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183話 武器工場に行ってみよう




 「それじゃあこれお願いします。全部買い取りで構いませんので」

 「畏まりました。魔石の詳細と明細の方を出しておきますので受け取る時にタグを受付にお出しください」

 「わかりました」


 倉庫の方で剥ぎ取りが終わった分の魔石を提出し終える。残っているモンスターの数を考えるともう数回は来る必要がありそうだな…。その間にダンジョンにはまた行くだろうし提出する量を調整しないと…。


 昨日はあれから、缶ビールでも飲みながら解体時に出た魔石をのんびり属性別に分けていた。それとどのモンスターから獲れたというのはそこまで重要ではないらしく、一々モンスターごとに分けていた前回に比べて随分簡単に作業が終了した。

 残っていた漬物なんかを肴にダラダラとやっていたのだが、思いのほか早く終わったのでその後すぐ寝に入った。徹夜で見張りしていたこともあったし、布団に入ったら即行意識が無くなったんだよね。やっぱダンジョンで疲れてたんだろうな…。


 そして朝のピーク時からだいぶ遅れて起きると、準備を整え管理部に魔石を卸しに来た。

 しかし昨日までダンジョンに潜っていた探索者と帰ってくる時間が被った所為か、倉庫の中は意外と人がごちゃっとしていた。時間がかかった事もあって鑑定を頼み終わった今もう昼近いんだよなぁ…。


 「朝は簡単におにぎりだけだったし、ちょっと早めの昼食取ったら街に行ってみるか。今度は車で郊外部分を見てくるかな」

 工事中の場所が多く、田畑なんかもこの辺りに密集している。それに武器や防具の製作工場なんかもあったりと、広い敷地を使いそうなところはだいたい郊外に出来てるらしい。昔は街の中央近くにあったらしいが、業務拡大や需要が増えたことで広い敷地が使える郊外に移転したそうな。

 

 「まぁ、騒音問題とかもあっただろうし…いろんな都合が重なってって事だろうな。調整する用の工房とかは店の近くにあるらしいけど、本格的な所は少し離れたところで…ってことか。

 ちょっと覗けたりしないもんかね? そういう工場ってのも…」

 

 実際に武器を作ってる現場なんかもかなり興味があった。企業秘密とかが関係する工程の所じゃなくていいから仕上がった状態の現場とかを見せて貰えないだろうか…と。

 欲を言えば出来上がるまでの工程なんかも見たいが、出荷前の武器が並ぶ光景だけでも見れれば満足だった。工場見学やっててほしいなぁ…。

 そんなことを思いながら倉庫を後にすると、何か新しい情報が出ていないかと管理部受付に向かった。朝のピーク時を過ぎている為か逆にこちらはそこまで混んでいないのよな。


 「そのうち依頼の確認とかもしなきゃならないし、資料室で調べ物を(更新)しなきゃいかんしなぁ…次の探索を行くまでにやることはいっぱいありそうだわ」

 

 そこまで混んでいないとはいえ数人の待ちはあった。待ち時間の間に2階を見上げながらそんなことを思う。

 期限が長い依頼なら今度の探索時に受けてみるのもいいかと思った。ちょうどモンスターの異常な湧きによって1層辺りでの探索依頼は期限が延ばされているようだしタイミングもいいだろうと。


 そんな事を考えながら、自分の前の番だった探索者の話に耳を傾ける。どうやらPTメンバーの遺品回収の話だろうか? 個人倉庫に預けている物などを出したいという話をさっきから繰り返ししている。


 (そういやPTメンバーが死亡したらそういった物ってどういう扱いになるんだっけ? PT内で分ける? 遺族が要ればそっちに引き継ぎ? 管理部預り? なんか見たような覚えもあるんだよなぁ…)

 

 聞こえて来る話を聞く限りどうも捜索依頼が出ているらしく、その依頼を受けた探索者が帰ってきて生きていないと報告されるまでは動かせないという事だそうだ。

 質問していた探索者は舌打ちを1つして受付から離れていった。遺品回収出来なかったのがそこまでイラつくんだろうか? 


 しかし今のやり取りもこれが初めてではないのだろう、何度も何度も依頼の受注者が帰還したかどうかを確認に来なければいけないとなると確かに舌打ちの1つも出るかもな…。まぁ、事前に決めてなかった自分等の所為だと思って大人しく報告が来るまで待つしかないね。


 「次の方どうぞ」


 少し考え事をしていると自分の番が回ってきた。簡潔にダンジョンの新情報がないかを聞くが、今の所これといった話はないらしい。新しい通路は相変わらずよく見つかると探索者の人が良く口にしているからめぼしいものと言えばそれぐらいのものだと教えてくれた。

 特にこれ以上は聞くべきこともないかと、管理部を後にする。今から郊外まで行かにゃいかんし、時間は無駄に出来ないとあってさっさと車に向かった。

 昼食はどこか適当なところで取ればいいし、とにかく出発してから考えればいいや。





 「おー、ここが工業地帯かぁ…。ずいぶん広い敷地取ってんだなぁ…」

 あれから車に乗ってダンジョン街の郊外部にある工業地帯へとやって来た。当たりにはいろんな倉庫や大型トラックが停車していた。ここから各武器屋や防具屋に運ばれるわけだ…。


 「モンスター素材の武器なんかもここで作られてんだよなぁ…どうにかして製作してる現場を見学させてもらいたいもんだ」

 車なんかを作ってる組み立て工場や、電子部品を作ってる工場なんかも車を走らせているといろいろ見つかった。ほんと郊外のこの一角は工業団地なんだなぁ…とそれらの工場の規模を見て感じる。あまり一般の人は立ち入らない場所だよな、この辺って。


 「んー…ずっと走らせせても仕方ないしどっかで聞いてみるか。どうせこの辺りの工場からも能力者に依頼とか来てるだろうし、探索者がこうして訪れても不審には思われんだろ」

 

 自分の使ってる武器がどういう所で出来てるかとか興味を持ってる人達もいるだろうし、タグさえ見せれば案外見学させてもらえるんじゃないかと楽観視していた。

 そんな事を思いながら工業地帯を車で移動していると、少し小さめの刃物工場を見つけた。小さめと言っても大きい所から見たらでしかない、ここも十分でかい工場には変わりないだろう。


 「とりあえずここから聞いてみるか。ダメなら他行ってみりゃいいや」

 門の脇に車を止めると、門衛の詰め所のようなところにいた人に挨拶をする。


 「すいません、少しお聞きしたいことがあるんですが…」

 「どうかしましたか? 道にでも迷いましたかね。この辺同じような工場ばっかですし」

 「ああ…そういうわけではないんですが…。この工場って見学とかって出来たりしませんか? もちろん一部だけとかで結構なんですが…」

 「見学ですか?」

 門衛の人が少し迷う表情を見せる。迷うってことは完全NGというわけではないのだろうか?


 「ちなみにどういった理由ででしょうかね? 社会科見学的なあれですか?」

 「いえ、そういった学校関係とは違いますね。ただ個人的に作ってるとこや出来上がってる所を見たいってだけでして」

 そう言って腰のタグポーチからタグを伸ばして自分が探索者である証明を見せる。


 「探索者さんですか。う~ん…そういった話は事務所の方に聞いてもらった方がいいですねぇ…」

 「お取次ぎとかしてもらえませんかね?」

 「でしたら少々お待ちください」


 門衛さんはそう言うと詰め所に入っていき、無線でどこかと連絡を取り始めた。許可下りるといいなぁ…。

 しばらく待っていると門衛さんがこちらに近寄ってきた。


 「許可が出ました。今係の者が来るそうなのでもうしばらくこちらでお待ちください」

 よっしゃっ! その知らせを聞いて内心ガッツポーズを取る。急な訪問だったが許可が下りてありがたいね。


 「ありがとうございます。店で並んでいるのは見てるんですけど製造段階のは初めてでして…」

 「まぁ、探索者さん達は店頭で注文してそれが届くのを待ってる人が多いみたいですからね。作ってる所まで来られる人って少ないですよ」

 「そうなんですか? 私なんてどういう風に作るのか興味ありますが…」

 探索者がこっちの方まで来るのはそうないらしい。話を聞くに依頼なんかで来る人は居るが自分のような目的で来る探索者は少数という事だった。


 「探索者さん達は使う側で、作る側とはまた別だからじゃないですかねぇ。細かい調整なんかは街中にある工房でやっちゃいますしこっちまで来る必要がありませんから。修繕に出してもこっちで受け取るわけでもないですし」

 「まぁ…そう言われるとそうなんですけどねぇ。うーん…出来る工程には興味ない人多いんだなぁ」


 武器工場なんて一般に公開されることがほぼない世界から来た身としては、店頭に並んでいる商品にももちろん興味があるがそれを作っている過程にも興味があるんだよなぁ…まず見られんし。

 元の世界で言えば探索者は軍に近しい存在だ。武器工場なんてまず間違いなく関係者以外立ち入り禁止の場所だった。それも剣やら槍やらが作られている場所なんてあっちの世界にもまずない場所だ。興味が出ないわけがない。


 「ナイフとか薙刀とかも作ってるんですよねココ? それにモンスター素材を武器に加工したりなんかもやってるんでしょう? 十分見ごたえあると思うんですけどねぇ…」

 「ははは、探索者さん達ならなおさら見ごたえがあるダンジョンに潜ってらっしゃるでしょう? 武器の製造過程にそこまで興味を抱く人も少ないんじゃないですか」

 「そんなもんなんですかねぇ? 何本、何十本と、出来上がった武器が並ぶ光景は壮観な気がしますけど…」

 「まぁ、許可は下りましたからご存分にご見学して行ってください。もちろん見せられる部分だけでしょうけど。あ、来ましたね。それでは私はこれで…」

 

 そう言ってこちらに近寄ってくる人に向け指を向ける。そちらを向くと小走りに近寄ってくる男性が見えた。あの人が係の人か。

 門衛さんに軽く礼をすると、近寄ってくる人の方に向けて歩き出す。

 近寄ってくる人を見るがどうにも事務方とは思えない体つきをしている…現役の探索者さんとかではないよなこの人?

 案内役に寄こされただけで実際は違う人が係の人って可能性もあるか…と、まずはこの人の先導にしたがうべく、タグを取り出して自己紹介から始めることにした。




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