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167話 ダンジョン1層(ソロ) 新しい通路の価値




 「ここが新しく出来た通路か…見た目は特に変わんないな。まぁ、時間で劣化するとかでもないし最近できようと30年前からある通路だろうとそりゃ変わらんよな」


 新しく出来たと思われる通路を前にしてそんな感想を抱いた。せめてなんか違いがあれば新しい通路かどうかの判断もしやすいのだけど…。

 とりあえず地図を確認して、位置的に目的の通路とどれぐらい距離があるか確かめてみることにした。


 「あれっ!? ここ目的の通路じゃんか!? え? でも2つ目の通路が新しく出来た通路だったよな?」

 目的の通路の位置を調べてどれぐらい離れているのか確認しようと地図を見るが、現在位置がまさにその目的の通路の真ん前だった。いつの間にか新しく出来た通路を通り過ぎていたらしい。


 「あれぇ…? でも道中気を付けて見てたけど通路なんてなかったぞ? それこそ1人がどうにか通れるような通路かもしれないと思って見てたんだし見落とすなんてないと思うんだがな…」


 見落とすことが無いようにとわざわざ壁際に寄りつつ見ていたというのにいつの間にか通り過ぎていた。通路なんて絶対なかったと言えるほど注意してたはずだ。

 その瞬間、ふと前回広場を通っていた時の出来事を思い出した。


 「もしかして上か? 確かに上の方まではしっかり見てなかったかもしれんな…」

 前回見つけた宝箱部屋のように上に出来ていたのだとしたら見落としていたと言える。この広場も以前通った広場と同じく上側は暗くて良く見えないのだ。


 「その可能性が大だな…ちょっと気になるし戻ってみるか」


 せっかくここに居るのだから時間は無駄にるけども確認しておきたかった。

 上の方に通路を作る以上何かしら意味はあるんじゃないかと。そんなところに新しく作ってもわからなければ無いものと同じだ。人間をひっかけるつもりがあるなら下の方に作ったほうが効果的なのだし。

 そして地図を片手に黄色で表示されてる所まで戻り始める。何かあった時用にゴーレムも一緒もだが相変わらずゆっくりだ。


 



 「ここだここだ、ここが黄色の表示してる所だわ」


 地図をしっかり見て現在地の表示と黄色の点が重なる場所まで来た。結構3つ目の通路よりだったから歩かされたな。

 下から天井付近までを見上げる。相変わらず暗くて通路があるのかどうかなんてわかりゃしない。


 「見えないなら見える位置まで上がるしかないよな」


 そう言うと飛行魔法を使って空中に浮く。

 ゴーレム達には待機とモンスターが来たら反撃しろという指示を出してから天井付近まで一気に上がる。

 そんな浮かび上がった将一の目の前には、下の通路と変わらないような通路がそこにはあった。


 「はー…本当に見た目が全く違わない通路だわ。これじゃ新しく出来た通路かどうかなんて行ってみないと判別できんわな」


 こんな通路がダンジョンのあちこちに出来ているのかと思うと、今後のダンジョン探索は進行が遅れるばかりになりそうだと感じた。探知能力持ちがPTに最低限1人は欲しいものだな…。


 とりあえずここでこうしていても仕方がないと通路に入って見る。行き止まりだと言うがどれぐらい奥まで続いてるんだろうか?

 新しく出来た通路の為、光石のような光源が無い真っ暗闇な通路だ。

 人に見られていないという事もあってか、光を魔法で作り出すとそれを頭上に置いて先に進む。これ1つでもずいぶん明るくなったな。

 おそらくこんな高さではモンスターも湧かせていないだろうと思うが、一応念のため探知を使って探ってみる。案の定反応は無しだ。


 「飛行系のモンスターはここに来れるから絶対安全というわけでもなさそうだけど行き止まりだとわかってるんだし、モンスターもわざわざ様子を見に来るなんてことしないよな?」


 これが普通の通路とつながっているならともかく、行き止まりではモンスターも見るものが無いだろう。すっごい来にくいけど比較的安全な休憩部屋にはなりそうだよな…新しい通路は。

 そんなことを思いながら先が全く分からない通路を歩き続けた。

 ある程度まではこちらから光が届くが、先に光が無いとほんと奥は暗闇しか感じられないのが怖いな…。


 しばらく歩くと、光は通路の奥を捉えたのか暗闇はそこで途絶えた。これで一安心だ。

 しかしそんな安心の感情を抱く前に、将一の視界には驚きで目を見開くようなものが見えていた。


 「これ…宝箱じゃないか…。え? 新しい通路ってただの行き止まりって話だろ? 何で宝箱があんだよ?」

 唐突に発見された宝箱に若干頭の中がパニくっている。ただの行き止まりだと聞いていたのにそこに宝箱があるだなんて話は初耳だ。まさか前回に続いてまた見つけることになろうとは…。


 「もしかして新しい通路って宝箱が置かれてる通路の可能性があんのか? だとしたらとんでもない事になるんじゃないのかコレ?  

 当然確率は低いだろうけど、もしかすると…ってだけでも十分だよな? これは新しい通路に向かう人等続出するんじゃないか?」


 あの地図上にポツポツと出ていた黄色い光点のうちいくつかはわからない…もしかしたらここだけかもしれないがそうじゃない可能性だって大いにある。

 あの光点の中のいくつかが宝箱部屋だとしたら、新しい通路を目指す探索者がものすごく増えるのが容易に想像できた。


 「洞窟エリアの活気がやばいことになりそうだなこれは…。ダンジョンが不人気なエリアを何とかしようとして考え付いた策だとでもいうんだろうか? 

 今後1層から宝箱が増量して出るんだとしたら潜る奴は初心者探索者(ルーキー)だろうと欲しい奴は絶対出てくるぞ…」


 モンスターが強力になって危険度は増したが、宝箱が増えるっていうんなら無茶をする奴は当然出て来るだろう。

 初心者探索者(ルーキー)が生まれにくくなるかもと心配していたが逆な事態になりかねない。むしろ生まれた初心者探索者(ルーキー)をダンジョンは食らう気でいるんじゃないかとすら思えてきた…。

 

 「報告は当然するんだけど…宝箱については情報拡散して大丈夫なんだろうかこの件…」


 間違いなく宝箱からマジックアイテムを入手できる探索者の数は増えるだろうけど…それと同時に初心者探索者(ルーキー)の失踪率が増えそうな気がする。

 1層で宝箱増量キャンペーン(危険有り)なんて話が出たら自分がマジックアイテムを手に入れた所の宝箱部屋なんて比じゃないぐらいの事態になりそうだ。


 「完全にダンジョンのペースに飲まれそうだなコレは…。人間の欲は止まらんぞ…」

 とはいえ、地上に流れるマジックアイテムの量が少しは増えるから売買で手に入る機会が増えるのは良いことだ。値段は相応だろうが…。

 初心者探索者(ルーキー)にはきついかもしれないがそれでも今までよりはマシだ。

 

 「金で手に入れるか危険が増した1層で探索するかになるんだろうなぁ…。個人的にはありがたいけどこれ今後が怖いな」

 そんな感じのメリットデメリットが思い浮かぶが、そういった判断は管理部でしてもらおうとその考えを一度頭から除外した。今は目の前の宝箱を確認してみたい。


 「今回はどんなマジックアイテムが入ってるんだろうな? 正直扱いに困るマジックアイテムは避けたいが…」

 この間の腕輪みたいなものだと少し困ると、若干額にしわが寄る。個人が所有しても大丈夫そうな物なら面倒も無くてありがたい。


 「あっ! 今回は浜田さん達みたいな軍の人達と一緒じゃないし隠して使うってことも一応できるのか。その場合はバレないようにしないとな…」

 見つかれば価値が下がった状態で強制買取と、こちらには不都合しかないから気負付けなければいけないと思いつつ宝箱に手をかけた。


 「っと…一応罠はないってことだけど確認しておこう。1層に置いたから罠付きにしましたとかダンジョンならやりかねん…」


 かなりダンジョンというものについて疑心暗鬼になってしまっているが、むしろこれぐらいの危機感はあったほうがいいのではないかと思ってしまう。それだけダンジョンがやることは予想がつかないのだ。

 罠の有無を探知するが反応は無し。今回も罠は無いようだったが宝箱を見たらまずは探知。これは今後徹底しようと思った。


 「さて…いったい何が入ってるかな?」

 再び宝箱に手をかけると蓋を開けた。中に入っていた物は…。


 「なんだこれ? …ああ…確か……ポーン? とかいうのだったか? なんでチェスの駒?」


 宝箱を覗くと、中に入っていたのはチェスに使うポーンという駒だった。白黒で8体ずつ、計16個の駒がケース付きで入っていた。

 咄嗟に何だったかを思い出せず、少し考えさせられた。


 「なんでチェスの駒? しかもポーンだけって…マジックアイテム…だよなぁ? ちょっと意外過ぎるもん出てきたぞ…」


 あまりにも予想外過ぎる物が出てきた所為で若干戸惑っていた。

 とはいえ貰えるものは貰おうと、チェスの駒を見ながらどういった物なのかと鑑定をしてみる。


 「……大変結構なものでは? というかゴーレム使いにとってまさに求めていたものではなかろうか?」


 鑑定の結果、これはゴーレムなんかを持ち運びができる物だというのが分かった。

 ただしポーンの形をしている通り歩兵…人型をしたゴーレムしか対応していないようだった。


 「どうせ作れるのなんて人型をしたのしか無理なんだから問題ないよな。

 異世界じゃルーク(城/戦車)やナイト(騎兵)なんかも持ち運びしてたんだろうか? キング(王様)やクイーン(女王)を持ち運んでいたってのが良くわからんけども…」


 何にせよ、今の自分にとってポーンの駒がこうして手に入ったのは僥倖だ。これで一番気にしていたゴーレムの運用がずっと楽になるのだけは間違いないのだし。


 ウキウキ気分で宝箱の中からその駒が入ったケースを取り出そうとする。

 その瞬間、頭の中にアラートが響き渡った。広場に他の探索者が入り込んだ合図だった…。




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