合は邪魔になる。半袖なら問題はないがごつくしすぎるのもなぁ…と迷う。


 「細いと切れるのが怖いし、太いと邪魔だし腕重くなるし…。いっそのこと腰ベルトに括り付けるか? でも見えない所で切れたりしたら無くしそうだしなぁ…。腰だと落ちても気づかなさそうってのも怖いんだよなぁ。

 ビニールのケースに入れて腕に巻き付かせとくか? う~ん…それもなんだか怖いなぁ…動き回るかもしれないし、落ちても気づきやすくするために地肌に着けたいんだよなぁ…」


 腕の方はよく動かすしなおさら頑丈さが欲しかった。

 あーでもないこーでもないと案をいろいろ出すが、どれもしっくりこない。

 そうしてしばらくウンウン唸っていると1つの結論が出た。


 「転送魔法使えるんだし、提出を求められたらポケットの中から転送使って取り出せばもうそれでいいんじゃね? 転送してあったら無くす可能性0だし、見せるのもポケットから出すだけだから楽だよな。

 一応細い鎖も付けとけば変に思われんだろ。太い鎖とか最初からいらんかったやん…。

 というか…この首用のとか作ってる時間すら無駄だったじゃねぇか…今まで考えてたのは何だったんだ…」


 一番最初に無詠唱でタグを出した時点で一番の答えがあったというのに、首と腕にしなければという考えの所為でいらぬ時間を食ってしまった。

 若返ったはずなのに頭が柔らかくならねぇなぁ…と、軽く自己嫌悪に陥った。

 魔法を使った時に固定概念がダメだと知ったはずなのにまだまだなんだなぁと。


 「やっぱ魔法の力あったとしても扱いきれねぇなぁ…。まぁ、急に手に入れた力だし? それを扱えって言われても1週間すら経ってないし、現状だと無理があると思うんだわ…。

 魔法を日常的に使ってかないと体が覚えてくれないなかなぁこれは…。ダンジョン潜って早い所使って慣れるか、夜間学校とやらで学ぶべきなんだろうか? 

 マイペースでいいとはいえ、自分の力すら把握できてないといつか大事なところでポカやらかしそうで怖いなぁ…。ちょっと本気で魔法使いこなす必要あるんじゃないか?」


 2つのタグに手が入るぐらいの鎖を取り着けながら、自分の能力をどうすれば身に付けられるかを考えていた。

 手っ取り早くならダンジョンに潜ってモンスターを相手にすればいいし、地道になら管理部の訓練室を使わせてもらって実技を、夜間学校で知識を蓄えるといった選択肢があるだろう。


 正直時間はある。それならば後者がいいのだろうが…時間があるからとはいえ、それでは力がなかなか身につかないのではないかという不安がある。

 自分の力を知らなさ過ぎて使うべきところで使えないのでは宝の持ち腐れだ。折角貰ったというのに腐らせてしまいかねないのが今の自分だった。


 「とはいえ…ダンジョンに潜る方を優先するかって話だと、最低限の力すら理解してないからな…そんな状態で戦闘とか正直危険すぎるんだよなぁ…。

 一応人前で見せるのは土系と水系ってことにしてあるんだよな。まぁ、人がいない所なら火だろうが何だろうが制限はないんだけど…火で焼けた素材やら魔石持ってくと別の属性持ってるのばれるし、管理部には流せないんだよな…。流すのなら情報にもある土と水で何とか出来た奴に限られるからなぁ。

 やっぱ訓練室使わせてもらって、土と水の魔法だけでも練習するのが一番かぁ? んで、合間に夜間学校行って知識増やしてダンジョンへ…。これが今とれるベストなのかなぁ…」

 

 とりあえず自分の力で何ができるのか確認することが先決かと予定を立ててみた。

 マイペースで進みたいのは間違いない。しかしそれをするにはまだ早すぎたようにも感じた。

 ダンジョンに一度でも潜った後なら2度目は自分の好きなタイミングで行けばいい。夜間学校を1度でも体験した後なら好きに講習を受けて知識を溜めればいい。

 まずはやっておくべきこと、知っておくべきことを1度でも試してからならマイペースに生きても誰も文句を言わないはずだ。

 魔法の特訓にしても、1回はまともにやっておかなければダンジョンで簡単に死ぬ事になりかねない。もう次はないのだから…。


 「とりあえず明日は魔法の特訓をしよう。ダンジョンに行って最低戻ってこれる程度の力は手に付けておかないと。それだけでも今後魔法をどういう風に応用すればいいかの助けになるだろう」

 

 出来たタグの状態を確認すると、それを転送させておく。後は必要に応じてポケットから出せばいいだろう。仕舞うときはその逆で。


 これで今日やることは終わったかと、本当に肩の力を抜く。なんかタグの準備をするだけだったのにずいぶんと疲れてしまった。こんなはずではなかったのになぁ…と床に体を投げ出す。

 

 「あー…そういや布団は流石に用意されてないよなぁ。このままでもいいかもしれんけど…明日魔法の特訓するし疲れは残しておきたくないな。

 仕方ないから山の方の家に戻って寝るかぁ。転移で飛んでこれる自宅を確保したのはこうやって自由に移動する為でもあるしな」


 そうと決まれば移動するかぁ…と腰を上げる。今床に寝っころがったばっかりだったのだけども…。

 部屋の電気を全て消し、玄関に鍵をかける。そして靴を履いて準備はできた。


 将一はゆっくりと目を閉じた。目を開けているといきなり場所が変わったところを見て変に思いそうだったので…。

 目を閉じながら転移するイメージを思い浮かべる。あのつい最近直したばかりのポンプ小屋を。

 

 「さて、行くか…。ポンプ小屋前まで転移!」



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