253話 ダンジョン1層(討伐班) 迎撃戦 後編
「加勢すんぞ、リーダー!」
「槍一!? 持ち場はどうした?」
自分が鉄杭を手にしたのと同じくして後ろから火の玉が飛んできた。第2迎撃ラインまで槍一が上がってきたのだ。
「見えるバットは全滅したんでね! モンスターの航空戦力は気にしなくてよくなったぞ」
「そうか、そいつは朗報だ」
そう言葉にして後ろを振り返る。槍一に続いてやって来る遠距離攻撃部隊を見るとバット全滅の言葉が真実なのだと理解した。
「全員よく聞けっ! 相手の航空戦力は潰えた! モンスター共を押し返すぞ!」
『了解!』
上からの攻撃はこれで気にせずとも良くなったと全員の顔に笑みが浮かんだ。後は地上の戦力にだけ気を付ければいいのだから。
槍一に引き続き遠距離攻撃班が第2迎撃ラインに到達すると、スパイクに取り付く塊蟻達を向こう側に落とし始めるスピードが上がった。
「倉田さん、杭の補充をしていきます!」
「うむ、任せた!」
そう言って台に補充される鉄杭。同じ役割のものが2人居るとカバーも利いてやはり楽だな。
各台座に回って杭を補充する将一君から目を外すと手にした鉄杭を投擲する。比較的防御の薄い頭部に命中すると首から内部に入りこんだらしい。ピクピク足を痙攣させながらスパイクの向こう側へと落ちていった。
蟻達をある程度迎撃し終わったらラインを1つ上げれるかと考える。
数が減ればこちらから打って出ることも可能だろう。大物の千刃ムカデはゴーレムが押さえてることだし…と。
「よし! これから掃討戦に移るっ! 各自、第1迎撃ラインまで進むぞっ!」
『了解ッ!』
しばらくして倉田さんがスパイクで足止めをする第2迎撃ラインの外へ向かうと口にした。確かにモンスターも目に見えて減ってきてるしな。
倉田さんはスパイクの上に速攻で橋を架けた。あそこから外へ出ろという事らしい。
「将一君はこの場で待機だ。遠距離攻撃をしつつ退路のこの橋を守ってくれ。
田淵と宮田もここに残れ。将一君と一緒に退路の確保を頼む」
「わかりました!」
「了解っと」
「そっちも気を付けてー」
「うむ、では近接班は橋を渡れ! 周辺のモンスターを片付けるぞっ!
それとくれぐれも千刃ムカデには近寄るんじゃないぞ。伸びてくる刃に切られたくなければな。始末はゴーレムに任せろっ」
『了解!』
そう口にすると倉田さん達近接組は橋を渡ってスパイクの向こう側に駆け出して行った。残された自分達3人は台に上り、ここから後方支援を開始する。
「何とか今回も無事に終わりそうですね」
「だなぁ…。千刃ムカデ3体を見た時はちと危ないって思ったもんだが、石田さんの大型ゴーレムがいてくれて助かったよ。あれが突っ込んできてたらスパイクもオジャンだったろうからね」
「やっぱり押さえてくれる前衛が居るっていうのは良いよね」
「ゴーレムなしの場合だとどうするもんなんです? っと!」
足を引きちぎられ動けなくなっているモンスターに向けて攻撃をしつつそんな事を聞く。他だとどういった対処をするのかね?
「まぁ…土魔法の能力者が居るんなら後ろのあの壁みたいなもんを第1迎撃ラインに置いて突進を防ぐかねぇ? んで後退しつつ、こんなスパイクなんかがある場所で迎撃かな。
後は今回使わなかった第3迎撃ラインの壁なんかを利用して隠れながら攻撃をするってのが基本かねぇ?」
「それか通路に入り込んで攻撃出来る範囲を限定させるとかかな。動き回らないんであればそれだけ楽だし」
「なるほど…」
わざと運搬班達から離れたのは見られる確率を下げる為だけではなくそう言った手段も用意しての事だったのか…。プランBは通路戦…と。
スパイクの向こうでモンスターに止めを差す皆を見ながらそんなことを思う。やはりこの辺も経験なんだろうな…。
しばらくスパイク周辺でモンスターに止めを差しつつ数を減らしていく。
今回はモンスターの数が多かったなぁ…スパイクみたいな障害物には助けられたわ。大型ゴーレムも大活躍だし、万々歳だね。
「千刃ムカデの方もだいたいケリがついたっぽいね。なら行くとしますか…」
「行こっか、石田さん」
「どこへです?」
戦闘が終わったから運搬班に知らせに行くのかな?
「今度はこっちから行ってやんのさ。教えてもらった情報の中にミノタウロスとゴーレムもいたっしょ?
紀田さんが飛行魔法使いながら時間を稼でいてくれてるだろうからさっさと合流しないとね」
「遅いってどやされないうちにね」
そうだった…そういやなんか足りないと思ってたんだ。
「そいつは急いだ方が良いですね…ゴーレムはともかくミノタウロスは厄介そうです」
「んー…逆じゃないかなぁ? ミノタウロスの攻撃範囲からは距離取ってるだろうけど、ゴーレムがそこに合流したら遠距離攻撃されてるかもしんないし。
バットで見ただろうけど空を飛んでる所に弾幕が来られたらきついと思うよ? 避けるしか手が無いわけだし」
「風魔法だと防げないってわけじゃないけど結構大変かも」
「だとしたら尚更急ぎましょう。まぁ、不利を悟ったら紀田さんならこちらに戻って来るでしょうけど」
「それがないうちはまだ何とかなってるわけだしね。なんにしても移動が出来るようになったんだから俺っち達も進むとしようか」
田淵さんの言葉に頷くと3人して橋を渡り、スパイクの外側へと向かった。倉田さん達は既に向かっているらしく姿が見えない。これは出遅れたかな…。
大型ゴーレムも一緒に連れて行ったようで、ここからだと後姿がわずかに見える程度だ。
通常サイズのゴーレムは連れて行ってもどうしようもないと判断したらしくここに残している。そいつらを素早く駒に回収すると自分達も倉田さん達の後を追いかけていった。
しばらく走ると前方から戦闘音が聞こえた。もう始まってるっぽいな…。
走りながら田淵さんが能力を使ってその音がする方を見た。
「もうゴーレムも合流してるっぽいね。大型ゴーレム4体を使ってミノタウロスはもう撃破寸前。今は普通サイズのゴーレムに取り掛かってるな。けど…あれルビーゴーレム混じってないか?」
「え? マジ? 超倒したいんだけど?」
「ルビーゴーレム…」
田淵さんの報告を聞いてモンスターリストに載っていた情報を思い出す。
ルビーゴーレム…ゴーレム種の一種で、全身がルビーで覆われているゴーレム。
動いている状態では非常に硬い体をしており、打撃武器が無いとまず壊せない。剣でやろうものなら刃の方が欠けてしまうだろう。
硬い体そのものが武器なのは他のゴーレムと変わらない。クリスタルゴーレムのように硬質なルビーの弾を飛ばしてくる。これに当たると体の部分がルビーと化してしまう為、防御するか必ず避ける事。直接触れられてももちろんアウト。
倒し方としてはモーニングスターのような離れたところから攻撃できる打撃武器を使うのが好ましい。
ただ、倒すだけならロケットランチャーのような高威力をぶつけると安全性は増す。(もちろん素材は激しく砕け散るので、納品してもらう管理部としてはあまり推奨はしたくないが…)
魔石は土の上位魔石を落とす。出来れば攻撃で壊さないようにしたい。
「結構な奴が混じってたんですね…」
ルビーゴーレムの情報を思い出すとそう口にした。
「出来れば素材の方も回収したいねぇ…。宮田…こっちは良いから鑑定してきてくれ。向こうもお前待ちだろうし。
まぁ…朝田さんの直感でやってやれないこともないかもしれんけどさ」
「正確な情報は欲しいよね。じゃあちょっと石田さんは任せるから!」
そう言うと宮田さんは今までよりもスピードを上げて走って行った。
これは自分の足に合わせてもらってたんだろうなぁ…やっぱ走りにくいんだよね。
「田淵さん、道を均します。その方が走りやすくなるんで」
「OK。やれることやっちゃっていいよ」
「では行きますね」
そう言うと倉田さん達が戦闘しているところまでの道を均した。
自分達が走る幅2mぐらいだが凹凸が無くなって、靴がしっかりと地面を捉えることが出来た。前方で走っていた宮田さんは急に走りやすくなった地面に驚きつつも、より速い速度で走って行った。
「ああ…地面が平らって楽だね。
森林エリアも木の根が盛り上がってたり葉っぱが落ちてたりと洞窟エリアほどではないけど足元注意なんだよね。思いっきり走れるっていいねぇ!」
「自分に合わせてもらってたようですいません。これならもう少し早く走れますんで」
そう口にするとスピードを上げた。足元が確かなら全速力が出せる。飛行魔法を使って飛ぶのが一番楽なんだけどねぇ…。
しばらく走ると倉田さん達に追いついた。正直ゴーレムが相手なら心配することもあまりないのが前の広場でわかってるからなぁ…とはいえ何もしないでいるわけにもいかんよな。
そう思うと駒を取り出して先ほど仕舞った通常サイズのゴーレムを出す。壁になってこい!
「ゴーレム全速前進! 相手の攻撃を防げっ!」
「助かるっ!」
こちらを見ずにそう答える倉田さん。遅れてきたのがゴーレムを回収していたからだと気づいてるのかね? それとも宮田さんから既に聞いてたか?
ルビーゴーレムの鑑定は既に終了しているらしかった。今は倉田さんの張った壁を盾に近づいている最中だ。
そこにこちらのゴーレムが突っ込む。大盾を構えているのでちょっとやそっとの攻撃でどうにかなるものでもないだろう。
そのゴーレムの後ろに笹田さんと田宮さんがぴったりとくっついた。やはりあの能力で一刀のもとに終わらせてしまうつもりのようだ。
突っ込んで来るゴーレムを受け止めるルビーゴーレム。やはり情報通り頑丈な所為かゴーレムがぶつかっても砕けるような事はなかった。少しは欠けてるかもしれんけどここからじゃわからん…。
両腕で受け止めたのを良いことにゴーレムの影から2人が飛び出した。2人でかかればどちらかがミスしてもカバーが出来るだろう。コピーの能力がいるとこれが出来て便利よな。
しかしそんな2人にアイアンゴーレム? の遠距離攻撃が飛んでくる。向こうだって複数いるのだしカバーも出来るだろう。
だがその攻撃は大型ゴーレムが地面へと下ろした大盾によって防がれた。残りの1体はこっちに回されていたし、向こうの遠距離攻撃も想定内だったのだろう。
「ふっ!」
笹田さんが剣を振った。自分の周囲に邪魔をするものも居らず、ルビーゴーレムに刀身全てを使って体を断った。狙いは壊しても大丈夫な核だろう。
ゴーレムを受け止めていたルビーゴーレムはその一撃で機能を停止すると、膝から崩れ落ちるようにして目の前のゴーレムへともたれ掛かった。ゴーレム達にゆっくり地面に寝かせろと伝えると2つに別れたルビーゴーレムの体を地面へと横倒しにする。しっかり核は断てたようだ。
「残りを殲滅するっ! 各自、ゴーレムを盾に攻撃開始っ!」
倉田さんから残りのゴーレムを殲滅する号令がかけられた。一番重要そうなルビーゴーレムは土魔法で保護されている。流れ弾の心配もこれならないだろう。
残りのゴーレムに全員でかかる。
ミノタウロス2体に構っていた4体の大型ゴーレムが合流するとあって向こうに勝ち目はないだろう。それでも最後まで向かってくるのだからモンスターの殺人思考は恐ろしいものがあるな…。
ゴーレムを前に出しながら皆が向こうのゴーレムに攻撃を集中する。これなら終了するのも時間の問題かと、田淵さんと2人して後方でホッと息を吐いた。




