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383話 ダンジョン1層(ソロ) いつか見た人達




 「よし……こんなもんかね」


 止めを差して回っているゴーレムを見ながらそう呟いた。戦闘終了っと。

 

 あれからしばらく歩いていると探知がモンスターの反応を捉えた。数はそう多くなく、進行ルート上にいた事もあって撃破して進む事に。それに今の1層での戦闘は貴重だからな。

 相手がバット系という事もあって、以前と同じ戦法を用いてまずは動きを止めた。そこに多少の攻撃はものともしないゴーレムを使って頭を潰しに回らせる。動きさえ止めてしまえばいくら属性魔法を使って来ようとゴーレムだけで片が付く。この粘液作戦は意外といいな。

 どこからも戦闘音や鳴き声が聞こえなくなったところで回収に回る。10数匹ぐらいなら回収も直ぐだな。


 そしてそんな事を思いながら動こうとしたところで少し先の通路に異変が起きた。突如として何かが湧いたのだ。

 このタイミングで新たなモンスターか!? と思い、即座に身構えてゴーレムへと指示を出そうとした。しかし……。


 「って、人かよっ!?」

 「なにっ!? とっ! 全員ストップッ!」

 

 咄嗟の事だったのでモンスターと間違えてしまった。まさか目の前に転送されてくるとは……以前の倉田さん達がこんな気持ちだったのかね?

 転送されてきた人達はゴーレムを見て戦闘態勢に移ろうとしていたのか各々が武器を構えていた。まぁ、すぐ目の前にゴーレムが居れば誰だって警戒するか。


 「こいつ等はあんたのゴーレムか?」

 「はい、そうです」

 向こうからの問いにはっきりと答える。危うく探索者同士でぶつかり合う所だったな……。


 「そうか……。お前等、そう言う事だから気ぃ緩めていいぞ」

 そう言って武器の構えを解くように口にする男性。こちらもゴーレムを待機状態にさせておく。


 「なんだよー、結構緊張したぜー」

 「目の前にアレだからなぁ……」

 「警戒しないほうが無理ってもんだよね」

 「だな……。まぁ、結果的に手を出さなくて助かったよ」

 転送されてきた内の男性陣が溜息を吐きながらそう口にした。ほんとギリギリだったな。


 「とりあえず聞かせてほしいんだが……ここは今安全か?」

 「ですね。安全になった……と言った方が正しいんでしょうけども」

 「んん?」

 どういうことだ? と言って問いかけてくる男性。まぁ、気づいてなくても仕方ないよな。


 「さっきまで戦闘をしていたんですよ。あ! そこ足下気を付けてください」

 「わっ!? バットが死んでる!」

 「それになんか張り付いてるな……」

 「粘着液?」


 戦闘態勢を解いた後、転送陣に乗っていた範囲から広がろうとする人達に向けてそう注意をする。危うく踏みつぶすところだったな。

 女性陣が地面や壁へと張り付いているバット達をしげしげと見ながら周囲を見回していた。


 「つまり俺達はあんたが戦闘を終えた所に転送して来たってわけか?」

 「そうなりますね。こっちもまさか目の前に現れるとは思ってもみなかったですけども」

 「それを言うならこっちも……いや、転送先の事には注意をしてたし気構えはしてたか」


 とりあえずモンスターとの戦闘も終わって周囲は安全という事を伝える。近くには他のモンスターや別の探索者も居ないと。

 安全も確認されたとあって、その後はお互い軽く自己紹介となった。 


 「源田だ。このPTでリーダーをやらせてもらってる」

 「俺は田間(たま)って言うんだわ。よろしくなー」

 「俺は津田だ。ちょっくらゴーレムを見させてもらってもいいか?」

 「僕は田茂(たも)って言うんだ。よろしくね」

 「俺は直田(すぐた)ね。しかしゴーレムかぁ……」

 「私は依田(よりた)だ。それとこっちは妹でな。私の名前は桃子なんだが好きに呼んでくれていいぞ」

 「どもども。桃子姉さんの妹で依田 幸って言います」

 「田名(たな)。ゴーレムを連れてるってことはあなたがゴーレムさん?」

 向こうはタグを見せながらそう言って自己紹介をしてきた。


 「石田と言います。初心者探索者(ルーキー)です。ゴーレムはご自由にどうぞ。田名さんがおっしゃる通りそういう風に呼ばれる事もありますね」

 「へぇー? あんたが……いや、石田さんがゴーレムさんか。話には聞いたことあるな」


 こちらもそう言って自己紹介を終える。そっちの呼び名は結構広まってるっぽいね。

 ゴーレムが良くも悪くも目立っているという事だ。全員が「ああ、あの……」と言って頷いていた。


 「そんで石田さん。悪いんだが現在地を教えてもらっていいか? 場所は把握してるよな」

 「ええ、構いませんよ」


 源田さんがそう言って転送先であるここの現在地を聞いてきたので地図を取り出して教える事に。一応近場の光石にもタグを付けとくか……。

 現在地を教えながらタグを取り付ける。源田さんは端寄りだと知ると、よしっ! といいながら頷いていた。元から端側を目指してたのかね?

 

 「情報提供助かった。それと驚かせたようで悪いな」

 「いえ。転送先についてはどうこうすることも出来ませんしね。こういう事も起こりえると知れて良かったですよ」

 これで人前に転送した場合とされた場合、どっちも経験することになったわけだ。


 「これから解体をするのか?」

 「いえ、解体をしなくともゴーレムにそのまま持たせられますので。邪魔な物だけ落としてそのままゴーレムに担がせますよ」

 お湯で粘液自体は落とすことが可能だ。人目が無ければそのまま消去でいいんだけどね。


 「ゴーレムにしてみれば重くも何ともないだろうしな。バット自体がそこまで重たいもんってわけでもないけどよ」

 田間さんがゴーレムのあちこちを見て触って確認をしながらそう口にした。他の皆もダンジョン内でモンスターではない動くゴーレムが珍しいのか、ペタペタとあちこちを触っていた。


 「しっかしよぉ……。よくよく考えたらこうやって武装したゴーレムなんてのはそうそういる分けねぇって一目見ればわかるもんじゃねぇか? ゴーレムってだけでモンスターとして認識しちまったぜ……」

 「んんー……でも仕方ないんじゃないの? ダンジョン内にいるゴーレムの約8~9割程はモンスターだろうし。僕だって普通にモンスターとしか思わなかったよ」

 「そこから人が作ったゴーレムの前に転送されるとかどんな確率なんだかな?」

 「他の探索者やモンスターの前っていうのは予測できてもこの場合は予想外だったよね?」

 「流石にこれを想定しろって言うのは無茶なんじゃない?」

 「武装はともかくとして……姿形はモンスターのゴーレムとも結構似てるしな」

 

 咄嗟の場合はモンスターとして認識してしまうと口にする津田さん達。ダンジョン内のゴーレム=モンスターってのは多くの探索者がそう思ってそうだよなぁ……。

 こちらとしては苦笑いを浮かべるしかない。やはりモンスター似は変更するべきなんだろうか?

 武装自体はゴーレム……というよりは、物を持つことが出来るモンスターは活用する場合もあるようだし、武装=人製というわけではない。ということは武器ではなく防具を付けさせることでモンスターとの違いを出させられるだろうか? 

 森田さんの所だとそんな感じの物を作りそうだな。靴だとあんまり目立たないからあれだろうし……。

 

 「うーん……せめて兜でも付けさせるべきか……。視界なんて関係してるのか不明だしなぁ。

 それにしても……」

 そう言って源田さん達の顔を見回していく。


 「どうかしたか? 俺等の防具でも参考にしてみるって?」

 「いえ……そう言うわけではないんですけどね。

 う~ん……なんだか皆さんの顔をどこかで見たような覚えがあるんですよねぇ……」

 「ん? そうなのか? どこかで会ったか?」

 源田さんの方に覚えはないらしい。こっちとしても何となーくといった感じなんだよな。


 「あれ? 石田さんも? 実は僕もどこかで石田さんと会ったような気がしてたんだよね」

 「うん、私もなんとなくそんな気はしてた」

 「え? そうなの?」

 「私は覚えてないな……」

 「直田はどうよ?」

 「んー……あるようなないような……。どっちかと言うと無いかもしれない」

 「なんじゃそりゃ?」


 どうやら田茂さんと田名さんは自分と同じくどことなくそんな気がしてるらしい。うん……なんかどこかで見た覚えがあるんだよな。

 3人してう~ん……と頭を悩ませながらお互いの顔を確認していく。いったいどこで見たんだったか……。


 「あっ! 思い出したっ! 石田さん、倉田さん達の班に交じってたでしょ!」

 そう言うと田茂さんは、すっきりした! といった表情をしながら頷き始めた。


 「え? ……あー! そうです。その時にお見掛けしたんですよ!」


 そう言われてこちらも思い出した。うん、やっぱり会ったことあったわ。

 討伐班と聞いて田名さんも思い出したのか、あの時か……と呟きながら頷いた。 


 「倉田さん達の班で?」

 「あー……そう言えばあれが石田さんだったっけ?」

 「……悪ぃ……記憶にねぇわ」

 「そう言えば倉田さん達の討伐班になんか知らない人がいるなぁ……って思ってたかも。あれが石田さんだったかはちょっと思い出せないけど……」

 「うーむ……すまないが私もはっきりとは思い出せん。そうだったのかもしれないが……」

 

 2人以外はどうにも記憶に残っていないようだ。そう言えばあの時はしっかりと挨拶をしたわけでもなかったか……。

 自分らしき存在は覚えているようだが顔までは記憶してないらしい。


 「ほら、田島さんがなんか驚いてたじゃん。何でここに居るんだー! って」

 「私もそれで気にしてたかな」

 田茂さんと田名さんはそう言って源田さん達に説明を始めた。


 「それはなんとなく覚えているが、相手が石田さんだったのかどうかまでは記憶にねぇなぁ」

 「そこまで前ってわけでもねぇのに思い出せねぇもんだなぁ……」

 「なんか別のこと考えてたからそっちは気にしてなかったぜ」

 「俺は運搬ルートの確認をやってたかなぁ……」

 「あたしは目を瞑って休憩してました!」

 「あんた寝てなかった? 私も田島さん達のは見てたんだけどなぁ……」

  説明を聞いても思い出せないようだ。まぁ、仕方ないよね。


 「あの時はゴーレムも連れてませんでしたからねぇ……」

 駒には入っていたが。


 「そっちが居れば覚えてたかもな。印象的だし」

 「ゴーレムの方が目立ってる感あるよね、石田さん」

 「イメージ的にはゴーレムの方が大きいわな」

 やはりゴーレムを連れてなかった事もあってか、他の人からすればかなり印象が薄かったらしい。2人が覚えてただけでもマシか……。


 「いやー、ようやく胸のつっかえが取れた気がします」

 「思い出せそうで思い出せないとなんかモヤモヤするよね」

 「装備もあの時からちょっと変わってるのもあるかな?」

 腕防具にエアーマンティスの片手剣、太ももに取り付けたマジックブレードの持ち手、あの時と変わってるとしたらそれ位なんだけどね。

 

 「スッキリしたから気持ちも楽になったよ。それでリーダー、僕達はそろそろ出発でいいのかな?」

 「ん? そうだな。石田さんに聞きたい事も聞けたしそろそろ出発するか。倉田さんの討伐班にいたって事は石田さんの力の方も問題ねぇだろうしな。まぁ、このゴーレムが居れば早々後れは取らねぇか。1層だしな」

 「だよな。武装もしっかりしてるし問題ねぇだろ」

 「ソロでも戦力が充実してるなら心配は余計なおせっかいだな」

 「んじゃ行きますか……」

 そう言ってゴーレムを見ていた皆が腰を上げる。転送早々ちょっぴりトラブルはあったが移動を開始するようだ。


 「それじゃあ俺達はこれで行くとするわ」

 「目的はマジックアイテムですか?」

 「そんな所だね。2層の攻略を終えて時間が余ったから来て見たって感じ」

 田茂さんが2層帰りだと口にした。帰って来たのにすぐこっちへ来たのか? と、若干驚いてしまった。攻略から帰ってきたのなら休めばいいのに……。


 「1広場分の運搬だけだったしな。3日を予定してたのに1日で帰ってきちまったからなんか物足りねぇっつぅか……」

 「明日まで暇しててもあれだしよ!」

 「物資も残ってるしね!」

 「それと攻略状況は順調だぞ。後2,3広場っていう所じゃないか?」


 どうやら体力ややる気は有り余ってるようだ。物資にも問題はないみたいだし。そんな源田さん達を見て頑張るなぁ……と、内心で感嘆の声を上げた。

 自分もこれぐらい探索に精を出すかね? 2層も攻略間近って言う事だし……。


 「それじゃあまた地上でな!」

 「お気を付けてー!」

 そう言って源田さん達と別れる。何ともやる気に満ち溢れた探索者だ。

 

 「さて……こっちもやることやって進むとしますかね」


 源田さん達が現れたことでストップしてしまったバットの回収を行う。

 人目も無くなった事だしサクッと回収しようと、ゴーレム達に気を付けて引きはがしてくるよう指示を出した。




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