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240話 討伐班として出発!




 日は過ぎて、将一が討伐班としてダンジョンに赴くことになる当日。将一は約束していた時間通りに広場へとやってきていた。


 「おはようございます」

 「ああ、おはよう。集合時間5分前ちょうどだな。全員来るまで楽にしていてくれ」

 「わかりました」

 倉田さんに挨拶を交わすと荷物を地面へと置いて溜息を吐く。ついに本番の日が来たのだと…。


 (昨日はPT内の話し合い以外は本当にのんびりしてたなぁ…見学しつつモンスターに慣れろってのが知れて助かったよ。あれを言われなかったら昨日も緊張しっぱなしだったろうし…)

 自前で飲み水を用意するとそれを喉に流し込む。今日も暑い日は続いている。帽子はダンジョンに行くまでの必需品だな。


 (のんびり出来たからついついゴーレムの方もちょっぴり手直ししたんだけど…これ使うかな? まぁ、自衛に回すのでもいいか。こっちを気にしないでいい分倉田さん達も動きやすいだろうし)


 時間が出来たのでゴーレムの形状を少しいじったりして昨日は過ごしていた。

 タイラントスネーク等に組み付かれた時の自衛用として本体へ棘を付け足したり、遠距離攻撃の手段としてゴーレム用の投げナイフを作成したりとちょっとした物だ。幾分か強化にはなったと思う。


 「石田さん、おはよう。昨日はゆっくりできたかしら?」

 そう言って休んでいる所に紀田さんがやって来た。後ろには朝田さんと米田さんも一緒だ。


 「おはようございます。

 ええ、ゆっくりさせてもらいました。ガチガチに緊張して過ごすこともなかったので今日も問題なしです」

 「それは何よりです。大型モンスターを見てもその調子でいてくれると頼もしいですね」

 「緊張して動けなくなるのが一番厄介ですからね。比較的安全な位置に自分で移動してくれるのであれば私達としてはいう事はありませんよ」

 朝田さんと米田さんがそう言って、今日はよろしくと挨拶をしてきた。こちらこそです。


 「それと私達にもお水いいかしら? 笹田がまだ来ないから今迄みたいに頼めないのよね…」

 「ついでに水筒へと水を補給してもらってもいいですか? 石田さんの出す水は美味しいですから」

 「出発前に全員分を頼みます。飲み水に関しては石田さんに任せると笹田さんが昨日言っていましたよ」

 「了解です。戦闘では役に立たないかもですからそれぐらいはお 安い御用ですよ」

 

 そう言って4人分(倉田さんの分も)用意する。サポートぐらいはやらせてもらいますとも。

 3人が渡した水を美味しそうに飲むと、ぷはぁっ! と笑顔で息を吐きだした。その顔を見ると満足してるというのがわかるね。


 「やっぱり冷たくて美味しい水ね。これだけでもPTに誘ってよかったわ」

 「全くです。やはり飲食は士気に大きく影響してきますからね。美味しい物は大歓迎ですよ」

 「こうも暑いとそう感じずにはいられませんね。夏は苦手です、冬もそうですけどね…」

 「そう言っていただけるとなによりですね。

 私も出来るならこれっきりにしてほしいです…普通のダンジョン探索をしたいですし」

 「探索者登録してすぐだものね。確かにこんな状態はごめんよね」


 そんなたわいもない話を少しすると、3人は「じゃあ後で…」と言って離れていった。倉田さんにも水を渡さないとと口にして。

 そしてそんな3人の後姿を見ていると肩を叩かれたので振り返った。

 

 「おはようさん。集合時間通りちゃんと来てやがったな」

 「むしろ私達が後だからもう揃っているのだろうよ。紀田さんに何か言われているかもしれん…」

 「物資の最終確認だ。一応理由としてはまともなものだぞ? まぁ、小言の1つくらいはあるかもしれんがね」

 「おはようございます、槍一さん、笹田さん、田宮さん。今日はよろしくお願いします」

 残りの男性組を見つけたので挨拶を交わす。どうやら物資の確認をしていたらしかった。


 「倉田さんや女性陣の皆さんはもう集まってますよ。給水なんかを頼まれましたね」

 「この暑さだからな…やはり私だけでも先に行くべきだったと思うのだがね?」

 「能力で武器にあまり負担が掛からんとはいえ探索前の事前準備だ。それと鎧も調整した部分があったろうに…」

 「笹田は避けより受け流しを多用する癖があっからなぁ…そっちで武器に負担が掛かってないとも言えんし仕方ないと諦めろ」

 むむむ…と唸る笹田さん。武器や鎧の調整もしてたと言うのなら仕方ないんじゃないかな?


 「まぁ、今集合時間丁度ですから遅れたわけではないですよ。皆さんそんな厳しく言わないのでは?」

 「お前の前だから大人しくしてるかもしんねぇなぁ…」

 「3人共良いお姉さんぶりたい所が少しあったからな。そこに期待するとしよう」

 「まぁ、朝田に関しては年上に見えんのだろうがっ!?」

 田宮さんがそう口にした瞬間、小石程度の砂の塊が田宮さんの頭で散った。


 「田宮さん…何か言いたいことがありますか?」

 すると後ろから朝田さんの声が聞こえた。今の話し聞こえたのか? 耳良いな…。


 「石田さんが先に来てるのに先輩達はなにやってるのかしら?」

 「手入れは昨日終わらしたと言っていませんでしたか?」

 続けて紀田さんと米田さんの声が聞こえてきたので振り返った。どちらも少し呆れ顔だ。朝田さんだけは良い笑顔だが…。


 「まぁ、集合時間通りだから何も言わんさ。将一君、水をありがとう。後で給水を頼むとしよう」

 「あ、わかりました」

 そう言って倉田さんが一番後ろから声をかけてきた。暗にこんな衆目で騒ぐなと言いたいのかもしれんな。


 「おう、了解だ。それとおはようさん」

 「うむ、おはよう。それと遅れてすまなかった」

 「なぁ、額切れてないか? 結構威力あったように感じるぞ…。それとおはよう」


 3人がそれぞれ挨拶を済ます。リーダーの倉田さんがが何も言わないからか紀田さん達も何も言わずに挨拶を返した。朝田さんの手から砂がこぼれてるんだが…握りつぶしたのね。

 全員が揃ったという事で皆に水を渡すよう倉田さんが口にした。どうやら事前打ち合わせの最終確認をするようだ。

 水筒を受け取って水を全員に配る。この暑さだし飲みながらでもないと話が進まなさそうだ。潤滑な話が出来るよう給水係として頑張るか…。





 「昨日の打ち合わせ通りだが最終確認を行うぞ。そろそろ転送陣に移動開始だから手早くいくとしよう」

 『了解』


 話自体は昨日のリーダー会議が終わった昼間に一度終えている。午後は時間もあったし準備も万全だ。

 とはいえ重要な話には違いない。聞き逃すことが無いよう倉田さんの言葉にしっかりと耳を傾けた。


 「転送後は地図を確認してまだ討伐していない近場の広場や地底湖を目指す、各自道中も気を配れよ。紀田は探知を頼む」

 「了解よ」

 紀田さんが頷く。やはり一番の頼りは探知係だもんな。


 「広場か地底湖付近に近づいたらトランシーバーで連絡を取り合うぞ。全員周波数は設定済みだな?」

 『問題なし(です)』


 確認のため荷物からトランシーバーを取り出して確かめる。参加した探索者全員に配られた最新型のトランシーバーだ。初心者セットの奴は1度も使わず更新になってしまったな…。

 周波数も話し合いの時に聞いたものになっているのを確認して荷物に戻す。こちらが何も言わない事で倉田さんも話をつづけた。


 「近場に他の討伐班がいれば速やかに合流するぞ。人数は多い方が安心だからな。

 そして以降は帰還まで行動を共にする。各自諍いなんて起こさぬように」

 『了解』


 昨日その話を聞いた時は戦力が増えてありがたいと思ったのだが、何事もうまくいくだけとは限らんらしい。

 この異常をさっさと終わらせたいという意思は互いに同じものを持ってるようだが、そこは人間…仲の悪い者が居るというのは何処の世界も変わらんらしい。一応協力はするが、必要以上に慣れ合うつもりはないとするPTも居るんだとか。まぁ、こればかりは人である以上仕方ない部分もあるわな…。うまく折り合いをつけるしかないそうだ。


 「その後は協力して各広場や地底湖を攻略していく。トランシーバーで近くに運搬班がいないか手分けして手早く探し出すぞ」

 『了解』

 自分達討伐班が戦闘をしてる間に、運搬班や護衛班が近くまで来る流れなんだそうだ。その部隊をさっさと見つけて後の引継ぎを済ますのだとか。

 

 「将一君…もしかしたら戦闘中に向こうから近くに来たから待機するといった連絡が来るかもしれん。出来るなら返答してやってくれ。戦闘が終わり次第連絡をするから待機していてほしいとな」

 「わかりました」

 この役目は見学している自分に割り振られた。戦闘中にそんな余裕があるのは自分だけという事なのだから当然と言えば当然の役割だった。聞き逃さんように注意しておかんとな…。


 「運搬班達に後を引き継いだら俺達討伐班は次の場所に向かうぞ。飯の時間に近ければ食べれそうな分の確保も忘れるなよ」

 『了解』


 洞窟エリアでは貴重な現地調達の食料となるのだから食べれる分の確保も重要だ。手っ取り早く串焼きだけだったとしても有ると無いとでは大違いだろうからね。

 それと食堂で話していたように、今回田宮さんが小麦粉を用意したらしい。時間があれば食事のメニューも増やせるだろうと口にした。現地で出来るといいなぁ…。


 「後はその工程の繰り返しだ。次の日もしっかり頼むぞ。

 前回と同じく2泊3日の予定で探索を終える。今回も無事に全員で戻るのが目標だ。

 それと今回は将一君もいる。いつも以上に留意することを忘れるな」

 『了解』

 「よろしくお願いします」

 

 そう言って再び頭を下げる。

 自分の事で要らぬ手間をかけるようで申し訳ないと、出来るだけ足を引っ張ることが無いようこちらも最善の注意を払って行動しようと誓った。

 そんな最終確認をしていると軍の人が移動開始を促してきた。ついに始まったな…。

 

 「よし、各自問題はないな? それでは俺達も移動を開始するぞ!」

 『了解!』


 倉田さんのその声に荷物を背負う。

 見学が主とはいえ、ついに大型モンスターをこの目にする時が来た。なるべく大人しくしつつも自分の出来る事を頑張ろうと頬を叩く。


 探索は慣れという事だ。今回の事を良い経験にするべく、一度大きく深呼吸をすると皆の後に続いて歩きだす。

 が…そんな今から探索に行きますと意気込んだ所に電子音が鳴った。


 「メールか? こんな時だってのに…」

 どうせダンジョンでは時間確認ぐらいにしか使えないのだし切っておくかと、最後にそのメールだけ確認した。


 「え…? 今日?」

 適当に見たメールだったが結構重要な出来事がそこには書いてあった。


 「どうした?」

 槍一さんがこちらを気にして声をかけてくる。


 「あ、いえ…なんでもないです。今行きます」

 「遅れんなよぉ」


 それだけ言って歩いていく槍一さん。

 気にはなったのだがこちらとしてもどうしようもなく、一言だけ文を打つと返信をする。ダンジョンなのでしばらく繋がらないとも添えて…。

 そして携帯の電源を切ると槍一さん達の後を追った。




 届いたメールには短くこう書いてあった。

 『神判が今日行われます…』と。





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