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200話 ダンジョン1層(PT) 飯はモチベ維持に重要なので




 明日香さんがロックスネークに追いかけられるという不測の事態はあったが、それからしばらくは何事もなく進むことが出来た。

 道中、怪力の手袋を皆で回しながら怪力の能力を疑似体験するなんて光景はあったが今ではそれも落ち着いていた。

 そして時間的にもお昼ごろとなり、次の小部屋でで昼休憩を入れようという話になった。


 「ふぅ…到着だな。

 それじゃあこれから昼休憩にするから、各自時間までゆっくり心身共に休んでくれ。5分前に一度声かけるから」

 『了解』


 小部屋に着くと理人さんのその言葉で昼休憩となった。なんかほぼ何もしてないから昼までの時間が長く感じたな…歩き続けるだけってのは体感時間狂うわ。

 やはり浜田さんも言っていたように、同じ景色ばかりの洞窟だとこまめな時間確認が大事なんだと思わされた。時間間隔がおかしくなるね。

 

 休もうと地面に座り込もうとしたところで周りから呼ばれた。そういや休憩時なんだから水魔法能力者の頑張りどころか…。

 手洗いの為に液体石鹸と水を出す。液体石鹸も行けるのかと驚かれたが、相性がいいと理解したからか最初のように突っ込まれることも減ったように感じた。


 手洗いが終わると各自の希望するお茶をコップに注ぎまわる作業だ。

 能力と相性が良く、それほど疲れがないと知ったからか遠慮が減ったような気がする。こちらとしては変に遠慮されるのもあれなので、これぐらいが丁度いいといえば丁度いいな。


 (もっとぶっ続けで探索と戦闘をしていくってなら話は別だろうけど…最初の戦闘以外だとロックスネークに鉄の壁出しただけだからなぁ…。攻略目当てだとほんと力を使うことが無いわ)

 これがもっと下の階層で地図が仕上がってないとかだと話は別なのだろうが、ある程度地図が埋まっている1層辺りだとこうも楽に進めるのかと驚いていた。


 (とはいえ…新しい通路が出来てたり、元々あった通路が無くなってたりで明日香さんはルート選びにいろいろ四苦八苦してたっぽいけどね。

 やっぱり一番大変なのは索敵班な気がするな…洞窟っていう地形状仕方ないことなんだろうけどさ)

 探索というだけあって、一番忙しくなるのは調べるという所だ。探知系能力者はそれこそ常に働かなくてはならないぐらいの忙しさだろう。こうやってモンスターが居ないルートを通るのなら尚更だな。


 (やっぱり得た報酬って山分けだとしても取り分多かったりすんのかね? その辺はPT間での話し合いで決めてるんだろうな…)

 探知系は先行偵察と危険度が高い仕事もこなさなくてはならないし、均等だとやはりその辺で文句があったりするのだろうか…と、各自にお茶を配りながらそんなことを考えていた。


 「これで全員だな…おかわりが欲しかったりしたら言ってください」

 「おう、頼むな。それと次から次であれだがお湯くれるか? 湧かすより貰った方が早ぇし」

 日向さんがそう言いながらこちらに見せるのはカップラーメンだった。今日のお昼はそれらしい。


 「わかりました。それにしても…それで足りるんですか? 前衛って戦闘ともなれば体動かすでしょうに…」

 「基本は戦闘を避ける方向だしな。後手早く食い終わって休憩時間に回せるしよ。

 それと予定通りなら今日はボス部屋の前までだ。道中で戦闘が無ければ今日は戦闘無しってことになる。最低限腹が満たせればそれでいいかなってさ」

 「ボス部屋の前までですか…やはりしっかり休んでから挑むってことですか…」

 「そうね。戦闘がなくてもなんだかんだ1日中歩きっぱなしで疲れてるし、その状態でボスに挑みたくはないわ」

 そう言って質問に答えてくれたのは由利さんだった。手には日向さんと同じくカップ麺が握られている。


 「由利さんもお昼はカップ麺か? 俺等と違ってモンスターの進行防いだりするかもだし、もう少し力がつくもんのが良いんじゃないか?」

 「別にいいじゃない私が何食べようと。最近いろんなの出てきてるから色々食べてみたいのよ」

 「おっしゃる通りで。でもまぁ…確かにどんどん種類出てきてるよなぁ。いろんな味試してみたいってのはわかる」

 「お湯注ぐだけであれだけ違う味食べれるんだから便利なものよねぇ。1個自体も軽いし、大量に持ち運ぶんじゃなければかさばるもんでもない。今回みたいな短期の時は重宝するわ」

 「容器なんかもスライムが片付けてくれるしな。消化がまだならその場に残るし他の探索者が通った目印にもなる。こっちはゴミを持ち帰んなくても良いってのがありがたいわ」

 日向さんと由利さんがカップ麺最高! と、自分の持っているカップ麺を持ち上げる。ずいぶん人気なんだなカップ麺…いやまぁ、便利なのは知ってるけどね?


 「お手軽に食べれていいんだよねぇ。携帯食料じゃなんか食べた気になれなくて…」

 「理人さん…あなたもですか…?」

 そう言って新たに話に入ってきたのは理人さんだ。こちらも同じく手にはカップ麺と…。


 「結構多いんですか? 昼食にカップ麺って」

 「ですねぇ…カロリーも結構取れますし、汁まで飲めば腹も膨れます。何よりいろんな味が出てますから飽きもそんなこないんですよ」


 そしてそれで足りなければ携帯食料なり保存食を食べればいいとか。長期の探索でもなければカップ麺をお昼にしてる探索者は以外の多いそうだ。

 そんな話をしていると日向さんと由利さんからお湯を求められ、3人の容器にそれぞれ注いでいく。

 後はこの待ち時間が楽しみでもあるらしく、3人は最近どんなカップ麺を買ったかで話を続けていた。 


 「あの3人はお昼によくカップ麺食べてるわね。今までの探索でも必ず1個は食べてた気がするわ」

 お湯を入れ終えた自分に話しかけてきたのは明日香さんだ。こちらは手におにぎりを持っていた。


 「そうなんですか。まぁ、それで体が維持できているなら問題ないんでしょうけど…明日香さんはおにぎりなんですね」

 「能力で結構頭使うからねぇ…先行偵察で結構動くから腹持ちもいいご飯じゃないと。あたしはお昼ご飯派かしらね」

 その他にも奏さん、凛さん、京谷さん、丈さんがご飯派らしい。丈さんに至っては自分でおにぎりの具を自作する程のおにぎり好きだとか。


 「やはり日本人、米を食わねばな。

 それにあの戦争で田畑がかなりダメになってしまった。そこから再び取れた食材は復興の証でもある。

 道場主をやめたら農家になるのもいいかと考えていたりするのでな」

 「そうなんですか?」

 「ああ。これでも体の丈夫さはそれなりに自慢できるものの1つだ。農作業は力仕事だと聞くからな。探索者を引退することがあれば田畑でも耕そうかと思っているよ」


 丈さんの話によれば土地自体は比較的格安で借りれるらしい。それだけ農業従事者も人手が減ってしまったという事だろう。

 田舎にダンジョンが出来ていればそこは間違いなくモンスターがあふれた現場の1つだろうし、近くに住んでいた農家の人達ももれなく…。そうでなくとも湧いたモンスターを一掃するのにダンジョンの周りは酷いことになったはずだ。そりゃ田畑もダメになるわ。

 農業従事者には国からの支援金も出るとのこと。国から見ても現状大歓迎の職業らしい。


 「農業従事者には土の能力者を募集してるとあるが…石田さんもどうかな? 依頼書にもそんな感じのものがいくつか来てると思うぞ?」

 「あー…そういった依頼も来てるんですね。まだ詳しく見れてないのでちょっとわかりませんが田起こしとか頼まれるんですかね?」

 「土づくりは大事だからな。育成に関しては樹の魔石がずいぶん活躍してくれるらしいが最初の土づくりは人の手でやらねばいかん。畑から作物を掘り起こす依頼なんかもあったかな…?」

 

 ほんと、依頼はあっちこっちから来ているんだなぁ…と、丈さんの話を聞いて思った。

 時間があればダンジョンとは関係ない依頼を適当に見ていくのも面白そうだ。能力者に依頼する仕事はほんと多岐にわたるね…。


 そして最後に残った蔵人さんにお昼は何かと聞くと、なんと! いつぞや行ったことがあるハンバーガー屋のあれだった。どうやら昨日自作して持ち帰って来たらしい。

 手作りハンバーガーは自分も考えていたことだが実際にこうして目にするとは…。自分でもその内行って作ってくることにしようと、蔵人さんのお昼を見て思わされた。


 全員に飲み物のおかわりを最後に確認し、大丈夫と返事を受け取ってようやく自分のお昼にありつく。

 食事時にはお茶以外にもインスタントのスープだったり、レトルト食品を温めたりと水魔法の能力は大忙しだとか。やはり食事は好きなものを取りたいという事だろう。


 今回攻略部隊には軍から物資が配られるらしいが、この話を聞いていると食事だけは自分で用意する人が多いという田島さんの言葉にも納得できた。ダンジョンでの1食目ぐらいは自分の持ち込んだものを食べたいという事か…。

 

 自分の荷物から先日業務用スーパーに行った時に購入したロールパンを取り出す。そのままだと流石にあれなので、縦に切れ込みを入れてマヨと合えたゆで卵、ハムとレタス、ソーセージなんかをはさみロールパンサンドを作ってきていた。

 やはり食事はダンジョンにおいてモチベーションを維持するにも欠かせないものなのだと、自分で作ってきた昼食を食べながら再認識していた。

 

  

  


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