表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/771

22話 施設での調査(9) 登場! マジックアイテム ついに来た新エリア!



 世界がフリー達の活躍を見直している間も、攻略部隊はずっとダンジョンに挑み続けていた。

 何層も潜り、帰還陣で帰って休みを入れる。そんな生活を攻略部隊は続けている。

 彼等が地上で休憩をとっていたそんな時に、フリーの話を耳にした。遠い国に来て不安であったが、自国は大丈夫そうだという知らせを聞き、彼らのダンジョン攻略は更に火が付いた。

 フリーの存在は攻略部隊の良き追い風となってくれた。

 

 そして攻略部隊が潜っている最中、劇的に変わったことがあった。

 相変わらずずっと暗闇の洞窟ではあったが、潜っていると変な箱がある広間に出たという。

 あまりにも怪しく、このような洞窟には不釣り合いな箱。しかし攻略部隊の中にはこれがどういったのもであるか当てはまりそうな言葉を知っている者がいた。


 宝箱


 ダンジョンがまだ地上に出ていなかった時代。ゲームの話ではあるが、ダンジョンの中に置いてある箱の事をそう呼んでいた。

 その話を聞き、部隊の仲間は胡散臭そうな顔でそんな馬鹿な…と言いたげだったという。

 とはいえこれが何であるのか調べる必要があった為、部隊は何かの罠がないか広間を調べた。


 その結果は…問題なし。念のため、物を自在に動かせることが出来る能力者が蓋を操作して開けてみた。


 中から発見されたのは、西洋でよく見かける両刃の剣だった。

 誰が作ったのかも分からず、誰がこんなところの箱に入れて置いたのかも不明の剣。飾りも何もなく、柄の後ろには赤く丸い宝石のような石がはめられているだけの武骨な物。

 それを探知系の能力者が調べてみた。


 するとその剣はいわゆるマジックアイテムという奴だったそうだ。

 能力者曰く、剣には火の力が込められているらしい。能力者でなくとも簡単な火の魔法を操れるそうだ。それに刀身自体にも火の力がかかっていると聞き、攻略部隊で能力が何もない軍人がモンスターに試してみたという。


 その結果、その日からダンジョン内で宝箱探しが始まった。


 ダンジョン内には、能力者が使うようなマジックアイテムが宝箱に入っている。この情報は地上に戻った際各国に告げられた。

 この報告を受け、各国のフリー達に宝箱探しをしてくれという依頼が管理部を通して伝えられるようになったのは言うまでもない。


 マジックアイテムという無能力者でも能力者のような力を使うことが出来るようになる。

 実は能力者が生まれてからというもの、能力を持っている者と持っていない者の確執は頻繁に起きていた。

 持っていない者は持っている者を妬み、僻んだ。なぜあいつは持ってて自分は…そんなことを考える者がとても増えてきたことを国も問題視していた。


 そこに伝えられたマジックアイテムという存在。能力者でなくとも能力者と似たことが出来る。無能力者が、ダンジョンという存在に憧れを抱くようになった瞬間だった。

 

 ダンジョン管理部に、フリーでもない人達が自分もダンジョンに潜りたいがどうすればいい? と押しかけて来るのは当然だったのかもしれない。能力がない自分でも能力者のようになれる可能性があるのだから。

 国やダンジョン管理部は、民衆がこれ程押し寄せてくるとは思ってもいなかった。これは近いうち爆発が起きていたのではないかと肝を冷やす。

 

 国民がここまで能力者を羨望していたのかと見誤り、何か手を打つ必要があると緊急で案を練った。

 国としては、能力者でなくとも減った人材を増やしたかった。軍に普通に入ってくれればそれでよかったのだが、やはり自分の力としたいのだろう。フリーを目指す一般人がこうして増えることとなった。

 


 国は、彼等がダンジョンに潜れるよう、通常の教育機関や街の道場に武術を学ばせてやってほしいと願いを出した。

 今のところ攻略部隊が見つけたものは剣や槍、盾やナイフといったものだ。他にもあるのかもしれないがそれは今後に期待した。


 能力者のようになれるとはいえ、無能力者たちは通常の教育を受けてきた者ばかりだ。マジックアイテムで力だけ手に入れても扱えないだろうと思い、せめて体を鍛え動きを覚えさせなければダンジョンでは危ういと考えた。

 

 無能力者達はそれを聞き、それもそうかと思った。

 それにダンジョンに潜るための武器だってまずは必要だと。それを扱えるようになるためにも体を鍛え、業を磨くことを今は優先しようと考える者が増えることとなった。

 それに管理部はダンジョンに潜る物資の支援もしている。当然武器を作る工場や職人にも伝手があるだろう。いつか自分達もそこを利用してダンジョンに挑み、マジックアイテムを手に入れてやると夢を見る。



 (そうか、マジックアイテムかぁ…。異世界には魔法の武器や道具なんてのもあったか。待てよ? もしかして魔石の使い道ってこれなのか? 見つかった剣にも宝石のような石が~ってことだし。

 もしかしたら、自分が使ってる魔法の力も今後マジックアイテムだと言い張れば制限しなくて済むんじゃないか? ダンジョン管理部で聞くことがどんどん増えてくな…。

 攻略部隊がダンジョン潜ることでどんどん発見が見つかるし、世界的にはこれで発展したってところなのか?)


 将一がこの街で見た魔石の利用法として思い出すのは、家についてるよくわからなった機械、街中や建物先で見かけたゴーレムのようなもの、そしてエンジン音がしない車だった。

 あれらがマジックアイテムの可能性はここにきて確かなものに思えた。

 おそらくまだまだ他にも利用している物はあるのだろうが、道具に例えるとどれだけあるのかすら見当がつかない。ダンジョン街でそのあたりも販売してそうだと早めに見に行くことを決定した。


 (それはそれとして…ダンジョン攻略部隊は? 攻略から宝箱探しがメインになってないよな?)


 マジックアイテムが見つかったことで目的が変わったりしてないかと少し心配になった将一。

 しかしその心配は無用だった。彼等は、フリーが各国のダンジョンでマジックアイテムを探す依頼を受けていることを聞かされている。ならば自分達は先に進もうと、他を気にすることなく動くことができた。



 無能力者達にダンジョンへ潜ることへの憧れを見せた攻略部隊は、高い士気を維持したまま今日もダンジョンを進んでいた。

 彼等は先日やっと10層のボスを倒して見せた。能力者達が増えたとはいえ一番手ごわかったと、当時の記者に答えている。

 そして先へ進む転送陣に入り、気になっていた11層に足を踏み入れる。


 予想としては11層で何か変わるのではないかと思われていた。

 ずっと暗闇の洞窟であったが、流石にそろそろ景色が変わってもおかしくはないだろうと。希望も多分に含まれていたようだが。


 その予想は当たることとなった。

 ずっと暗闇だった洞窟から転送された先は、辺り一面に木が生い茂る森の姿が攻略部隊の目の前に現れた。


 ようやく洞窟を抜けたと喜ぶ攻略部隊。今までいたところとは明らかに違う光景に達成感を感じた。

 しかし喜んでばかりもいられない。今までの環境と違うという事は、装備や戦い方、作戦を考え直さなければいけないことを意味していた。


 場所が森になったことで出来る事も変わるだろう。各部隊の隊長も、ここは一度帰還を考えるだろうと帰還陣の捜索を優先させることとした。


 部隊員達はその考えを聞き、自分達の力で出来る事をしてみた。

 土の力を持つものは大地の震動を感じ取ったり、木より高い足場を作って木の上からルート探しをした。

 風の力を持つものは空に上がり、先行偵察や高度はどうかを調べた。

 水の力を持つものは沢がないか等水源を調べる。

 探査の力を持つものは仲間の存在を探したり、この森の様子を探ったりした。

 切る力を持つものは洞窟ではできなかった木を切るという事を試す。森が開拓できればいろいろできるだろうと。

 無能力者の軍人はトランシーバーを試したり、方位磁石で方角を調べたりする。

 洞窟という閉鎖空間でないだけで、やり方がかなり増えることになった。


 こうして攻略部隊の各々ができることを考え実行したことで、11層の攻略も始まっていくことになる。

 

 地上に帰還した攻略部隊は、11層からの新事実を各国に伝えた。

 ずっと暗闇の洞窟だったところから、ついに新しい場所に出た。これほど進んでいると実感できるような変化に各国は満足げだった。相変わらず先は何処まであるのかわからないが着実に進んでいるのだと。

 そして各国は考えていた案を攻略部隊に提案する。乗り物の実戦投入であった。


 この考えは以前から考えられていたものだった。しかし洞窟という環境ではそれが難しいこともあり、見送られていた案だった。

 だが風の力を持つものが空に上がり、高度を確認したことで空が使えるという事が分かった。この事は攻略をするうえで大きな進歩になるだろうと。


 そして結果は…半分失敗。

 確かに空が使えることは大きかった。しかしダンジョンの入り口はそれほど大きいというわけではない。装甲車程度なら問題はないが、戦車やヘリ、戦闘機といった大きさは無理があったのだ。


 そこで考えられたのが現地で組み立てられないかという案だった。

 しかし暗闇の洞窟では地形が悪い。足場もそうだが、ずっと暗い中での作業は厳しいと判断され今まで保留されていた。


 だが森ならばどうかと。空にはなぜか太陽があって常に明るい。それに森の木は切ることができた。これはダンジョンの中に拠点を設立できる可能性が出てきた。


 能力者達のおかげで11層の地図作製はずいぶんと早く終わった。やはり空から確認できたのが大きい。

 モンスターも新種が確認されたが、攻略部隊で問題なく対処できた。


 こうして場所は確保され、拠点の作成が始まることになった。

 物資が搬入され森の拠点地にどんどん集積された。これで後は組み立てよう、そう決まると組み立て作業員が送られることになる。


 だがここで問題が発生した。技術者が送れなかったのだ。

 物資はしっかりと搬送されたのだが、人の転送はできなかった。

 ダンジョンがどうやって判断しているのかわからなかったが、その層に到達したもの以外は転送陣で置き去りにされた。

 組み立てるには攻略組がやるか、技術者を11層まで到達させる必要があるとわかり計画は再びストップしてしまった。



 (はぁー…その層に到達した者以外は一緒に行けないわけか。これじゃあ組み立ては厳しそうだな。

 一番早いのは攻略部隊が技術指導を受けて自分達で組み立てる方法だろうな。技術者を護衛しながら11層まで潜ってくのは現実的じゃないわ。

 …軍にいる工兵って同じような訓練受けてるのか? 非戦闘員じゃないならその人たち連れて11層まで行った方が今後の為にはなるか? 軍の内情とか知らないからなぁ…わからん…)


 拠点作成計画を見直さなくてはいけなくなり、とりあえず攻略部隊は今まで通りダンジョンを進んだ。


 しかし空から見れることで地図作成が効率よく出来上がり、各部隊の合流がスムーズになったのは大きい。11層の森エリアは洞窟エリアに比べ進軍スピードが極端に早くなったのはありがたいことだった。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ