恐縮
はっ、と男たちは動きを止める。
少女は目を開けた。
まぶしい朝日の中に、ふたりの人影が見えていた。
ひとりは女、もうひとりは男のようだ。
女はセーラー服、男はタキシードで、ふたりとも朝日をバックにこいシルエットとなっている。
少女を取り巻いた男たちは身構えた。
「なんでえ……邪魔すんなよ」
「そうだ。おれたちゃ、この可愛い娘ちゃんと一緒に、トーナメントを戦い抜こうと相談していたとこなんだ」
「帰れ!」
口々に口を開く。
「あなたたち……恥ずかしいと思わないの。ここはトーナメントをするところよ」
女の声は威厳がこもり、聞いているだけで少女の胸に安堵がわきあがってくる。
大丈夫だ……この人なら信頼できる。
なぜかそういう確信がわいた。
へへへ……と、男たちは野卑な笑い声をあげながらふたりの方へ向きを変えた。
「なんだか叱られているみたいだぜ」
「そうだよ、おれたちママに叱られたんだぜ!」
ひゃははは……と笑い声。
「それじゃあ、そこの女からおれたちの相談に乗ってもらうか……」
そうつぶやき、ひとりの男がいきなりセーラー服の女に襲い掛かった。
女はそれを予期していたように身を沈め、素早い動きで抜き手を男の下腹部へ突きたてた。
すごい!
少女は目を見張った。
女の動きはよく鍛錬された、達人クラスのものだった。あの抜き手がまともに突き刺さったら、ただではすまない。あっという間に反吐を吐き、ころげまわって苦しむだろう。
が、男はまるで平気だった。
「なんでえ、こりゃ? え、なんの真似だい。お嬢ちゃん!」
女の目が大きくなった。信じられない、という表情になる。すばやく側に立つ少年に声をかけた。
「気をつけなさい太郎さん。この男たち服の下に……」
太郎と呼ばれた少年はうなずいた。
「判っております。この男たちは服の下に防具を隠しております。わたくしにお任せください」
すっ、と少年は女の側をすりぬけ、前へ出る。
と、さっきまでへらへらしていた男たちの態度が急変した。表情は真剣になり、油断のない構えを取る。
少年はするすると男たちに近寄った。
とん、と少年の足もとが突き出した岩角を踏む。その途端、少年の身体はまるで宙を飛ぶように浮き上がった。稲妻のような動きで、かれは男たちの間を駆け抜けた。
一瞬の出来事だった。
まるで舞を見ているようだった。
少年の腕が目にもとまらぬ速さで旋回し、男たちの身体にわずかに触れたのは見てとれた。が、次におきた変化に少女は息を呑んだ。
なんと、男たちは全員その場に倒れ、うめき声をたてていたのである。
何が起きたのだろう?
呆然となっているのは少女だけではなかった。隣に立つ、女もまた驚いているようだった。
「太郎さん、あなた、いまなにをなさったの?」
太郎と呼ばれた少年はかすかに頭を下げた。
「申し訳ございません。でしゃばるつもりはなかったのですが……」
少年は本当に恐縮しているようだった。
あんなことして、すまながるなんて変な奴!
少女はぼんやりそう思っていた。