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104話 ダンジョン1層 地底湖を行く




 「どうですかね? そろそろ力尽きましたか?」

 計3匹の腕と足を切り離し、動かなくなるまで待ち続けた4人。しばらくすると感知蟹は動かなくなり、しっかり死んだかどうかを聞いてみた。

 

 「大丈夫でしょう。両目を潰されたうえに腕と足全てを切り落とされたならば問題なしです。

 広田、深田、甲殻を剥がして魔石を取り出すぞ」

 「「了解」」


 ショートソードで目があった部分を突っつき、死亡確認をすると次の行動を指示する浜田さん。

 将一は初の魔石採取だなぁ…とドキドキしながら3人の手際を観察していた。


 「よし…3体共死亡確認OKだな。石田さん、すみませんが地面動かして腹側を上に向けていただけますか?」

 「はいはい、それぐらいお安い御用で」


 背の部分は防御が厚いと言っていたし解体するなら腹側からなんだな…と思いながら感知蟹を仰向けにひっくり返した。

 3体共ひっくり返されたところで浜田さん達が鑿とハンマーを使い、甲殻の外側についている岩を砕き始めた。


 「やっぱりその岩は邪魔なんですか?」

 「そうですね。溶かすにしても他のモンスターので事足りますし、だいたいはダンジョン内で割って置いていきますね。このまま持ち帰るにしても重量が軽くなるので。

 とりあえず今は魔石だけという事で邪魔な部分だけ割りますね」 

 「お願いします」


 邪魔な部分だけということで腹側の岩だけを今は割るらしい。腹の岩を割ったら甲羅の部分から引っぺがすそうだ。カニを食べるときのあんな感じだろうか?


 甲羅と腹側の間の部分も岩を割ると、いよいよ引っぺがす作業だ。2人1組になって力を入れて腹を持ち上げる。甲羅を抑えながら腹を持ち上げる係と、持ち上げた腹を頭の方向に引っ張る役に分かれた。

 頭の部分には岩がまだついているので結構重そうだな。それとも身が詰まっているから重いのか?

 バキバキと音を鳴らしながら少し時間をかけて腹の部分を引っぺがすことが出来た。


 「おおー…大きさが大きさですから身がすごいですねこれ。味噌も美味しそう…」

 引っぺがした腹の部分を見ながら素直な感想を口にする。これ1匹で何人前何だろうか? というような思いが頭を過った。


 「魔石は腹の上の部分についてます。これですね。もしなければ甲羅側に落ちてるかもしれませんのでなければそちらを探してください」

 「わかりました。この部分に魔石があんのか…」

 腹側についてるワタをナイフで切り落とし、魔石が付いてる部分を手で持ちながら見やすいように説明してくれた。

 

 「この中に魔石が入ってます。っと、これです。これが感知蟹が持っている魔石ですね」

 「おおー! ついに魔石ゲットですか…。いやー、なんか感慨深いですねぇこうやって手にすると」


 取り出してくれた魔石を受け取ってじっくり眺める。若干蟹臭いので水魔法を使って洗った。


 洗った水の魔石は綺麗な水色をしており、コンビニで一度見せて貰った物より透き通っているような気がした。大きさはあの時のよりちょっと大きいかな? という感じだ。

 値段的にこれがいくらぐらいするのかわからないが、普通のだとしてもこれだけでうん十万するのだろう。それが3個なんだなぁと思うと表情が自然と緩んでしまった。


 「これって魔石としてはどんなもんですかね? 普通ぐらいですか?」

 「色は透き通ってるように見えますね。明るい所でしっかり見ればもっとはっきりわかるかと。大きさ的には中の上といった所ですか。

 管理部に持っていけばそれなりにいい値段で買い取ってもらえますよ」

 「おお…意外と最初にしては上出来な感じですね。これは他の2匹も期待できるかなぁ…」

 「そればかりは見てみるまでは何とも。とりあえずどんどん解体していきますね」

 「お手伝いできることがあればやりますよ。あ…とりあえず腹引っぺがす時怪力の手袋使ってください。その方が楽でしょうし」

 300㎏まで楽々だというのならこういう時にも使えるだろうとリュックから出しておく。有効利用できるのならどんどん使っていくべきだろう。


 「よろしいんですか? ではありがたく使わせてもらいます。

 広田、深田、どんどん岩を割ってくれ。引っぺがしは私と石田さんでやる」

 「「了解」」

 「それと終わったら腕のハサミ部分の岩も落としておいてくれ。どうせだから夕飯に汁物にでも入れよう」

 「いいですねぇ。せっかく蟹の身があるんですから少しぐらいは持っていきますか。蟹味噌だと悪くなるかもしれないですし、身ぐらいは持っていきましょう」

 腕の部分ぐらいなら荷物として増えても大丈夫だろうと賛成した。どんな味なのか気になってもいるしな。

 

 「了解。岩を割り終わったらハサミ部分の確保に移ります」

 「どうせならば大きいのがいいな。炙って食べる分も考えておこう」

 どれもそう変わらないだろうが、どうせ持っていくなら大きい奴がいいだろうと今の内から吟味していた。蟹の身を炙ったのも美味いよなぁ…と、深田さんの言葉に頷いておく。


 「運びやすい奴にしておけよ。重すぎたら邪魔なだけだからな」

 「了解」


 さっさと腕に取り掛かるぞと言わんばかりに、腹側の岩をどんどん割っていく深田さん。蟹の身が好物なのかもしれないなあの様子では。

 そんな様子に皆して苦笑しながらこちらも岩を割る。怪力の手袋があるから先ほどより岩が残っていてもいけるだろう。

 次々に落とされていく岩を見ながら、2個目の魔石はどんなものかなぁと期待しつつ引っぺがすその時を待った。

 

 



 「よし、全員移動再開できるな?」

 「大丈夫です」

 「問題ない」

 「こちらもだ」


 感知蟹を解体し終わり、無事3つの魔石とハサミ部分1つを手に入れた将一たちは水辺に集まっていた。(魔石的にはどれも同じような感じで、差はあまり感じられなかった。)

 解体して残った部分はスライムが処理するのでそのまま放置しておく。誰かが来て素材を持っていくならそれもいいだろうがこんな端っこじゃぁねぇ…。


 「さて…予想外な戦闘があったが本来の予定に戻そう。広田、確か地底湖を進む手段がいくつかあるって言ってたな?」

 「そうだ。これには石田さんの能力がいるがそれを込みでいくつか案がある」

 「使えるなら移動手段に組み込んでもらって構いませんよ」

 もともとそういう予定で地底湖まで行くとなっていたのだし、使えるというのなら使ってもらおうという気持ちで口にする。


 「ではまず1つ目だが、ここの水深は深くて2mぐらいしかない。石田さんが道を作ったのを見て思いついたのだが、水中に飛び石的な足場を作ってもらえれば向こうの出口まで一直線に進めると思う。時間を考えればこれが一番早く向こうまで行けるはずだ」

 「ふむ…飛び石か。確かに直線状で出口まで行けるのは時間的にもいいな。先ほどの戦闘と解体の時間も取り戻せる方法だ」

 「しかし問題点としては周りが水場だからモンスターが来たら逃げ場がないという事だ。足場は石田さんが増やせるからそこまで気にしなくてもいいと思う」

 「そうですね。足場を広げてくれと言われればすぐにでもしますよ」

 直線ルートだと周りは水ばかりだし、逃げれないことはないが濡れるのを覚悟する必要があるだろう。代わりに時間的にはこれが一番早いと思う。


 「2つ目は端の岩場を均して進む方法だ。地続きだからモンスターに襲われても直ぐに戻ることが出来る。水にぬれる心配はしなくていいだろう。

 しかしここは均す高さが結構あるからな。石田さんの力的に余計な消費がかかりそうなのが少し危惧している。それに壁際を進むから時間を食いそうなのがデメリットだな」

 「飛び石の足場よりは時間がかかるが安全なルートだな。石田さんの魔力的に少し負担がかかるかもしれんが…」

 「んー…端っこの壁伝いってあそこですか…確かに突起とかあって均しながら進むとなるとちょっと時間食っちゃいますかねぇ…」

 地面から逆さつらら上に出ているところを均しながらだとちょっと面倒かなぁ…と思うぐらいには足場が悪い。まだ端っこの水場に地面を作って進んだほうが早そうに思う。ただ相変わらず逃げ場が厳しいか…。


 「3つ目は2つ目に似ているが、壁に直接足場を作ってもらってそこを歩きながら壁伝いに行く方法だな。高く作ってもらえればモンスターから攻撃されることも少ないだろう。

 ただ相変わらず逃げ場はないし壁伝いだから時間がかかるがな」

 「壁に直接足場ですかぁ…出来ない事はないですがちょっと怖いですねそれ。下にあの逆つらら上の岩がありますから落ちたら大怪我じゃすみませんね」

 「咄嗟にどこにも逃げれないのが痛いな。1つ目の案だとは濡れるの覚悟なら逃げれないこともないからな…」

 「空中の足場はちょっと厳しいな…」

 3つ目の案は全員が遠慮したいようだ。不安要素が大きいからなぁ…。

 

 「とりあえず水に濡れないでいけるルートを考えてみたが他にどんな案がある?」

 「えーっと…じゃあ私から…。最初の飛び石に似ていますがいっそのこと石橋を通すというのはどうですか? 支柱を適宜にしておけばいきなり崩れるという事はないと思いますが」

 これならば逃げるのも飛び石より楽だと思ったのだがどうだろうか?

 

 「確かに石橋を水上に作ったほうが安全な気がしますね。魔力的に石田さんが問題ないというのであればですが」

 「魔力節約で飛び石としたが橋状に出来るならその方がありがたいな。いけるのか?」

 「正直壁に足場を作っていくよりは石橋のがよさそうに聞こえるな。俺は石橋に賛成だ」

 全員問題らしい問題は特に言ってこなかった。石橋案で良いのかな?


 「魔力的には大丈夫でしょう。大きさも私達が歩けるぐらいの幅でいいのでしょうし。他に案はないですか?」

 「他かぁ…水魔法で水上歩行とか?」

 「それこそ一つ間違えば水中にドボンなのでは…?」

 「水の上とか踏ん張りがきかなくて移動しにくいだけな気もするな…リーダー俺達は忍者じゃないぞ」

 「いや…他に案がないかというからだな…」

 「水上歩行ですか…う~ん…風魔法が使えればホバーでいけなくもないんですがねぇ…水魔法でかぁ…」


 一応別の案も出てきたが、広田さんと深田さんからそれはちょっと…といった言葉を貰った浜田さん。本人もとりあえず言ってみたってだけのようだ。

 将一としては水魔法で水上歩行という課題を出されたような気がした。正直水に浮くだけならできそうだが歩くとなるとまた話が変わりそうだな…と思った。

 軍の3人は他の案があるなら言ってみろと言いあっているが、将一は我関せずと1人水魔法の水上歩行について考えていた。





 「えー…では他の案が出なかったようなので石橋を作りたいと思います」

 「お願いします。全く、まともな案の一つもないのかお前たち…」

 「いや…自分は3つ先に上げていたはずだが…」

 「俺は石橋の案がいいから黙っていたんだぞ」

 浜田さん達がお互いにやれやれと溜息を吐いていた。こんなことで言い争わんで頂きたい…。


 「とりあえず石橋をかけるという事で決まりましたけどルートはどうしましょうか? 中央突っ切ると最短ですけどモンスターに見つかりやすいですよね?」

 「時間が少しかかってもいいなら水辺の端っこに石橋でもいいのですけど、魔力がその分余計にかかりますよ? まぁ、方針としてはなるべくモンスターと合わないようにという事ですからそちらの方がいいのでしょうけども…」 

 「こればかりは石田さんにルートを任せよう。広場の時は通路の数確認のためにも壁伝いに行ったが今回は出口が1つだからな」

 「適宜に中央に寄るようにして石橋をかければいいのではないか?節約できるところは節約して」

 「ルートは私任せですか…わかりました。なるべくよさそうなルートで石橋かけていきましょう」

 魔力的には問題ないだろうからずっと大回りでもいいが任せてくれるというのなら任されよう。ルート決めの決断もこれからどんどんやることになるだろうしいい練習だ。


 「今回は走る必要もありませんし慎重にいきましょう。隊列を少し変えます。先頭が広田、次に石田さん、その次が私で最後が深田だ」

 「了解」

 「わかりました」

 「殿はまかされたぞ」


 あまり変わらないようだが、もし後ろに逃げる必要があるとしたら自分が邪魔になるだろう。広田さんは警戒のためにも端がいいだろうしこの配置なのかな。


 とりあえず今いる位置から目で見える範囲まではまっすぐに石橋を伸ばした。これで進みながら問題があれば横に急遽作ればいいだろうし、ある程度余裕をもって作っといたほうがいいかもしれない。

 先頭の広田さんがライトを出して暗い地底湖を照らす。光石がないから中央はほんと暗いなぁと思いながら広田さんの後ろに並んだ。

 出来るなら明かりが届く端っこ寄りの中央を選んで石橋をかけるかと思いつつ、歩き出した広田さんに続き自分も足を動かして石橋を進み始めた。





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