320話 ダンジョン2層(ソロ) マジックアイテムを試す
「さてと…とりあえず次の場所に向かうとするかね?」
今居た通路でやることも終わり、次の宝箱を目指して先へ進むことにした。
ちなみに宝箱には盾のマジックアイテムを1枚づつ入れておくことにした。なんとなくダブりを意識してしまいそうなった。まぁ…こちらは誰にでも使えるし、いくらダブろうと困るものではないのだけども…。
「あ…そう言えば鑑定の虫眼鏡の効果を試すの忘れてたな…鑑定を自前でしてたからすっかり忘れてたわ。普段はこっちを使う癖付けとくか…」
そう思うと、先ほど手に入れた鑑定の虫眼鏡を空間魔法から取り出した。しかしこんなに豪華だと使うのが遠慮がちになってしまいそうだな…。
「まず何から調べてみようかね? 自分って見れるか?」
レンズ越しに自身の手を覗いてみる。しっかりと掌が拡大されており、通常の虫眼鏡としても使う事は出来そうだった。
「お? いけたいけたっ! 自分で使う分には鑑定の効果とかも有効って事なんだな…」
とりあえず何とはなしに調べた所為か、そこまで詳しい情報は頭へと入ってこなかった。名前、歳、現在の状態、その程度だ。
「まぁ、それだけだとしてもパッと鑑定出来るわけだな。詳しく調べたらどこまでわかるんだ?」
今度は意識して自分の事を調べてみようと、ジッと掌を覗いてみた。
『姓名:石田将一
年齢:20歳
血液型:A型
生年月日1988年 9月19日
身長/体重 170㎝/68㎏
状態:正常
能力:あlfばfsfなふぉ
装備品:厚手の服/ズボン 鉢金/鎖頭巾 金属鎧 金属製のガントレット 片手剣 大型ナイフ 頑丈な靴 リュック
etc~』
結構様々な自分の情報が出てきた。何やら一部おかしなことになっているが…。
「能力の所どうなってんだこれ? これじゃ意味不明だな…。まぁ、神様に貰った力~とか書かれてるよりはいいんだろうけどさ…。
もしかしてあの神様がなんか細工したのか? 確かにバレたら洒落になんないからな…」
試しに出身について詳しく調べてみようと、再び自身を鑑定してみた。
「あ…やっぱそうっぽいな。これまた意味不明な言葉? になってるわ。外部からわからないようになんか細工した感じだな。
でもこれだと逆に怪しさ満点じゃないか? 今まで他人に鑑定されなくて助かったな…」
ここにきて自分自身の体を詳しく鑑定したことで新たに発覚した事実を見つけた。どうやら自分の情報の一部は神様によって隠されてるらしいと。
「だとしたら念話なんかでもセーフティが掛かってたりしたんだろうか? 聞き取ろうとしたら失敗したとか。まぁ、試すのなんて危険すぎてやれんけどな…。
とにかく自分の鑑定についてはなんとなくわかったな。今は他も試すか。ゴーレムとかどうかね?」
ケースを取り出して…まずはこいつから調べてみることにした。
駒を1つ手に取ると鑑定の虫眼鏡をかざす。マジックアイテムの鑑定でも偽造した説明はしっかり出るだろうか?
『ゴーレム兵収納容器:ゴーレム兵を持ち運び出来る駒型のマジックアイテム。武装したゴーレムを1体収納出来る。
収納する時は駒の下側をゴーレムに押し当てる事で仕舞うことが出来る。出す時は出したい場所に駒の下側を向けて念じる事で出せる。
使用して2日経つと使用者(主)が決定される』
駒を調べるとそんな情報が頭の中へ入ってきた。
「うん、ちゃんとこの前設定した通りになってるな。
付け加えた最後の1文は時間が経ったら出るようにしてあるからここがミソなんだよね。これで使用後に買い取りをしても意味が無いようにはしてあるんだけど…どうなるかね?」
試しに複製した未使用の駒ケースを取り出して駒の1つを鑑定してみた。
うん…やっぱりまだ使ってないからこっちは最後の1文が伝わってこないな。皆結構引っかかったりするかね? 2度鑑定する事なんてまずしないだろうからな…。
とりあえず駒に関しては、付け足した細工がうまくいってることの確認ができた。引っかかる引っかからないは別として、まずはこのマジックアイテムが普及さえしてくれればそれでいいわけだし、このこともその内発覚するだろう。まだなら自分の持ってる駒を改めて鑑定してもらえばわかることだしね。
「さて、じゃあお次は中身の方だな。とりあえず普通のゴーレムからと…」
そう言うと大盾持ちのゴーレムを1体外に出す。そして鑑定の虫眼鏡を近づけてゴーレムを覗き込んだ。
『ステンレスゴーレム:素材にステンレスを使用して作られたゴーレム。ゴーレムの核と土の魔石1つずつを内包している。(胸部に核と魔石有り)
体長:2,1m
状態:異常なし
所持品:大盾 片手用のメイス
制作者:石田将一』
調べたらこんな感じだった。まぁ、モンスターではないし情報的にはこんなものか。
「モンスターだったらここに能力や攻撃方法とか他にもいろいろ出るんだろうね。
相手がゴーレムのモンスターだった場合は魔石や核の位置もわかるし、その分攻撃も楽になるわな。やっぱ鑑定が有ると戦闘も有利に運べそうだわ」
普通のゴーレムの鑑定結果にも満足したところで別のゴーレムを出す。液体金属製のリキッドだ。こちらの鑑定結果も気になる所だな…。
今度はリキッドに鑑定の虫眼鏡を向けて覗き込んでみた。
『リキッドメタルゴーレム(人型):素材に液体金属を使用して作られたゴーレム。ゴーレムの核1つと土の魔石2つを内包している(胸部に核と魔石有り)
1,5mから3mまで自由に形を変えられる。
体長:3m
状態:異常なし
所持品:大盾 片手用のメイス
制作者:石田将一』
鑑定の結果としてはこんなものだった。
「ゴーレムとして調べたらこんな感じなのね。使われてる素材の方を調べないと以前の説明は出てこないか…。まぁ、そっちを調べたら買い取りできないのはわかるし、問題はなさそうかな?
後、大棘ムカデ状態で調べたらまたこの説明もちょっと変わるんだろうね。所持品の項目が消えるぐらいか?」
鑑定の虫眼鏡で調べたところで特に問題となりそうな情報がなかったことに安堵した。これで他の人等に鑑定をされたとしても大丈夫だろう。
気になっていたリキッドの鑑定も終わったところで駒へと戻しケースを仕舞う。後はこれでモンスターを調べられれば使い道としては大丈夫なはずだ。
「実際のモンスターを鑑定ってのもマジックアイテムだとどうなるか気になるしな。手ごろそうなモンスターでも近くに居ればいいんだけどねぇ?」
そう思い探知を使ってモンスターが居ないかを調べ始めた。
すると、ここから少し歩くことになるがモンスターの反応を捉えることに成功した。何のモンスターまでかはわからないが。
「とりあえずこいつが一番近いしそこに行ってみるか。そこからまた別の宝箱がある通路に行けばいいだけだしな…」
予定していたルートからは少し外れるが、正直些細な問題だと気にせずモンスターの反応があった所へと向かって歩きだす。
出来ればマジックアイテムのテストがしやすいモンスターだといいなぁ…と思いながら。
しばらく歩くと、モンスターの反応がするすぐ傍までやって来た。探知でもこの通路の先に居るのが分かっている。
バレないように気を付けながら通路の先を確認してみた。
(お? ラッキー。あれゴーレムだな。ゴーレムなら動きも遅いしこっちのゴーレムで抑えてれば鑑定するのも楽そうだ。
魔石や核がどこにあるかっていうのも確かめられるしな。鑑定にはおあつらえ向きのモンスターって感じだわ)
視線の先には3体のゴーレムが微動だにせず、首だけを左右に動かして通路を監視していた。
とりあえずここからでも出来るのかと思い、鑑定の虫眼鏡で視線の先にいるゴーレムを覗いてみた。しかし…。
(情報が来ないな? やっぱ虫眼鏡だし近づかなきゃダメか…。望遠鏡じゃないもんなぁ…)
せめてもっと近づかなければどうしようもないかと思い、戦闘開始と気構える。
出来れば戦闘中でない方がやりやすかったのだけども…仕方ない……。
事前に後方で待機させておいたゴーレム達に突っ込むよう合図を出した。大盾のゴーレムを先頭に耐える作戦だ。鑑定が終わるまでの時間稼ぎをしてもらわんとな。
ゴーレムが突っ込んでいったことで向こうのゴーレム達も戦闘態勢に入ったらしい。こちらに向けて移動を開始し始めた。
「さて…どれぐらいの位置で鑑定が出来るんだ?」
大盾を構えたリキッドの肩に乗りつつ、鑑定の虫眼鏡をゴーレムへと向け続けた。最悪はかなり近づかんと無理かもしれんのよな…。
「おっ!? 来た来たっ!」
鑑定の虫眼鏡を向けていると唐突に頭の中へ情報が入り込んできた。
相手は見た目でなんとなくそうだと思っていたが、やはりというかアイアンゴーレムだ。モンスターの情報的にはこれと言って目新しいものはなかった。
「でも魔石と核の位置が分かったのはやっぱ便利だな!
ゴーレム! 右の奴は右肩ッ!真ん中のは頭部ッ! 左の奴は腹部を破壊だっ!」
それぞれ魔石が存在する場所を指摘し、攻撃するよう命令を下した。
魔石なら割れても買い取りが可能だしな。割れてないほうが買い取りの値も高いけどゴーレム相手ではこれが一番最適だろう。
こちらの攻撃指示を受けた大盾のゴーレムは待っていたとばかりに、守りの姿勢から攻めの姿勢へと行動を転じる。
防御に使っていた大盾を相手へ押し付けると、押し倒すまで押して押して押しまくった。
そうなればもはやこちらのものだ。大盾持ちのゴーレムは一度相手の向こう側まで移動すると、盾を構えて相手が起き上がるのを待つ。
モンスターのゴーレムはそのまま何ともないといった風で起き上がるが、その目の前には鉤爪装備のゴーレムが3体存在している。今回持たせたメイスを片手に構えながら…。これで前後を挟まれた形となった。
そして前後を挟まれたゴーレムは、そのままなすすべもなく指示された部位を破壊されて動きを止めた。
数でも力量でも負けてれば当然こうなるよな…と、指示通りの部位を壊したゴーレム達を見て満足そうに頷く。
用意したメイスが早速役に立ったという事もあって、この結果にも満足感を感じていた。




