表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/117

食欲

「もっと飯をもってこい! 足りねえぞ!」

 宿泊所にたどり着いた勝は、一階の食堂で席につくや茜に命じ、料理を持ってこさせた。テーブルに山盛りにされた料理をあっという間に平らげると、追加を茜に命じる。


「お兄ちゃん、そんなに食べて大丈夫?」

 茜はあきれて勝に話しかけた。勝は面倒くさそうに骨付きのチキンを持った手を振り回した。


「おれは腹が減っているんだ! さっさと手当たりしだい、持ってこないか!」

 はいはい、と茜は小走りに料理が並べられているバイキング・コーナーに向かうと、勝の言葉どおり「手当たり次第に」トレーに乗せ、運んだ。


 目の前に運ばれたあらゆる料理を、勝は次から次へと口に運ぶ。ろくに咀嚼もしない。

 がつがつと肉を、魚を、米を、そしてサラダを食らい、ピッチャーになみなみと注がれた一リットルの野菜ジュースで胃袋に流し込む。

 驚異的な食欲である。


 そしてさらに驚異なのが、食料を腹に詰め込むたびに体力が回復しているかのようである。食事がダイレクトに身体に受けたダメージを修復しているようだ。


 傷跡がふさがり、血色もよくなる。顎が動くたび、血液が生産されているようで、食後のデザートのころには普段の顔色に戻っていた。

 そんな勝を、茜はあきれたように見ていた。

「お兄ちゃん、すごい回復力ねえ……あんな怪我だったのに」

「なに」

 勝はまだ口をもぐもぐさせながら肩をすくめた。

「こんなのたいした事じゃない。島に残っている奴はたいていこうだ。そうでないと、残っていられないがね」

 そう言ってにやりと笑った。

 そんな兄を茜はテーブルに肘を乗せ、顎に手の平をつけて見つめた。


 

 あきれた……これじゃ家へ帰るのは、当分先のことみたい……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ