144話 家電の購入は終了っと!
「では後で引換券をお渡しすればいいんですね?」
「はい、レジの者に渡していただければお買い上げした商品はお運びいたしますので」
レジでテレビと炊飯器の決済を済ませそれを一時的に預かっておいてもらう。大きすぎて入り口付近のロッカーのところには置いておくことが出来なかった。
それと店員さんに聞いたところ軽トラの貸し出しはやっているらしい。時間に余裕をもって3時間の貸し出し申請をしておいた。購入金額が高かったので無料になってくれたのもありがたい。
とはいえこの後も家電を選ぶつもりだし、レンタル代が無料になったとしても金額的にあまり得した気分は感じないのだろうけど。
店員さんの案内で、次はここに来た本命の火魔石を使った発電機が置いてあるコーナーまでやってきていた。
性能的にはそこまで差があるというわけでないらしく、外見で選ぶのが主なんだとか。…そこまで重要かねぇ?
「ご自宅の色とマッチした物をお客様はやはり選ばれますね。たいていは銀だったり白だったりするのですけど」
「派手な色は正直合わなさそうですし、黒とかだと熱くなったりしそうですもんねぇ。普段触ることはないでしょうし、私も銀か白にしましょうかね」
家の色が茶色っぽいから木目入りのような外見とかでもそれはそれで合うかもしれないと思いつつ店員さんに付いて行く。
そして目的のコーナーで立ち止まると、じっくりお選びくださいと声を掛けられた。
そこにあったのは、街に下りてきてから所々で見かけた箱にレバーがついているような装置だった。見た目はブレーカーの操作レバーが付いてる金属製の箱だ。
「これが魔石の発電機か…思ってたほどでかくないんだな?」
「内部は結構シンプルに出来てますからね。
火魔石のエネルギーを変換する魔法陣に火魔石を置く台座。虫なんかが入らないように金網で防護されてたりとそれぐらいです。意外とスッカスカでしてね。
外側は盗難防止に頑丈なカギは付いてるぐらいで余計な飾りもありません。拘りたい人はご自分で色を塗りなおしたりしてるそうですよ?」
店員さんの言うように、箱の表面にゴツイ鍵がいくつかついてるが魔石が中に入ってるのだしこれぐらいの防犯処置はいるのだろう。
だけどこれごと盗もうと思えば盗めそうなのがちょっと怖いな…。この世界だと怪力の能力者もいるし、いかに大きかろうと盗めたりするのだろうが。
どっかに箱ごと溶接してしまった方が安心できそうだ。
(そういやたいてい家の壁だったりに取り付けられていたっけか。やっぱり盗難事件とかあったんだろうな…)
箱の奥にはネジで止める部分もあり、溶接またはネジでくっつけるのが現在の設置の仕方だったりする。当時は将一が思っているように盗難事件もやはりあったりした為、いくらかは改良されていた。
「これって家の外に付けるんですよね? 変換したエネルギーってどういう風に家の各所で使えるようにするんです?」
「配線工事の者がご自宅にお伺いしますので設置しだい取り掛かってくれますね。30分もあれば取り付け終わるでしょう」
あるとは思ってたけどやっぱり配線工事はしなきゃいけないか…。しかし、そこでふと疑問が出た。
山にある自宅にはそもそも電気の配線なんてなくないかと。
(この場合どこに線を通すんだ? まずは電線の設置から始めなきゃいけないかったりしないか?)
そもそもコンセントの差込口なんてない家だ。電化製品の線を差すコンセントの差込口を取り付ける工事が必要なことに今になって気がついた。これは面倒なことになったと背中に嫌な汗が流れた。
「これって他のタイプとかあったりしませんかね? 設置型じゃないのとか…」
「他ですか? 後は野外で使うタイプの発電機がありますよ。農作業してる人たちとか屋外で作業するのにリールタイプのコンセント元を使ったりしているでしょう? ああいうのですよ」
それを聞いて内心でガッツポーズをした。面倒な配線工事をこれでやらなくて済むと。
「そっちを見せていただけますか? うちも外で作業することがあるんですけど、そっちで電源取れないかなぁって思ってたんです」
外での作業時には魔法で明かりを作るから別にいらないのだが、理由付けとしてそんな話をしてみる。
「わかりました。屋外用のはあっちの列ですね。とはいえそう変わるもんじゃないんですよ。設置できるネジ穴や溶接する部分が無いだけでして。
個人だとキャンプに持ってったりするんですけども、探索者の方が簡易拠点を設置するのにも使われてますね。固定する意味があまりないですし、荷物として少し重くなって大変ですけどダンジョン内でも電気が使えるなら何かと便利だって聞きますよ」
「ああー、確かにそうですよねぇ…。荷物としてはちょっと大きいですけど持ち運びが出来る大きさですし、ダンジョンまで持っていく人もいますか。大型のライトとか使えると便利ですもんねぇ…」
常夜のエリアなんてのもあるらしいし、そこに作る簡易拠点の明かり確保では確かにこいつがあると便利そうだ。少し重かろうと電気が使えるっていうのは良さそうだよな。
「昔はもっと大きな発電機を苦労して運んでいたらしいですからねぇ…この持ち運びが出来る大きさの火魔石使用の発電機は何処でも大活躍ですよ」
「でしょうね…重たい装置からこれに代わるんなら確かに大活躍間違いなしです」
簡易拠点作成など自分はまだまだその域に行ってないから使わないのだが、電気が無い自宅でもこれなら問題ないだろうし、確かに大活躍してくれると感じていた。
列にある屋外用の非設置タイプを見てみる。確かに大きく変わっているところはそうなかった。
唯一変わっていると言えば持ち運びしやすいように取っ手がついていたり、キャスターが底についている所だろう。設置型には確かに要らない要素がこいつにはあった。
「これはどうやって使えばいいんでしょうか?」
「そいつとセットになっているコンセントがありますのでそれを内部の機構の所に取り付けます。それだけですね」
「え? それだけですか?」
あまりにも簡単に終わりすぎじゃないだろうか? 設置タイプは配線につなぐ必要があるっていうのに。
「外で使う事を想定してですから簡易に出来るよう調整されてるんですよ。取り付けたコンセントの先は差込口になってますし、そこに屋外で使う延長コードを差せば完成ですから。
その後はいろんな電化製品のコンセントを延長ケーブルに差せば使用できます。最初に内部の所に取り付けるだけで大丈夫ですよ」
「はー…設置型より面倒がなくて良さそうですねぇ」
「まぁその分延長ケーブルが要りますけどね。
設置型の方は家の中のコンセント元にそのまま差せば1階だろうと2階だろうとどこでも電気が取れますけど、持ち運びのこいつは延長コードの先だけと限定されてますから。どっちもどっちですねぇ」
店員さんとしてはこれを家の中で使うという想定がまず無いようだ。まぁ、そりゃそうだよな…家で使うなら先ほどの設置型のが便利なんだから。
(でも家の状況としてはこれを使うしかないからな。配線につなぐっていう考えがすっかり頭から抜け落ちてたわ…)
発電機っていうからこれから直接取るもんだとばかり思ってたけど、家中で使うならそりゃ配線に流したほうが効率いいよな。じゃないとビルとかで使えんだろうに…。
よく考えれば普通にわかりそうなことなのだが発電機という言葉にすっかり騙されていた。というよりあの山の自宅で使うならそんな感じじゃないとどうしようもないという考えが頭にあった所為だ。
コンセント元がない家だったから配線に流すという考えを勝手に除外していたのだろう。
(屋外でも使える発電機があってくれて助かったな。これで家でも家電が動いてくれるわ)
少し場所は取るが冷蔵庫ほどではない。問題があるとすればケーブルの線に引っかからないよう気を付ける必要が出てきた事ぐらいだろうか? 寝ぼけて躓かないようにしないとな…。
そう思うと買うならばどれがいいか選び始めた。
外に置くのではなく内に置くことになるから内装とマッチするようなものが好ましい。内部も木造なところが多いしやはり木目調のデザインがいいだろうか?
どんな物があの家に合うかと考えながら、結構な種類の非設置型発電機を見ていくのだった。
「お買い上げありがとうございます。ずいぶんたくさんの物を買っていただきましたね」
「いやー、最近引っ越してきたので何かと揃える必要がありまして。必要なものが多くて懐的には結構きますね」
発電機の後は昨日も少し言っていた電子レンジやオーブンといった物を見ていった。
結局買った物は炊飯器、テレビ、発電機、電子レンジ、オーブントースター、IHクッキングヒーター、テレビ録画用のHDD、パソコンのデータを入れておけるHDDと様々な物を買っていった。まぁ…これだけ買うとなると流石に金額もばかにならなかったのだ。
「買った物はレンタルされた軽トラに積み込んでいますのでもう少々お待ちください」
「箱で積むと結構かさばりますもんねぇ…壊れモノですし慎重におねがいします」
店員さんは承知しておりますと言って頷いた。
しばらく待っていると積み込みが終わったと連絡が来たので駐車場に向かう。
(とりあえず人気のない路地裏まで持って行ってそこから車ごと転移して荷物を降ろすか。降ろしさえすれば軽トラは返却していいし3時間も要らんよな実際)
この荷物をどのようにして持っていくかという事を駐車場に向かっている間に考える。転移が出来る場所さえ見つけれれば後はどうとでもなるだろうと思った。
駐車場に着くと店員さんに軽トラの所まで案内してもらう。そこには荷台に段ボールを積んだトラックが待機していた。
「あちらがレンタルされた軽トラですね。鍵はもうついておりますので後は時間までにお戻りいただければ」
「わかりました。時間内に戻って来るなら早くてもいいんですよね?」
それで構いませんと頷く店員さん。なら積み下ろしが終わって早すぎない程度を見計らって返しに行こうと思った。3時間あるのだし箱から出しての開封作業が終わるぐらいがちょうどいいかなと。
車に乗ると、窓の外からご来店ありがとうございましたと挨拶がされた。それに軽く頭を下げて返事を返す。
車を出す準備を終えると、人が周りにいないかだけをもう一度確認して駐車場から出ていく。ミラーで確認すると店員さんも店内に戻っていくのが見て取れた。
「さてと…どこかに人気のなさそうな所はないかねぇ。さっさとこいつを運んで家電のお披露目と行くかぁ」
運転をしながらどこかに入り込めそうな路地はないかなぁと視線を動かす。もしなければ地下駐車場や屋上の駐車場といった所も案外人目が無いのでそこでもいいかと思った。
活気があるダンジョン街とはいえ、中央から離れれば意外と人気はないものである。転移する場所については最初についた街程気にしなくていいと気楽に運転していた。




