352話 ダンジョン1層(ソロ) 1層のモンスター
「おっ? モンスターの反応見っけ!」
探知に手応えを感じた。今日探索を始めて初のモンスターだ。何とか今日中に出会えたか……。
あれからゴーレムを連れて移動を開始したは良いものの、やはりというべきか、モンスターの反応は一向に感じられなかった。別の探索者の反応はいくつか見つけたのだが。
特に合流する理由もなかったとあって、最初に決めたルートを進み続けた。離れている方がモンスターの横取りも起こりにくいだろうしね。用があるのなら自分の反応を捉えた探索者の方から近寄って来るだろうとも。
そんな感じで、一切誰とも会うことなく洞窟を歩き続けた。
ゴーレムの移動に関しては今のままの速度であれば十分と言っていいだろう。坂に関しては自分の補助もあって楽に移動が出来た。ゴーレムを連れていく以上、土魔法使いや土のマジックアイテム持ちは居ると思う。ならこのぐらいの補助は構わないだろう。
そもそもゴーレムを連れて行く=駒持ちって事がほとんどになるだろうし、坂を上り下りするのであれば一旦仕舞われる可能性が高い。
最初から最後までゴーレムを連れ歩く人なんてあんまり増えない気がする……。
そんなことを考えつつ、ひたすらゴーレムと歩き続けた。
そして夕飯の時間も近づいてきた頃、今日はここまでと決めた休憩所前でモンスターの反応を捉えることが出来た。少なくとも、今回の戦闘回数が0というのだけは避けられそうだ。
「食べられるモンスターなら夕飯に使うんだけどどうだろうな? とにかくまずは近づかんと」
靴を履いた状態の戦闘テストであることは承知しているが、夕飯前ともなればそう言った考えも浮かんできてしまった。さっきまで今日の夕飯はどうしようか考えていた所為でもあるのだろうけど……。
ゴーレム達に歩く速度を落とさせて自分の後を付いてくるよう指示を出す。靴のおかげもあってか、今までであれば微妙に出ていた足音を消して歩くことが出来るようになった。これならばゴーレムを展開した状態でモンスターに近づくことも楽になるだろうね。
そうしてそんな足音を消したゴーレムを引き連れ、モンスターの反応がある場所へと向かって進んでいった。
しばらく進み、モンスターの反応がある通路の手前までやって来た。このまま行けばお互い角でぶつかるだろう。
鉢合わせまでそう時間も無いと思い、ここでゴーレム達に迎撃の態勢を取らせる。あんまり通路の幅が広くないとあって、ゴーレムの数が活かせないのが少し残念ではあるが仕方ない。横は2体が限界だろう。
(その分天井は高いんだよな。これなら大型も出せるっちゃ出せそうだわ……横向きでだけど。まぁ、いらんな。出すならリキッドでいいか)
スパイクを前方に設置後、前衛に大盾持ち2体、後ろに少し地面から上げて予備を1体配置する。この狭さならばそうそう抜かれる事はないだろう。
天井がそれなりに高いという事もあり、後列のゴーレム達は足場を持ち上げての配置を行う。その更に後ろに自分の立てる台を素早く作った。高所を取るのはやっぱり優位だからな。
迎撃態勢は準備OKと、後は角から現れるモンスター達を待つ。そして、そのモンスター達が姿を見せ始めた。
「鎧蟻にラット系とバット系か……1層のモンスターだな。やっぱり湧きは正常に近くなったって事か?」
角に見えたモンスター達を視界へ収めると、ゴーレム達にメイスを構えさせた後その構成を把握する。続いて鑑定を行うと種類も見定めた。
「石鎧蟻4、ケイヴラット3、ファイアーラット2、アクアラット2、ケイヴバットは8か。属性持ちは4体と。バットに関しては全部一緒だったか。
この辺は1層のモンスターとしては普通の構成なんかな? 以前の数十集まってたアレはやっぱ異常か? それとも別の群れが合流しただけか……何ともわかんないな」
とにかく今は迎撃と、モンスター達に意識を集中させる。向こうもこちらを認識しているようで突っ込んできていた。
「前衛は地上の相手を狙えっ! 後列はバット達だ、仕留めなくていいから落とせっ!」
そうゴーレム達に指示を出すと追加のスパイクを設置していく。今のスパイクじゃちとでかいしな。
でかいスパイクのこちら側に細かいスパイクを敷き詰めていく。これならばラット系もダメージを受けるだろう。バット系もここに落ちれば後始末が楽なんだけど……。
そんなことを思いつつ自分も戦闘に加わった。大盾を持った前衛のゴーレムには手前のスパイクに来た所を狙うよう指示を変更させる。その方が狙いやすいはずだし。
まずはスパイクを無視してくるバットの相手っと。
「防御が薄い相手にはこっちの方が良さそうだなっ!」
そう言っていつもの土魔法の弾幕から水魔法の弾幕へと変更した攻撃を行う。風でもいいとは思うのだけど一応耐性はあるだろう。それに風って意外に威力があるしね。
決して水に威力がないというわけではないが、減衰も何も考えなくていいのであればこっちの方が楽だというだけの話だった。それに放った魔法もただの水というわけでもない。
この攻撃に当たったバットが地面へと落ちていった。羽がうまく動かせないのか、再び羽ばたくことが出来ずにそのまま地面へと落ちていく。
ひとまず手前のスパイクには落ちなかったものの、奥のスパイクエリアに落ちていってから再び飛び立つ様子はない。羽をやってしまったのであれば勿論なのだろうが、それとは別の要因も関係して飛ぶのは至難のはずだ。
同じように、この攻撃に当たったバットが吹っ飛んで壁へと激突した。本来であればそのまま落ちるのであろうが、その様子は無く、壁にべったり張り付いていた。藻掻いているようなのでまだ生きてはいるらしい。
「粘性を高めたこれは厄介だろうな。うまくいけば重量級のモンスターですら動きを止められるかも……。今度はゴーレムにでも使ってみるかね?」
殺傷性は低いが厄介な攻撃ではあるはずだ。動けないというのはそれだけで脅威なのだから。
現に、動きを止めたそのバットにゴーレムのメイスから放たれた攻撃が撃ちこまれた。翼を根元からやったのかピクリともしなくない。それとダメージも致死量だったらしく、壁に張り付いた時にはうるさかった鳴き声も今は止まっていた。
もとからそれほど広い通路ではない。高さはそれなりだが、こちらも足元を上げて高さはカバーしている。上空にはバット達が逃れるスペースは存在していなかった。狭い通路は相手にとっても厄介この上ない条件というわけだ。
この攻撃から逃れるためには地上へ行くしかないが、こちらはこちらで酷い有様だった。
太いスパイク群から抜け出したラット達だったが、その先は細かくスパイクが張り巡らされており、近づくのであればそこを通る以外に道はなかった。
しかし、体に傷を作ることもいとわない勢いでラット達はそこに足を踏み出してきた。モンスターとしてはそれ以外の行動を取りようがないのだから仕方ない事ではあるが。属性持ちのラット達は、奥のスパイク群からでも手出しが可能とあってまだ踏み込んできてはいない。しかし、たった4体の遠距離攻撃では何とも頼りないものでしかなかった。
そんなラット達に無数の鉄の弾が飛んできた。手前に居たラット達に回避の術は無く、その身を弾が貫いていった。足(移動力)さえ奪えばこんなものだろう。
前衛のラットを屠った攻撃は属性持ちのラットを襲う。
しかし、近くにあるスパイクが盾となってその攻撃から身を守ることが出来ていた。攻撃出来ない事を除けば問題はないだろう。
そうなると、今度は見えている岩鎧蟻に攻撃の矛先が向いた。スパイク自体は岩の鎧で何とかなっているようだが、スパイクの先端が鎧に引っかかっている所為かうまく移動出来ないでいるらしい。
スパイクの上で必死にもがいている石鎧蟻達も動きが止まっているようなものだ。そんな石鎧蟻の装甲を砕く勢いで、鉄の弾が次々と放たれ続けた。
何度も鉄の弾を撃ち込まれ続けた結果、流石の石の装甲もボロボロとなっていた。
そしてそれは頭部にある装甲も同じこと。むしろ前面にある分、体の装甲より酷いとさえ言える。何体かは、頭部そのものが吹っ飛んで無くなっている個体も居る有様だった。
属性持ちのラット達が顔を出して攻撃をすれば、倍以上の鉄の弾が飛んでくる始末。自分達の後方では石鎧蟻達が着実にその数を減らしていく。先に進むも地獄……後方の仲間は既に死に体で期待できない。
属性持ちのラット達が喋れたのなら愚痴の一つでも言っているだろう。
「地上もほぼ終わりみたいだしさっさと終わらせて休憩所に行くか。それとこいつ等を食べるのはやめとこう……ロックスネークでも焼くかな」
モンスターの残りも後わずかと止めに移る。元から戦力差的に心配はしていなかったし、予定通りと内心で頷く。
倒したモンスターはゴーレム達に運ばせて休憩所でゆっくり解体でもしようかと、勝ちも見えた戦闘後の事を考え始めた。




