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20話 施設での調査(7)  能力者観察機関 発足



 国はまず、能力者の把握から始めなければならなかった。赤ん坊が知らずに能力を使ってから発覚するが、出来るなら生まれてきた子が能力者かどうかをその場で知りたい。

 しかし研究者たちが調べた結果、子供たちの体内のどこを検査しても能力者持ちなのかそうでないのかの違いは分からなかった。


 ならば能力者には能力者を! という事で、能力者の中に探知だったり感知だったり調査系の力を持った子がいないかを調べることになった。

 すると、ここでわずかだが該当者がいたのだ。

 国はすぐさまその子たちに赤ん坊を見てもらうが…よくわからないと。調べる対象の子が幼すぎたのかなんなのか…。


 仕方ないので、逆に探知してくれる子供達の方の力を伸ばせばいけるかと教育をしてみる。

 まずはやれることからやっていくしかない。各国は地道なところから始めるしかなかった。


 第3次世界大戦から5年目。国は今までの経験を踏まえ、同じような作戦を決行した。

 やはり中間部でモンスターが出るところが結構あった。しかし急に人材が育つわけもなく、多少の犠牲は出しつつもどうにか切り抜けるしかなかった。


 そのスタンピードから1年後。今年のスタンピードもどうにか切り抜けたその年の中頃に、ある国が馬鹿をやらかしてしまった。

 能力者確保を強引に行っていたことが発覚してしまったのだ。



 各国が進めていた探知系能力者の教育。国が指導の下、子供達には大変かもしれないが能力者の確保は各国の願いだった。

 厳しくしすぎてもこの年の子供だ、嫌になることだってあるだろうと細心の注意を払って育児と教育をしていた。

 

 その甲斐もあってか、探査系能力は少しずつではあるが力を発揮してくれた。多少時間がかかってでもいいから、ダンジョン出現から今に至るまでに出産された子供をみてもらう。

 この能力持ちは各国に必ずいるとは限らず、その能力を持っている子供たちには世界を飛んでもらって確認してもらう必要があった。


 その最中、ある国で確認していた子供たちの中の何人かが泣き声をとらえたという。

 最初は気のせいだろうと思ったそうだが、子供たちはしきりに気になる様子だった。

 

 探知系能力者の中に、離れた相手の思いを受信できる者が何人かいた。

 リーディング能力やテレパシー能力といった力を持っている子等が、泣いている子の思いを受信したのだ。

 その中でも一番力が強かったリーディング能力の子を中心として、感じ取った思いを元に発信源に近づくことになったのは自然の流れだった。


 そして知られた。子供を親元から無理やり引き離し集めていた施設が。

 その結果が各国に伝わったのは当然の話だった。どの国も無関心ではいられない出来事なのだから。



 (あー…やっぱりやっちまってた国がいたのね。絶対どっかでこうなるんじゃないかなって思ってたわ。能力者なんてマッドの対象ドストライクだもんなぁ…)


 いつかはどこかがやるんじゃないかと思っていたがついに出てきた。

 こんな世の中だ、何が何でもと思う者は必ずいると思った。対象は子供と比較的どうとでもできそうなことも災いした。


 (人体実験とか研究じゃお約束過ぎてなぁ…。戦争があったんだ、無茶をやる人間がいるのは世界が違かろうと同じだな)


 一応社会の暗部というのは生前働いていた会社でも見たし、経験だってした。社会には人の汚い部分がずいぶんあるなと、その時に思い知らされた。

 国ならばその比ではないだろうと、無理やり集められた子供たちに同情する。


 そんなことを思いながら続きを読む。仕方がないと割り切ってはいるが、若干気持ちはげんなりしてしまっていた…。

 


 各国に暗い部分が知られた後は当然の結果というか、糾弾があったのだろう。

 詳しいことは完全に伏せられているが、世界がモンスターにあふれ、こんな状態で何とか世界を復権させようと動いている最中での出来事。腹の中では何を思っているかわからないが、表面上は手を取り合おうととやっている中でこの始末。

 世界各国で行っている能力者教育案に影が出来た瞬間だった。


 無論、このことは詳しい事情を伏せられた状態で世界に流された。

 まあ当然というべきか非難轟々。能力者を認め協力していた者も、能力者の事を疎んでいた者もそら見たことかと、ここぞとばかりに声を荒げたのだ。

 各国としては手痛い汚点が出来てしまった。


 そんなことがあったからか、能力者達からもその周りからも、国に能力者を任せて大丈夫なのかという疑問の声が上がるのは時間の問題だった。


 とはいえ、世界は現在進行形で危機に瀕しているというのは誰もが分かり切っている状態だ。

 たとえ心配だろうと、モンスターの脅威は未だ全世界にくすぶっている。不安を抱えながらも国についていくしか国民に選択肢はないのだが。


 そんな状態でまた数年が経った。その間にあった事といえば毎年のスタンピードと、ダンジョンを効率よく潜るための調査、世界復興とやることは変わらない。

 

 そんな変わらない中で、国を超えて能力者観察機関という組織が出来上がった。

 もちろん出来た発端は、能力者を無理やり集めたことで不満が溜まったあの事件の所為である。

 能力者を認めていた者も、認めたくないが国がそれでいいのか…という者が集まりできた集団だった。


 やることは読んで字のごとく能力者の観察だ。能力者の現状をただ世界に知らせる事。能力者自身に関われる権限はないが、能力者をひそかに集めようものならそのような動きをしていると知らせ、あのようなことが再び起こらないようにさせる、抑止を目的とした集団が出来上がった。


 これにより、国が担っていた能力者調査をその組織に任せることができ、少しは楽になったと喜んだ。その反面、能力者については国が管理したいと少なからず思っており、それが無理になりそうだと悔いが残ったのもまた事実。

 だが今更後悔したところで手遅れと気持ちを切り替え、各国は概ねその組織を頼り、自分達は能力者育成に力を入れることにした。


  

 (能力者観察機関かぁ。公的な組織ってことは公式HPあるよな? ちょっと見てみるか…)


 見ていたページから離れると、いくつ目かになる別ウィンドウを開いてその機関の公式HPを見てみる。

 規約やら会長やらメンバーはどうでもいいと、組織の仕事だけを調べる。どうやら書いてあることは先ほど別ページの説明に合った通り、能力者の現状をただ知らせるだけみたいだ。

 個人情報を守るためかどの国にどんな能力者がいるとかはないが、能力別による人数比だったり、能力名から簡単な説明だったり。能力の横に×が付いているのは、亡くなって今はない能力という事らしかった。

 

 (意外としっかり調べてあるなぁ…流石は公的機関。まぁ流石に全部が全部ではないのだろうけど参考にはなるかな)

 適当にどんな能力が今のところあるのか見てみるが、思いのほか項目が多い。かなり細かく能力がわけられているらしい。


 (この釣りの能力っての面白いな。1投1発とかではないんだろうけど、釣りがうまくなるって…漁師にでもなってるのかもな。そういうのもいい能力の使い方だよなぁ)


 いつまでもこの能力表の分析をしてたいが、今調べるのはそれじゃないとページを閉じて元に戻り続きを見る。

 どうにも国は能力調査をこの組織に任せて、能力者が国に所属してもらいやすい環境づくりの見直しを始めたらしい。


 

 各国は汚点を消すことはできないが、それを押してでも能力者達にやってもらいたいことがある。もう一度能力者育成案を考え直すことにした。


 まずは能力者が己の力をしっかり把握し、その力を役立てたいと思ってもらうための能力者専用教育施設を設立した。

 いろいろメリットはあるが、やはり国としてはその力を今1番リソースを割いているダンジョン攻略に向けたかった。


 能力的にも軍に所属できる力は武力に偏る者が多くなるだろうと、軍に所属すれば今までダンジョンで得た情報を閲覧できるという事にした。無論、秘匿義務は課せられるが。

 それと各国との共有も軍には降りてくるので、他で得たダンジョンの情報も随時確認できる権利も。

 とにかく国としては少しでも早く能力を扱える人材になってもらいたかった。


 そして再び時が経ち、最初に能力が発覚した子供達も少年少女から青年女性と呼べるくらいに成長した。

 その間にダンジョン攻略も少しずつは進んでおり、スタンピードも結構抑えることが出来るようになった。まだ完全ではないが…。


 街の復興だが、これはかなり進んできたと言っていいだろう。

 子供だった能力者も小学生から中学生となるにつれ、自身の力の使い方も把握し、復興をバイト感覚で手伝う者が増えてきたためだ。


 一度世界はかなり破壊され、復興を果たしていくと同時に法の整備も見直されるところが結構出てきた。

 成人は男子16歳、女子15歳となったり、それに伴いいろんな法律の基準も年齢が下げられたりと、まあ…戦時で世界規模の災厄故だと思わせることが分かるようなものがちらほらと。


 それと国としては嬉しいことに、能力者が予想以上軍に入ってくれた。教育施設でもある程度はされてはいたが、しばらくは訓練を行うことになる。

 そして能力者が軍での訓練を終えた時、世界は一気に動き出すこととなった。


 最初に1層を攻略したダンジョンの完全攻略が、大国で始まろうとしていた。

 



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