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187話 戦果は十分だ




 「いやぁ、満足満足! 業務用スーパーってなぁこうもいろんなもんが置いてあったんだな!」

 「いろいろ買いましたもんねぇ…いくらおつまみの期限がそう短くないからって段ボールで買っちゃいますか?」

 

 業務用スーパーでの買い物を堪能した2人は、途中で見かけたピザ屋で夕飯を済ませるために入っていた。

 結局浜田さんの誤解は解けず、店員に呼ばれる形で強制中断となってしまった…。うぅむ…持ち帰ってきてる物が魔石だけなんだが、これだと一丁前の探索者とは言えないよなぁ…。

 浜田さんと別れた後に槍一さんと再び店内を回ったが、それ以降浜田さんを見かけることはなかった。もう帰ってしまったのだろう。

 

 お昼時になると昼食は店内にあったフードコートで取った。

 店内で買った物を温めて食べれるよう電子レンジが置いてあったり、『店内の食材を使って作りました!』という看板を掲げてる店なんかもあってどこにするかとしばらく2人して悩んでいた。

 結構悩んだ末、手早く済ませようとレンチンした冷凍ものが昼食になったのだが、これが意外と美味しく追加で買って帰る事になったりもしたな。


 昼食を取ると再び店内を見て回った。

 店に入る前に話していた洗剤やトイレットペーパーなんかも1個当たりの値段が安く、安い安いと言いながらカート1台分買い込んだ槍一さん。

 腐るもんでもなし、まとめ買いしておくに越したことはないだろうとは言ってたけど…流石にカート1台分は買いすぎではないだろうか? 

 

 いくら安いとはいえ、そんなに買っても持ち帰れないだろうと思ったのだが…いやはや、流石は『業務用』と名がついてるだけの事はあった。

 元から商品を運ぶのが仕事とばかりに、個人宛に運送を申し込むことが可能だった。お金はいくらか取られるが、運んでくれる上限は無しとのことだ。最も、利用したことがあるのはお店ばかりで個人では初だと言われていたが。

 やはり一般に宣伝が足りていないのではなかろうか?


 そうして持ち帰る当ても出来たと再び物色を開始した。

 いろいろ見すぎて帰りが夕飯時にまでなるとは流石に思ってもいなかったけどね…。

 そして今に至る。


 「いやいや…あれだけあっても意外と直ぐになくなるもんだぜ? 家で宅飲みも結構するし、飲み仲間と集まってダンジョンの話なんかしながら消費してればあっという間よ。

 それと来た奴に欲しかったら売ってやってもいいしな。あんだけあれば軽く店みたいになっちまうぜ。

 要は俺が代表で買いに行った後、皆で分けりゃいいんだからな。流石に全部俺1人で消費しようとは考えてねぇよ。何なら将一にもいくつか分けるぜ? 今日連れてってもらった駄賃分としてな」

 「では今度いただきましょうかね」

 「おう。

 裂き烏賊、烏賊下足、ピーナッツにクルミと何でもござれよ。好きなのセットで持っていきやがれ。

 というか、今度将一も家に飲みに誘ってやるぜ。1層での討伐話とか聞かせてやんよ」

 「じゃあ私は逆に今の進行具合なんかを話しましょうか。

 探索者の人がいろいろ来てるらしいですし、探索の参考になる話なんかもそれで言ってもらえるとありがたいですね」

 「いいぜ。俺と同じ中堅クラスから、将一と同じ洞窟探索やってる奴と色々いるからな。

 酒入ってちょっと言い分に怪しい所はあるかもしれねぇが…まぁ、参考になる話なんかも聞けんだろ」

 「ではその時に話せるよう次の探索も早い所決めてしまいませんとねぇ…。明日は依頼の確認にでも行ってみるかな…」

 「お待たせいたしましたぁー!」

 今日買った商品についてと、それの消費の仕方なんかの話を適当にしゃべっていると、先ほど注文したものを店員さんが持ってきてくれた。焼き立てのピザのいい匂いがするなぁ…。


 「こちらジャガ明太マヨのピザと、照り焼きチキンBBQソース風のピザになります。それとお飲み物の生中とジンジャエールになります。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」

 「ああ、なんかあればまた頼むからよ」

 「では、ごゆっくりどうぞ!」

 そう言って店員さんは離れていった。

 

 「うっし! ピザも来たし…まずは食っちまうか」

 「はい。あ、ちゃんと切り分けられてますね。槍一さん、取り皿です」

 「さんきゅ」

 取り皿を分けると、早速来たピザを互いに取った。照り焼きチキンが槍一さん注文で、自分は明太子の方だ。明太子好きなんだよねぇ~。


 「んじゃあ、買い物お疲れさん…ってことで乾杯だ」

 「久しぶりにあれだけ長いこと買い物しましたねぇ。車の後部が広くて助かった…。っと、それでは…」

 「「乾杯ー!」」


 そう言ってグラスをカチンッ! と合わせる。

 運転もあるのでこちらはノンアルだが、ピザにはやっぱり炭酸がなんか合うんだよなぁ…。油っぽいからすっきりした飲み物が喉越し良いんだろうね。

 2人して飲み物をゴクゴクと飲むと、ぷはぁっ! っと息を吐く。炭酸はやっぱ喉越しいいね!

 そして焼き立てのピザに手を伸ばすと、ガブッ! っと噛み付く。口を離すとチーズが糸を引き、伸びてる部分が落ちないようそちらも口に入れると持ってるほうから切り離す。熱々のチーズはよく伸びるなぁ…。


 「んぐっ…んぐっ…ぷはぁっ! あー、やっぱ焼き立てのは美味めぇわ!」

 「ですねぇ。

 こっちのピザ、チーズはトロトロ、ジャガイモはホクホク。それと明太子の粒粒の食感は病みつきですよ。生地もふっくらしてて食べ応え十分です」

 「照り焼きチキンの方も美味めぇぞ。濃い目のBBQソースがいい具合に合ってやがる。中に入ってる野菜ともマッチしてて食い応えあるぜ。それとチーズ! こいつが濃厚だな。

 やっぱピザはチーズあってこそって気がすんぜ」

 「カロリーが非常に気になりますけど…やっぱりピザって美味しいですよねぇ。具を乗せて焼いただけなんですけどねぇ…」

 「まぁ、焼き具合とかどんなものが合うかとか知る必要はあるけどな。それでもお手軽にできる1品だわ…」

 「餃子の皮でミニピザなんかも出来ちゃいますしねぇ。手で持って食べれるのもいいですよね」

 

 ピザを片手に、お互いが食べたピザを美味いと口にしあう。手で持って楽に食べれるだけにどこか一層美味しさが感じられた。

 そうなると手は当然汚れるが、手づかみというのは食器を使って口にするというのとはまた違う良さがある。やはりピザは手で持って食べてこそだろう。


 「この上に掛けられてる刻み海苔もいい味してますね。良いアクセントになってます」

 「こっちはマスタードが隠し味的にいい味してるぞ。多少の辛さが逆に食欲を刺激しやがる。良い店見つけたもんだなぁ…」

 「来てよかったですねぇ…業務用スーパー」

 槍一さんもこちら側にはほとんど用もなかったから来ていなかったのか、この店は初見だったらしい。自分も美味いピザ屋として覚えておこうっと。


 「チラシは出してるらしいがあんま広範囲に配ってねぇみてぇだな。テレビで宣伝してくりゃあ探してでも来たってのによぉ…」

 「基本ピザ屋の宣伝って有名どころのCMばっかりですもんね。後はひっそりとチラシを近隣に配るぐらいですよねぇ…」

 「店長もあのスーパー来てんならこの店の存在知ってただろうに…少しは情報おろしてくれっての」

 「まぁ、郷田さんも料理人ですからねぇ…客離れとかそういう所も考える立場ですから」

 今度食堂に行ったらピザなんかもあったりしないか探してみようとこの時思った。郷田さんなら食堂の1品に加えていてもおかしくなさそうだし。ピザ窯なんかも厨房にあったりするんだろうか?


 「あそこなんて客離れの心配しなくてもつぶれる事なんてありゃしねぇよ。売り上げだってあの繁盛具合だぜ? むしろ上がってるとしても驚かねぇな。

 1層の事もあるし…今後さらに忙しくなるの目に見えてんだ。客離れの心配なんざ杞憂過ぎるぜ…。

 むしろこっちの店に客層少し分けてやれって思わなくもねぇな。食堂にここのビラ1枚張っとくだけで来て見るやつ出てくんじゃねぇか?」

 「まぁ、あのスーパーに用が無い人はあんまり来ない立地ですしねぇ…ここ。業者さんやお店の人達の隠れスポット的なものなんでしょうかね?」

 「テイクアウトもやってくれる見てぇだし俺が広めてやらんこともねぇぜ」

 

 人脈はそれなりにあっからよ…と、口にする槍一さん。

 確かに持ち帰りのピザを飲み仲間で食べるだけでも槍一さんの人脈なら人集まりそうだな…。


 「問題はここまで来る足だな…。今回は将一にこうして連れてきてもらってるから良いが結構面倒臭せぇ場所にあるもんなぁここ」

 「車を持ってれば容易でしょうけど槍一さんみたいにバスで移動してる人には来にくいですね。せめて近くにバス停でも出来ればいいんですけど…」

 「今後あの業務用スーパー行くにしても行きの足が欲しいわなぁ…荷物はどうとでもなんだから問題は行き来だけなんだよな」

 「やはりそろそろ運転免許取りますか?」

 「考えもんだぜ…」


 槍一さんの稼ぎなら車を買うにしても免許取るにしても問題はないだろうが、今から免許を取るとなるとそれなりに手間がかかる。

 ただでさえ今は討伐隊の組に参加していたり、マジックアイテムを目的に4,5層行くかと話しているこの時に免許取得で時間が取られるのはねぇ…。PTの皆からおいおい…と言われかねなさそうだ。


 何とも間が悪い時期に車が必要になるなぁ…と、愚痴をこぼしながら新しいピザを手に取った。今度は明太子の方らしい。なら自分は槍一さんが絶賛した照り焼きチキン頂きますかね。

 互いが美味いと口にしたピザを食べるとその言い分が理解できたらしく、2口3口とどんどん食べ始めた。

 なんにせよ今は美味しくピザを頂いてる最中だ。後の事は後で考えるかと、槍一さんはビールのおかわりを口にして今を堪能していた。





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