表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
312/771

311話 ゴーレムの評価は高いらしいです




「そんなわけでな…。隣町でレンタカーを返して昨日ダンジョン街へと戻ってきたという感じだ」

 「なるほど…結構遠出しなくちゃなんですね。近場にはないんだなぁ…」


 一緒に酒を飲みながら、田上さん達が行ってきたという温泉の話を聞いた。県外まで足を延ばさなきゃ無いとはねぇ…。

 30年前にモンスターが地上に現れてさえいなければ、ここから一番近い廃墟と化した街に温泉があったらしい。以前田島さんが道路の復興作業を手伝った先の街とのこと。最寄りの温泉は復興待ちってわけね。


 「管理部のHPを見てみたら素材の分配を開始するとお知らせが出ていたのでな。予定を切り上げて帰ってきたわけだ」

 「ああ…やっぱり管理部のHPは見ておいた方が良さそうですね。1日前にはもう載ってたのか…」

 田上さんの言葉を聞き、やはりHPは確認するようにしようと改めて思う事にした。

 

 「ここ最近管理部からのお知らせは重要な事が多いからねぇ。石田さんもこまめに確認しておくといいよ。出がけ先の場合は携帯でチェックだね」

 「私達は旅館に置いてあったパソコンで見たんだけどね。時間がある時に確認するといいかな?」

 「気になる情報は要チェックやでー。まぁ、ウチ等の場合はマジックアイテムの買い取り目当てもあって頻繁にチェックしとるんやけどね?」

 「結局1層の攻略が終わった後でも売り出しは無いのよねぇ…」

 情報は事前にしっかり確認することと助言を貰った。確かにそれは大事だな。しかし飛行が出来るマジックアイテムはまだなんですね…。


 「しかしまぁ、良い骨休みにはなったな。一日中好きに温泉に入れるのは良い物だ…」

 「旅館の食事も美味しかったしねっ」

 「ダンジョン産の食材も使うとる言うとったし、原材料にも拘っとったんやろうな」

 「ここの食堂の味付けとは違ったけどああいう料理もいいよね。お刺身も美味しかったし」

 「ここ内陸だものねぇ…やっぱり新鮮なお刺身は県外に行かないと難しいかしいかしら?」

 「道路はそれなりに良くなってきてるから入ってこないという事はないがな。ただ獲れたての活きがいい魚というわけにはいかんが」

 「スーパーに置いてある魚も一度凍らせたやつでしょうからね。まぁ、寄生虫とかを考えるとそれが一番安全ではありますが…」

 「ダンジョンのお魚みたいにはいかないよねぇ…。森林鮭の生サーモンは大好きだけど種類が淡水魚だからね、こっちは」

 「地上の淡水魚のお刺身はちょっと怖いけど、ダンジョン産のは安心して食べられるからそこは利点なんだけどね」

 「海のエリアとか行けたらいろんな種類のお刺身が食べられるかもやな。

 30層以降とか流石にむっちゃ先やね…」

 「まず海のエリアとかどうすればいいって話なんだがな…泳げと?」

 「いや…流石にそれは…。転送陣の上で最初からボートに乗る…とか?」

 「それはそれでいろいろ無茶苦茶ね…」

 

 旅館の料理が美味しかったという話から、なぜか海のエリアの進み方に話が行ってしまった…。そもそもあるのだろうか? 海のエリアなんて?

 とりあえず、30層以降にあるかもしれないという海エリアを目指すよりは、先に地上の交通状況を改善した方が早いのではないかと思う。今最も先に進んでいる上位クラスの人達でさえ未だに巨大化エリアってことだしな。

 

 食材の安全性のみを考えるのであればダンジョン産のが1歩も2歩も先を行ってるように感じるが、それでも手に入らなければ意味はない。入手の難易度的には地上産の食材の方が群を抜いて上なのだし。

 この地域で新鮮な海の魚を手に入れるにはこのどちらかになるのだろうが、現実的に考えるのであればやはり地上産になるだろうな…と、未だ海エリアの話を続けている田上さん達を見ながら1人そう思っていた。





 「しかし呼ばれませんねぇ…もうじき夕飯の時間じゃないです?」


 あれからいろいろ話をしながら呼び出しを待っているのだが、田上さんへの連絡は来る気配がなかった。

 それに食堂としても夕飯時にずっとこれだと困るだろうね…。


 「護衛班だからな…結構評価しにくい部分があるわけだ。

 運搬班が無事地上に帰還したとして、それで護衛班がどれくらい働いてたかわかりづらいのが問題でな」

 「護衛班の一番の評価点は運搬班を無事に地上へと帰す。これに尽きるわけだが…これはあくまでも最低限求められるラインだな。

 ここから評価を上げるとなれば襲い来るモンスターを被害なく撃退し、遅滞なく運搬班を進ませることで評価がされる。その時運搬物に被害があれば勿論評価は微妙だ」

 「戦闘があるのは仕方ないけれど時間をかけ過ぎちゃダメな点が評価の対象ね。

 運搬班に無理なく運搬をしてもらってモンスターは短時間で倒す。護衛班としてはこれが評価項目かしら」

 「モンスターと戦闘が無い分早く着けて運搬物の状態はいいけど護衛班要る? って状況だと護衛班としては下の評価になるね」

 「評価を上げる為に戦闘が必要…だけどそこで時間がかかれば評価は逆に下がるかもしれない。ちょっと面倒な感じだね」

 「運搬班は最初から初心者探索者(ルーキー)が混じってる前提っちゅうことでそれなりの評価がされとるんや。素材の状態ではそこから更に上がるわけやね。結構討伐班と護衛班任せな分、最初からそれなりの評価点があるってことや。

 ウチ等は戦闘にそんな時間かけとったわけでもないはずやし、護衛班としてはそこそこやと思うんやけど…そろそろ連絡欲しいわなぁ…」


 田上さん達から、護衛班の評価がどのようにされるのかという事を教えてもらった。

 最低限の評価はあるが、そこから更に評価をされるには戦闘が必要だとは思わなかった。早く着ければいいだけだと思ってたな…。戦闘が無いのは良いことだというのは護衛班としてみると普通の評価にしかならないらしい。

 先に通路のモンスターを排除してあるというのは追加点や減点も無いという意味で悪くはないって事のようだ。

 護衛班の追加点用に残しておけばいいのか、減点の要因を排除すればいいのか…何とも言えない気持ちとなった。


 「通路で遭遇したモンスターを現在運んでいる素材と交換する価値があったりすればそこでまた評価は変わるぞ。私達で言えばあのゴーレムを運搬物としていたなら評価点は上がっていたこととなる」

 「まぁ、評価点よりは現物で欲しかったから運搬物にするっていう選択肢は消えたんだけどねぇ…」

 「アレは自分達で貰えるなら貰ってたはずよ。他の護衛班だって同じことしてたと思うわ」

 「運べる手段があったのならの話だけどね。それを考えると石田さんの功績なのかな?」

 「凛香…石田さんの評価具合はどんなもんで考えとるんや?」


 田谷さんの一言によって、話が自分達のPTの評価具合から自分の評価具合の話へと変わってしまった。

 目の前で評価がどれくらいとか聞かされるのはちょっと怖いな…。

 

 「そうだな…。正直な所アレも手に入ったし…3回の探索の内1回とは言え、評価を結構上げていいとも思ってるんだが。

 当初は10点満点の評価として私達6人が1,5点、残りの1点を石田さんの評価にしようと考えていたんだ。初心者探索者(ルーキー)という事も加味してそんなものだろうと。だがなぁ…」

 「アレを運びきっちゃったからねぇ…。

 正直今回の報酬として貰う以上の価値を私達もう貰っちゃってない? これで飛行が出来るマジックアイテムがあったとかなら話が変わるんだけどさ…」

 「報酬にマジックアイテムは無いでしょうしね…」  

 「今からだと素材としてあれ以上の報酬残ってるのかなぁ?」

 「無いんじゃないか?」

 「絶対先に呼ばれたPTが目ぼしいもん持ってっとるで?」

 「倉田さん達の報酬の時に見ましたけど上位ゴーレムの希少な奴は無くなってましたね。あ、それと当然のようにルビーゴーレムもう無くなってましたね。紀田さん達がやっぱり…って溜息吐いてました」

 『知ってた…』

 自分の話を聞くと、こちらでも口を揃えて諦めのような声を出す田上さん達。今の話が聞こえたのか、周りでも溜息を吐いてる人たちが居た。皆やっぱ狙ってたのか…。


 「まぁ…そんなわけでだ。石田さんの評価点を上げてもいいと思う者はそのまま、異論があるなら手を上げてくれ」


 無いものは仕方ないと早くも受け入れたのか、田上さんは残念そうな気持を押し込めそう口にした。やっぱ本人が居る前で評価の話なんて聞いてたく無いわ…。

 そして田上さんの言葉を聞いても手を上げない田島さん達。異論は無しという事かね?


 「皆問題ないか?」

 「手を上げないってことはそう言う事よ」

 「凛香が今回の探索で石田がどれぐらい役に立ったかを改めて決めるべきだろう。リーダーの決定に従うさ」

 「同じくー」

 「私も同じかな」

 「アレ手に入れた評価をしっかりやってあげてなー」


 そう言って全員が異議なーし! と口にした。エメラルドゴーレムの評価高いなぁ…。

 そんな自分の評価について話もついたところで田上さんの携帯が震えた。


 「お待ちかねのものが来たかな。皆、移動準備だ。片付けておいてくれ。

 もしもし…」

 そう言って通話を始める田上さん。


 「来たな」

 「待ったわねぇ」

 「やっとだよぉ…」

 「何時間ここで飲んで食べてた?」

 「えーっと…長い間やねぇ」

 「自分は途中からですからね。お疲れ様です…」


 指示された通り、テーブルの上を片付けさっさと移動できるよう準備をする。3人で飲んでたからお酒もとっくに空だな。 

 トレイを返しゴミなんかも始末する。そして食堂の入り口に向かった。

 そこには田上さんが既に居り、やはり報酬分配の話とのことだった。


 田上さんが言うには、今日報酬分配をする予定の最後が自分達とのことだ。ギリギリ呼ばれて助かったー…と、皆して安堵した姿を見せる。明日に持ち込まれなくて確かに助かったな…。

 まだ自分達の前に何組かいるらしいがそれでも呼ばれた事には違いない。

 今日で用事が片付いた事に気持ち的にも楽になったと感じつつ、本日2度目のロビー待機を皆と始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ