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145話 腕輪の結果が出ました




 「おおー、文明の光だー…」

 

 あれから転移できそうな場所を見つけた将一は、早速自宅まで軽トラごとやってきていた。とりあえず荷物を降ろして箱から取り出すところまでひたすら開封作業を続けた。設定なり装着などの細かな所は夕飯を食べた後でもいいだろうと後回しにして。

 そして軽トラを返してくると、自車に乗ってアパートに戻り山の自宅まで再び転移だ。


 早めに夕飯(昨日作ったやつ)を取ると、早速開封したものをいじり始めた。早く使ってみたいという欲求が刺激されている。まるで新しく手に入れたおもちゃの初使用の気分だ。

 発電機は店員さんの言うようにやることがすぐ終わった。正直簡単すぎてこれでいいのかと不安があったのだが。

 そして今、テレビのコンセントを発電機の先につながっている延長ケーブルに差して電源を入れてみたのだった。


 電源ボタンを押して光がついたテレビを前に、将一はそう言葉を放った。この家で初めて人口の光が点った瞬間だ。

 チャンネルの設定も何もしていない状態なのでニュースの1つも流れてはいないが、確かに発電機から電気が供給されている証拠でもある。後は取説を見ながらでもゆっくり設定すればいいだろう。

 

 「情報の受信は魔塔でキャッチできるだろうしこれでここでもテレビが見れるようになるかな。いやー、電気を導入する最大の理由もこれで解決できたし後は追々だなぁ…」


 発電機に入れた魔石がしっかり機能して、電気が確かに供給されているのを確認するとホッと一息を吐いた。

 発電機とテレビ…一番重要そうな物の使用が成功を見せたことで他の家電も大丈夫だろうという安心感が生まれた。延長ケーブルにつなげばしっかりその機能を使ってくれることだろう。


 「離れのテレビで1つ、台所の土間に1つ、最悪1つで事足りるけど毎回動かすのも面倒だしもう1つ買っといた方がいいかもなぁ…」


 家に配線が通ってさえいれば設置型の1つで事足りるというのに何とも…。まぁ、配線が通っていてもここまで配線工事を頼むのは難しいので仕方のないことなのだが…。

 予備として持っておくと考えれば2つあってもよかろうと自信を納得させる。実際そう壊れるような物なのかどうかはわからないのだが、経年劣化するにしても取り換えは何年なのか聞くのを忘れてしまった…もう1つを買うときに聞けばいいかと頭の隅にでも記憶しておく。


 「さーてとっ! チャンネル設定ぼちぼちやっちまいますかねぇ。終わったらデザートでも食べながらのんびりすっかぁ」

 今日の家電を買うという予定も終わったから後は家でのんびり過ごすことが出来る。夕飯も食べ終わったし、寝るまでは適当に買ってきた家電でもいじるかなぁ…と、リモコンを片手にピッピッとボタンを押していくのだった。





 「すいません、石田と言いますけど支部長の増田さんにお願いしていた件はどうなったかの確認を頼めますか?」

 「そのようにお伝えすればよろしいのでしょうか?」

 「はい、それで話は伝わると思いますので」

 「わかりました、少々お待ちくださいませ」

 

 次の日の朝、毎度のごとく管理部に聞きに来るという日課を行っていた。

 昨日買ってきた家電の試験が全てうまくいったという事もあって今日の気分はとても良い。朝食時に山の自宅でニュースを見ながら食事が出来たのも大きいだろう。

 少しずつではあるが、どんどん生活環境が整ってきてるのを実感できる。この調子でいろいろやりたいことを終わらせたいものだと。


 ロビーで少し待っていると、受付スタッフさんが待合所の椅子に座っていた自分の所までやって来た。意外と早い対応だし今日も返答待ちかなこりゃ…。


 「お待たせいたしました。増田支部長がお話があるとかですぐに呼んで来てほしいとのことです」

 「……進展あったみたいだな。わかりました、どこに行けばいいんでしょうか?」

 「ご案内いたします、付いてきてください」


 4日目にして待ちに待った返答がついに来たのかと、内心ドキドキしながらスタッフさんの後に付いて行く。今日も何もないだろうなぁ…と思っていたのだが、まさかの事態進展に気持ちが落ち着かない。

 果たして腕輪は買い取りされるのか、されないのか…これによって休暇もここでストップすることになるのだが、今は休暇の事よりも腕輪の結果だけが気になって仕方がなかった。


 そしてスタッフさんに案内されたのは何処か見覚えのある部屋の前だ。以前の報告もここだったような気がする…。

 スタッフさんが「中で支部長がお待ちです」と言って扉をノックした。自分のタイミングで入らせてほしいんだけどっ!?

 扉の向こうから「開いている」という言葉が聞こえて来ると、スタッフさんがお連れしましたと返事を返した。スタッフさんとしては当たり前の行動をしてるだけなんだろうけど、淡々と進む展開に気持ちを落ち着ける暇もないのは悲しいなぁ…。


 「すぅ~はぁ~…案内ありがとうございました。後は自分で…」

 「わかりました」

 

 そう言って扉の前から横に1歩さがるスタッフさん。

 扉の前に立つと、もう1度だけ深呼吸をしてノブに手をかける。そして気持ちを押さえながら扉を開けた。

 扉を開けた先、部屋の中に居るのは増田支部長のみだった。以前の秘書さんはまた別の扉の所で待機中なのかと思いながら扉を閉めて部屋の中に歩を進める。


 「おはようございます、増田さん。お久しぶりです」

 「ああ、おはよう。急に来てもらって申し訳ないな」

 「いえ…結果が知りたくてずっと朝は寄らせてもらってましたので問題ありません。むしろお忙しい中こうして面会していただいて感謝しております」

 

 無難な挨拶から始まり、時間を割いてくれたことについての礼を述べる。まだ4日しか経っていないのだし、1層の調査依頼、討伐部隊の調整と実際忙しいだろうに。

 休暇だと、ここしばらくまったりしていた自分とは違ってやることは山積みのはずだ。おまけに自分の持ち込み素材の話し合いだって忙しい理由の一端を担っているはず…。お疲れ様です…。

 とりあえず軽く頭を下げて挨拶を終える。忙しいというのならさっさと本題に進んだ方がいいだろう。

 

 「いやいや、今回の件は石田さんの持ち込んだものを管理部が直接預かったからね。物が物だし…あまり他の職員に任せるというわけにもいかなくてね」

 「ああ…確かに職員にも気軽に話せるものではありませんか。国が買い取るかどうかといったマジックアイテムですもんね。受付に言付けを頼んでおいて結果だけ通知するというのも出来ませんよね」

 「そういう事になる。この件については管理部でも上の者以外はまだ知らない話でね。いずれは広まるかもしれんが今は少し避けたいところだからな…」

 「ダンジョンの方で今は忙しいでしょうしね…」


 国が買い取るレベルのマジックアイテムが見つかったという話はまだ一般に知られてほしくないと言う増田さん。そっちの問い合わせが受付に来たら余計面倒になるだろうしな…。自分も口にする時は気を付けるかね。

 そんなことを思いながら自分を呼んだ理由はどういったものかを聞く。果たして進展があったのかはたまた別の問題でも起きたのか…。


 「うむ、こちらもなにかとやることが山積みだしな。もったいぶっていても仕方ない」


 そう言って3回机を叩く増田さん。人を呼ぶ合図だな。

 そうして自分が入ってきた扉とはまた別の扉から現れたのは以前見た鑑定士の人だ。秘書さんだと思ってたがちょっと予想外だな。

 鑑定士の人が片手を上げながらお久し~と挨拶をしてきた。こちらも軽く頭を下げて挨拶を返す。結構ラフな人だよなこの人も。


 「おはよう、石田さん。だいぶ長らくお待たせしてしまったかな?」

 「おはようございます。

 ええ、そうですね。たった4日なんですけどいつ結果が出るんだろうって思ってましたよ」

 「初めてのマジックアイテムがこんな大物だったからねぇ。そりゃ心配事は消えないよね」

 

 そう言って右手に持っていた紙袋をこちらに渡してきた。なんだこれ?

 いきなり渡された紙袋の中を気にしていると、鑑定士の人から見ていいとの言葉を貰ったので困惑しながらも紙袋を開いてみた。


 「あっ…これ…」

 「石田さんが見つけた魔石の属性を付与する腕輪だね。おめでとう! 無事に石田さんの元に戻って来たね」

 紙袋の中から、ジップ付きのビニール袋に入っている腕輪を取り出して中身の確認を終える。正直戻ってきたと言われても半信半疑だったりするのだが…。


 「つまり買い取りはされなかったってことでいいんですか?」

 「そうなるね。いやね? 正直な感想を言わせてもらうと絶対買い取りされると思ってたんだよ私は。自分でこうして渡した今でもよく買い取りされなかったなぁ…って不思議に思わずにはいられないんだよね」

 「私も話を聞いてるとまず買い取りされるんだろうなぁ…って思ってましたよ。これ使って大丈夫なんですよね?」

 ビニール袋に入った腕輪を見ながら、増田支部長に確認の言葉をかける。支部長が良しといえばそれが最終的な判断だろうと。


 「問題ないだろう。国からの連絡では買い取りはしないことにしたという事だからな。国が買わないというのなら見つけた石田さんに所有権がある。

 ダンジョン探索ではしっかりと役立ててくれよ?」


 その言葉を聞いて胸のつっかえが取れた気がした。ようやく自分の自由にできる物になったという実感が湧いてきた。

 自分の物になったと安心はしているのだが動悸が収まらない。不安ではなく興奮で今度はドキドキしっぱなしだ。

 増田支部長の言葉に返事をして腕輪を紙袋に入れる。管理部から出たら空間魔法に入れてしっかり保管しておかないとな。


 増田支部長が椅子に座ると自分も腰かけるよう促してきた。その言葉に従って椅子に腰かけた。若干足元がおぼつかないようにも感じる…一時的なものだろうけども。


 「では支部長、渡す物も渡しましたので私はこれで」

 「ああ、すまないな。ご苦労だった」

 「いえいえ。それでは石田さん、私はこれで。その腕輪の使用感なんか今度会った時にでも聞かせてください。4種の属性を使いこなすとなったら色々大変でしょうからね」


 鑑定士の人が部屋から出ていく前にそう言ってきたのでわかりましたと返事を返しておく。

 鑑定士さんという事は素材の鑑定してくれる所が職場だろうしこれからも会う機会は多いだろう。彼の言うように今度見かけたら声でも掛けようと思いながら部屋から出ていく姿を見送った。

 鑑定士さんが退出すると増田支部長と1対1となった。とりあえず気になることもあるので本音を聞いてみたいと思い声をかける。


 「先ほども言いましたけど…この腕輪が私の所に戻ってくるとはあまり考えていなかったのですが、国はよくこれを買取しませんでしたね?」

 「私も十中八九買取になると思っていたのだがな…結果はご覧の通りだ。予算に都合がつかなかったりしたのかもしれないが…無理をしてでもその腕輪は買い取りをすると思っていた。希少価値は間違いなくあるのだし」

 「ですよね…」

 正直なんで買取しなかったのか疑問が出てきてしょうがない。なんかモヤモヤを感じてしまうのだ。


 「それと誰なのかの確証はないのだがね…国に対して手を回した者が居るらしい」

 「……は?」


 ちょっと予想外な言葉が聞こえてきた所為で一瞬思考停止してしまった。手を回したって…なんで? 意味が分からんぞ?

 どういうことだと思いながら増田支部長の続きの言葉を待つ。ほんとに分けがわからん、そんなことする意味があるのだろうか?

 

 「私の所に来た知らせにそんな感じの事が書いてあってな。

 本人は魔力が豊富でこのマジックアイテムも使いこなせるだろうと。もし要らなくなったら買い取ればいい、その時は使用済みで買取価格も抑えられるし…とね。

 誰がそんなことを言ったのかはわからないのだが…石田さんに使わせるのを推奨した人物がいるのは確かみたいでな。私も気にはなるんだが…教えてもらえるかはわからんからなぁ」

 「自分の魔力が豊富って…どこから知ったんでしょうかね? 軍は多分知っていると思うのですけどそちらからでしょうか? ですが自分にそんな知り合いは居りませんよ? 国に意見してくれる人なんて」

 「私が知っている範囲なら石田さんと一緒に潜ったという軍の人間だけだが…国に意見を言える立場でないのは承知済みだ。まったくわけがわからんね」


 一体全体誰がそんなことを言ったのかと考える増田支部長。浜田さん達では確かに無理があるよなぁ…。

 何ともよくわからない助言者が出てきたなと、意味不明すぎてちょっと不安を感じる。そんな口添えをすることにいったいどんな意味がその人物にあるのか気になってしまう。

 自分からすれば口添えしてくれたのだから感謝の対象なのだが…なんとも複雑な気分だな。 

 



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― 新着の感想 ―
[一言] 「誰がそんなことを言ったのかはわからないのだが…石田さんに使わせるのを推奨した人物がいるのは確かみたいでな。私も気にはなるんだが…教えてもらえるかはわからんからなぁ」 気になりますが、いず…
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