表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
332/771

331話 お宅訪問 浅田家 挨拶




 「それでは今日はこれで失礼します。

 明人さん、そのうちご連絡しますね」

 「おうっ。忙しくなけりゃあ今度も2,3日の内には出来上がると思うからそのつもりでいてくれ」

 車に乗りながらそう挨拶を交わす。打ち直しの注文も快く引き受けてもらえてよかったよかった!


 「武器と一緒に粉末にする魔石を持ってきてくれよ。打ち直しの手間賃は礼ってことにするからな」

 「すいません、ありがとうございます。そのうち持ってきますので」


 ここに持ってくればトラックに積んでこっちで運ぶという話になった。その時は運送サービスで運んでもらって来いと。自分で運転してこないようにってことは今度こそ飲みになるのだろうな…。

 その言葉に苦笑をしながら頷いておいた。やはり食事をするのなら酒も飲もうということか。


 「しばらくは2層の攻略とかがあるので来れませんけど時間が出来たら来させていただきますね」

 「おう、気を付けて潜って来てくれよ。くれぐれも『無茶』はすんじゃねぇぞ?」


 その言葉は自分への安否なのか、それとも不十分な武器を酷使するなという意味なのか…。おそらく両方だろうと思い、頷いて返事を返す。


 車を出すと道路に向かう。最後に、玄関で見送りをしている香苗さんと苗さんへ挨拶をすると田々良家を後にした。後ろの方から、望みに連絡しておくッスー! という声が聞こえてきた。返事にハザードランプをチカチカさせたけど意図には気づいただろうか?

 しかし、思いがけない出会いではあったが製作者の人と会えたのはラッキーだった。これでゴーレムが更に使いやすくなると言うものだろう。


 「次は浅田さんの家か。ゴーレムの武器についてなんだかんだ話をしてたら予定してた時刻より遅くなっちまったな…。あまり遅くならないようには気を付けてたんだけどね。

 浅田さんの所ではなるべく遅くまでお邪魔しないようにしないと…」


 そう思いながら、最後の1軒に向かって車を走らせる。明日にはまたダンジョンだ。早く帰るに越したことはないだろう。

 最後のお宅という事もあり、遅くまで引き留められる確率は一番大きい。しっかり断る所は断らんとだな。


 日が傾いてきた夕方の道路を進みながら再確認を行う。

 既に依頼も引き受けているのだし、万が一にもすっぽかすなんて言うのは洒落にならんと。最悪は依頼を盾にしてでも断るべきか。


 「依頼の失敗は避けないとだしな。まぁ、物を受け取る時間が最悪遅れても設置さえできれば問題ないっちゃないんだろうけどさ…。

 転送場所次第では数時間の差とかも普通にあり得そうなんだよね」


 だからこそなるべく早めにという話なのだろう。早起き出来たのならそれはそれで行っちゃってもいいよな?

 遅れるよりはいいはずと思うと、今日はなるべく早めに寝ることを決めた。その為にも引き留められた場合はしっかり断ろうと意志を強く持つ。目指せ、NOと言える日本人!

 そんな明日の事も考えつつ、今日最後のお宅へと車を走らせて行った。





 「そのまま車庫に入れてください」

 「了解」


 目的地でもある浅田家の前に着くと、そこには田々良さんと同じように玄関前で待っている浅田さんが見えた。連絡をしてこちらも待っててくれたという事だろう。

 指示に従い車を車庫へと駐車させる。田々良さんの所ほどではないが、こちらにもトラックが止まっていた。今度はなにをやってる人かね?

 車を降りると玄関前に向かった。

 

 「結構遅くなって申し訳ないね」

 「ははは…。父がずっとそわそわしっぱなしだったのでこれで収まります」

 そう言って苦笑いを見せる浅田さん。うん…なんかずっと待たせて申し訳ない…。


 「とにかく上がってください。父も母もお待ちしてましたので」

 「そうしようか」

 浅田さんが扉を開けて手招きをするのを合図に足を進める。開幕待たせて申し訳ないと謝るかぁ…。


 「お邪魔します。遅くなって申し訳ありません、石田将一と言います」

 「ようこそ、石田さん。望の父で幸作(こうさく)と言います。娘から遅くなるかもとは聞いていたのでぜんぜん構いませんよ」

 「望の母の(さち)です。お暑い中いらしていただいてありがとうございます」


 ご両親が頭を下げて出迎えてくれた。遅れたことについては気にしていないようでありがたいな。

 早速上がってくださいと言われ、リビングへと案内をされた。この次はあれか。

 

 「こちらが私達からのお気持ちになります。森田さんと田々良さんの所でも言われたと思われますが…」

 「はい、ありがたくお受け取りいたします。急に来ることになったというのに申し訳ありません」

 やはり前の2家と同じ謝礼だ。さっさと受け取って気を楽にしてもらう。


 「お外は暑かったでしょう? こちらお茶をどうぞ」

 そう言って幸さんが冷えたお茶を持ってきてくれた。

 

 「ありがとうございます。頂きます」


 そう断わってから一口頂く。日が落ちてきてもまだまだ暑いからねぇ…。

 こちらお茶を飲んで一息ついた頃、目の前の幸作さんが静かに頭を下げてきた。


 「今回は娘の事、本当にありがとうございました。まったく何と言っていいやら…」

 頭を下げ続ける幸作さん。幸さんも席に着くと頭を下げてきた。


 「森田さんと田々良さんの所でも言ったのですけど、私は探索者としての助け合いをしただけですから。探索者としての暗黙のルールみたいなものですので」

 「とは言え石田さんが通りかからなければどうなっていたことか…。

 娘から聞きましたが、地底湖付近で助けていただいたとか? 探索者としてはあまり近づきたくない場所と伺っております。

 助けられる可能性は低かったと聞いて寿命が縮む思いでした…。まさしく命の恩人と言わざるをえません」

 「ああ…確かに地底湖は探索者に人気がありませんよね。まぁ、必要に迫られてやむを得ない状況だったでしょうから。動くに動けなかったようですし…」

 「そんな助かる可能性のない所を助けていただいて本当に感謝の言葉がつきません。ありがとうございます…」

 救出される可能性は低かった…。それだけに、今こうして助けられた気持ちが親としては尽きないのだろう。頭をまったく上げようとすらしない。望さん愛されてるね。

 

 (ん?)

 そんな頭を上げない2人から視線をはずし、チラリと廊下に目を向ける。そこには、チラチラとリビング内の様子を伺う姿が見えていた。


 「あちらは望さんの妹さんですか?」

 そう口にすると、幸作さんと幸さんは自分が見ている先に視線を向けた


 「え? ああ、はい。下の妹の叶恵(かなえ)です。叶恵、挨拶しなさい」

 「はい…」

 廊下から1人の女の子が入ってきた。まだ小学生かな?


 「今年で中学生になったんですけど引っ込み思案な性格でしてね」

 「そうなんですか」

 どうやら中学生らしかった。チラチラ見てたのは性格故か。


 「あの…叶恵…です」

 「石田と言います。お姉さんと同じ探索者をしてます」

 「はっきり挨拶できなくてすいません、石田さん…」

 幸さんが叶恵ちゃんの頭をポンポンと叩きながらそう謝ってきた。

 

 「いえ。人見知りな性格なんですよね? 私も子供の時はそんな感じでしたから…」

 叶恵ちゃんほどではないが、自分もお客さんが来た時は会釈だけして関わらなかった記憶を思い出す。両親がお客さんの相手をしてるなら基本任せるよな。


 「石田さんもそんな感じだったんですか? 妹はとにかく人見知りが激しいので…」

 台所から出てきた望さんはそう言いつつ妹を小突いていた。


 「まぁ、中学で友達を作って家に遊びに行ってたりしたらその内に変わったんだけどね」

 「私も唯や苗とは中学で一緒になってそこからの付き合いをしていましたからなんとなくわかります。ただ妹は…人見知り故といいますか…」

 友達がまだいない…。表情からそんな感じかなぁ…と推測した。

 

 「まぁ、そこは学校で他人と接するしかないですかね…。唯さんや苗さんは妹さんの事も知っているんですか?」

 「はい。まぁ…会ったのは両手で数えられる程度ですが」

 「弟や妹って兄や姉の影響を受けやすいって聞きますし、唯さん達で慣れてもらうとかどうです? 少し年が離れてるとあんまりかもしれませんけど」

 「そもそも家の外にあまり出たがらないので何とも…といった感じです。学校から帰ってきたらすぐ部屋に引き籠るので」

 はぁ…と溜息を吐きつつ、望さんは叶恵ちゃんの頭をなで始めた。お姉さんは大丈夫なんだな。


 「あの…」

 「ん? どうかしました?」

 視線を叶恵ちゃんに向ける。家族の3人は、なんとも珍しいもの見たかのような目を叶恵ちゃんへと向けていた。

 そして急に腰を曲げると、小さくだが喋り始めた。


 「お姉ちゃん…無事に連れてきてくれて……ありがとう…です」

 「…どういたしまして」

 それだけを口にすると、叶恵ちゃんはまた廊下へと消えていった。続いて階段を駆け上がる音が聞こえて来る。それを言いたくてリビングに顔を出したんだな。


 「しっかり挨拶もしてもらいましたね」

 「…いつもはお客さんが来ても部屋に閉じこもってるだけだったんですけどね。はぁ…」

 そう言って重そうな溜息を吐く望さん。心配かけてるなぁ…といった感じだろうか?


 「あの子がしっかりお礼を言う所なんてめったにないのですけど…」

 「そうなんですか? ですがああしてご家族全員から感謝の言葉も貰いましたしもう十分ですよ。これ以上は私の方が恐縮してしまいますので」

 「本当に言葉もありません…。ささやかですが夕食をご用意しておりますので是非食べていってください」

 「私は叶恵を連れてくるよ。ちょっと時間がかかるかもだけど…」

 「ちゃんとお姉ちゃんしてきなさいね」


 どこか気まずそうに頷く望さん。

 普段は部屋から出てこないはずが、今回はお礼を言う為にわざわざ降りてきたわけだ。自分に関係してる事ならともかく姉の事でお礼を言いに来た。それだけ感謝してるという事だろう。

 夕食の間までにいろいろ語らいをして来ればいいんじゃないかな。


 「そう言えば車庫にトラックが入ってましたが…幸作さんのお仕事は運搬関係か何かで?」

 「うん? 運搬と関係がないとは言いませんが、運送というわけじゃないですね。仕事は建築をしているのでそれの資材を運ぶトラックですよ」

 「へー、建築ですかぁ」


 そう言って話を別の事へと切り替えさせる。結構気真面目そうな人だし、あのままだと夕食が出るまでずっと謝ってきそうだ。

 

 望さんは叶恵ちゃんの部屋に、幸さんは台所に向かった。

 とりあえず夕食の準備が整うまでは幸作さんと話して時間を潰そうと思い、仕事の話を聞くことにする。

 

 (建築なぁ…。無理な話だろうけど山の自宅へ続く道路を何とかしてもらえると非常に助かるんだよね…)


 ほとんど使う事はないのだが、適当な道しか作れていない事もあって結構な気がかりではあるのだ。

 人の手があまり入ってない事もあり、舗装されてい公道もひび割れてたりと急務ではないが、いつかは整備はしてほしいなぁと感じていた…。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ