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165話 ダンジョン1層(ソロ) おかわり入りまーす




 「よし、まずはこれからかな」

 

 考えた末に思いついた魔法を使ってみる。

 次の瞬間、2体の内の1体が地面から離れて宙に浮き始めた。自分で自由に動けない所為か、空中で必死に手足を動かして体勢を整えようとしている。すぐ近くに敵がいるというのに手が出せないもどかしさをゴーレムだというのにその動きからは感じられた。


 「空中遊泳(停滞)はうまくいったっぽいな。近接攻撃しかできないなら離してしまえば無力だわなこれで」


 浮遊魔法で位置固定をしたゴーレムは完全に何もできない存在になってしまった。遠距離攻撃の1つでもあればよかったのだろうが石製のゴーレムに遠距離攻撃できる能力はない。自身の耐久性を上げる事は出来るが、今の状況でそれが出来たとしてもどうにもならなかった。

 更に数が減ってどうしようもなくなった残りの1体はこちらのゴーレム3体に囲まれており、体に大盾を押し付けられて身動きが出来ない。詰んだな…。

 

 「残り1体には気になっていた錬金を試すかね」


 石製だし鉱石系にならなんにでも錬金できるのだろうが、もし金に錬金したとしたらゴールデンゴーレムに進化してしまうのか? という思いが浮かんできた。

 そうなるとメリットももちろんあるのだが、同時に厄介なモンスターになってしまう事も意味していた。


 「そもそも体の構成してる材質を金に換えたとしてモンスターとしてランクアップとかするんだろうか? 

 ゴーレムの核がいまいち謎素材だな…確かに人間側が作ったゴーレムも体が石だったり雪だったりで強さが変わるから一概にそれもあり得ないとは言い切れないんだよなぁ…」


 ゴーレムの核は元のゴーレムが何であろうと体の構成してる材質によって強さや耐久性が変わる。それは山にいる自分が作ったリキッドメタルゴーレムがいい証拠だ。

 極端な話、ゴールデンゴーレムから取れた核が雪のゴーレムになったりもするので、錬金でこの石製のゴーレムを他の材質の鉱石に変えたりすると進化してしまうという想像もあながち間違いではないのではないかと思ってしまった。

 

 「そうすると弱体になりそうな材質にしといた方がいいか…進化(退化?)するとしても倒しやすいのがいいし」


 厄介になりそうなら死の魔法で片づけようと決めて、錬金の魔法を残りの1体に放つ。

 その瞬間、ゴーレム達に囲まれていた最後の1体は体が石から砂へと変わった。ゴーレムとして耐久性が無くなれば倒しやすくなるだろうと思い砂にしてみたのだ。 

 そしてその体が砂へと完全に変わったのを見届けると、実験が成功したという事を確信した。モンスター相手でも体を構成してる物質の変化は出来るらしいと。


 1人悦に入って納得顔の将一だったが、そこで思わぬイレギュラーが起きた。

 砂に変化したゴーレムが体の形を変えると地面に伏せるとその状態でこちらまで移動してきたのだ。


 「おいおい…その状態で動けるのかよ!? ゴーレム! 壊していいから核か魔石を狙え!」


 こちらの指示が出た瞬間近場で待機していた2体が近寄ってくる砂に向けて大盾を振り下ろした。

 しかし砂の動きは止まらなかった。どうやら潰した範囲に核も魔石もなかったらしい。

 そうしてこちらの目の前にやって来た砂は再び人型を取り戻すと、自分目掛けて腕を振り被った。


 「ちっ! これじゃ石製の時より厄介じゃないかっ。誰だよ砂の方が弱いとか思ったやつ」

 とりあえず障壁で受け止めようと張った瞬間……目の前のゴーレムが爆散した。


 「あん?」


 いきなり視界が砂まみれになった所為で何がどうなったのかよくわからん。すぐに砂は地面に落ちていったのだが再び動き出す気配は見せない。どうやら今ので終わったらしい。

 そして自分の目の前には大盾をこちらに突き出した状態のゴーレムが居た。

 

 「あー…お前が盾で後ろからシールドバッシュしたのか。そりゃゴーレムの力でおもいっきし吹っ飛ばせば砂の体ぐらいは爆散するよな」

 こちらの言葉に答えるかのように1度頷く。けど障壁張ってなかったら今頃砂まみれだぞこっちは…。


 「はぁ…砂に錬金した自分落ち度だからそれはいいか。よくやった…穴の奴大人しくさせるからお前らで引きずり出せ、空中のは放っておいていいぞ」


 未だに空間魔法で作った落とし穴の中でガンガン! と音を出しているゴーレムに死の魔法使って大人しくさせる。ゴーレムは指示通りにそいつを引きずり出すほうへと向かった。空中に浮かんでいる奴にも使うと地面に降ろして放置しておく。後で仕舞おう。

 1人になった将一は錬金した材質を間違ったことに溜息を1つ吐くと、周りの砂を見渡して目的の物を探す。


 「お…あったあった」

 地面に広がっている砂から少し離れたところに転がっている2つの玉を見つけると回収する。最後の砂のゴーレムの体内にあった核と魔石だ。


 「体から引き離されたから構成している砂を操れなくなったんだろうな。耐久性に難があるって言う考えは間違っちゃいなかったんだがなぁ…」

 まさかあんな状態になって移動してくるとは思っていなかった。泥や液体金属みたいな粘性ならまだわかるんだが砂でああなるとは…。

 

 「モンスターだからそんな考えの上をいくってことかねぇ? だとしたら砂状は面倒だな…壊れやすい石炭にでもしてやろうか今後は…」

 石炭のゴーレムなんているのかわからないが居ないとは言い切れないだろう。何しろかなり広いダンジョンだ…まだ見ぬモンスターが居るかもしれないし、何より『ダンジョンだから…』という言葉でいろいろ納得できそうなところが怖い。


 「倒したら野営の時の焚火にでもしてやろう。密室じゃないし練炭自殺みたいなことにはならんだろう」


 ゴーレムに思いっきり吹き飛ばされたとはいえ核も魔石も割れてはいなかった。少し傷があるから価値は下がってしまうかもしれないがそうなれば砕いて利用に回せばいいと、軽く洗ってから袋に仕舞う。

 一応石製のゴーレムとは違い掘り出す手間がかからないのは楽な方かとポジティブ思考をしておく。


 ゴーレム達が落とし穴に入っていたゴーレムを引き上げ終わったようだ。最後で少し失敗したが目的は達したかと、地図を広げてルートの確認しようとした。

 しかし地図を取り出したところで通路の奥から重い足音が響いてくるのが聞こえてきた。


 「なんだ?」

 ゴーレム達に再び防御態勢を取らせると通路の奥を覗き見る。そこには駆け足気味に近寄ってくる5体のゴーレムが見えた。


 「探索者のゴーレム…なわきゃないよな。さっきの戦闘音を聞いてって所か…落とし穴に落ちたあいつのガンガンうっさい音でも聞こえてたのかね? 

 とにかく戦闘続行…実験続行か? どっちでもいいか。ゴーレムはさっきと同じで防御に徹しろ」


 その指示に大盾を構えなおすゴーレム。数は同じだが武装をしている分こちらの方が有利だろうな。

 とりあえず拮抗している間になんか魔法を使うかと思っていた所、相手側のゴーレムが駆け足気味だったその速度を落とした。


 「んん?」


 ゴーレムで見えないが、完全に足を止めたのが音でわかった。

 不思議に思っていた次の瞬間…こちらのゴーレムが構えていた大盾にガンッ! っと何かがぶつかり大きな音が響かせた。

 

 「なんだ! もしかして…」

 引き続き大きな音を出している大盾。将一は身を低くしてゴーレムの足の下から向こう側を覗き見た。


 「そういうことか…暗いからよくわからんかったけどあいつらアイアインゴーレムじゃねぇか。それが5体ってまた面倒くせぇのが来たな…」

 ゴールデンゴーレムがお供として引き連れていたアイアンゴーレムを思い出す。鉄の弾丸の連射はなかなか顔を出せずやきもきしていたものだ。


 「おまけにうっさいからな…近くでこれ聞き続けたら耳が変になっちまいそうだわ…」

 大盾で防げないものではないが、そのたびに起こる音にはうんざりさせられる。周りの地面がある程度は吸収してくれるとはいえ、身近だとその効果も薄い。じっくり使う魔法を考えたいがこの音はもはや公害だ。


 「いい機会だ、さっき考えた案を試させてもらうか。

 ゴーレム! 盾でしっかり防御しながら前進しろっ!」


 聞こえるとは思うがこの音に釣られてこちらも大きな声で指示を出すことになった。

 指示はしっかり伝わったようで大盾を構えながらゆっくり前進する。鉄の弾丸を大盾で塞げていようとその衝撃はしっかり腕に伝わっているらしい。

 石製のこっちのゴーレムは向こうからしたら1ランクは下の材質だろう。相手の攻撃は少しずつではあるがしっかり蓄積していると感じた。後で修復は必要だろうな…。


 ゴーレム達は大盾を構えながら1歩1歩前進するが、その近づいた分アイアンゴーレム達は後ろに下がっていったらしい。結構歩くが弾丸が大盾に着弾する間隔が変わらなくて変に思った将一が足の隙間から覗き見ていた。


 「ああ…そりゃ遠距離攻撃できんだから間合いを取るわな。近接攻撃しかできん奴等とは違うか。遠距離攻撃持ちは面倒だな…」


 それを確認した将一はアイアンゴーレムの後ろにゴールデンゴーレムとの戦闘で使用したスパイクを設置してやった。これで下がれんだろうと。

 案の定アイアンゴーレム達の放つ弾丸と大盾に着弾する間隔が狭まったのが分かった。ゴーレム達にはそのまま接近に持ち込めと指示を出す。近づいたら5体まとめて一気に魔法をかけてやろうと決めて。


 しばらくして互いの距離がだいぶ近くなったのが音でわかった。これぐらいでいいだろうと、待機させていた魔法をアイアンゴーレムに向けて放つ。

 

 「『錬金』」


 その瞬間、アイアンゴーレム達から放たれる弾丸が途絶えた。

 手ごたえありと感じた将一は、ゴーレム達に盾を構えながら一気に突っ込めと指示を出す。

 その指示を聞いたゴーレム達は構えていた盾を前に突き出してぶつけるようにしてアイアン? ゴーレム達に突っ込んだ。

 その突撃に向こうは耐えられなかったのか、大盾に押し倒される形で後ろ向きに倒れた。


 「容赦なく押し込め、前列の奴も上から押しつぶし勢いでスパイクに押しやれ」


 今後ろ向きに倒れてスパイクに突き刺さったのは後列のアイアン? ゴーレムだけだ。こっちと同じで前列の奴はまだ倒れただけに過ぎない。

 既にスパイクに突き刺さっている奴の上から更に圧をかけて前列の奴も押し込むゴーレム達。

 それから少し時間はかかったが全部押し込めたようだ。


 「止まったらそれでいいぞ。どうせ『動けん』だろうしな」

 ゴーレムはその指示に押さえつけていた大盾をどかす。そこにはバキバキに砕けた元アイアンゴーレムが『変色を起こして』スパイクに突き刺さっていた。


 「そんだけ錆さびになればまともに体を動かす事も無理だろうな。スパイクにも突き刺さっているし余計に動かせんだろうよ」

 

 鉄の体を芯まで錆に錬金した将一はこうなるだろうとなんとなく思っていた。

 鉄は錆だらけになれば耐久力は無くなる。何とか形を保っていようとスパイクに突き刺さった衝撃と押しつぶされた圧で体はバラバラだ。まともに動くことさえできない錆さびの体ではどうしようもなかっただろう。


 懸念は錆のゴーレムなんてものが居るのかという事だった。居たとしたら能力は何だろうと。意外と厄介な能力を持ってる可能性もあり得そうだ…。


 「とはいえ錆びて動けないゴーレムをモンスターとして考えていいものか…流石にそんなゴーレムまではいないと思いたいなぁ」


 完全に機能停止しているのだろう、身動き一つしない。スパイクに突き刺さってバラバラになってはいるが、まだ形が分かる部分を見てそう判断した。ゴーレム達に触らせるが反応はなし…終了かな?

 意外と仕留めるまで時間がかかったが、耳が痛いのを除けば被害らしい被害はない。ゴーレム達は後で修復が必要かもしれないがとりあえず戦闘はこれで終わっただろうと、頭を押さえながら思う。

 未だに頭の中にガンガン響く音波攻撃こそが一番の攻撃だったな…次からは何とかしないと。

 



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