表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
275/771

274話 ダンジョン1層(護衛班) 出発と到着




 「さて…それでは俺達は他の未攻略広場に向かうとしよう。ここの事は任せたぞ」

 そう言いながら、倉田さん達は休憩を終えると立ち上がった。

 

 「ああ、任された。運搬班が来次第、解体を終わらせて帰還陣へ向かうとしよう。そちらも残りの広場を頼んだ」

 田島さんが倉田さん達にそう言って返す。よろしく頼みますと、田島さんに続いて自分も言葉をかける。


 「なーに! 討伐班全体の数は増えてんだ。全部回って終わらせてそっちに追いついてやるさ。

 下手したらもう片が付いてたりしてな」

 「その可能性も大いにあるから困るな…最悪はまた広場巡りだぞ? まぁ、1カ所終わらせることが出来ただけマシな方かも知れんがな」

 「お前達みたいに帰還陣から近い所に転移してたりすると間に合わんだろうしな。

 再転送はあれだったが…それでも目的地の未攻略広場に来れて良かったのではないか? そちらも空振りせずに済んだわけだ」

 「それはそうなんでしょうけどね…。ですがこういった転送はこれっきりにしてほしいものですよ」

 槍一さん達の言を聞いて、溜息を吐きながらそう言葉を返す。確かに目的地直送は嬉しいんだけどさぁ…。


 「今回は運搬班も護衛班も元々少ないからな。最初からこちらの事についてはおまけ程度というわけだ。運び出せなくても仕方ないと、踏ん切りはつけているさ。

 今回で1層の攻略という目的達成は私達も望んでいることだしな。攻略が終わるのであればそれでいいさ」

 「そんなもんかぁ?」

 「そんなものよ。運び出した中に欲しいマジックアイテムがあればもっと励むんだけどねぇ…」

 「欲しい物が無いとは言わんが、今一番欲しい物は報酬として手に入らんのでな…」

 

 そう言って田島さんと鹿田さんは溜息を吐いた。

 飛行ができるマジックアイテムはなかったもんなぁ…。報酬に欲しい物が無いからと、班の仕事そっちのけで宝箱探しをしないだけマシなんじゃないのかな? 

 護衛班としての移動時にも成果は得られなかったみたいだし、田島さん達にとってはそこまで旨みのある攻略ではなかったって事だろうね。


 「マジックアイテムは基本的に見つけたPTが使うからねぇ…報酬としては期待できないでしょうね」

 「なんのマジックアイテムを必要としてるかにもよりますけど、基本的には自分達で見つけ出すしかないでは? 発見したPTがお金に困っているのでもなければ売りに出さないでしょうし」

 「長期で見るとマジックアイテムの有無は戦力増強につながりますしね。手放す者とすれば流通を優先してるPTとかでしょうか?」

 「属性魔法が使えるマジックアイテムは何処も欲しがるものだしねぇ…。

 祥子…やっぱり新通路巡りをするしかなさそうよ?」

 「やはりそううまくはいかんか…。護衛班の役割を行っている最中に見つけられればいいと思っていたんだがな…。

 凛香と相談して2層攻略の時はマジックアイテム探しに専念するよう言っておいた方が良いか…?」


 その方がより効率も良くなりそうだと口にする田島さん。まぁ、毎回参加は流石になぁ…適度に休憩は挟みたいだろうし。

 自分も1層が攻略できたのならちょっと2層覗いてみるってのも有りだな。5層まではそう変わらんらしいけど、まだまだ見たことのないモンスターだっているだろうしな。特にゴーレムは種類もっといるだろ?

 1層はモンスターの湧き具合の調査の為にも攻略後は経過を見るという話だし、その結果が出るまでは少しかかるだろうよ。2層を見てくる時間ぐらいはありそうだな。


 「まぁ、そちらの用事が気になるのは確かだろうが…ダンジョンを出るまでは護衛班の仕事、しっかりやってくれよ? 最後まで気を抜かずにな」

 「そこは勿論だとも。こちらの事は任せてもらおう」

 「ならいい。では俺達は移動するぞ? 運搬班の事は頼んだ」

 「頼まれたわ」

 「うむ。

 出発するぞ! 各自移動開始だ」

 そう言って倉田さんは歩きだした。


 「んじゃあ将一、また地上でなぁ!」

 「無事に地上まで運搬班を護衛してやれよ?」

 「広場の方は任せてください。そちらもご武運を」

 「ええ、皆さんもお気を付けて。また地上で会いましょう」

 

 槍一さん達にも挨拶を交わす。

 自分達はこれで帰還陣に向けての移動だが、討伐班の皆は残りの広場を攻略し終えなければならない。3日かからないだろうけど、やはり残りを巡るとなれば明日いっぱいはかかるんじゃないかなぁ? 

 未攻略広場に向けて、倉田さん達は広場から通路にその姿を消した。その後ろ姿を見送りつつ、皆の無事を再び祈っていた。まぁ、無用の心配かもしれんけどね?


 「さて…討伐班も行ったし広場には私達だけになったな。運搬班がいつごろ来るかにもよるが、それまでこの場を確保するぞ」

 そう言って田島さんは、ぶつ切りにしたタイラントスネークやミノタウロス等の倒したモンスターに向き直る。運搬班かぁ…いつごろ到着するのかねぇ?


 「確保するとは言っても…どうするんです? 追加でモンスターが来たら倒すのはわかるんですけど…」

 「問題はスライムね。数体ならともかく、数多くを倒してしまうと延々と湧いてきてしまうわ。倒しても良いことはないし」

 「スライムはこの素材の吸収に現れるからな。運搬班がそれまでに到着してくれるとありがたいのだが…。一応魔石だけは確保済みだがな? 

 だが最悪は石田、お前のゴーレム達であの素材を動かしてくれ。この場所に残り続けないというのであればスライムも無理に吸収してくる事はない」

 探索者の持つ荷物には興味を示さないとのことだ。屍になった後は別として…。その時は持っていた素材ごと全て吸収されてしまうというね。


 「スライムが出たらゴーレムで動かせばいいんですね。優先順位はどうしましょうか?

 「上位ゴーレムの体、ミノタウロスの武器防具、タイラントスネークの肉の順だな。小型のは出来るだけでいい」

 「わかりました」

 その時になったらゴーレムを出すかと、いつでも出せるように準備をしておく。駒ケースを持ってるだけなんだけどね…。


 「こうやって移動させられるのも便利よねぇ。私達だと皆の風魔法で浮かして運んでたかしら?」

 「だろうな。手間がかからないのはありがたい」

 「運搬もゴーレムの重要な役割ですからねぇ。お役に立つのなら何よりです」


 むしろ本来はそっちがメインだしね。戦闘での壁役は土魔法でも一応代用が利くし。

 やっぱゴーレムを連れてる理由としては運搬が大きいよなぁ…。

 最近は戦闘にばかり使ってる気もするが、最初は荷物持ちとして考えてたんだと本来の用途を思い出した。戦闘も間違ってはいないのだけどね…。


 「と、いうわけでだ。スライムが吸収しそうに現れたら頼んだぞ?」

 「了解です」

 「まぁ、それもこれも運搬班しだいなのよね。最初から班が揃っていれば要らぬ考えよ。

 さーてっ! いったい後どのぐらいで来るかしらねぇ~」


 鹿田さんはそう言うと、伸びをしながら運搬班が来るのを待った。

 もどかしいものだなぁ…この待ち時間というのは。





 ≪こちら木乃香。待機班聞こえる?≫

 「祥子だ、どうした?」

 しばらく探知をかけながら素材が置いてあるところで待機をしていると、急にトランシーバーから田町さんの声が聞こえた。すぐさま応答する田島さん。どうしたんだろ?


 ≪凛香の所に運搬班から連絡があったよ。もうしばらくしたら広場を突っ切ってそっちに行くと思うから事前連絡。凛香が誘導してくるだろうから私達もそっち戻るね。佳奈芽は六華が連絡してるから3人共そっちに戻るよー≫


 トランシーバーの範囲なんて空を飛んでる木乃香さんからしてみれば直ぐだろう。つまりはもうすぐそこまで来てるという事だ。

 壁に阻まれてないから電波もそれなりの届くとはいえ、本当にもう間もなくという距離まで来てそうだな。

 

 「了解した。そっちが戻ってくるのを待つ。モンスターが侵入してないかだけ見ておいてくれ」

 ≪りょうかーい≫

 

 そう言うと田町さんからの連絡は切れた。運搬班の到着か…待ちわびたね、全く…。

 凛香さんの居る所からこちらに向かって移動してくるという事だし、歩きならばもう少し時間がかかるだろう。合流するまではこの素材を確保しておかなければな…と、あと少しの間だけ注意をする必要があるようだ。


 「スライムは結局湧きませんでしたね」

 「それについては特に決まった時間があるわけではないからな。1時間後かもしれんし1分後かもしれん。だから注意が必要なわけだ。

 まぁ、1分後は流石に短すぎだが、そういう気持ちで見張るようにという事だ」

 「ダンジョンでの湧きは唐突な場合もあるからねぇ。気を抜いちゃダメよ?」


 どうも他のPTが倒したモンスターの湧きの時に丁度近くを通りがかり、さっきまでなかった反応がいきなり現れたというケースもあるらしい。

 あながち数分後にはモンスターが湧いてもおかしくないのだから常に気を付けておけというわけだ。ダンジョン内に居るというのはそういう事なのだとか。


 「わかりました。しっかり見張っておきます」

 「まぁ、人が居る所に湧くのも無くはないという感じだ。気を張りすぎるのも問題だぞ? 何事も適度にな」

 

 そう言うと田島さんは視線を空中に向けた。そろそろ町田さんが見えるかもという事だろう。

 他のPTと合流する、もうすぐ帰還陣で地上に戻れる、そんな気のゆるみも最後まで抜くなといった忠告なのだろうか。

 確かに運搬班が来ると聞いて少しホッとしたのも事実だ。こう言う時が一番危険という事か…と、今もダンジョン内、それも広場に居るという事を思い出す。


 護衛班である以上、自分は運搬班の命を預かっている立場なのだ。まだまだ慣れないダンジョン探索なのだし、集中しすぎるぐらいが自分には良いのだろうと気合いを入れなおす。少し気を抜いていいとしたら、田町さん達3人が合流できてからだと自分に言い聞かせた。

 もっとも、そこに田上さんが加わった場合は護衛対象の運搬班が混じることになるのだし、気を抜けるのはほんの少しの間だけなんだろうなぁ…と、若干緊張で胃が痛くなってきたのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ