表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

 私はお買い物中、正確には宝生院(ほうしょういん)親子と立ち話をしている最中に貧血で倒れてしまいました。おそらくというか、確実に、原因は『ここが乙女ゲームの中の世界』だと気づいたからでしょう

 あの時は突然に降って湧いた異常事態にびっくりしたのと、目の前に作中の悪役令嬢である麗華がいたせいで悪い想像をしてしまったことで一気に血の気が引いて貧血を起こしてしまったんだと思います。

 けれど、一旦落ち着いてよくよく考えてみると、この状況はとても素晴らしいことじゃないでしょうか。だって、あの名台詞が、あの名シーンが、生で見れるかもしれないのですから!

 ただ一点、ちょっとマズイかもしれない事があります。それは完全に麗華に友達認定されてしまった事です

 私が倒れた後、まあ麗華の目の前で倒れたのだから、彼女はすごく心配してくれて、救急車で運ばれた病院にまでお見舞いに来てくれました。もちろん、そのことは嬉しかったし、麗華もすごく良い子で可愛いし、友達になるのは良いんだけど…。もしかして、このまま麗華の友達またの名を取り巻きを続けるとなると将来、恋愛に狂った麗華に巻き込まれて私はバッドエンドを迎えるんじゃなかろうか。という不安に駆られるのです。確か、おまけ特典で付いていた悪役令嬢のその後というストーリーでは、麗華と取り巻きたちは実家から勘当されていたような

 まさかとは思うけど、もし巻き込まれたら私も実家を勘当されて路頭に迷う。なんてことになりかねない……。ヤバイな


『第一回 緊急脳内会議』


 エリナ本体:みなさん、お忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。本日はお日柄もよく


 エリナA:そんな挨拶はどうでも良いのよ!早く本題に入りなさい!


 エリナ本体:んん。えーでは、今回みなさんにお集まりいただいたのは他でもありません。私たちエリナが将来、悪役令嬢になるかもしれない宝生院 麗華と友達になってしまった件についてです


 エリナA:なぜ、すぐさま『エンガチョ切ーった』をしないのですか!?


 エリナB:それは酷というものでしょ。見た感じ麗華はまだ純粋な女の子で、悪い子じゃないし


 エリナC:しかし、将来は嫌なやつになるんだろう?


 エリナB:そうだけど、でも、そうと決まったわけじゃないじゃん。それに未確認情報だけど、宝生院グループを敵に回すと、うちの神崎グループの会社がちょっとマズイ状況に立たされるかもしれないって


 エリナA:!!それでは身動き取れませんわね。出来ることといえば少し距離をとるぐらいでしょうか。しかし、今の麗華は良い子ですから少しばかり胸が痛みますわね


 エリナC:何甘いこと言ってんだ!下手すれば実家を勘当されるんだぞ!!しかもそうなった場合、高校中退になる可能性が高い!そんな中途半端な学歴で、家も何もない孤立無援の少女が、今の社会でまともな生活を送っていけると本気で思ってるのか!?


 エリナA:それは……。その通りなのですが……。ていうか、あのお父様が私を勘当するとは思えませんが。ボソッ


 エリナC:あ゛?なんか言ったか?


 エリナA:いえ別に。何も言っておりませんわ


 エリナ本体:んんっ!みなさんの意見はよく分かりました。まず、麗華はまだ良い子だから友達を辞めるのは違う気がする。しかし、このまま友達でいるとリスクが大きすぎる、と。ふむ、どうしたものか……。やはり距離をとるのが最善策ですかね


 エリナB:はい!一つ提案があります!


 エリナ本体:む?何ですか?言ってみてください


 エリナB:麗華に素敵な恋人が出来れば良いと思います


 エリナ本体、A、C:!!!


 エリナC:そ、そうか!麗華は恋に狂って主人公に嫌がらせをしてしまう。しかし、麗華に別の素敵な恋人がいれば


 エリナ本体:ちょっかいをかける理由がない。ですね。それに麗華の高慢な性格も今からちゃんと叱って矯正すれば、ゲーム並みに酷くなることはないでしょう


 エリナA:どうやら結論は出たみたいですわね


 エリナ本体:ええ。それでは第一回緊急脳内会議を終了いたします。みなさん、ご協力ありがとうございました


「———ナ。おーい、エリナ、戻ってこい」


「わっ!お、お兄様、いつからそこに?」


「結構前からいたけど。それより何をそんなに深刻な顔して考えていたんだい?」


「え?ええっと。あ!そう!私、何かスポーツがしたいな、と思ってまして。今日も貧血で倒れてしまいましたから、身体を鍛えて強くなりたいと。それでどのスポーツがいいかな。と考えておりました」


「ふーん。ま、そういうことにしといてあげるよ。それより夕飯だってさ」


「あ、はーい」


 ふう。脳内会議に集中しすぎてお兄様が呼んでいたことに気がつきませんでした。しかし、集中したおかげで一つの解決策が思い浮かんだのですから良かったです。これからの学園生活、麗華の性格を矯正しながら良い男探しを頑張るぞ!おーー!!

 あ、そういえば合格発表がまだでした。はっ!不合格になっていれば、麗華とは別の学校に!


『神崎エリナ様 花山院(かさんのいん)学園初等科 合格』


 ………頑張るぞ!おーーー!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ