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195話 ダンジョン1層(PT) 戦力確認 攻撃型ゴーレム




 「居たわ…こいつ等ならどうかしら?」

 「お? 良さそうなモンスター見つかったか? なるべく手ごろそうな相手選んでやれよ?」

 

 転送された場所からしばらく進みつつ、いくつかのモンスターをやり過ごしていると探知をかけていた明日香さんが声を発した。1戦するのにちょうどよさそうなモンスターを発見したらしい。

 姿は見えないのでなにが居るかはわからないが、大きさだったり地上型か飛行型かくらいの判別はできた。


 「たぶんなんかのゴーレムが3体に塊蟻系が4体ね。正体については目視するしかないわ」

 地図を確認しながらどの辺にいるかを皆に説明する。進行ルート上に居てくれたし上々だ。これでちょうどよさそうな相手ならルート変更する手間も省けるというものだ。


 「とりあえず確認に向かうって事でいいの? どっち道進行方向なんだしさ?」

 「それでいいよ。もし確認して手ごわそうならルート変更するだけだから。

 石田さん、次の調査で戦闘になるかもしれないので準備しておいてください」

 「わかりました。

 とはいえ、相手が何かしっかり判明してからですね。今できるとしたら気構えぐらいでしょうか」


 武器も防具もない自分としては装備の点検をする時間は必要ない。持っている武器は剥ぎ取りナイフの2種のみだが、今回は回収するとしても魔石ぐらいなものだ。これを使う事もあるまい。

 それに現地での解体となると、自分以上に田中さん達のが手慣れているだろう。解体するにしても手伝えることと言えば周囲の警戒ぐらいなものじゃないかな? それにしても奏さんの能力があるからいらんかもだし…。


 武器や防具を点検する必要が無いというのは誰が見てもわかった。自然体で挑めるというのならこれ以上何も言う必要はないと、皆してモンスターが居るであろう方向に足を進める。ここからは私語厳禁だ。

 しばらく歩くとモンスターがいるであろう場所に明日香さんが1人先行偵察に向かった。


 こういう時に索敵班が2人居るというのはこちらの危険も減るということもあり、役割が被っていようと便利なものだと感じた。これなら別の通路からモンスターが急に近寄ってきても安心だ。

 明日香さんが確認に向かってからしばらく待機していると、その向かった方向から戻ってくる姿を再び捉えた。腕で〇のジェスチャーをしているのだがこれはOKということだろうか?

 戻ってくると皆に近づきひそひそと見てきたことを話し始めた。


 「確認して来たけどアイアンゴーレム1に普通のゴーレム2。鉄塊蟻は4ね。石田さん、これソロでいける?」

 「大丈夫だと思います。ただアイアンゴーレムが遠距離攻撃するかもですしそこが少し面倒ですかね。鉄の弾飛ばしてくるあの攻撃がうるさいですけど周囲に他のモンスターは?」

 「私の能力範囲内には反応なしよ」

 「私の方もないわね。多少音が出ても連戦になったりはしないと思うわ」


 奏さんと明日香さんが周囲は大丈夫と返事を返してくれた。

 外の警戒は俺達がしておくと理人さんを始め、様子をうかがうメンバーが問題ないと言ってきた。こちらの戦闘を見つつ後方の警戒もやってくれるようだ。

 それらを聞いて自分の方は問題なしと口にする。後ろは田中さん達に任せて自分は戦闘の方に集中すればいい。


 各自がそれぞれ頷いたのを確認すると自分が一番前に出る。

 さて…ゴーレムのお披露目開始と行きますかね。


 モンスターが居る通路の角まで来ると駒が入っているケースを取り出す。後ろにいる田中さん達はこれが何かまではわからないだろうけど。

 そしてケースから駒を取り出すと、仕舞っておいたゴーレム1号から10号までを出現させた。


 通路の角の突如として次々現れるゴーレム達。その光景を見て、後ろからは素っ頓狂な声が次々と上がっていた。

 そしてその声に反応してか、通路の奥からはズシン…ズシン…といった足音が聞こえてきた。


 「ああ…向こうから来ちゃいましたか。でも曲がり角で迎え撃てるなら尚更楽に対処できるかな。むしろ向こうから来てくれるならアイアンゴーレムもここで迎撃出来るし遠距離戦にならずに済むってものか。

 わざとこっちの存在知らせるのも手だな…」

 「いやいやいや! そんなこと言ってる場合っ!?」

 「っていうか、そのゴーレムなにっ!? え? ゴーレムって持ち運びできるもんだっけ!?」

 「無茶苦茶数いるんだけどっ!?」

 「石田さん! いったいなにしたっ!?」

 「ちょっと予想外過ぎるよっ!」

 「ゴーレム出せるとか聞いてないんですけどっ!? 土魔法なの、それっ!?」

 「9…10…全部で10体も…。何ナノこれ?」

 「おいおいおいっ!? なんかとんでもないことなってんじゃねぇかっ!」

 「これは!? いったいどういった能力を…まさか、マジックアイテムか!?」


 後ろから聞こえて来る声を無視して、まずはゴーレム達に迎撃態勢を取らせる。おそらくゴーレムよりは足の速い鉄塊蟻が先に来るだろう。

 10体いる内の6号から10号を前に出させる。大盾組は端に寄せておいていつでも交代できるようにしておく。


 しばらくすると、鉄塊蟻達が曲がり角を超えてこちらの通路までやって来た。迎撃開始だ!

 「盾の部分で殴りながらひるんだところで足を落とせっ! 大剣組は後列で待機!」


 通路に並んだ6号から10号がその指示に従う。前列の3体は腕部についている外側の盾部分を使い、鉄塊蟻の頭を殴り始めた。

 殴られてる方の鉄塊蟻もいくら体に鉄塊を纏っているとはいえ、同じ鉄(鋼)の塊であるゴーレムの攻撃は流石に堪えるようだった。

 一撃一撃を受けるたびに、体に纏っている鉄の部分がぶつかり合って火花を散らす。そして威力で見れば上から降り下ろしているゴーレムに分があった。


 そもそも鉄塊蟻は防御に優れてはいるがそれほど力が出せるモンスターではない。特に上方向に対してはそれが顕著だ。自身の重さを活かして下に掛かる力は大きいが上は無理だった。

 それに頭を押さえられている為ぶつかることもままならない。最も、重量があるゴーレムにこの距離でぶつかってきたとしてどれだけの効果があるのか…。


 それでも何をしないままの鉄塊蟻ではなかった。前足を持ち上げるとそれをゴーレムにまとわりつかせる。足にはかなりの太さがある棘がついているのだ。

 しかしこの攻撃も相手がゴーレムともなれば無意味に等しかった。生き物ではないゴーレムにしてみればそんなもの痛くもかゆくもない。そして鋼の体はそんな棘が刺さるほどやわな体をしていなかった。


 「むしろちょうどいいな、良い持ち手がついてるじゃないか。

 お前たち! 足の棘を掴んで引っ張ってやれ! いい滑り止めだ」

 その指示を聞いて腕の武器から一度手を離すと体にまとわりつかせている足を掴む。手に突き刺さることもなく、引っ張るためのいい引っ掛かりが出来たとばかりに力を込めて足を引っ張った。


 「ギィィィィッ!?」


 まるでさび付いた鉄のドアを無理やりこじ開けた時のような音が鉄塊蟻の口から出た。

 昆虫だし痛みには耐性があると思っていたが、この大きさともなれば痛覚も発達しているのだろうか? モンスターだからか? よくわからないがありがたいことだ。

 痛みがあるなら弱点として活用させてもらおうと、ゴーレムに「そのまま力を込めて引きちぎれ」と指示を出した。

 

 ゴーレムはその指示をすぐさま行動に移す。掴んで引っ張っていた足を左右に広げると、腕に力をかけて更に外側に向かって引っ張る。

 その行動によって口から洩れる嫌な音がさらに増したところを見ると結構有効らしい。一瞬で切断されるのと違って引きちぎられるともなれば負荷が相当来ているのかもしれない。

 

 そしてついに限界が来たのか、掴んでいた足がブツンッ! と、胴体部分から引き離された。

 再び漏れる鉄塊蟻の鳴き声。確実に効果は出てるようだな…。


 「今のうちに頭を潰せ! 前足2本無くなれば相手の攻撃の頻度も落ちてる!」


 相手の反撃する力も弱まったと見たところで攻勢に出る。武器を再び手にして、鳴き声を上げている頭に盾部分を叩きつけ始めた。

 足2本が無くなった影響か、その体を支える力も衰えたようで最初程の反発もされなくなっていた。そうなれば後は力が勝っているこちらの勝ちだ。

 動きが鈍い鉄塊蟻の頭部分に、鉤爪の先端についている刃の部分を差し込む。後は力に任せて切り落とすだけだった…。


 力をかけて落とされた首が地面に転がる。

 昆虫らしく頭が無くなったとしても足がしばらく動きっぱなしだったが、それもだんだん弱まってきていた。


 「よし! 頭さえ落とせば終わりだ、他のゴーレムの援護…いや、最後の1体を相手しろ!」


 通路の広さ的にも3体が限度だ。1体を倒したゴーレムが鉄塊蟻の体を自分の後ろに引っ張り、空いた部分に出ると後ろにいた鉄塊蟻を相手取る。

 その間にも他のゴーレムが鉄塊蟻の頭を落とし始めて手すき状態となった。こうなれば複数で単体を相手にすることが出来る。

 鉄塊蟻の死体を後ろに引っ張ると、出来たスペースを通って最後の鉄塊蟻に群がった。スペースが出来たおかげで大剣持ちのゴーレムもこれで前に出させるな。

 こうなってしまえば1対1でさえあれなのに、相手に勝ち目は無い。最後の1体もそう時間をおかずに死体となって後ろに下げられた。

 次のゴーレム戦の邪魔だ。


 「大盾部隊前へ! 前回と同じく押して押して押しまくれよ!」


 6号から10号が鉄塊蟻の死体を引っ張りながら後ろに下がってきて、代わりに左右に展開していた大盾部隊が通路に陣取った。大盾を持ってることもあって、通路は先ほど以上に隙間が無い状態だ。

 だがこれでは視界が悪いと、土魔法で台を作って天井付近からの観察に切り替える。

 今回は前回より更にパワーアップしているので負けはないだろうが、一応指示だけは出せるようにと視界の確保しておく。様子も見たいしね。


 もう角のすぐそこまで来ているであろう足音を聞き、ゴーレム達に迎撃態勢を取らせる。

 今回新しくした大盾部隊はどんなもんだろうかと、ゴーレム同士…ぶつかり合うその時を待った。





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