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14話 施設での調査(1) 世界にダンジョン出現!



 「すいません、パソコンを使いたいのですけど何か記入しなきゃいけなかったりしますか?」

 「それではこちらに今日の日付と日時、それとご自分のお名前を記入していただけますか?」


 建物の中に入るとロビーを抜け、受付カウンターの所に座っている女性職員の人に声をかける。市の施設ということもあり、何か利用するのに必要なことがあるかもと思い聞いてみた。

 必要なのは名前の記入ぐらいだったのでそれをすます。どれぐらいの利用率か市が把握する必要があるからだろう。

 

 「はい、それで結構でございます。パソコンルームは1階のあちらになりますのでどうぞご自由にお使いください。

 ご休憩の際は右手にリラックスルームがございますので、そちらもぜひご活用くださいませ」

 「へー、ありがとうございます。後で少しのぞいてみることにします」

 「終わりましたらパソコンはデスクトップ画面に戻してそのままお帰り頂いて構いません」

 「電源は切らずにですね、わかりました」


 受付の女性に使用上の注意などを軽く聞くと、そのまま先ほど見えたパソコンが置いてある部屋に向かう。

 しばらく歩くと廊下の角に到着し、そこがもうパソコンルームだった。建物の1画を廊下とつなげ、解放感を優先しているためか広く窮屈な感じはしない。これなら熱がこもることもないだろう。それに一応エアコンも利かせている。


 使用率を見てみるが3割程度だろうか。皆思い思いにパソコンに向かって作業をしている。調べものも別段隠すようなことでもないので、適当な場所に陣取ると検索サイトをを立ち上げる。元の世界にもあった有名なところがこちらでもあった。

 

 (さて…ここからずいぶん長くなりそうだな。まずは世界史の年表から確認していくか。異世界の要素はどこから影響してるんだか)

 ブラウザが立ち上がると、『世界の歴史』と打ち込み検索をかけてみる。いろいろ出てくるが、とりあえず一番上のサイトを開いてみた。

 

 (フムフム…昔の方はどうも見たことある内容だな。世界史とか主だったことぐらいしか覚えてないけどだいたい同じか。

 うん、ちゃんと第1次世界大戦も第2次世界大戦もあるか。戦争自体無かったら歴史も無茶苦茶変わってそうだもんな。

 で、最近の方は……)


 大昔の歴史から遡り、おかしなことがないか探すがどうもそこまで変なことにはなっていないように見受けられた。あれな感想ではあるが世界大戦があってよかったとも思った。歴史が大幅に変化していなくてと。

 しかしその考えは、ここ30年ほど前までの年表を見て変わる。


 (ダンジョン…建物が世界各地の地上で一斉に出現するだって!?)


 だいたい昭和までは何事もなく、元の世界と同じ歴史を辿っていたと思っているところについに来てしまった。異世界の因子という神様が言っていたことに。

 将一は恐る恐るその歴史の内容を詳しく確認しようと、カーソルをその言葉の上に持って行きクリックを押した。

 

 (今から約30年前…1989年3月18日、世界各地で地震が起こり地面から光が伸びて建物が生えてきた、か。

 光ね…。つまり昨日から見ていたあの光がこれなんだろうな。あんなのがいきなり空に伸びてきたら驚きがすごそうだ。30年前だっていうんだからなおさらだな) 


 世界各地で地震が起きた後、そこらかしこで空に向かって光が伸びる光景を想像してみた。

 今の技術なら強力なライトもあり、同じようなことも出来るだろうが、30年前にそれが出来るだろうかと。

 丁度日本は昭和から平成と時代が変わった節目の時代である。この年は日本中が新しい年号だ時代だと騒いでいるときだったはずだ。

 そんな時にこの出来事。パニックにならないはずがないとたやすく想像できた。


 (あの時は自分も子供だったから全く記憶にないんだよなぁ…。日本中でお祭り騒ぎしてたような映像は見た覚えはあるんだが…正直子供だった自分には年号が変わろうとなんも思わなかった年齢だったしなぁ。

 まあそんなことはいいとしてダンジョンが一斉に出現してからどうなったんだ?)


 画面に目を戻し、真剣に内容を読み始める。ここからが歴史が変わった変革期のはずだから…。




 唐突に建物が、光が出現し、世界は混乱に陥った。建物だけならともかく、周囲にわかるよう空にいくつもの光が伸びたことは、遠く離れていたとしても多くの人々が目にすることになった。

 テレビや新聞は、毎日のように空の光を映像として、写真として一般に報道する。情報規制もこれでは不可能だった。

 そして光の根元にいた人々は、光を放つ建物自体も目にすることになり、それも一瞬にして報道され世界の人々のほとんどが知るところとなった。


 空の光をヘリや戦闘機が近づいて確認をする。どこまで伸びているのか。

 地上の建物を学者や研究者が材質は何なのか、いつの時代の物かを調べる。

 宇宙からは人工衛星の情報が各国に知らせられた。光は宇宙まで伸びていることを。


 光も建物も懸命に調べられはしたが分かった事は少なかった。

 1つ 材質も時代的な背景も一切不明。

 2つ 建物は破壊不可能。核兵器等を撃つわけにもいかず、シミレーション結果も計測不能となった。

 3つ 光に害はなく、宇宙まで伸びているだけらしい。光上を物理的に塞いでも、なぜか通過し遮ることは不可能。

 4つ 建物内に魔法陣のようなものが描かれており、目の前の台座に数字が刻まれているということ。使用目的も不明だった。

 現状、これが各国の調べた内容だった。このうち2つ目と4つ目は報道規制が掛けられ、国の上層部と調べた人員以外はまだ知ることはなかった。




 (当時はほとんどわからずじまいか。情報規制は仕方ないとしても、ほとんどが不明、無理ってことだと一般人は不安で仕方なかっただろうな…)

 実際続きの文に国民の不安はしばらく続いたとなっている。この事態が動くのはもう少し先だった。




 国民にはほとんど不明と説明され、しばらく過ぎた頃に学者や研究者の失踪が相次いで報道されることになった。

 多くの人が研究の為、国が誘致したのではとささやかれたが各国はそれを否定。ほぼすべての国が、現れた建物を調査している最中いつの間にか消えたと言う。


 その知らせを知った人々は、あの建物が人をどこかに消したんじゃないか? という発想に至るまでそう時間はかからなかった。

 国が魔法陣の存在を隠しており、一般はそう想像するしかなかったが、国の上層部の結論も多くの人々が言うように、あの建物が人をどこかにやったということとなった。


 各国はあの建物にある魔法陣の存在を一般に言うべきか激論を交わした。

 間違いなく大混乱になることは予想できたからである。



 (まあ普通に考えれば人をどこかに飛ばす魔法陣がありますなんて言われて落ち着いてられんよな。多くはそんな馬鹿な話…って真に受けないだろうけど、実際人がいなくなってるわけだし。完全にオカルトだもんなぁ…。

 それと魔法陣の存在隠した状態で調査します、とか言われても建物に入っただけじゃないかって言われるだけだしな。秘匿しての調査は無理だろうな。

 で、実際はどういうことになったんだ?)



 魔法陣の存在についての激論はしばらく続くが、各国はやむを得ないという結論を出した。


 魔法陣の存在を一般に報道した後は、予想通りの混乱だった。建物は街中、街はずれ、山の中と至る所に出現したのだ。

 建物の近くに住んでいる人々は、少しでも遠くに離れるべきと考える人も現れ安全な地域を目指す人が増えることとなった。

 無論全ての人が移動できたわけじゃない。金銭面だったり土地の都合だったり健康上の都合であったりと様々だが。


 そんな人々が混乱に陥っている中、世界各地で調査隊が組まれることとなる。魔法陣なんてオカルトもいいところだと、ばかばかしいと思う層ももちろんいたがやらないわけにもいかなかった。


 世界各地で組まれた調査隊は、研究者、学者、安全性を考慮して軍人を混ぜて構成された。

 そして準備に暫くかかったが、ついに魔法陣の中に入り調査するところまできた。


 今までの調べから、魔法陣の上に立って目の前の数字が書かれた台座を操作するのだろうということは容易に考えられた。馬鹿らしいがアニメやゲームや小説からそういう発想はすぐに生まれたのだ。

 建物の中に入り、魔法陣の上に調査隊が乗って台座の数字を動かす時が来た。機材や装備を含めれば入るのは10人ぐらいが限度だったため、その人数に分けて調査隊を送り込むこととなる。


 建物の周りにいる民衆は次々建物に入っていく調査隊に目を疑った。明らかに収容できる限界を超えての物量だったからだ。

 テレビでもそれが生中継として伝えられた。そして多くの人々が魔法陣があり、人をどこかにやるのだという事実を認識するようになった。

 


 「ふう…ちょっと休憩入れるか。気にはなるが一気に見て疲れた…」

 将一はパソコンの画面を落とし、使用中とわかりやすく思わせるため、座ってた椅子にコンビニで買った荷物を置いて受付の職員さんに聞いたリラックスルームとやらに足を向けた。




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