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「それでは勝負の組み合わせを行う。全員、籤を引いて対戦相手を決めるのだ!」

 ケン太が宣言し、コンツェルンの制服を着た従業員が籤が入った箱を持って、参加者の間を歩き回った。


 箱の穴に手を入れると指先に丸いボールが触れる。ボールの色が同じ者が対戦するのである。ボールを引いた参加者は、同じ色の持ち主をさがし、すばやく目配せしあう。


 美和子も箱に腕を入れた。

 太郎は参加しなかった。美和子の従者ということで、直接の戦闘には参加しないのである。ゆえにこれからは美和子ひとりの闘いになる。


 太郎は美和子の対戦相手を見た。

 そして驚いた。

 あの中国服の女だ。

 彼女も驚いているようだ。


 全員の抽選がおわったところでケン太が宣言した。

「これより勝ち抜け戦をおこなう。第一回の対戦は、真行寺美和子と……」

 そこでケン太は眉をよせた。

「そこの女! 名前はなんと言う?」

 中国服の女を指差す。

 女は無言でかぶりをふった。

 ケン太は肩をすくめた。

「それじゃ名無しの女でいいか……ふたりの対戦だ! コロシアムの真ん中に出て、戦え! 勝負はどちらかがギブ・アップするまでだ……」


 と、トミー滝がいきなり太鼓のばちを持ってステージに置かれている青銅の銅鑼どらに駆け寄った。

 撥を銅鑼にたたきつける。

 

 ぼお〜〜ん……。

 

 ハリウッド映画に出てくる、東洋を象徴する一場面のように銅鑼の音がコロシアム全体に響きわたった。

 美和子と覆面の女がコロシアム中央に歩み寄った。まわりを他の参加者が取り囲み、観客席からは複数のテレビ・カメラがレンズの砲列を向ける。

 みな、固唾をのんで見守る中、いきなり覆面の女は脱兎のごとく美和子に駆け寄り、宙に飛び上がった。


 見事な跳躍だった。


 たった一度の跳躍で、数メートルの距離を一気に縮め、着地するやいなや足を旋回させて廻し蹴りを美和子に殺到させる。

 美和子はそれを楽々とかわし、いったん引き下がり態勢を立て直した。

 覆面の女は廻し蹴りをいれた勢いでさらにくるりと旋回し、こんどは背面になって後ろ蹴りをいれた。

 今度は美和子はそれをかわさず、両手で持って受け止めた。

 はっ、と覆面の女の動きが止まった。

 美和子の両手が覆面の女の足首をおさえている。片足だけで身体をささえ、覆面の女はあきらかに不利な態勢にある。

 だが美和子も攻撃できない。

 しばらくにらみ合ったあげく、美和子はぽんと覆面の女の足首を離した。

 覆面の女はぴょん、と飛び上がり、ぽーんととんぼをきって着地した。

 そこへ美和子が駆け寄る。今度は攻守が交替した。

 はっ、と顔を上げた覆面の女に向け、美和子の膝蹴りが襲い掛かる。

 がっ、と彼女の顎に美和子の膝がくいこんだ!

 げふっ、と覆面の女はのけぞった。

 どた、と音を立て彼女はコロシアムの地面に大の字になってあおむけになった。

 目をまわしているのか、顔を上げるが立ち上がれないでいる。ようやく両手をつかって上半身を起こしたところに美和子のつぎの攻撃だ。

 上から美和子が肘をつかって攻撃する。

 あわや、という瞬間、覆面の女は地面を横に転がりそれを避けた。美和子の肘が地面につきささる。

 覆面の女は立ち直り、美和子にのしかかった。美和子はさっと彼女の手をのがれ、こんどは背後にまわって腕を覆面の女の首筋にからみつかせる。

 

 !

 

 ぎりぎりと美和子の腕が覆面の首筋をしめあげる。

 とんとんと覆面の女は手の平を地面にたたきつけた。

「そこまで! ギブ・アップだ!」

 ケン太が宣言した。

 ふっ、と美和子は覆面の女から身を離した。

 けほけほと覆面の女は咳き込んで、その場から立ち去った。

 美和子は立ち上がった。

 そのまま太郎の側へ戻っていく。


 茜が称賛の声をあげた。

「すごいわ、美和子姐さん!」

 いいえ、と美和子は首を振った。

 ちらり、と立ち去っていく覆面の女を見る。

「あの人、まるでやる気がなかったわ。なんだかあたし、お芝居の相手をさせられた気分……」

 そう言って太郎を見る。機嫌が悪いのか、眉をかすかにしかめていた。


 太郎はかすかにうなずいた。


 美和子の観測はあたっている。覆面の女はまるで本気ではなかった。勝つ気がないというより、わざと負けたように見えた。

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