401話 魔石のエネルギー補充
「役所ってのはどこもあんまり変わらないもんだなぁ。ダンジョン課って所が増えてるぐらいか?」
白田さん達と夕飯を取った次の日の朝。ダンジョン街にある役所を訪れると内部の様子を見ながらそう呟いた。
入り口にあったパンフレットを見たが、業務なんかは元居た世界の役所とほとんど変わらない感じだった。変化がないので戸惑わずに済むとあって有難いと言えば有難いのだが……。
基本的に役所での用事は面倒な手続きが多い印象だ。時間が取られるからあんまり好きじゃないんだよね。
「まぁ、今回はそういった用事じゃないから大丈夫だろうけどさ。やっぱりあのダンジョン課ってところでいいのかね?」
1枚の用紙を手にしながらそちらへと視線を向けた。意外と用事がある人が多いのか受付前の座席は満席だ。あれは時間がかかりそうだな……。
「出すだけなら他の課でも大丈夫か? 役所の人に取り次いでもらうだけならどこでもいいだろうし」
そう思うと手近な受付に向かった。
「すいません。魔石のエネルギー補充の人員を募集していると管理部で伺ったのですけども」
そう言って手にしている書類を渡した。依頼受付の所で貰った受注書だ。
「魔石のエネルギー補充の依頼ですね。少々お待ちください」
そう言うと受付けの人はダンジョン課のデスクの所へ走っていった。やはり担当自体はそっちなのな。
そうしてしばらく待機をしていると1人の男性がこちらに向かって歩いてきた。
「お待たせしました。管理部から連絡は受けています。石田将一さんでよろしかったですか?」
「はい、そうです」
そう言ってタグを見せる。それを確認すると直ぐに返却してきた。
「はい、確認いたしました。それではご案内いたしますのでこちらについて来てください」
タグを仕舞い終えると言われた通りに後へとついていく。魔石のエネルギー補充かぁ……どんな感じでやればいいんだろうな?
後についていくと1つの部屋に通された。ここでやってほしい……ってわけじゃないよな?
「石田さんにはまず書類を書いていただこうかと。すぐ終わりますので」
「わかりました」
「ではこちらをお願いします」
そう言って渡されたのは、生年月日や氏名、住所なんかを書くありきたりな用紙だった。まぁ、これらは書くだろうとは思ってたけどさ。
「そちらの必要な項目を書かれましたら次に今日やって頂く魔石についてですね」
「えーっと……土と水の魔石ならこの箇所に丸を付ければいいんでしょうか?」
「はい、そちらで構いません」
補充を行う魔石の種類に丸を付ける。土と水の魔石……っと。
「はい、それで結構です。そちらの用紙は帰りに提出してください。今チェックをした下の欄に今日補充をした魔石の数を書き込む所がありますので後程そちらもお願いします」
「ここですね」
欠片、通常(傷有り)、大(傷有り)、通常(傷無し)、大(傷無し)の5つに分けられていた。大(傷無し)が一番価値が高いんだろうな。
「そこに5項目が書いてあると思いますけども、石田さんはどれをしたいかの希望はございますでしょうか? 後でご希望に沿った魔石の所へ行ってもらうのですが」
「希望かぁ……」
特にそういうのは考えてなかったと今悩み始めた。初めての魔石補充の依頼だしな。
「補充を終えた魔石の数によってお支払いする金額も変わってまいりますので。大きい魔石の傷無しが一番お受け取りする金額も高いですね」
「やっぱりそうですよね。んー……これって後で変えられたりしますか?」
「部屋を移動して頂くことになりますが大丈夫です。何かございましたら各部屋にいる職員にお尋ねください」
「でしたら最初は通常の傷有りにしておきます」
「畏まりました。それでは担当してもらう魔石の部屋へとご案内いたします。
っと、申し遅れました。私ダンジョン課に勤めております室田と申します」
そう言うと室田さんはこちらに名刺を渡してきた。それを受け取った後にこちらも名刺を渡しておく。渡せるところで渡しておかないとな。
名刺の交換も終わったところで魔石の補充部屋に向かうどんなところかね?
しばらく室田さんの後について歩いていくと1つの部屋に案内された。どうやらここが通常の傷有り魔石を保管している部屋らしい。
入り口から中を覗いてみたけど保管所って雰囲気じゃないんだよな……。
「後はよろしく頼みます。では石田さん、私はこれで。何か御用がございましたら室内にいるスタッフへとお声がけくださいませ」
「わかりました」
「それでは宜しくお願い致します」
そう言うと室田さんはこちらに1礼し元来た道を戻っていった。詳しくは中の職員さんに聞いてほしいという事か。
室田さんに後をよろしくと言われた職員さんがこちらへどうぞと声を掛けて来た。ともかくまずは話を聞かないとだな。
「用紙を拝見いたします」
「はい、ではこれを」
「失礼いたします」
そう言って先ほど書いた用紙へと目を落とす職員さん。確認は大事よな。
「こちらの部屋で間違いないようですね。初回とのことですけど、ご説明をしても構いませんか?」
「よろしくお願いします」
どういった手順なのか知らないからね。
「畏まりました、少々お待ちください」
そう言うと職員さんは後ろの戸棚から何かを取り出してきた。袋か?
「こちらが皆様にエネルギーを補充してもらう魔石となります。それと補充の間はこちらの手袋をお使いくださいませ」
そう言うと1組の白い手袋を渡された。冷房は効いてるのでつけていても問題は無いけども。
そして手袋と一緒に小さなビニール袋へと入った魔石を見せられた。後ろの戸棚に保管してるのか。
「こちらの袋の口についている紐を手首に引っ掛けておいてください。落下防止としてこのようになっております。それと直接触ることも無いようにですね。中の魔石は取り出さないようお願いします」
「わかりました」
「紐を手首に引っ掛けた後は手袋をした手で魔石を軽く握っておいてください。エネルギーの補充自体はやったことはおありですか?」
「そうですね」
ゴーレムの魔石とか車の魔石なんかだな。
「でしたら後はその要領でエネルギーの補充をお願いします。
補充の間は何かとお暇になるでしょうから自由にされて構いません。室内限定となりますが。
あちらに本などもございますのでよろしければお使いくださいませ。奥にはパソコンも数台ございます。そちらをお使いになっても構いません。お飲み物はあちらの隅にご用意いたしております。お手洗いはその隣の通路ですね」
職員さんは手で指し示しながら室内の説明を口にした。室内にいる人達は思い思い好きに行動している。全員手を握っているのは共通しているが。
「テレビもございますのでそちらを見られていてもよろしいかと。チャンネルの変更は各自で話し合っていただきたく思います」
「あ、はい」
「基本的に室内で過ごされるのであればご自由にされて構いません。部屋を出たい場合は私共にお声がけくださいませ。魔石の持ち出しは出来ませんのでそこはご了承ください。御用がおありの際は遠慮なくどうぞ」
「室内であれば自由にしていいわけですね?」
「そうなります。他の方へのご迷惑になることはご遠慮して頂きますが」
「補充が終わったらどうすればいいんでしょうか?」
「私共職員にお声がけください。続けて魔石のエネルギーを補充して頂けるのであれば別の物をお渡しいたします。他の部屋へ移動される方も居りますね」
「補充が終わったら一度声掛けと。わかりました」
手順はわかった。
「それではこちらをよろしくお願いします。補充が済みましたらまたこちらまでお持ちください」
職員さんはそう言うと、今まで見せていた魔石入りのビニール袋をこちらに手渡した。手袋をつけてこれを握っていればいいと。
室内では自由にしていいという事なのでとりあえずは周りの確認から行う事にした。部屋というにはずいぶん豪勢な所だと思ったけど補充中は手持ち無沙汰になるし何らかの暇つぶしは必要よな。
受け取った魔石を握りながら部屋の奥へと足を進める。補充を終えるまでの暇つぶしか……いったい何をして過ごそうかね?




