第四話
先程まで囲まれていた少女も、ある男のカミングアウトによって、男達が取り乱している隙に俺の方まで逃げてきた。
現在、俺と少女は男達と向かい合わせの状態で立っている。
「おい、お前魔術は使えるのか?」
この世界では魔術の有無が相当な戦力差になる。
魔術師一人いれば、魔術の使えない兵士十人なら簡単に倒せると言われているほどだ。
そのため俺は、少女に魔術を使えるのかを尋ねた。
「いえ、まだ学院に入学していないので使えません」
(魔術は、まだ使えないか……)
「もしかして、あなたは使えるんですか?」
「いや、俺も使えない」
「そうですか……」
少女はがっくりとうなだれた。
すると、俺達が会話をしているうちに、落ち着きを取り戻したのか、先頭にいたリーダー格らしき男が仲間に言った。
「とりあえず、あいつら捕まえるぞ!お前には男の方をやるから今後一切俺達には関わるなよ!!」
「ウフフ、了解♡」
男達の顔つきが変わる。
どうやら方針が決まったらしい。
彼らは、俺と少女の方に向かって走り出した。
俺は男達を冷静に分析した。
(……どうやら日頃から鍛えてるみたいだが、相手は所詮街の不良ども。『アレ』は使わなくてもいいか……)
「ねえ!あの人達、完全に私達をやる気ですよ!どうするんですか!?」
横で少女が慌てている。
「どうするって、あいつらぶっ飛ばすしかねぇだろ?」
「ぶっ飛ばすって……二対五ですよ!?私達魔術も使えないのに、どうやって戦ーー」
「おらぁあ!」
少女の声は男の声によってかき消された。
大声を出しながら、俺に向かって放たれた拳は、完全に素人のそれだった。
(そんな大振り当たるわけねぇだろ……)
俺は男が放った拳を冷静に躱し、すかさず男の懐へと潜り込んだ。
「拳はこうやって使うんだよっ!」
「ゴフッッ!!」
俺の拳を腹にまともに受けた男は、五メートルほど先に吹っ飛んだ。
「うそ……」
今の俺の動きを見た少女が驚いている。
男達も、後ろにふっ飛んだ男を見て動揺している。
俺はその隙を見逃さず、近くにいた男の頭を掴み、地面に叩きつける。
「ガハッ」
俺はそのまま勢いをころさず、次の男に飛び膝蹴りをくらわし、残った男二人には、そのまま空中で回転し、一発ずつ回し蹴りをくらわす。
男達は十秒もしないうちに地面に倒れ伏した。
かなりのダメージだったようで男達は泡を吹いて気絶している。
(十秒もしないうちに終わっちまったぜ……。重病なだけに十秒ってな)
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