33話 ついにやってきたダンジョン街!
やっと行きたかったところに来れました…。自分で書いててなんですが、ここまで来るの遅っ! って思いますね。やっと別世界のメイン行けますよ…
保険会社を出た将一は車を走らせナビが指示した方向へと向かう。
途中から明らかに建物が少なくなってきており、街から離れるにつれ田んぼや畑を横切ることが多くなった。
「だいぶ街の郊外まで来たか。曲りが少ない道は走りやすくていいな。見晴らしもいいしドライブするにはこういうところがいいよなぁ」
街から離れお店などもだいぶ少なくなってきたが、田畑ばかりの道は走っていて気持ちがよくやっと気になっていたダンジョン街にも行けるとあってか気分良く運転が出来た。
「それに魔石車もほんとうるさくなくてずいぶん快適だしこれはガソリンで走る車には戻りたくないなぁ…。世界的にも排気ガス削減になってるだろうし、元居た世界より環境にもやさしいよな。まぁ…その環境を汚す人間が人口的にだいぶ減ったことがよかったとは言えんのだけども……」
人類の総人口が減り、更に魔石の利用で明らかに大気汚染等も減ったことは世界としてみれば綺麗になったと喜べるかもしれない。しかし人類としてはそれが良いとは何とも言い難かった。
世界的に自然は増えはしたがそれが原因で野生生物が大繁殖されても人間側は困るわけだ。獣害は農家の人達にとって害以外の何物でもない。
「そういや探索者の中には猟師として生きてる人もいそうだよなぁ…武器の所持が簡単になったはいいが、それで問題が増えるとかも新聞には載ってたっけ? 一概にいいこととは言えないからなぁ、武器の所持が広まっても。
まぁ、武器の所持も探索者限定だし、問題を起こしたら最悪探索者やめさせられることになるらしいからまだそんなに目立ってないって話だそうだけども……」
のんびり運転をしながらコンビニで買った新聞に載っていたニュースを思い出した。
ナビにテレビがまだついていないので、そういったニュースは新聞でしかまだ知る術がない将一。
どこかで部屋を借りたらテレビでニュースをしっかり聞くこともしなければなぁと思う。本当にこの世界の事はまだまだ知らなさすぎるのだ
「とりあえずダンジョン街に着いたらダンジョン管理部だっけ。そこへ行って探索者の事をしっかり聞いてこないとだなぁ。聞くことが多すぎるから数日はそこに通うことになりそうだし、最低限だけ聞いて住居探しもやんなきゃいかんからな。
最悪はホテルの1室を借りることになりそうだけど流石に毎日っていうわけには…。昨日みたいな醜態をさらす気ないけど自宅の方が寛げて落ちつけるし家具だって揃えたいし…。
山の自宅に戻ることはいつでも出来るけど上田さんから電話来るかもしれないって考えるとこっちに暫く居たほうがいいんだよなぁ……」
やはり街中でも気兼ねなく休める自宅は必要だろう。それに探索者として登録をしたら管理部の方からも何か連絡が来るかもしれないと考えると山の電波は何とかして通しておくべきとも思う。
これは市に頼めばいつかはしてくれるんだろうか? 復興がまだ中途半端な段階で山方面に果たして尽力を割いてくれるのかどうか…こればかりは将一にはどうしようもなさそうに思えた。
「とりあえず山の環境はもうしばらく先だな。まずはこっちで生活の拠点づくりに勤しむべきか。最悪山に何時でも行けるってのが自分の利点なんだし。
最初は遠くに見えていた光もだいぶ近づいてきたしもうしばらく走ればダンジョン街の外側には着くだろ。
とりあえずうろついてダンジョン管理部を探さないとな。ダンジョン街の分かりやすい地図とかどっかにあるかな?」
だんだんと確実に近づいている光の柱にダンジョン街の到達ももう間近と感じ取った。
遠くから見ていても異様だったのに真下から見上げる光の柱はどのように見えるのかと期待しつつ車を走らせる。
一応法定速度内ではあるが、自然とアクセルを踏む足に力が入ってしまう事になかなか気が付かなかった。
「へー、ここがダンジョン街かぁ…明らかにさっきまでいた街とは違う雰囲気だな。
お? あれが能力者って人か? おおー! 土砂が何もないのに動いてってるわ…あれは土系の能力者だろうか?
外側が寂しいと思ってたけど拡張工事もまだまだって感じなんだなぁ…。ということはここは一度更地になっちまった場所なのか? 今なおダンジョン街を広げていってるって感じかねぇ。これからここら辺もどんどん新しい建物ができていくんだろうなぁ…楽しみだ!」
ダンジョン街の外延部まで来た将一はゆっくりと車を走らせつつ工事をしている場所を眺める。
そこには重機ももちろんいるが、土砂がまるで見えないブルドーザーに押されているかのような光景を見ることができた。
ブルドーザーでは左右にどんどん土砂が流れていくが、今見ている土砂は零れ落ちることもなく一塊となって進行方向の土砂をも巻き込みながら遠くへと運ばれていった。
次第に視界から外れ、車の窓から見えなくなるまでその光景を感慨深く観察していた。
そして土砂が見えなくなったと思ったら空いたところに今度はコンクリートが浮かんだ状態で運ばれてきた。
「おー! 浮いてるってことは重力系か風系か? もしくはサイコキネシスとかいう手で触れずに物を動かすっていう能力者か。いろんな能力者が工事に関わってるんだなぁ…。あっちの街では見なかったけどわからなかっただけでいろんな能力者いたのかもなぁ。
そういや病院には回復魔法の能力者いるんだっけ。自分も泥酔状態の時にはお世話になったしちゃんとした人達も見てみたかったなぁ…」
視界の端にとらえながら動いていくコンクリートの塊を見送る。今から向かう中央ではどんな様子を見ることができるのか今からわくわくしてきた。
「とりあえず早くダンジョン管理部に行ってみないとな。
お? 丁度歩道を歩いてる人いるしちょっと道聞いてみるか」
そう思うとその歩いている人を追い抜き、少し先の路肩で止まると車から降りて歩道を歩いていた人にすいませーん! と挨拶をし道を尋ねてみた。
「ありがとうございました。助かりました」
「いやいや、これぐらいならどうってことないですよ。初めてダンジョン街に来たってなら仕方ないですよ。ここは結構活気がありますからね。
少しづつ街も広がっていってますし最新の地図を買っておいた方がいいですよ」
「わかりました。それでは私はこれで。お時間取らせてすみません」
「そう気になさらずとも大丈夫ですよ。ゆっくり戻っているだけでしたから。
それに新しい住人は歓迎です、ようこそダンジョン街へ。いつまでいるのかはわかりませんが、ゆっくりしてってください」
「探索者にどうやってなればいいかもわからない素人ですがね。こちらこそ今後よろしくお願いします。町でお見かけしたら何かお礼でも…」
「そういう事なら飲み物でも1杯おごってもらえれば十分です。まずはここに慣れることを頑張ってください。
先ほども言いましたが、ダンジョン管理部まではそれほどかからないと思いますからすぐにでも探索者登録はできると思いますよ。まぁ、中が混んでなければですけどね」
「わかりました。それではこれで。お世話になりました」
将一はそう言って軽く頭を下げると運転席へ戻っていった。道に戻るとウィンカーをカチカチと鳴らしありがとうを伝えるとスピードを上げる。
ミラーでその人が再び歩き出すのを確認すると視線を前に戻した。いろいろ聞けて助かったと思いつつ教えてもらった道を進む。
管理部はダンジョンの傍、あの光を目指して進めば目立つ建物があるからすぐにわかると教えられた。
「裏手に大きな駐車場があるから車はそこに置いとけばいいってことだったし、これなら行くのも楽かな。やっぱ人に聞くのが一番だわ。
後で地図は買わなきゃならんけどダンジョン街の広さって今どのくらいなんだろうな? あの人は少しずつ広くなってるって言ってたけど地図の更新は結構頻繁にしなきゃならんのかね?
まぁ、何はともあれ管理部の場所までさっさと行っちゃいますか。あ、管理部でどれぐらい時間かかるかわからんし軽くなんか食べてから行こうかな。なんか美味しそうなもの売ってるかぁ?」
まずは昼ごはんの確保と、ダンジョン街ならではと言う感じの物に期待をしつつ車を走らせる。変わった食事も人生楽しみの1つだ。
「おー、街中に入ったら一気に探索者! って感じの人増えたな。
ダンジョンからの帰りなのか? 防具付けてる人も普通に見るようになったなぁ…」
目の前の歩道にはプロテクターを着けた状態で武器ケースを肩に担いでいる人や、新しく武器を買ったのかうれしそうな顔でケースを抱えてる人が見える。やはりダンジョン街ではこういった姿は日常茶飯事なようだ。
そんな探索者と思われる人たちを横目に将一は適当な飲食店へと車を進ませる。ドライブスルーと書いてあったので手っ取り早くここにしてみた。
腰を落ち着けての食事はまた今度ゆっくりしようと決め、今は我慢するとしよう。
「さーて…ダンジョン街の店はどんなメニューがあるんだ?」
車からメニューが書いてある看板に目を凝らしてみる。後続がいないのでゆっくり見れた。
「へー…モンスターの名前なのかな? そいつの肉を使った料理が結構あるな…。どうせならそういうの食べてみたいよな」
どうやらこの店はハンバーガー屋だったらしい。
元居た世界で聞いたことのない名前の店だったので何の料理の店なのかすらわからないのは困りどころだが、こういう店の発掘も悪くないと気持ちを切り替える。ハンバーガーも嫌いではないしな。
「んー…よし。とりあえず無難そうなのいってみるか」
メニューを決めたのか止めていた車を進ませマイクがあるところまでやって来る。スピーカーの向こうから店員さんのいらっしゃいませー! という声が聞こえてくると先ほど決めたメニューの名前を口にした。
「すいません、ホーンラビットのカツバーガーをキャベツ多めでお願いします!」
「ご注文繰り返させていただきます。ホーンラビットのカツバーガーをキャベツ多め、以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
「それではお車の方を前までどうぞ―!」
無事に注文をし終えるとマイクの所から進み受け渡し窓口の前まで来た。そこから店内が見えるがどこにでもありそうな店に見える。
「ダンジョン街とは言え店内はいたって普通だな。メニューは気になるのが多かったけども。まぁ、奇抜である必要はないし食べる空間は特に変わらんよな」
中にモンスターの剥製でもないかなぁと期待していたが、この店にないだけであるところにはあるかもしれないと思いお店巡りもいつかしようと心に決めた将一だった。
「お待たせしました! こちらご注文のホーンラビットのカツバーガーキャベツ多めになります」
「あ、どうもです」
「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」
「はい、それで大丈夫です」
「それではお会計の方が450円になります」
「はい、じゃあこれで」
「では500円お預かりします。……はい、こちらお釣りになります」
「はい、確かに」
「ありがとうございましたー! またのお越しをお待ちしております!」
「どうもー」
お釣りを受け取った将一は窓を閉めると車を道路まで進ませる。そしてやってくる車に注意して道路へと出た。
窓を閉めるとやはり車の中にハンバーガーの匂いが漂ってくる。新車に臭いをつけるのもあれかと、再び窓を開け換気をする。(朝の事はもう頭から抜けたようだ)
「管理部までそう時間かからないって聞いたし、ハンバーガーはそこについてから食べるかな。あ…飲み物ぐらい一緒に頼んどけばよかった…。仕方ないから召喚でなんか呼び出そ…」
ホーンラビットの味は大変気になるしハンバーガのいい匂いがますます食欲を刺激する。早く管理部の駐車場につかないかなぁ…と、ハンドルを握る手とアクセルを踏む足に自然と力が入った。
安全運転は心掛けてるが車のスピードが若干上がるのも仕方がない。今頭の中はもうダンジョン産の食材の事でいっぱいだった。




