頼れる(?)男、ここに参上
昨日の失敗もあって今日は余裕をもって書くことができました。まぁ自主的な締め切りは余裕に過ぎてるんですが。
あれから1週間ほどの時間が過ぎていった。
毎日の早朝からのランニングに加えて、腹筋腕立て背筋スクワットなどのトレーニングも順次練習のメニューに追加されていった。
正直1週間2週間で人の体力がそう大幅に増える訳がないので、このトレーニングたちの追加はさらに自分を追い込む者となった。
毎日の筋肉痛は当たり前で、必ずどこかでダウンする。
しかし、別に苦痛なことなだけの毎日ではなかった。
しっかりと朝、昼、夜のご飯は食べられるし、昼飯はトレーニングの間に食べることになるがミンカはちゃんとそのあとの休憩の時間もとってくれる。
それに、休憩の間に彼女と話す時間も自分にとってはある意味かなりのリラックスできる時間だと思っている。
まぁ、話すことはなんでもない頭が空っぽの会話なのだが(そもそも走ったりトレーニングの1セットが終わった直後の自分は決して話せるような状態じゃない)
例えばある日は
「はぁ……はぁ……はぁ…………2、2せぅとめ……おわ……りぃ……きゅ、休憩……」
「あれ、もう休憩だっけ?休憩までもう1セットなかったっけ?」
「どぅえっ!?」
「冗談だよ、冗談。ちゃんとしっかり休んでおけよ」
とか、走っている途中に
「ほーら頑張れーまだまだ努力がたーりなーいぞー」
「わかっ、わかっ、わくってぃる……」
「……え?今何て言った?……え?え?」
「うるへぁ!」
「ははは、悪い悪い。もうこっち気にせず走ってろ。最初の場所に戻ったら休憩でいいから…………あとさっきのは本当になにいってるかわからんかった」
とか、とにかくなにも考えていない言葉しか交わしてない。というか自分がなにも考えてない。
とまぁ、そんな日々も楽しかったのだが、今日は少しだけ様子が違った。
「……あれ、まだいない?」
いつもは目立つように1本だけ生えている大きな木の下で毎朝待ち合わせをしているのだが、今日に限ってはミンカが見当たらない。いつもなら自分より先に来ているはずなんだが……
用事でもあって遅れているのだろうか……?
とはいえこのままなにもしないでいるのもおそらく後からくるかもしれないミンカから怒られそうなので、昨日やったメニューをそのままやろうとしたとき、
「おっ!お前だな!最近うわさになっていた役立たずの勇者様ってのは!」
さらっととんでもないことというか、最近で一番のトラウマを掘り返された気がするがそんなことはひとまず置いといて、声の主の方へ顔を向ける。
そこにはかなり図体のでかく、そしてしばらく剃られてないであろう髭が生えた大男がいた。
服装はかなり簡単というか、自分にトレーニング用として支給されたグレーの半袖と特に特徴もない半ズボンのかなり大きいサイズのようだ。詳しいサイズとかまではわからないが。
「あ、あの……あ、あなたは……?」
ここ数日はミンカと自分の食事を運んでくるメイドのような人としかまともに喋らない……いや、まともに喋るのは実質ミンカだけだ。メイドの人には軽い返事をするだけだ。
つまりまともに他の人とは喋ってないから、このときはかなり緊張している。
ちなみに姫様ともあれいらい会ってない。遠くからちらっと見かけることは何度かあったが、話す機会はなかった。
少しだけ脱線したが、今は目の前の男に話を戻そう。
先ほどの自分の言葉を聞いた大男は、急にいきなり笑いだし
「はっはっはっはっはっ!なんだぁ?緊張してるのかぁ?なぁに、心配しなくていい!今日は嬢ちゃん……いや、団長と言ったほうがいいか?まぁどっちでもいいが今日は嬢ちゃんは自分の訓練の方に専念するって言っていたんだが、お前の方も気にかけていたから連れてきてやろうって思ってきたのよ!もちろん黙ってな!」
「あ……そ、そうなんですか……」
自分の訓練……というのは、今の自分みたいな基礎のトレーニングだけではなく騎士としての本格的な訓練のことだろうか……?
「嬢ちゃんからは昨日と同じようにやれと言うだけと言われたんだが、それじゃつまらんだろう?だから嬢ちゃんの訓練姿をお前に見せてやろうって考えよ!どうだ?見たくないか?嬢ちゃんの訓練姿!」
ミンカの訓練姿。正直ちょっと興味がある。
いつもは自分につきあって基礎の基礎のトレーニングにつきあってくれていたが、本来のミンカとはどういうものなのだろうかとはたまに思うことはあった。
「ちょっと……興味があります」
その言葉に大男は目の色を変える。
「だろうだろう!頑張って汗水流す女はそれだけでも見る価値があるよなぁ!よーし、そうと決まったらすぐに行こうぜ!!」
「え?え?ちょ、ちょっとぉ!?」
そういった大男は自分をそのまま簡単に肩に担いで目的の場所に向かう。
「いやぁ、勇者が話のわかるやつで良かったぜ!やっぱり男はそうでないとなぁ!なぁ、お前の名前はなんてー言うんだ?俺はダクティって言うんだ!ダクでいいぜ?みんなそう呼ぶからよ!」
「えっ、この状況で名前って……まぁ、もう良いです……自分名前は神無月と」
「カンナヅキか!悪くねぇ名前だな!よろしくなカンナヅキっ!」
「えっ、いやまだ全部言ってな…………もう良いです……よろしくですダクさん……」
「おうっ!よろしくな!」
……苦手だ……こういう人……
「なんで来た。そしてなんで連れてきた」
初めての頃のような目付きでミンカが睨んでくる。
今自分たちがいるのは正確には城のどこかはわからないが、ただ広い外の空間が広がるだけの場所だった。
「まぁまぁ、良いじゃねぇか嬢ちゃん!そんな睨まなくてもさ!そんなんだからろくな男が近づかないんだぜ?」
「うるさい余計なお世話だっ!!そして嬢ちゃんじゃなくて団長と呼べ団長と!お前のそういう適当なところがわたしは嫌いなんだっ!」
ダクのさっきから変わらない態度に対してミンカが大声で怒鳴る。そうしてすぐにこっちを向く。
「お前もお前だ勇者!こいつの言うことに簡単に耳を貸すな!そんな優柔不断じゃこれからやっていけないぞ!」
「あ、う……ご、ごめんなさい……」
これは流石にどんな言い訳も通じないだろう。どう考えたって俺が悪い。しかし会ってから時間は経っていないものの多分ダクさんは悪いと思ってない。
「まぁまぁそこまでにしとけよ嬢ちゃん。実のところ全部俺が悪いんだ」
嘘だろ反省してる。
「知ってる。あと団長と呼べ」
すごい冷たい反応。もしかしなくてもいつもこうなのだろう。
「でもさぁ、カンナヅキだって悪い奴なんだぜぇ?俺が汗水流して頑張っている嬢ちゃんは最高にエロ可愛いって言ったらすぐに着いてくる決心つけたんだぜ?」
「そんなこと聞いてないですよ!?しかもちょっと興味あるって言っただけでここにはダクさんが無理矢理連れてきたんじゃないですか!」
「興味があるとは言ったんだな?」
「あっ」
…………
「………………はい」
もう駄目だおしまいだ。これまで、と言っても1週間とちょっとだけだけど完全にミンカとの関係は壊れてしまうだろう。
「…………はぁ」
ミンカが深いため息をつく。
「……もういいよ、もう自分たちの部屋に帰れ。勇者も今日の訓練は休みだ。人間の体に休息は必要だからな……」
「あ、でも……」
「帰れといったら帰れ。それとも1週間ずっとお前につきあってきたわたしの言葉が聞けないか?」
「……………………」
「ま、おとなしく帰ろうぜカンナヅキ。休める時には休んでおくものだぜ」
「……はい」
そうしてミンカを背にして、俺たち二人は部屋に戻る。
……そういえばここどこの場所かわかんない
「すいません、送ってもらっちゃって」
「いいってことよ。こっちにあまりなれてないんだろう?じゃあわからないのも仕方ねぇしな。それに悪かったな、嬢ちゃんのこと。」
あ、悪いとはまだちゃんと思ってるんだ。
「いえ、悪いのはダクさんが言った通り自分もですから。でも、ダクさんはちゃんとその性格直したほうが良いですよ?」
ダクさんはすこし頭を掻いたあと
「まぁ、すこしは考えておくよ。それで直せたためしがないけどな!」
「あははは……」
そうしてダクさんは帰ろうとすると最後に
「あぁでも!明日はちょっとだけ時間くれねぇか?まぁ多分嬢ちゃんも時間とるとは思うけどよ」
「?、何故ですか?」
そうしてダクさんはニヤリと笑い
「明日うちの、嬢ちゃんの騎士団の大半のメンバーが遠征から帰ってくる。騎士団にお前が入ることと、自己紹介ぐらいはちゃんとしておかないとなぁ?そう思うだろカンナヅキ?」
その部屋はかなり簡単な作りだった。
四角い空間に、ただベッドと机があるだけ。おそらく風呂とトイレは部屋の外に共用のがあるのだろう。
しかしその部屋はそれだけじゃなく、大中小さまざまな大きさのぬいぐるみが置いてあった。
そこに、一人の少女が入ってくるとともにベッドで横になった。
それは先程まで団長と……呼ばれてはいないが呼ばせようとした少女だった。
かなり疲れているようすを見る限り、あのあともかなりの自主訓練をしたのだろう。
「……エロはあいつの冗談だとして、可愛いか……」
どうやら彼女は先ほどの二人との会話を思い出しているようだ。
「可愛いじゃ、駄目だよな……わたしは、もっと姫様を守れるように凛々しく、かっこよくなりたいのに……」
言葉は続く。
「結局、頑張るしかないのか……今の勇者みたいに、がむしゃらでも、必死に頑張るしか……」
そして
「……よしっ!明日からは勇者に騎士としてのトレーニングもつけてやるか!まずはなにごともチャレンジだよな!」
なにやら考え事が綺麗に解決したのかそういう言葉を放つと、思い出したかのようにこう言う。
「あ、でも明日あいつら帰ってくるのか。じゃあ明日はついでにあいつらに自己紹介でもさせておくか。ダクの野郎は必要ないようだが…………ふぁ~」
どうやらすこし疲れで眠たくなっているのか、あくびも出た。
「……今日はもう、寝ようかな……」
そういった直後に彼女は汗だくの半袖と半ズボンを着替えずに眠りについた。
もっと強くなると、心に決めて。
この国史上最強の騎士は、深い眠りに落ちる。
正直前回の後書きに誤字があった時はすこし焦ったけど面白いからこのままにしておこうって思った。つまりいまも多分誤字のままです。直す気はないです。
今回は新キャラのダクさんの登場回ですね。彼を動かすのはすごい簡単なんですが、それに引っ張られてしまう自分もいます。
ちなみに1日1話投稿のために毎日小説書いてますが、修正とかいろいろ含めてだいたい4~6時間で投稿まで終わるんですが結構リアル的に辛かったりします。
まぁでも1度自分で決めた区切りまで毎日投稿するって自分で書いたので、できる限りやっていきたいですね。
ちなみに次回は騎士団メンバーぞろぞろ……とまではいかないですが結構な新キャラが追加される予定です。頑張ります(建前)設定考えるの辛い(本音)
ということで今回の後書きはこれで終わります。
もし誤字・脱字などがありましたら教えていただけるとありがたいです。