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323話 ダンジョン2層(ソロ) 一息入れよう




 「ふぅ…落ち着いた…」

 荷物から取り出した携帯トイレを使用し、とりあえずは落ち着いた。トイレがぶっ壊れたのは想定外だ…。


 「携帯トイレなんて使ったのいったい何時ぶりだろうな? 覚えてる限りじゃ子供の時以来だわ」

 ずいぶん昔、親に連れて行ってもらったディズ〇ーランドでトイレの行列がすごかった時をなんか思い出してしまった。長距離移動の道具セットに1個だけあったんだよなぁ…。


 「開園前の駐車場で待機してたっけか? あの時ほどもっとトイレを作っといてくれって思ったことはなかったな。懐かしいねぇ…。

 って、そんなことは置いといてだ。…アレぶっ壊しちまったのはまずいよなぁ?」

 吹っ飛んで行った大斧がぶつかり、見事に四散しましたといった仮設トイレに視線を戻す。タンクが引き出されており、使用前というのが不幸中の幸いといったところか…。

 

 「ここがぶっ壊れたってのしっかり報告しとかないとダメだろうなぁ。2層の攻略が始まったら利用されることになるかもだし…。

 何とも間の悪いタイミングで休憩できる所が1つ減っちまったわ」


 意図してやった事ではない故に、今回の被害についてやっちまった感を覚えずにはいられなかった。大斧があんな風に吹っ飛んで行くなんて思わなかったからな…。

 リキッドに渡した武器の効果を思い出す。

 1つは体感重量を感じさせない事、2つ目はの武器の大きさが変化する事、そして3つ目…ぶつかった時に衝撃を発生させる事。最後の効果の威力がすさまじいという事を今回目の当たりにしてしまったな。


 「完全に切断出来たとかなら大丈夫らしいけど…あれ、体の途中とかで止まったらやばいことになるんじゃね?」

 体の内側であの力が発揮された所を想像してしまった。悲惨なことになりそうだなぁ…。

 

 「素材として使えなくなりそうだし、使い所を誤ったらスプラッタな事になりそうだわ。もっと細かく指示出さないとダメかも。威力は抜群な武器っぽいんだけどねぇ…」


 とりあえず戦闘も終わり、後続のモンスターが居ないという事も探知でわかったのでこれで一安心だ。

 ゴーレム達に大斧の回収を指示する。自分は毎度のごとく通路の両側に壁作りだ。それが終われば寝床の整備をし、疲れた事もあって風呂の準備と…もう少しだけやるべきことがあった。

 それと戦闘後の後片付けもやらなければならない。トイレはともかくとして、ミノタウロスの所もあのままにしておけない。今日はここで休むんだからな。


 「体の方は空間魔法に仕舞っておくとして…血とか細かい肉片はスライムに任せるか。こっちから手を出さなければスライムは襲ってこないって話だし。

 一応念の為、あの付近には近づかないようにして寝床を作るか。寝る前にスライムが片付けに湧いてくれるとありがたいんだけどねぇ…」


 休憩をする場所でスライムを見るというのも初めての体験になると、ちょっとだけどうなるのか興味を覚えつつ、休息の準備に取り掛かった。

 湧いた時に防壁や寝床までは吸収しないでくれると助かるのだけどね…。

 




 「うおっ、マジで硬いな…。ほんとにこんなの食えるのか?」

 

休息の準備を終わらせて、やっと鎧なども脱いで身軽になると夕飯の準備に取り掛かった。その際に、気になっていたミノタウロスの肉と言う物に興味を惹かれ、片付けと同時に軽く解体を始めていた。

 腕、胸、腹、背、太もも、首と、どの部分にナイフを突き入れても全然刺さらないのだ。まるで超硬いゴムを切ろうとしているような手ごたえだ。まぁ、適当な例えでしかないのだが…。


 「廃棄されたタイヤをカッターで切ろうとしてた時に似てるな…全然刃が通らねぇわ。っと! やっと切れてきやがったか」

 肉の上を何度かナイフを滑らせることでやっと皮膚が切れて肉に刃が入り始めた。こちらも切りにくいことに変わりはないみたいだけども…。


 「天然の防刃防弾ベストだな。ゴーレムがやったように力いっぱい攻撃するのが一番なのかねぇ? 笹田さんとか米田さんの使ってる能力があれば楽なんだろうけど…。

 自分の場合は水圧カッターで切った方がいいか? それと鉄杭とか…もしかしたら弾かれてたんじゃないのか?」

 大斧で防がれていた所為で良くわからないが、これだけ硬いとなるとそれもあり得そうに思った。効果を出すのなら撃ち出す威力をもっと上げるとかしなければいけないのかもしれないな。


 「とりあえず試しで食べるからちょっとだけでいいか。っていうか…絶対噛み切れない予想しか出来んぞこれ? 要はゴムを噛むようなもんだろ?」

 歯がやられる前に諦めた方がいいのかもしれないと、そう思わせる硬さしか肉からは伝わってこないのだ。


 「ほぼ、っていうか…筋肉しかない感じなんだよな。そりゃジャーキーにするとかしかならんて。

 焼けば変わったり…なんて事あるんだろうかね?」


 もしそうならばあの時に倉田さんが教えてくれてるだろう。だがそんな話はなかったと、既に諦めを感じながらも少しだけ肉を切り取った。

 部位で変わったりなんて事もしないんだろうなぁ…。


 ミノタウロスを仕舞うと、作り出した金網の上に切り取った肉を置いて火にかける。一応塩胡椒、ニンニクなんかの調味料を振りはしたけど焼肉と同じようにはいかんのだろうな…。

 肉の焼ける匂いが鼻へと届く。これだけならばまだ普通だった。脂身がほぼ無い所為か、肉汁が火へと落ちるといったことも少ない。焼肉してるって感は薄いなぁ…。ゴムが焼けるような臭いでないだけマシだが。

 肉自体が薄く切られたという事もあって、焼くのはすぐ終わった。見た目は赤身の焼肉だな…。


 「よし…」

 意を決して口へと運ぶ。

 これはロース…これはロース…と、そう思い込みながら歯で噛んだ。


 「あ、無理だこれ」

 だがそんな思いもむなしく、たった一噛みで諦める事となった。

 

 「うん…歯もそうだけど顎もやられそうだわ。とてもじゃないけど食いたいとは思わないわな、これじゃ…」

 流石にこれは食えないと思い、血だまりの中へ一緒に入れておく。スライムに消化してもらおう。


 「ミンチ…ミキサーが逝かれないか逆に心配になるな…。なんかで漬け込むか? でもそれで使えてるんなら食堂にメニューとして出てそうなんだよなぁ…。

 やっぱ長時間煮込むしかないか? あのスジ煮は美味かったからなぁ。食えないってわけではないんだろうけど…」

 ミノタウロスの相手をする事を考えると確かに釣り合わないものになりそうだ。

 そう考えるといったいあのスジ煮1杯いくらだったんだろうか? 縞牛のスジ煮でも十分代用そうよな…。


 「料理に使えない事は無いんだろうけど、手に入れる手間を考えるとなんだかなぁ…って感じだわ。骨の方は良い出汁が出そうだけどどっちにしても長時間必要な事には変わらないか。

 とりあえず普通に夕飯食べるかね」

 ミノタウロスの事はいったん置いておくとして、空間魔法から以前作ったハンバーガーを取り出す。うん、未だに温かいね。


 「うん…これぐらいの挽肉になれば普通に使えるんだろうけどねぇ…。ゴムのような食感をみじん切りにしたところでそんな変わらんだろうな。

 やっぱり肉は脂身も無いとね。硬いだけじゃダメだわ」


 パンの間に挟まれているハンバーグを口にしながら先ほどの肉と比較する。正直比較するのも憚られる食感だったんだけどね。

 カップスープにお湯を注いで火傷に注意しつつ飲む。あっさりとしたオニオンのコンソメスープが口の中に広がった。口直しもこれで完了と…。


 「とりあえずスライムがいつ現れるかわからんしそれを待ってから寝たいなぁ…。ゴーレムに見張りをさせておけば大丈夫だろうけど消化をしてる現場ってのもちょっと興味あるし」

 風呂に入りながらでもゆっくり待つか? と、いつ湧くともわからないスライムが現れるのを期待していた。まだ実物は見たことないんだよねぇ…。





 「よし、こいつも問題なし…っと。衝撃は大きかったんだけどそこまでじゃなかったって事か?」

 

 夕飯から数時間後。風呂も既に入り終わり、その後はミノタウロスに吹き飛ばされたゴーレムのチェックをしていた。

 大斧もそうだが、まさか吹っ飛ばされるとは思わなかったと言えばこいつ等もそうだった。


 「流石は怪力の効果を発揮するミノタウロスの大斧だよなぁ。膝つきの状態だったって言うのに通常サイズのゴーレムを吹っ飛ばすとは…。万全の状態だと相手にならないんじゃないのか?」


 防御態勢をとっていなかったというのも関係しているかもしれないが、向こうとて手負いの状態であれだけ吹っ飛ばしたのだ。身構えていようと数mの後退は覚悟せざるを得ないだろう。

 パワー系とはなるべく距離を置いて戦う方がいいと思わされた1戦だったね。


 「盾有りでこれだもんなぁ。防御に自信があるとはいえ、ゴーレム自身が食らってたら危なったかも。無難に壁で遮った状態から高威力の遠距離攻撃を食らわすのが一番かな? 

 まぁ、もう少し天井の高さがあったら大型ゴーレムを出すでいいんだろうけどねぇ…お?」

 ゴーレムを丁度仕舞い終えた所、ミノタウロスのいた場所に見たことのない奴が湧いてきた。水が楕円を模った様な姿をしている。あれがスライムだろう。


 「なるほど…写真で見た通りの形だな。全部同じ形ってことか。大きさはバラつきがあるっぽいけど」

 スライムは地面を移動してミノタウロスの出した血液なんかを自身の体の中へと取り込んでいく。ポヨンポヨン跳びながらの移動じゃなくて地面を這いずるのな。


 大体を取り込み終わったのか、次に別の場所へ行こうと移動を開始した。こちらには自分が要るからか来る様子はないが…。

 向かったのはこの場所の両通路の2カ所だ。壁を取り込むつもりなんだろうか?

 しかしそちらには最初からゴーレムを配置していた。武器を構えてこちらに来るなと威嚇をするよう指示を出している。


 「ちゃんとわかるんだな…。いや、ダンジョンが他に行けと命令を出してたりすんのかね?」


 壁へと近づいてくるスライムにゴーレムが武器を構えると、少しして興味を失くしたようにまた移動を開始した。仮説トイレは他のスライムがいつの間にか吸収していたようだ。壊れてたらしっかり吸収対象なんだな。

 そうするとこの場所に吸収しなければいけない物は無くなった。この後どうすんだろうな?

 

 そんな事を考えながらスライムを見ていると、しばらくしてそこには最初からいなかったかのようにして消えていった。別の場所へと転送されたようにも見えた。


 「役目を終えたらそうやっていなくなるのか。まぁ、出てきた時が出てきた時だしな。

 よしっ! スライムの処理の仕方も見終わったし、こっちはさっさと休ませてもらうとするかね。なにかあれば大きな音を出して起こせ」


 壁を守っていたゴーレムにそう指示を出すと、寝床へと横になった。これで気にせず寝ることが出来る。

 明日は宝箱が見つかってくれるといいなぁ…と思いつつ、寝袋をかぶって目を瞑った。

 朝まで何もありませんように…。




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