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402話 魔石のエネルギー補充中




 「さてと……何してようかね?」

 手の中にある魔石を転がしながら何をしようか考える。片手が塞がっているからもう片方の手だけで出来る物だよな。


 「あれ? 石田さん?」

 「ん?」

 名前を呼ばれた気がしたので声を掛けられた方へと目を向けた。誰だ?


 「やっぱり石田さんじゃないですか。おはようございます、昨日ぶりですね」

 「澄田さん? これまた奇遇ですね……っと、おはようございます。ここに居ると言う事は澄田さんも……」

 「はい、そういう事です」

 

 そう言って澄田さんは魔石を持っているであろう手を前に出した。ここに居るって事はやっぱりそうだよな。

 まさか行き成り知り合いを見つけるとは思わなかったので驚いてしまった。澄田さん、昨日ダンジョンから帰ってきたばかりだろうに。


 「昨日の今日でさっそく依頼を受けているんですか? ダンジョンに行っていたんですから今日ぐらいゆっくりすればいいのでは?」

 「いやぁ、それでもよかったんですけどね。最近何かと物入りでして。そこまで大変というわけでもないので依頼を受けちゃいました」

 あはは……と、苦笑いを浮かべながらそう口にする澄田さん。物入りってのはもちろんゴーレムの件だろうな。それと白田さん達に借金をすることも関係してそうだ。PT用の資金では賄えない感じか?


 「昨日私が帰った後に飲んでいたんですよね? それにしてはお元気な様子で」

 「あまり飲まなかったので。元からお酒にそう強いというわけでもありませんでしたし。食堂で飲んでいたおかげか自然と制限気味でしたね。

 まぁ……数人は2日酔いの兆候もありましたけども」


 飲み過ぎたその数人に対し、大丈夫かなぁ……といった思いを浮かべる澄田さん。2次会とかをしてないなら大丈夫かな。白田さんがダンジョン帰りだからって適当な頃合いで帰したとかそんなのかね?

 前日に祝宴をしたとは思えない感じの澄田さんを見ながらそんな想像を行った。その数人の内の1人が白田さんでなければそんな感じがするな。

 

 「まぁ、祝宴をしたにもかかわらずケロッとしているようで何よりです。

 ところで澄田さんはこの依頼を受けた事って……」

 「それなりにありますよ。陽向さんと尊君が卒業するまでの1年間は地上の依頼を受けてましたから」

 「そういえばそんなことを言ってましたね。私は今回が初めてでして。この依頼を受けるのって」

 近くにあった椅子に座りながら話を続ける。どうやら澄田さんはこの依頼の経験者らしいね。


 「そうなんですか? そういえば探索者登録をしたのはつい最近なんでしたっけ。一応探索者登録をしてなくても受付で申請さえすれば一般の能力者の人も出来るんですけどね」

 「そうなんですか?」

 「はい。後は個人的に仕事を請け負って各家庭を周ったりですとか。僕も近所の家を周ってやった覚えがありますよ。バイトみたいな感じでしたけど」

 「ああ、それは聞いたことがあります」


 槍一さんもそんな感じの事を以前言っていたかと、街案内をしてもらった時の話を思い出した。役所を通さずに個人的に依頼をするって事かな。

 澄田さん曰く、学生の頃はそんな感じらしい。役所に通う学生ってのもなんかね……。

 

 「なので、探索者登録をしてからはこうやって魔石のエネルギー補充をする機会も増えましたね。

 魔石を手にしていればいいだけですし、僕たち能力者にとっては有難い依頼ですよ」

 「確か雷と風でしたっけ? 澄田さんの属性能力は」

 「そうですね。今は風の魔石のエネルギーを補充してます」

 手を開いてこちらにちらっと見せてくれる。そこには風属性である緑色の魔石が澄田さんの手の中にあった。


 「石田さんは土と水ですよね?」

 「はい。とりあえず今は土の魔石をやってますよ。どちらでも特に変わりありませんし」

 

 こちらも手を開いて見せる。まだ始めて数分だけどね。

 そういえば普通はどれぐらいでエネルギーが満たされる物なんだろうか? 自分の場合だとササッと終わるので今はあえてじわじわと補充してる感じだけども……。 


 「澄田さんは補充にどのぐらい時間を掛けているんですか?」

 わからないのであれば経験者に聞いてみるのが一番だ。


 「僕ですか? 通常の魔石であれば1つだいたい20分ぐらいでしょうか? 人によってはその辺りまちまちですね。早く終わらせる人も居れば時間を掛けてやる人も居るみたいですし。

 ただ……早く終わるのはメリットかもしれませんが、急激に力が抜ける感じなので休憩を挟むペースも早くなってしまいますね。能力を一気に使うのと似ていますか。一撃は強力でもその分消耗する感じです。ゆっくりやるのであればその分少し回復しながら続けられます。僕は後者ですかね」

 「なるほど……」

 早く終わらせることも可能と言えば可能らしい。その分消耗も早いという事だが。納得出来るな。自分の場合は何分ぐらいにしておくのが良いんだろうな?


 「私の場合は属性との相性がいいらしくて早めに終わらせてるんですよね。魔力なんかも多いんじゃないかって言われました」

 「それは羨ましいですね。それじゃあ石田さんにはいっぱい魔石を補充してもらえそうです」

 「いやぁ……いっぱいはどうですかねぇ?」

 苦笑いを浮かべながら予防線を張っておく。自分も適度に休憩しつつやろうかな。


 「あー……そうだ。ここでの経験が豊富だというのならちょっと聞きたいことが」

 「なんでしょうか?」

 「いえ、澄田さんは魔石のエネルギーを補充中どんなことをして時間を潰してるのかなぁ……と。暇つぶしの仕方なんかを教えてもらえません?」

 「なるほど。なにをしようか迷っていたという事ですか。初めて来たというのなら迷いますよね」

 僕も最初はそうでしたと口にする澄田さん。自由にしてくれって言われてもなかなかね。


 「手持ち無沙汰になる人も多いだろうからっていろいろと用意されてますよ。例えばあっちには本棚がありますし」

 そう言って指を差す澄田さん。確かに机に向かって俯いてる人が多いな。

 

 「それとあっちにはテレビルームがあります。映画のDVDなんかもありますからそれを見たりですね。ジャンルが合う合わないはありますけど」

 「皆で使ってますからね。そこは仕方ないか」

 「ですね。

 それとあっちにはパソコンが置いてあります。インターネットなんかをしたい人はこっちですか。僕も大半はそこに居ますね」

 「本を片手で読むよりは片手でマウスを弄ってる方が楽そうですね」

 「キーボードの操作はちょっとアレですけどね。まぁ、慣れてる人にとっては問題なしです。動画ソフトで好きなDVDを見てる人も居ますよ。その場合はヘッドホンをしてですけど」

 「席が空いてるならそれも良さそうですね」


 おそらくは自前でいろいろと用意をしてから来る人も居るのだろう。今回自分は何にも用意してないからな。(カバンの中でわからないようすれば出来る事は出来るが……)

 音楽プレイヤーなんかを持ってきてる人はそれを聞いたりしてるそうだ。魔石さえ握っていればいいしそれも有りだな。


 「後はカードゲームやボードゲームなんかも用意されてますね。ほら、あっちのテーブルだとジェンガとかもやってますし」

 そう言って指差された方に目を向ける。数人が集まってワイワイ言いながら遊んでいる光景が目に入った。知り合い同士出来たりすればああいうのも有りか。全くの他人が集まってるだけかもしれないけどな。


 「将棋やチェスをしてる人達も居ますよ。片手で出来る遊びですしね」

 そう言って澄田さんは、あそこにいろんな遊戯道具があると指差した。確かに棚にいろいろ並んでるな。


 「将棋とか久しぶりだなぁ……最後にやったのいつだっけか?」

 「後でやってみますか? 僕もほとんど触ってないので素人みたいなものですが」

 「でしたら1局お願いしましょうか。成りになるのって3列目に入ってからでしたっけ?」


 駒の動きなんかは覚えてるけど型とかになるとさっぱりだ。お互い素人みたいなものならあんまり関係ないか?

 久しぶりのゲームという事で以前やった記憶を掘り起こした。はまると面白いんだけどね将棋もさ。


 「そういえばあのマジックアイテムはどうでした? 今回の探索でも使ったと思いますけど」

 「アレですか。かなり便利ですよ、あれは……」

 将棋の駒からマジックアイテムの駒を連想するとその使用感を聞いてみた。それとロックゴーレムの方もね。


 「探索がはかどりますね。移動がずいぶんと楽でした。皆もこれは良いってダンジョン内なのにかなり興奮してましたよ」

 「そうでしょうね。特にモンスター目当てとあって端の方まで行ってきたそうですし。移動の負担はだいぶ減っているかと」

 「前と後ろに荷物を持たせれば4体で済みました。ちょっと工夫をすればもう少し減らせるでしょうか? 空いた分は他に回せるのでこれはいろいろと試さないとですね。

 それと昨晩も言ったと思いますけど、石田さんに作ってもらったアレも実戦で活躍してもらいましたね」

 「製作者としては何よりですね」


 昨日ゴーレムの事を聞いた後に使用感はどうだったかと質問してみた。少し小さめのロックゴーレムとあって気になったんだよね。

 昨日も聞いたが、1層で出てくるモンスター相手にはそこまで問題はなかったらしい。ロックゴーレム相手には大きさで負けてる分少し不安だったが多少の強化が効いたのか、それとも装備がある分有利に働いたのかとりあえずは何とかなったという話だ。基本はラット系やバット系なんか壁として運用するそうだ。

 もともと自分達でもなんとか出来ていた相手だし、無理をする必要はないだろうとの事。荷物を運んでもらえることの方が大きいと判断したらしい。そもそもの用途は素材の運搬目的だったしね。


 「白田さん達から借りたお金で今回作ってもらった奴を強化するか、それとも新しいのを一から作ってもらうかは検討中でして。その際はおそらく、石田さんにまたお願いする事になるかと思います」 

 「ゆっくり検討なさってください。それから話を聞くとしましょうか」


 もしかしたら他からも頼まれるかもしれないからね。まぁ、作るのは直ぐなんだけどさ。

 問題は大型のゴーレムを頼まれた時だよなぁ……と、その場合についての考えを巡らせる。森田さんの所に場所を借りるとしてもタイミングがなぁ……早くに借りるのもなんかねぇ?


 そんな話をしながら魔石にエネルギーを補充する自分達。暇つぶしならば知り合いとのこういった話でも十分に潰せると思いながら手の中の魔石へとエネルギーを送っていた。

 そろそろ10分ぐらい経ったかと思いながら補充する量を調節する。自分の場合は魔石1つに対しだいたい10分から15分ぐらいにするとしようかね。 




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