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180話 探索スタイルなんて人それぞれだ




 「今日はこんなもんでいいかな…? んーっ! 疲れたぁ~!」

 

 あれからひたすら解体作業を続けて時刻はもう夕飯時。解体部屋にずっと籠っていたものだから体が若干冷たい…。

 部屋の外に出るとすぐさま風呂に向かった。解体時についた汚れを落とすのと下がった体温を戻すのにも今すぐシャワーを浴びたくて仕方がない。それとどうにも体から血なまぐさい臭いがこびりついてるように思えて仕方なかったのもある。


 一っ風呂をすぐさま浴び終えた将一は、逆に上がった熱を冷ます為に縁側で水分を摂りつつ風呂上がりの余韻を感じていた。 


 「そろそろ飯時かぁ…今から作るのもあれだし、どこか食べに行くかなんか召喚魔法で出すか…。

 解体ばっかしてた所為かなんかあっさりしたものが良いなぁ。久しぶりに食堂のざるそばでも食べに行こうかね…もしくはざるうどんがあれば半々で食べるってのでもいいか…?」


 お昼がガッツリ肉だったこともあるし、今が風呂上がりでほてっているという事もあってざる系の気分だった。何より食堂の飯は美味しいし、ダンジョンから出てきたのなら食べたい食事処として自分の中では1位だ。

 夕飯を食べるとこも決まり、さて行くか…という所でふと思い出したことがあった。

 

 「そういや戻ってきたら槍一さんに連絡して2回目の探索終わりましたって言おうと思ってたんだっけ…。どうせだから今連絡しておくか」


 本当なら潜る前に連絡しろよと言われていたが、無事戻ってきましたって驚かそうかと思い後回しにしていたのを今思い出した。

 携帯を取り出すと教えてもらった番号に電話を掛ける。槍一さんはなんて言うかねぇ?

 しばらくコールした後、相手が電話に出た。よかった…槍一さんもダンジョンに行ってるとかだと繋がらないしな。


 ≪おう、俺だ。どうしたよいったい?≫

「あ、お疲れ様です。今お時間大丈夫ですかね?」

 ≪問題ねぇぞ。適当に街ぶらついてたとこだ≫

 この時間だと夕飯をどこにするか決めていた所かな? と、そう思った。自分もそうだったし、いろんな店を知ってる槍一さんにしたら管理部の食堂以外にどこにするか迷うところは多そうだよな。


 「実はつい昼頃2回目の探索を終えて帰って来た所でして。ちゃんと無事に戻ってこれた報告もかねてこうしてご連絡を…」

 ≪んだってぇっ!? おいコラ、行く前に連絡しろって言ったじゃねぇか!≫

 こちらが言いきる前に向こうからの大声がとんできた。どうやらダンジョン潜る前の一報を待っていたらしい。


 「いやいや、あの時も言いましたけどしっかり無事に戻ってくる気満々だって言ったじゃないですか。自分の捜索依頼なんてこれで気にしなくてよくなりましたよ?」

 ≪そいつは結構。俺もそんな依頼は見たくなかったのは事実だ。つーか昼頃戻って来たって? 時間的に考えりゃ早くて昨日には潜ってやがったなおめぇ…。

 おい、将一。お前飯は?≫

 「これからですね。魔石なんかの提出するものの整理してたらこの時間になっちゃいましたよ」

 流石にモンスターの解体をしていたとは言えないので、提出する魔石の整理をしていたと言葉を濁す。

 

 ≪お前の事だから管理部の食堂だな。よっしゃ、俺もそっち向かうから探索であった事色々聞かせろや≫

 「え? 食堂まで来られるんですか? こちらは話すことに問題ありませんけど…」

 ≪ゴーレム用意したってお前言ってたろ? あれをどうしたのか聞きてぇこともあるからな。俺も食堂に行くからそっちで合流だ≫

 「わかりました。それでは食堂で」

 ≪おう≫


 そう言うと通話を終了してアパートまで転移する。

 なんか槍一さんの方の予定を変えることになってしまったけど、向こうから聞きに来るというのだからあまり気にしすぎることもないかな?

 どうせだからこちらも少し気になっていたことを聞くチャンスでもあると前向きに考え合流予定地の食堂に向かう。結構切実な質問もあるからなぁ…。





 「おう! こっちだこっち!」

 あれから車に乗って食堂まで来ると食券コーナーを目指した。すると既に待っていたのか、そこには槍一さんがもう居た。ずいぶん来るの早いな?


 「こんばんは、お久しぶりです。それにしてもずいぶん早いですね? 私あの電話の後すぐ車に乗ってこっちへ来たっていうのに…」

 「お前から電話貰った時丁度管理部行きのバスが来たもんでな。即行乗ってこっちまで来たからよ。まぁ、そんな待ってたって程じゃねぇぞ」

 どうやらつい先ほど槍一さん自身も着いたばかりのようだ。待たせなくて済んで良かったと思えば良いだろうな。


 「私はもう食べるもの決めてるんですが槍一さんは?」

 「俺はいつものよ。やっぱあれが一番うめぇからな」

 「今日はまだそれほどではないとはいえ、あの熱々のをよく食べますねぇ…。私は今日麺類の予定でして」

 

 ずいぶんあのシチューが気に入っているんだなぁ…と見てて思う。確かに美味しいのはわかるんだけど同じ物ばかりだと何かねぇ…。

 色々食べたうえでの結論とまだまだメニューを食べれてない自分との差なのだろうか? いつかは自分のお気に入りもここで出来るようになるのかね?

 そんなことを思いながら食券を買って席を確保する。時間も時間だからか、店内もそれなりに混雑していて今回はカウンターを取れなかったな。


 「よっしゃ、じゃあ料理が来るまで将一の探索の感想でも聞かせてもらうとすっかね」

 「そうですねぇ…じゃあまずはゴーレムを連れてった所からでも話すとしましょうか」

 席について今回の探索の話を始める。ゴーレムを連れて広場に向かった所でひそひそ(聞こえる位)と言われた場面からでも話し始めるかと思った。





 「とまぁ…ゴーレム連れて行きましたけどソロなら十分役に立ってくれたと思うんですよ」

 「なるほどねぇ…ソロだと足の遅さもそんな気にならねぇかぁ…。試したことねぇからいまいちわからんが…物資もゴーレムに持たせりゃ時間がかかった探索でも意外といけなくもなさそうだわなぁ。以前の1層なら意外と試す奴が居てもおかしくなさそうに思うわ」


 槍一さんに森田さん達を助けた部分は省き、今回の探索はどうだったかを話した。感想としては今言ったようなことらしい。

 モンスターが異常湧きしてる今は試す探索者も居ないというのが結論っぽいね。


 「まず地底湖で連戦ってのが普通はやんねぇよ。周りは水ばかりで逃げるとこも隠れるところもねぇしな。まぁ、お前は土魔法で足場なり壁なり出来っからいけんだろうかな。

 おまけに水魔法で水上に浮くだって? それは一般的じゃねぇからな? 一応言っといてやるけどよ…」

 少し呆れ顔でそう言う槍一さん。


 「そうなんですか? 土魔法や水魔法が使える人ならできそうに思うんですけどね…」

 「出来るかできないでいや出来るだろうが…それするぐらいなら地底湖避けていくだろうな。落ちたときのこと考えりゃ地底湖はなるべく避けるもんだ。地底湖は出来るだけ避けるって街案内の時言わんかったか?」

 「言われたような気もしますが…まぁ、私の場合は実地テストも兼ねてでしたので」

 「ダンジョンでその考えが出来てりゃ十分余裕出来てんよ。はよ2層まで行っちまえってんだ」

 「そうなんですかね? 私としては今回の探索でまだまだ至らない部分もあったと再認識したほどですけども…」


 そんなことはないだろうと、軽く疑問に思いながら蕎麦をすする。

 ざるうどん/そばセットがあったので夕飯はこいつになった。汁も2種類用意してあるとありがたい配慮だ。うどんはおろし生姜入り、蕎麦はおろしワサビ入りとここは譲れないからな。

 途中で料理が出来たと呼ばれたので、それを取りに行ってからは食べながらの話となった。槍一さんはハフハフと食べながらも興味深そうにゴーレムを使った探索について聞いてきていた。

 ここ最近ゴーレムを連れての探索者の話はなかったらしいしな。ほんと不人気すぎだろうよ…。


 「まずソロでダンジョン行こうって考えるやつがそもそもいねぇんだからしょうがねぇだろ? やっぱPT揃えた方が効率いいんだしよ」

 「なんですかねぇ? 私としては今効率なんて考えて潜ってませんからよくわかりませんけど」

 

 自分の能力を使う分にはむしろソロの方が効率がいいとは言えないのが何とももどかしい。

 必死に探索者やってる人には申し訳ないが、別の世界から来た自分としては興味の方が大きいのだ。仕事として見るならそれこそ魔石のエネルギー補充という職だけで食っていけるのだし、探索はどうしても興味の対象でしかなかった。


 「俺としてはダンジョンの先が見てぇってこともあるから効率のいいPT構成なんて考えるがよ? 事情なんて人それぞれだからあんまりうるさくも言えんのよ。お前みてぇな探索者も居ないこともねぇしな」

 「ああ、やっぱり仕事として探索者やってる人ばかりじゃないんですね」

 「そりゃそうよ。マジックアイテムを手にしてみたいやつ、モンスターという存在と戦いたいやつ、俺みたいなダンジョンの先が見たいやつといろいろだ。

 仕事としてみると稼ぎは多いだろうがそれ以上に危険が大きい。どこか普通の奴と考えが違わねぇと探索者なんて続かねぇと思うぜ?」


 遠回しにどこか普通の認識と違ってると言われてる気もするがブーメランもいいとこだなそれ。まぁ、槍一さん自身ダンジョンの先が見たいだけと言い切る当たり自覚はしてるのか。

 それと別世界から来た自分がこっちの世界の人の認識と違うのはむしろ当たり前と言っていいし素直に受け入れられるんだけどね。

 むしろこっちの世界の人でもある探索者目線から見てもやっぱどこか普通とは違うって認識なのな、探索者って…。


 「まぁ、他が使わないゴーレムをあえて使って探索に行ってる時点で言うまでもないってこったな。やめる気もねぇみてぇだしよ?」

 「仕方ないじゃないですか…私から見たら便利だったんですし? まぁ、人それぞれってことで良いんじゃないです?」

 「最終的にゃそうなる。探索者なんて自分が潜りやすいスタイル見つけるのが一番だ。俺は槍を使いつつの能力織り交ぜが合ってるわけだしよ」

 「私はまだまだいろいろお試し中って所ですからね。ゴーレムだってその手段の1つに過ぎませんしねぇ…」

 「そういうこった」


 槍一さんはそう言うとシチューを再びハフハフ言いながら食べ始める。

 ゴーレムだってもしかしたらそのうちブームになって珍しくもなんともなくなるかもしれないし、逆に今だけだろうと思いながらこれからも使っていけばいいんだよな。

 そう結論付けると今の自分のスタイルを軸にしつつ、出来る事をもっと考えていくかと案を練り始めた。差し当たっては腕輪の能力を織り交ぜて属性魔法を組み込むのがいいかと考える。武器に関してはもう少し後だろうね…。

 

 自分のやり方についても問題ないと認識したところで、残りの蕎麦とうどんを味わう。やはり麺が良いなこれ。どこで作ってるの使ってるか聞けないもんかねぇ? 

 もしかしたら管理部で作ってそれを各食堂に流通させてたり? と、そんなことを思っていると近くから合い席いいかとの声が掛けられた。

 

 「あん? 店長じゃねぇか。なんだよ今日は非番なのか?」

 「ですねぇ。昨日は夜当番だったものでつい先ほどまで寝っぱなしでしたよ。この歳になってくると夜間起きっぱなしは辛いものがありますね。相席いいかな?」

 「ええ、どうぞ。やっぱりこれだけの規模だと夜当番は堪えますか…」

 椅子を引いて座席を勧めると、郷田さんは軽く1礼して席に座った。


 「いやぁ…杉田さんも石田さんも美味しそうに食べてらっしゃるのでここの管理者としては嬉しいものですよ。杉田さんはやはりそのシチューがお気に入りですか?」

 「おう! この煮込み具合と食べごたえがある野菜は他じゃあんまりねぇからな。ここで食べる時はこいつがやっぱ多いぜ」

 「それだけ喜んでいただけてなによりですね。石田さんはどうです? まだこちらに来てそれほど経っていませんけどお気に入りのメニューは出来ましたか?」

 「私はまだこれといって…ですねぇ。何しろメニューが豊富にありますからそれを色々食べるのがまだまだです。どれも美味しいんで迷いそうですねこれは」

 「なるほど。ならばいっぱい食べて貰ってもらうしかありませんねこれは」

 「あはは…毎回来れないのが残念なぐらいですねぇ。

 あっ、そうだ郷田さん。どうせならちょっとお聞きしたいことが…」

 「はて、なんでしょうか?」


 そう言うと槍一さんに以前の話をするなら今だと口にする。槍一さんの方も確かに今なら丁度いいかと頷き、郷田さんに話を切り出した。





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