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390話 ダンジョン1層(ソロ) 5層まで攻略はするのかな?




 「おー……確かに結構いけるな、これ」

 

 ボイルした蜘蛛身を口にしながらそう呟いた。意外と美味いぞ。

 

 あれからマジックアイテムの仕込み作業に戻ると夜までそれを繰り返していた。今日だけでもかなりの宝箱を設置できたと思う。効率としては何倍どころの話じゃないね。

 そして夕飯までその作業を繰り返すと一度中断としておいた。転移が出来るようになってからは夕飯後も問題なく活動することが出来る。まぁ、戦闘に関してだと遠慮したいけどね。マジックアイテムを仕込むだけならば何も問題は無い。


 夕飯休憩の間に例のビッグスパイダーに関しての資料を読むつもりでいた。そして管理部の資料を読んでいると、食料として身が大変美味ということを知った。食べ方もそこまで手間というわけではないので、これはぜひ食してみたいと思うまでに時間はかからなかった。

 折れた脚もあったのでとりあえずそれを頂くことに。そして食べてみた評価が……。


 「水分が少ない蟹身って感じだな。ジューシーさはそこまでだけど味は濃厚っと……汁気は料理の方で取れば問題は無いな。スープにすれば十分美味しく食べられるか。それに水分が少ないなら炒め物にも使えると……最後にサッと和える感じで入れればパサパサにもならんだろう」


 今は単純にボイルをして火を通しただけだが、蟹っぽいというのであれば案外生でも行けそうに思った。冷やして食べると結構美味そうだ。寄生虫とかの心配もないしな。

 茹でたという事もあってこれ単体でも水気をそこまで気にする必要はない。それに旨みが出ていってるのであればこの蜘蛛の脚スープもそのまま使えそうだ。味噌か中華スープの素でも入れればそれだけで1品が出来上がるな。

 蜘蛛出汁か……名前だけ聞くとちょっとアレよな。


 「蟹身の代わりとして使うならレパートリーは豊富そうだな。蟹玉ならぬ蜘蛛玉とか結構良さそうかも」

 正直抵抗が無いとは言わないが、剥き身として出されれば何も気にすることなく食べてしまうだろう。それほど味におかしなところは見受けられなかった。


 「それでこっちはどうだぁ?」


 身がくっつかないようにクッキングシートの上に乗せて火で炙った、焼き蟹ならぬ焼蜘蛛に箸を伸ばす。上から醤油を数滴垂らしてその後に直火で軽く炙る。殻ごと焼けないのは少し残念ではあるがチタンの殻だからねぇ……。こっちは管理部に卸さないとだしな。

 水圧カッターで縦に切断し、蜘蛛身を取った後の殻へと目を向ける。チタンって火で炙っても特に問題は無いんだっけか?

 蟹と違ってこっちで出汁を取るのは無理なのでただの金属として扱う。殻からは良い出汁が出るんだけどこればかりはね。


 「ハフッ、ハフッ! あっふぃ……。でも美味いな」


 焼いたことでボイル以上に汁気が無くなるかと思ったが直火でなければそこまででもないらしい。軽く温める程度がいいみたいだ。

 軽く炙った際に焦げた醤油の香りも合わさってかなりいい感じになっている。焦げた醤油の香りって言うのはやはりいいもんだな。

 最初に醤油を少し焦がしてそこにこの剥き身を投入するのでもよさそうに感じた。軽く温めるというだけならそっちの方が良いか?

 炒めるか炙るか……熱を通すにしてもどちらがこいつには合うかと考え始める。まぁ、どっちも作ってみればいいかな。


 「熱を通すだけなら蒸すってのも有りだな。蒸気でしっとり感が出るかもだし。水分量が少ないならこっちの方が良いかもなぁ……」

 旨みも逃げないので蒸しもいいかと思った。この辺は好みの問題になってくるだろうけどね。


 「蟹天ってのもあるしな。水分も少ないしサクッと揚がりそうだわ。

 そう言えば岡田さんの所にはこいつがメニューにはなかったような気が……。仕入れもなかなかに苦労しそうだし、商品としてはそう気軽に出せるもんでもないのかもな。

 洞窟エリアの食材とか……特に6層以降に出てきそうな奴はメニューとしてだと採算が合わなさそうだよなぁ……」

 タイラントスネークの料理も今の異常な湧きで出てきているからこそ結構頻繁に運び出されてるっぽいが、普段であれば洞窟エリア後半のモンスターという話だ。探索者に話を聞けば一番人気が無いのは絶対洞窟エリア後半と答えそうに思う。ならばそこのモンスターの素材が出回らないのはある意味必然ではなかろうか。


 「低階層でそう言ったモンスターが出てくるのであればある意味美味しい状況と言えなくもないんだろうけどねぇ……。マップだって6層以降と比べれば出来てるんだから。新しい通路や既存の通路が消えたとはいえ、全体から見れば一応修正が出来る範囲内って感じっぽいし。新たに地図を作り出すよりは手直しの方が遥かに楽だわな」

 そこまで考えてある思いが頭を過った。管理部は本当に全部を攻略するつもりなのだろうか? と。


 「1層や2層なんかは初心者探索者(ルーキー)だって居ると思うし攻略は必須だよな。まぁ……3層もギリギリ攻略はしておいた方が良いか? 

 けど問題は4層5層じゃないか? この辺りまでは上位種も出なかったってことで地図がほぼ出来てるんだよな。攻略に向けての手直しだってちょっとずつやってるだろうしさ。けど本当に完全攻略をするんだろうか?」


 先ほども思った事だが、地図がある程度出来ている分上位種のモンスターが居たとしても修正は不可能という事はないはずだ。現に1層2層とそれが出来ているわけだしな。

 まだ行ったことが無いのでわからないからあれだが、他の階層と違って湧くモンスターにそこまでの違いはあるのだろうか? ロック系からアイアン系に変わっていくとかはあるかもだけど、上位種になる前のモンスターがメインで湧いてるような気がする。1層2層での遭遇率的にそんな気がするのだ。

 まぁ……自分の探索は甘々なので完全に体感でしかないのだが……。今はモンスター探しより宝箱探しを優先してたりするしな。

 

 「でも上位勢とは広場ぐらいでしか遭遇してないしなぁ……。少なくともその階層で普通に湧いていたモンスターを押しのけて全部が全部上位のモンスターに変わったってわけじゃないだろうし……。

 比率で見たら今までの階層モンスターが7割、上位のモンスターが3割とかそんなのなんじゃないか? 報酬を選ぶ際に運び出されたモンスターを見た感じだとそこまで多くなかった気がするんだよな。まぁ、1層の分しか知らないけど」

 2層だと運び出された上位勢のモンスターも増えているんだろうか? 今回は参加してないからそういった物が見れないのよな。


 「参加した倉田さん達にでも聞いてみるかね? 討伐班なんだからその辺も自分なんかよりは詳しい情報を持ってるだろうしな」

 明日の2層攻略完了宣言から報酬を配るまでが気がかりと、かなり頭を悩ませた。自分も2層の突破はしたけれどその辺りはよくわからないのだ。


 「でも劇的に変わるのは半分を超えた3層からだったり? 地底湖ぐらいでしかまともに戦闘をしなかったからなぁ……」


 3層に上がった後は無事に帰る事を目的としていた為、戦闘は出来るだけ回避の方向で帰還陣へと向かっていた。3層の探索も再開しなきゃなんだよなぁ……。

 マジックアイテムの効率的な仕込み方も判明した事だし、3層の探索もその内始めなければ……と頭を悩ませる。1度2層でもマジックアイテムを仕込み終えたら3層の探索を始めるかね?


 「なーんか完全攻略はしない気がしてきたんだよなぁ……。マップがほぼ出来ている所で6層以降のモンスターを倒せるとなればそれを無くしてしまうのは惜しいもんな。最低でも5層ぐらいは残しそうな気がする……4層まで攻略出来ていれば初心者探索者(ルーキー)もそう困らないだろうし。

 それに4層分もあればマジックアイテム探しの場としてはかなり広いと思うんだよな。他のダンジョン街から探索者が押し寄せたら狭くなるかもだけど。とはいえ1層分の違いだからなぁ……それをするぐらいならこっちはモンスターの素材回収の場に取っておきそうな気がするぞ……」

 

 なんだかそんな気がしてならなかった。

 マジックアイテムは確かに貴重だし、集める場は多いに越した事は無い。だが、それと同じぐらいモンスターの素材もまた需要があるはずだ。1層ぐらいはそんな場として残すんじゃないか?

 

 「そうなると上位モンスターを見かけるのは5層からって事になるな。それまでにも見かけるっちゃ見かけるけど低確率っぽいし。今回遭遇しておいてなんだけども……」


 初心者探索者(ルーキー)には4層までを推奨。5層からが洞窟エリアの難問といった感じになるかもな。もしかしたら今後は5層での素材回収が増えるんじゃないだろうか?

 そうなると6層以降のモンスターの素材を地上で見る機会も増えるはずだ。このビッグスパイダーのようなモンスターも今後頻繁に運び出されてくるとなれば地上で取り扱いをする店が出る可能性も……。


 「自分個人としては有りだよなぁ。やっぱりマップが出来ているってのは大きいし。マップが未完成の所で探すよりも断然安心感が違ってくるわ。

 洞窟エリアの後半なんて森林エリアへ行くまでに仕方なく通らなきゃいけないって感じだもんな。レアメタルの素材は欲しいけどリスクがね……。出来るだけローリスク・ハイリターンにしたいわなぁ」


 ダンジョンに潜る=命がけとあって最初からローリスク全否定なんだけどね……。

 ただ、ダンジョン内でも危険度が違うのでなるべくその部分を下げたいわけだ。5層で洞窟エリア後半と同じモンスターを狩れるのであれば誰だって今後はそこに行くだろう。自分だってそうする。

 

 管理部はいったいぜんたいどうするんだろうなぁ……と、今度増田支部長に会った時にでも聞いておこうかと思いつつ残りの蜘蛛身を口にする。

 探索者の中からもそう言った声は上がってそうに思うんだよねぇ……。





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