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403話 価値相応




 「それじゃあ私は別の所に行ってみる事にしますね」

 「わかりました。また管理部ででも会いましょう。魔石のエネルギー補充頑張ってください」

 「それはお互い様ですね。それでは……」


 そう挨拶を交わすと澄田さんとは別れて他の部屋へと向かう。今度は大きい魔石の補充にでも行ってみるとしようか。


 あれから2時間映画1本分程の時間をエネルギー補充に充てた後、2人して役所内の食堂で昼を取って別れた。澄田さんは引き続き、通常サイズの傷有り魔石にエネルギーを補充するとの事だ。

 昼食を食べて一区切りした事もあり、こちらは午前中とは別の所へと向かう事にした。やることはどこでも同じだしな。


 「え~っと? 職員さんに教えてもらったのはこの先か……」


 先ほどの部屋で大魔石のエネルギー補充部屋の位置を聞いてそこに向かっていた。どうやらこっちは地下にあるらしい。

 そして少し歩くと、職員さんに教えてもらった部屋の前に到着した。名前も合ってると。


 「すみません……大魔石のエネルギーを補充する部屋はこちらで合ってますでしょうか?」

 部屋の中に入るとそこに居た職員さんに聞いてみる事にした。


 「はい。こちらでは大魔石のエネルギー補充をしております」

 「合ってたな。じゃあ、これお願いします」

 そう言って最初に書いた用紙を職員さんへと渡した。その用紙を確認しながらウンウンと頷く職員さん。補充し終えた魔石の数でも見てるのかね?


 「午前中は他の部屋に行っておられたようですね。畏まりました。説明なんかはその時にお聞きになりましたか?」

 「魔石を握りながら時間を潰してほしいという事なら聞きましたが……」

 「そうですね、こちらでもそこは変わらずです。魔石に直接触れない事だけ守っていただければ。

 それと規則ですので。始める前にこの書類にサインだけお願いします」 

 そう言って渡されたのは、魔石を傷つけた際は弁償するという内容が書かれている用紙だった。まぁ、物が物だしな。


 「普通に握っている分には大丈夫なんでしょうか?」

 「一応衝撃吸収材と一緒に入っているので握っているだけで傷が付くことはそう無いと思われます。落としたりするのを気を付けていただければ。

 傷の有無についてはエネルギー補充後に確認をいたしますのでその際に問題が無ければこの用紙は破棄させていただきます」


 職員さんはそう言うと隣に置いてあるシュレッダーを指し示した。こちらの目の前でシュレッダーにかけるそうだ。なるほどね。

 特に問題も無いので受け取った紙にサインをする。こちらとしてはさっきまでと同じように普通に握っているだけだしな。とはいえ落とすことが無いよう注意しておくに越した事は無いか。 

 名前の欄をササッと書くと職員さんに渡す。用紙を確認した後、諸金さんは先ほどまでと同じようにこちらへ魔石入りの袋を渡してきた。あのプチプチと潰す奴が魔石を覆っているのが見えた。これなら多少の事では傷が付く事もなさそうだな。


 「こちらの手袋をどうぞ。それでは宜しくお願い致します」

 「わかりました」

 そう言って魔石を受け取る。少し大きくなった分握るというより掴むといった感じだな。落とさないよう気を付けないと。


 「さて、今度はなにしようかねぇ?」

 「あれ? 石田さん?」

 「ん?」

 部屋の中央に向かって歩いているとまたもや声を掛けられた。今度は誰だ?


 「門田さんじゃないですか。こんにちは」

 「こんにちは。って……まぁ、それはいいとしてですね。石田さんも魔石のエネルギー補充ですか?」

 「ええ、何か依頼を受けてみようと思いまして。門田さんも目的は同じのようで。何ともまぁ……」

 「いやぁ、そこまで気負うことなくこなせる依頼ですからね。時間がある時はここに来てるんですよ。それに2年間地上で依頼をしてましたから」

 「だとしたらベテランですね。しかし門田さん『も』来てたんですねぇ……」

 「ん? 『も』……とは?」

 こちらの言葉に首をかしげる門田さん。


 「午前中に傷有り通常魔石の所で澄田さんと会いましたよ。一緒に来られたわけではないんですか?」

 「あれ? 光一も来てたのか。そういえば食事の後にロビーの2階へと上がって行ったような気が……」

 「お互いに示し合わせて来たわけではないんですね」

 「そうだとしたら一緒に魔石のエネルギー補充をしてるでしょうね。暇な時間も話をして潰せるわけですし」

 「それもそうか……」

 魔石のエネルギー補充中は暇だと2人とも知っているわけだ。話でもしていれば暇もまぎれるだろう。別の部屋に分かれる意味はそう無いよな。


 「昼までは一緒だったんですけどお昼を食べた後に別れまして。この後も引き続き同じところでやっていくと言ってましたよ」

 「んー……それだったら後で顔を出してみようかな。話し合っておきたい事もある事だし」

 「澄田さんに聞きましたよ。更新するか新規で作るかって」

 「ああ、もう聞いてたんですね」


 席に座りながら話しを始める。知り合いがいると話で時間を潰せるからいいね。

 ゴーレムの事をどうするかといった話を門田さんと語り合った。やはり新しい層に行くとしたら今のゴーレムはちょっと心もとないという話だ。戦闘では積極的に使わないとはいえ、居れば便利になるのは間違いないと今回の探索で実感したらしい。今度は戦闘も見越したゴーレムが欲しいという話だ。


 「やっぱりアイアン以上がいいと思いますよ。ゴーレムもいろんな奴がいるみたいですし。そこに武装をさせれば戦闘でも活躍してくれると思います」

 「そうなりますよねぇ……。んー……資金の当ては何とかなるとして材質は何にするか。基本は通路戦だろうから新規で作るとして3体か4体か……白田さんに見せてもらった3mの奴も気になるんですよねぇ」

 「ゆっくり考えてください。しばらくは落ち着いた2層の探索がメインになるそうですけども……」

 「ですね。モンスターの素材を回収しつつ、あわよくばマジックアイテムも……といった感じです。今のゴーレムも働いてくれるでしょうし」

 「昨日みたいに少し注目される事にはなるでしょうけどね」

 「あれはなんというか……仕方ないとはわかっていたんですけどねぇ……」

 しっかりと昨日の視線を感じ取っていたのか、自分の想像以上だと溜息を吐く門田さん。ゴーレムを使うとなればしばらくは視線(それ)を味わう事になりますからね。慣れるしかないですよ。


 「人の視線っていうのは結構突き刺さるもんですねぇ……それもあんなにたくさん。……周りにあるカメラみたいに何も感じないような物であればよかったのになぁ……」

 「カメラ?」

 「あちこちについてるんですよ。監視用……って言ったらちょっと気分悪いんですけどね」

 そう言うとここから見える範囲のカメラの位置を教えてもらった。確かにあちこちにある。


 「傷無しの大魔石は一番価値が高い奴ですからね。それのエネルギーを補充している自分達を見張る用のカメラです。万が一があると大変なので」

 「カメラでずっと見られているというのもそれはそれでなんか嫌ですねぇ……仕方ないってのはわかるんですけども」

 「防犯はしっかりしてるって事です。公の施設ですからね、役所は。それだけに万が一は起こしたくないって事でしょう。

 まぁ、それに見られているっていうことは逆に自分達が何もしていないっていう証拠もしっかり残るって事です。普通に魔石のエネルギー補充をしてるんであれば特に気にすることも無いですよ。自らの潔白の証として大量の監視カメラはむしろありがたいと思いましょう」

 「確かにそう考えるとありですか。人が監視してるわけでもないなら一々気にする必要は無いですもんね。流石にトイレの中とかは勘弁してほしいですけど……」

 「ああ……そっちにもいくつかありますね。角度的に使用中の所は見えない感じですけど。胸から上辺りを見えるように設置されてますよ」

 「トイレの中まであるのか……結構徹底してますね。それだけの物って事なんでしょうけど」

 「トイレの中には魔石を置いておく専用の台もついてますからね。注意書きも中にありますけど、用を足す間はそこにおいておくのが鉄則です。後で見に行ってみるといいですよ」

 「へぇー。確かに両手が使えないと不便ですもんね、特に私達男性は。後で見ておきますか」


 基本は先ほどまでの部屋と変わらないが若干扱いが違うようだ。傷無しの通常魔石の部屋もここと似た感じなのだそうだ。

 今自分達が持っている魔石は預かっている品だからな。それに問題があってはいけないという事か。


 「それと通常の警備員の他に依頼で来てる探索者の警備員も居ますからね。荒事にも慣れた探索者が見張ってるようなものです。防犯の意識はかなり高いですよ、ここ」

 「探索者も居るんじゃおいそれと仕出かすのは躊躇われますね。大人しくやる事だけやってましょうか」

 「それが良いです」


 抑止力として探索者常駐は結構なものだ。普段はモンスターを相手にしてる人達なら警備員としては過剰な人員だろう。

 それと管理部に所属してるわけだし不名誉は管理部にも影響を及ぼす。警備の仕事が依頼そのものなら失敗は探索者業にも関わってくる。手抜きも難しそうだな。


 国の機関である役所だけに対応もかなり厳重と言えた。ずっと見られてるのはちょっと気になるが預かってる物が物だけに仕方がないとも言える。

 使用済みとはいえ魔石が大量に集められているわけだ。警備が厳重なのは当たり前か。

 探索者が集っている管理部とは比ぶべくもないが、それでも警備員として派遣されてる探索者が居るのだ。見られているとなればおかしなことはせず、素直に魔石のエネルギー補充だけやっていようと監視カメラから視線を逸らした。

 実入りは良いかもしれないけどここは早めに出て行った方が気が休まりそうだな。




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