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267話 彼女達の事忘れてた…




 「つまり…石田さんは私達の事を聞いてて遅れたと。そういうわけですか?」

 「ええ…。すみません、つい聞き入っちゃいまして…」


 倉庫に運び出された素材を見ながら、遅れた理由を聞いてきた田上さんに謝る。

 ロビーに来たもののそこに自分はおらず、まだ食堂なのかと思い探しに来たらしい。待たせたというわけではないらしいがこれは反省しなきゃだな…。


 「私達の話かぁ…。一応そういう風に呼ばれてるってのは聞いたことあるけどねぇ…」

 「皆は良いじゃない、そう変な呼び方じゃないんだし…。私の二つ名だけなんか怖い感じなのよ?」

 「真理は自業自得とちゃうんか? モンスターの血なんか使って攻撃してたらそりゃあそんな名前が付くってもんやで?」

 「武器の杖を使っても結局は傷口から出る血を操っちゃうからね真理は。あの大地の杖使ってたらそんな二つ名付かなかったと思うよ?」

 「ゴーレムなぁ…」

 皆は自分から聞いた話を元に、自分達の二つ名について話し合っていた。ただ鹿田さんだけは項垂れていたが。まぁ、良くは聞こえんわなぁ…あれだとさ。


 「私達の能力について話すのを忘れていたこちらの非もありますので特に私からは何も。皆も怒ってるわけではありませんよ」

 「そうねぇ。ロビーに行ってみたけど石田さんの姿が無いからどこかしらぁ? ってぐらいだったものね」

 「話に夢中になっちゃうのはよくあることだしね」

 「うんうん、私達も気にしてなんかいないよ」

 「祥子がどこで道草くってるんだぁ? って言ってたけど、私達が待たせすぎた事気にしてたぐらいやしな」

 「佳奈芽ッ! それは言うなといっただろうに!

 あー…まぁ、石田がその話をしてるだけの時間を本来は待たせてしまったはずだからな。私も気にしてはいないぞ」

 田島さんが何とも言えなさそうな顔でそう口にした。他の皆にしても特にこれといったことはないらしい。助かった…。


 「待ってなかったのは事実ですからね。今度からは気を付けます。

 ところで皆さんの話を聞いて少し気になったことがあるんですけども…」

 「ん? なんだ?」

 田島さんが言ってみろと先を促してきた。他の皆も何かな? といった様子で自分の言葉を待っていた。


 「皆さんの能力を聞いてずいぶん風魔法の能力持ちが多いなぁ…って思ったんですよね。なのに皆さん、今回の攻略での役割は飛行魔法が活かせない通路で護衛をするというものじゃないですか? 

 能力を活かして広場とかの空中を飛べる攻略部隊の方が性に合っているのでは?」

 「それか…一応理由はあるんだ。主に私と真理に関する事なのだがな…」

 「田島さんと鹿田さんに関して…ですか?」

 なんだろう…と思い、溜息を吐いた2人に視線を向けた。2人の共通点…。


 「話を聞いたのならば私と鹿田の2人だけ風魔法が無いことは知っているだろう? それが理由なわけだ…」

 「結構探してるけど出ないものなのよねぇ…」

 「まぁ…こればかりはしゃーないわな」

 「その内見つかるよ」

 「そうそう」

 「むしろマジックアイテムを手に入れるいい機会を得たと思えばいいさ」


 溜息を吐いている田島さんと鹿田さんの2人に他の4人が慰めるように声をかけた。

 なるほど…風魔法が使えるマジックアイテム探しって事か。


 「魔石がはめられる指輪探しというわけですか?」

 「もしくは飛行魔法が出来る何らかのマジックアイテム探しというわけだな。2人も飛行魔法が使えるようにしようと思い…というわけだ」

 「ほら、ウチ等は基本11層からの森林エリアを活動場所にしとるやろ? あのエリアは進むんであれば空からがむっちゃ楽やからなぁ。

 ウチ等が運ぶっていう手もあるんやけど、そうなったら万が一戦闘になった場合危険やん? 一旦降ろすっちゅうことも考えたんやけど…あこ、意外と鳥系のモンスターって多いねん。

 空飛んでても戦闘は結構起こるから各自が飛べるようになったらええなぁ…って」

 「飛行出来るモンスターは結構いるんだけど、それでも地上の森林の中を歩くよりはね…」

 「対応するのが飛行系のみに絞られる分まだマシなんだ」

 「飛べない私達が居ると皆も地上を進まないといけないのがねぇ…。何というか我が身が苛まれる思いなのよね…」

 「飛べさえすれば皆一緒に行けるのだがな…」


 田島さんと鹿田さんが再び溜息を吐いた。

 一応周りを見てみるが、運び出された中にマジックアイテムは存在していない。見つけたPTが使うか、必要ないとなれば管理部を通して売りに出すのだろう。


 「ちなみに売りに出されてたりとか…」

 「管理部の資料を見てみたけどとっくに買い手がついてたわ…。出されてすぐに誰かが購入ボタンを押しちゃうのよねぇ…」

 「オークション形式の物も参加はしているのだがな…。値を入れた直後にはすぐ値段が更新される始末だ。期間終了の間までオークションサイトに張り付いてでも居なければ競り落とすのは難しい有様だぞ」

 「探索者活動をしていると期間終了日に張り付いているというのも難しいものでな…。何回か試してみたのだが、未だに競り落とせた試しがないんだ。

 本当に欲しい者は終了時間ぎりぎりに一気に値段を上げたりしてな。こちらの付けた値以上で持っていかれる始末ときた。なかなかに大変だ…」

 「私達もいきなり値をつり上げたりしてみた事はあるんだけどね…。ダメだよ…アレは…」

 「こっちの値をわかってるんじゃないかっていうぐらいの値段が付けられてたもんねぇ…」

 「あんなんインチキやで…」


 そちらは既に試しているらしいが、どうにもめぼしい成果は出せていないようだった。

 まぁ、マジックアイテムとか無能力者の人は是が非でもほしかったりするだろうからねぇ…。30歳以上ともなればそれなりに貯金をしてる人だっているだろうし、資金力だといくら中堅探索者の田島さん達でも厳しいものがあるかもな。

 いや…最終的にいくら出すかという思いきりの良さの見極めが重要なのか? オークションとかしたことないんだよね…。

 田島さん達は探索者としてダンジョンに潜れば見つかるかもしれないというアドバンテージがある分、赤字になりそうな値段だと知らず知らずのうちにセーブをかけているかもしれない。その辺の駆け引きが競りだと重要という事なのかもしれないな。


 そんな話をしつつ、少し注意がどこかにいってる気もするのだが皆して運び出された素材を見物していった。オススメされた強化鉄という名の上位ゴーレムの素材なんかもいくつか見つけた。

 鉄だけでなく、他の鉱物で出来た上位ゴーレムも目にすることが出来た。チタンゴーレムとかセラミックゴーレムなんて言うのもいるらしい。まだ遭遇出来てないだけでそんな奴等も居るんだな。これゴーレムの種類どんだけいんだよ? 

 金属の種類なんて良く知りもしないが、それでも聞いたことがあるタングステンを素材としたタングステンゴーレムなんてのも一部だが運び出されていた。これレアメタルとかいう奴だよな?それにむっちゃ重いんだっけか? よく持ち帰って来たよな…。

 おそらく自分が手に入れる前に他の人が手に入れるだろうが、こんな素材でゴーレムが作れたのならば強力なものに仕上がるにビジョンが見えた。流石にそれで大型ゴーレムなんて作ろうものなら目立ちまくりだろうけどさ。


 そんな運び出された素材を皆してあーだこーだ言いながら見物していった。

 飛行が出来るマジックアイテムはあいにくとなかったが、皆してアレいいかも…いやこっちの方が…といった感じで品定めをしていた。

 そしてやはり中堅探索者…一度素材の品定めに入ると真剣な目つきで欲しいものを見定めていく。

 だがその目つきも、例のルビーゴーレムを前にしたら若干揺らいだように見えた。やはり女性…宝石には心が揺さぶられるらしい。小声でネックレスだの、指輪にしたら…なんて声が聞こえてきた。あのサイズなら装飾品どころじゃないものが出来そうだけどね。


 (そういや岩をルビーに変えたあれまだ持ってんだよなぁ…。そのうち宝箱から出てきましたーとでも言って運び出すのもありかな?)


 こんなゴーレムがいるくらいなんだから岩サイズ程度のルビーでどうこうっていうのもないだろうし、その内試すかと内心思った。

 いっそのことダイヤでもいいよな。宝箱産って言えば通じるだろうし…。

 




 「んーっ! 終わった終わったぁ! 運び出されてるもんも結構多いよなぁ…。まぁ、それが自分等の報酬につながるんだから当然かぁ」

 

 運び出した物の見物も終わり、自分だけロビーの椅子に座り休憩していた。

 田島さん達とは見物が終わるとまた明日と挨拶を交わして別れた。時間もあるしマジックアイテムが売りに出されてないか確認するのだそうだ。やっぱ自分の見物に付き合わせたような気がして申し訳ない気がしてくるなぁ…。

 

 「帰ってゴーレムの調整でもすっかなぁ…明るいうちに済ませておきたいし」

 そんなことを呟きながら、ロビーに設置されたテレビに視線を向けた。そしてテレビも見ておかないとなぁ…という思いが頭に浮かんだ。今は何かやってるだろうか?


 「ふーん…日本ではあまり見られない類の裁判ねぇ…あれ? これって…」

 テレビに映ったニュースを見ていると、何やら見覚えのある人物が映った映像が流れ始めた。


 「森田さん達じゃないか…それに増田支部長もいるな。

 そっか…神判うまくいったんだ…。はぁ~…よかったぁ~」

 

 映像では森田さん達3人が記者に向かってはっきりと答えている姿が流れていた。

 自分達は間違っていなかったという証明だもんな。こうやって面と向かって発言している姿を見ると見てるこっちも勝ったんだな…って安心するわ。いや~、ほんとよかった!


 「増田支部長は証人としてか…お疲れさまだなぁ…」

 「ほう…そう思うのならば少しばかり話に付き合わんかね?」

 「え…?」

 テレビを見ながらそんなことを呟くと頭上から声がかかった。テレビから視線を外し声のした方に顔を向ける。そこには自分を見下ろす増田支部長がいた。


 「今時間はあるか? あのことについても話がしたいと思っていてな。テレビを見ているぐらいなのだから大丈夫そうだな」

 

 笑顔を向けながら増田支部長は自分にそう言葉をかけてきた。

 増田支部長を知っている人達は結構いるのだろう。ロビーにはちょっとした空間の空きが出来ているようだった。そしてその中心に居るのは自分と…。


 「あー…お久しぶりです。昨日ダンジョンから戻ってきまして…」

 「ほう? ではそのことも少し聞いてみるとするかな。なに、そんなに時間は取らせんさ。いつもの部屋で待っているので出来れば早めに来てくれよ?」


 そう言うと肩をポンッと1回叩いて増田支部長は歩いて行った。これは向かわんといけん奴だな…。

 増田支部長が去って周囲からの視線が自分に向く。話は周りにも聞こえていただろうし、行かぬわけにもいかないだろうと座っていた椅子から腰を上げた。

 ロビーに居た人達の視線を背に受けながら例の部屋へと向かう。あまり長話にならないといいんだけどなぁ…と、周りに聞こえぬ様小さくため息を吐いた。





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