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4話 手紙を読もう



 衝撃の事実をいきなり知らされ、結構本格的に読まなきゃいけないんじゃないかと思った将一。

 どうにも自分が知らないうちに何やら変更があったようで、異世界暮らしの気持ちを切り替える必要があると手紙を読むことに集中する。

 


 『異世界で生活するにあたって石田さんにも考えがあったとは思います。おせっかいなことだったかもしれません。

 少し石田さんの事を調べましたが、あまり目立つのはお好きではない様子。魔法の力を貰ったとはいえ、それを使って異世界で生活環境を整えようとするとどうしても目立ってしまいますからね。

 多少はこちらでもあるかもしれませんが、そう多くないはずです。行った先でストレスを抱えるようなことはなるべく減ってくれればいいなと思い、このように変更させていただきました。』



 「いや…異世界なんてどうやって生きていくかはかなり手探りで過ごすつもりでしたけど…。ストレスが少なくなるようにってのはありがたいかな、この体に戻っちゃうとなおさら…。

 う~ん、それにしても神様にここまで心配されるほど異世界と現代日本の格差ってやばいもんだったのかね? 若くして禿げたくはないかなぁ…禿げって病気じゃないし魔法じゃ治らんよな?」

 いきなり行き先を変えられたことに将一は多少なりとも不機嫌にはなるが、神様に心配されるほど現代人が異世界を旅するってきついことなのかと考えさせられる。



 『現代人の石田さんが過ごしやすいように、文化的には同程度である地球の平行世界に変えさせていただきました。どう変わっているかはご自身の目で、足でいろいろ見て回って知っていただければ。

 しかし異世界に行くという希望もあったと思いますので、異世界の因子を併せ持った世界を選んだつもりです。異世界でやりたかったことなどできることもあるでしょう? 存分に別世界での人生を楽しんで頂きたく思います。』



 「地球の平行世界…異世界の因子があるってどういうことになるんだ? この家や周りの草の状況的に魔物に人がやられ激減でもしたのか? いや、文化的には同じぐらいってあるしそこまで絶望的な感じではないよな? これはいろいろ調べるしかないか…」

 行き先が地球だということに少なからず驚く。そこにプラスして異世界の要素もあるとなると、どんな世界になっているのかうまく想像ができなかった。

 


 『石田さん、あなたが倒れていたそばに家があると思います。そこは私が石田さんの経歴や戸籍などを新たに作って得たもので、活動拠点としてでも使ってもらえればと。中には贈り物がいくつかあるので好きに使っていただいて構いません。

 本当ならば何か力を授けたかったのですが、手遅れということもあり物理的な贈り物限定となってしまいました。

 ちなみにこの手紙も特別製でして、いわば魔法の封筒といったところでしょうか。雨風にさらされようと、濡れもしなければ破けたりすることもない。それに折っても折り目が付かなかったりと、地味ですがいつまでもこのままという保全の力がかかってます。見た目と違って封ができれば何枚も入れれたりと…まあこれらはどうでもいい情報ですか』



 「え…待って待って? この家に住めって? こうなる前ならどれほど素晴らしい贈り物かと思うけど…こんな状態の家住めるもんではなくないか? 周りも草がすごいことなってるし…神様ここの家の状況わかってたのか?」


 神様が書いてくれた文を読むと、顔を上げて目の前の家を見上げる。

 改めて見ると本当にひどい。玄関の木のドアは割れてゆがんでいるし、雨戸や障子は腐ってボッロボロ。屋根は崩れ落ちているし、壁も穴が開いて変色がすごい。庭の所にあるあの屋根だけ見えるのはポンプ小屋…か? 草に埋もれててよくわからん。裏側は草を刈らないと回り込むのも苦労しそうだ。


 「…絶対これ家の状況知らないで戸籍と経歴だけ作ったよね神様。ストレスかからないように現代に~てことだけどこれ古民家だしな。まあそれはいいか…。

 しかし住むにしてもこれどれだけ手直しがいるんだ? むしろリフォーム案件だと思うんだがなぁここまで酷いと…。

 というか私の戸籍や経歴を作ったってなんだ? 知っておかないとやばい情報じゃないか。

 にしてもこの手紙地味にすごかったんだな。読み終わったら燃やす必要がある気もするけど…自分が転生した唯一の証拠だしなぁ。大切にとっておくとしよう。えっと…続きに個人情報について詳細載ってるかな?」

 将一は文の続きを読んで詳しいことが書いてないかを探し始める。できれば活動拠点はせめて住める状況の家ならばよかったと思いながら。



 『戸籍に関しては問題なくできているよ。そこの家を持ち家として登録できているし、その家の物は石田さんの名義に変えてある。面倒な手続きなどは気にしなくて大丈夫だ。

 経歴についてだけれど、祖父からの遺言という事で父親に一度渡っており、その父親は母親と一緒に農家をしていたけど他界済み。その父の遺言で、自分の死後は息子である石田さんに全て譲ったとなっているよ。

 石田さん自身はその世界の出来事もあってか、学校には行かずに自主勉学をしていて人とあまり関わることがなかったという経歴だ。その世界の事をあまり知らなくてもこれで少しは言い訳ができると思う。自分でその世界の事をもっと知りたいと思うなら、色々見て聞いて学んでみるといいよ。』



 「爺さんから父さん、そして自分が譲り受けたって…本当の爺さんは坊さんだったんだけどなぁ。こんな土地もってる人ではなかったんだが…すごいことになってるんだなコッチだと。それに父は電工だったし、母は専業主婦。経歴詐称がすごいですよ神様…。

 それと自分の経歴がまた複雑だな。こっちの世界のこと知らなきゃ学校行ってない理由もわからんし。こりゃまずは情報集めからになるか。いったい何がどうなってる世界なんだろうか…」

 自分達石田一家の捏造情報を見た将一は、なんかあった時に話せるようしっかり記憶しておく。祖母の情報がないが自分が生まれる前に亡くなり詳しいことはわからないということなのだろうか? それにしておこうと情報を付け足す。

 

 「とりあえず手紙の続きだな。後は何が書いてあるんだ?…」



 『あと伝えることはなんだろうか。あまり長くなって石田さんの旅立ちの時間を取るのもあれだからこんなところだろうか。

 そうそう、貰った魔法の力ですが、そちらも自由にいろいろ試してみるといいかと。他に能力を貰わなかったのだから、その世界で生きていくのにその力はきっと役に立ってくれるはずだ。私から授けたわけではないが、いろんな神達が手を貸してくれた力だ。むしろ使ってくれることを喜ぶと思う。

 さて、ではそろそろ終わりにしよう。

 

 石田将一殿、今回の事は誠に申し訳なかった。私については聞いているかもしれないが、私という神は消えることになる。直接会うことができず、このように謝る事しかできない。

 力を与えることもできなかったが、私も何か責任を取りたかったのだ。どのみち神格がなくなり消滅するならと、石田さんの手助けするために自分の力すべてを使いきることにためらいはなかったよ。

 その世界は石田さんを受け入れる。だから石田さんは新たな人生を楽しんでくれればいい。

 石田さんの今いるところは異世界の要因が含まれているため、安全な世界というわけではない。それでもどうかこの世界に来れてよかったと…楽しいことが今後たくさん訪れることを祈らせていただく。

 最後になったが別世界に行くことを選んでくれてありがとう。そのまま成仏するようなことになっていれば、こうして謝る機会すら私にはなかっただろうからね。

 石田さんのこれからの生活に幸あれ。楽しんでくれ。』



 「……なんか印象と違う神様だなぁ。

 女神様の言葉だと神々のルールすら破って地上に手を出すような傍若無人な神様だと思ってたけど…こうも謝られ贈り物を用意してくれるような神様だとはね。

 まあ異世界行きを勝手に変えたり、こうして力を使ってくれたりと自分勝手な面もあるんだろうけど…。女神様の言った、神とは本来~ってのは当たってるか。

 楽しんでほしい…か。どういう世界かわからないから確約はできませんが、今までの生活より少しはましな生き方ができるよう頑張っていきますとも。お気遣いありがとうございました」

 

 将一はそいうと家に向かって頭を下げる。相手が自分の死ぬ事になった神様だろうと、もう消滅していようと、自分のこれからの人生を気にかけてくれたことには変わりない。


 ゆっくりと頭を上げ、目に入ってきたボロボロの家を見るとこればっかりはどうにかならなかったのかなぁとは思う。

 感謝の気持ちはあるがどうするかコレ…と、困惑した気持ちが生まれるのは仕方がない。




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