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12話 別世界の町を見よう




 「いやー、舗装された道は走りやすくてやっぱいいなぁ。いつかあの山道もなんかとしたいもんだ」


 除草をし、魔法で強化した手作りの道を抜けるとコンクリートで舗装された公道を軽トラで道なりにひた走る。

 曲がりくねってるとはいえあの手作りの道と比べれば幅も違うとあってとても楽だ。


 しかし、しばらく車を走らせるも一向に他の家が見当たらない。

 あの家が放置され何十年経っているのかはわからないが流石に周りに他の家が1件もないなんてことはないよなと、周りの景色に不安を覚えながらも進み続けた。


 いくらあんな所に住んでいたとはいえ買い物にだって行ってただろうし、それが無理なら県か市から支援されているはずだ。

 この世界についてはほとんど知らないが町から離れて暮らしているとはいえ流石に放置なんてことはしないだろう。まぁ、憶測でしかないけれど。


 「とりあえず下りだったこっちの道に来たけど、上りの反対側行った方が手っ取り早かったか? せめてカーナビ付いててくれればよかったんだが…ない物ねだりだな。それと型が古すぎてどれでラジオが聞けるのかもわからねぇ…これいったいいつの時代の車だよ…」

 

 見つけた軽トラはスタンダードななにもない標準タイプだったのか現代の車を知ってる将一からするとさみしいものだった。

 情報を求めてラジオと格闘しているが、実はこの時点で将一が見逃していることがいくつかあった。


 まずはカーナビについて。召喚魔法で『この世界の』地図ソフトを用意し、それに対応した『この世界の』外付けナビを揃えれば使用が可能だった。

 しかし将一は今まで元いた世界の品ばかり呼び出していた所為か勝手に自分が見たことあるものが対象だと思ってしまっていた。そのた為この世界の物を呼び出せるとは考えていなかった。これを知るのはもう少し後の事となる。


 次に現在地についてだが、実は家をよく探せばあったのだ。家具だけあるものだから、そういったモノは処分したか持って行ったのだと勘違いしていた。捜索を後回しにしたことが仇となった。


 それと今身に付けているものにも実は答えが載っている。神様から贈り物として貰った運転免許証だ。

 運転免許証をパッと見るとどうしても自分の顔写真に目がいってしまう。将一も顔写真が付いた個人証明証=運転免許証手の入手のみに意識がいってしまい中の情報を確認することを忘れてしまった。そして、その後に見つけた物の存在の大きさに再び注意を持っていかれてしまい運転免許証の確認がおろそかになってしまっていたのだ。

 

 そんなことを知らない将一は家屋や町を目指してただひたすらに車で走り続けていた。

 



 「ん! 今見えたぞ!」


 対向車や歩いている人がいないか等の注意をしつつ、窓を開けて他の車の音が聞こえないか試したりラジオが聞けないかといろいろ触ったりしながら確実に下っている道を進み続けていた。

 そしてついに木の途切れた隙間から、下に見える町を視界にとらえることができた。

  

 「よっし、見えるようになったらだいぶ気が楽になったな。ガソリンも大丈夫だしもう少しの辛抱だ。

 しかしここに来るまで家を本当に見なかったけど、あの家に住んでた人どうしてたんだ? 自給自足にしたって限度ってものがあるだろう」

 

 やっと町が見えたことで今までの不安も消え愚痴を言う余裕も生まれたようだ。気分も乗ってきたのか多少法定速度を超えているがスピードを上げる。

 とりあえず町までもう少しということもあり、人等に気を付けながら確認事項を脳内で整理する。


 (まずは現在地だな。これは看板見りゃだいたいわかるはずだ。わからなかったらコンビニなり店に入って人に聞けばいい。自分が知らない都道府県だったりしたらどうすっかな…。まあそこはいいか。

 次は…調べるというか見ることだけど、時代的にどれぐらいかってことか。はたして自分がいた現代と同レベルなのか遅れてるのか、もしくは進んでるって線もあるよな。異世界の因子があるなら一部はそうなっててもおかしくないし。転移の魔法が流行って車等の移動手段なくなってたりしてw。

 それとあの家の所有権の確認…は大丈夫だよな? 神様がしてくれてるんだしそこは信じよう。なんか言ってきたら対処するか。優先順位としては下でいいな。

 だとすると次はあの光のことか? 町にだいぶ近づいたからか、はっきり見えるようになってきたな。光の根元はわからんけど町からちょっと離れてるか。

 次は何だ? 異世界の因子があるとか言ってたからそれか? 市がパソコンを無料で使わせてくれる所か漫画喫茶辺りで調べられるといいんだけど…。 

 で、次が…)


 この世界について何も知らない所為か、次から次へと知らなければいけないことが出てくる。

 今更仕方のないことかもしれないが、別世界における一般常識の情報ぐらいは転生時に頭に入っているようお願いしておけばよかったかと軽く後悔する羽目になってしまった。

 

 そんな知らなければいけないことを次々考えていると町までだいぶ近くなったようだ。ちらほらと民家も見かけるようになり田んぼや畑を通り過ぎるとお店もだんだん増えてきた。


 「そろそろ町の端っこは通り過ぎただろう。それに標識の地名にも見覚えがあるし、現在地も確認できたっと。

 にしても個人宅だったりアパートやマンションに必ずと言っていいほどついてるあの箱はなんだ? 家の門先やビルの正面に飾ってあるあの置物、見た目的にゴーレムっぽいけどなんであんなの飾ってあるんだ? 街中にもなんかそれとよく似たちっこいのいるな。ただの飾りじゃないよなこれ…。

 街並みも元居たところとはずいぶん違うし…なんなんだろうな、この感じ?」


 とりあえず車を走らせながらいろいろと街の様子見て回っているが、どうもかなりの違いが元の世界とあるように感じる。


 一番目立つのは、何といってもところどころで見かけるゴーレムらしき置物だろうか? 大きなビルの前には当然と言っていいほど見かける。個人宅はまばらといった感じだが、大きい家だとそれなりの頻度で見かけるな。

 それと街中にも大きさを変えたゴーレムのようなものがところどころに存在していた。個人宅にある大きさぐらいだろう。


 「まるで門番か番犬だな…。

 動くのかどうかはまだわからんけど、ただの見せかけってことはないんだろうな…」 

 

 車が信号で止まるとここぞとばかりに周りを見渡す。

 どこかに動いてるやつはいないかと思い注意して辺りを探すが、あいにく動いているのは人ぐらいのものだ。


 「やっぱ動く奴は見当たんないな。よほどの事じゃないと動かないのか? 事件でも起きれば動くとか? 不謹慎だけど動くとこ見てみたいなぁ…」


 信号の色が変わると車を発進させる。わき見運転はダメだとわかっているが、どうしても目線がチラチラと周りに向いてしまう。

 そうしているとふと違和感に気が付いた。窓を開けていたおかげでもあるが他の車の音がまったくしないのだ。自分の動かしている軽トラはエンジンの音が響いているというのに。


 「どういうことだ?」


 不思議に思い自分の前を走っている車や追い抜いていく車を注意して見てみる。注意深く見たところで車としてはいたって普通にしか見えない。

 タイヤが地面とこすれる音、中で音楽でも聴いているのかこちらに聞こえてくる音はそれぐらいだ。まるでエンジンそのものがないのでは? と思ってしまうほど音がまったくしない。


 それと、この車を追い抜いていく運転手が珍しいものを見るような目で自分の軽トラを見ていた。たまにそれで目が合うと、お互い気まずそうに視線をそらしあった。


 「どうやら車に関してはずいぶんエコな方法でも発見されたみたいだな…。異端だとはわかってたけどこの世界じゃこの車の方が相当珍しいらしい」


 かなりの確率で目を向けられる自分の軽トラ。同じ車種でもいれば違いが判るのかもしれないが見える範囲には1台として同じ車種は見当たらない。

 変な居心地の悪さを感じながらもそのまま車を走らせ続けた。


 しばらくして町のかなりにぎわっているところまで来た。ここまで来ると流石に目に見えて街中の様子が違うことに気付く。


 「なんで街中に武器屋の看板みたいなものがあるんだ? お土産屋とかそういう規模じゃないだろあれ…」


 信号待ちをしている間に件の店を観察する。どう見ても看板として槍や刀や薙刀を飾っているし、窓は外から中の様子が分からないようになっている。外側にはおまけに鉄格子まである始末。間違いなく元の世界にはないだろう店だ。よく知りはしないが猟銃店とかってこんな感じなのだろうか?


 信号が変わってすぐ視界から外れるが、とても印象深い店を見つけてしまった。

 そして武器屋だけでなく、今度は鎧や盾をショーウィンドウに飾ってある店まで見つける。


 「武器屋に防具屋…ここ街中だよな? 木刀や竹刀を売ってる土産屋とかじゃなかったぞ。鎧の方だってあれ剣道の防具とかじゃなく、板金鎧とかプレートアーマーとか言われる本物の甲冑だったろ。ああいうのが出てるってことは需要はそれなりにあるんだろうな。あ、人はいってった…」


 車を走らせながら目だけを横に向けた。歩道では背中に長物が入ってるような袋を担いでいる人や、歩くフルプレート姿を見かけたりとまるで異世界の人が混じったのかと錯覚してしまう光景があった。彼等からすれば自分の方が異質に見えるのか知れないが…。

 そんな人達を見ていると、追い越しながらこちらを珍しそうに見ていくドライバーの視線すら気にならなくなるほど感覚が麻痺してきた。


 「どっかで休憩入れるか…そういやずっと走りっぱなしだったしな」


 町をどれぐらい見て回れたかはわからないが全然だろう。しょっぱなからこうも不思議な光景を見続けてしまい別世界とわかっていても考えさせられる事がどんどん出てきてしまう。

 とりあえずコンビニを見つけたので買い物でもして気分を紛らわせようと思った。


 「とりあえずばれないように……ケース来い! よし、神様から貰った硬貨以外はないし、銀行行くまでどうしようもないんだよな。ほんとお金貰えてよかった…」

 通帳はあるがカードはない。引き落としができない現状、神様から貰った500円玉で買い物をするしかないのだ。

 

 「支払いに500円玉ばっか使う人とかあんま見ないよな…。とりあえずお金はあるんだ、必要そうなものは片っ端から買っとこう。元の世界の物で代用できる物は召喚魔法でとりあえずなんとかできるし、こっちの世界に関係ありそうな物優先だな」


 召喚魔法で硬貨がいっぱい入りそうな財布を呼ぶと、ケースの中にある500円玉を一掴み二掴みと入れておく。

 そしてケースにかかっている重量軽減の魔法を財布にもかけて軽くし、持ち運びに負荷が無いようにするとコンビ二へ向かった。


 「いらっしゃいませー」

 こちらの世界でもコンビニの店員はアニュアル対応なのか特に変わってないなと変に安心し必要な買い物を始める。


 (まずは日本地図と世界地図の簡単なのでいいから買っとくか。幸いこの場所は知ってる県だったけど別世界だしな。もしかしたら47都道府県じゃなくて50都道府県とかになってたり、その逆に減ってる可能性もあり得るしな)

 旅&レジャーコーナーで地図を1つずつカゴに入れて次の買い物へと向かう。

 

 (品を見ても見たことあるような奴から知らないのも結構あるな。まあコンビニの商品把握なんて向こうでもしてなかったから自分が知らなかっただけかもしれんけど…。とにかくリサーチリサーチっと)


 基本は雑誌コーナーで最近の情報が載っていそうなものを買ったり、他所に移動するために必要となりそうなロードマップを各種買う。それと情報ということで、置いてある新聞を社毎に1部ずつカゴに入れた。

 

 しばらく店内で必要そうなものを物色し、もうそろそろいいかと思うとカウンターに持っていく。

 

 「すいません、これお願いします」

 「…こちらで全部ですね。少々お待ちください」


 店員は最初見た人と変わったのか女性の人がレジ担当をしていた。

 自分で買っておいてなんだが…コンビニでカゴいっぱいに買う人などほとんど見たことない。それも雑誌コーナーの物ばかり。

 

 (自分が店員だったらコンビニでこんなに買うとか面倒な客って思うなぁ…。レジも1つだけみたいだし。しばらくかかるか)


 なんとなく嫌な客みたいだなと自分でも思ったがなるべく表情にださないよう気を付ける。それでも心の中で苦笑いをしてしまった。

 コンビニでここまで買い物をしたことなど元の世界含めて始めてなのだ。


 会計まで暇だったので、なんとなしに店員さんの向こう側に並んでるタバコやカードに目を向けていると変な言葉を見つけた。

 なるべく表情に出さないよう注意はしていたが、まさかコンビニでそんな言葉を見るとは思っておらず、呟くような声量ではあったがつい声に出してしまった。


 「ご必要な魔石、各種ご用意してます…」

 



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