なにも持たない者
今かなり急いで前書き書いてます。結構ギリギリです。寝て時間ギリギリになったのは誰だ私だ自業自得だぁ!
「まさかあんなことになるとはわたしも思わなかったな。いや、別に測定に参加してたわけではないんだが。それどころかどんなことをやるのかも知らないし。」
自分が息をきらしながら走る横で女騎士……ミンカがいきなりそんなことを言った。
「はぁ……はぁ……そぉ……れはぁ……はぁ……」
「ほらどうしたーそんなんじゃまだまだわたしの騎士団の一員として認めるにはいかないなぁ」
人が限界を越えて走ってるなか、ミンカはそれを楽しそうにニヤニヤと眺めながら自分と一緒の速度で走っていた。
……いや、走ってない。正直今の自分の早さなら早歩きしたほうが早いぐらいゆっくりだ。
それを表すかのようにミンカは走っている、というより早歩きをしているのが近いことをしながら自分の横にいた。
今こうなっているということは、測定の結果がどうなったのかは簡単に想像がつくだろう。
……なにもなかったのだ。自分には、こちらの世界の人間が望むようなものはなにひとつ。
剣の才能も、魔法の才能も、ましてやそれ以外の能力なんてひとつもなかったのだ。
「……まさか、こういう結果になるなんてな。これは……今までになかったことだな……さて、流石にどうするか考えるべきなのか……」
王様がそう言ったが、自分にはなにも言えない。
なにひとつ勇者としての才能が見つからなかった。おそらく出来ることをすべて試してくれたのだろう。しかし、どうやらそのすべてが期待されていたものどころか、聞こえた話によると平均以下だったらしい。
それ自体は別にどうだっていい。そんないきなり特別な力を手に入れるだなんて、そんな都合のいいことを期待しているほうがおかしい。
けどそれよりもきついのは、これまで期待してくれていた人たちの期待を裏切ったことだ。
「わたしは別に最初から過度な期待はしてなかったけどな。ま、いたら便利ぐらいのやつだと助かるとは思ってはいたが。」
「……お前に世界が救えるかとか言ってなかった……?」
「覚えてない。」
「都合が良すぎるっ!」
そんな会話をしてる俺たちは、自分の休憩がてらミンカにこの数日あのあとに裏であったことを教えるために木の陰に隠れながら座り込んでいた。
ちなみに朝こそ彼女は口調は悪かったが、今では王の間の扉の前のような口調に戻っていた。
「そもそもわたしだってお前がなんにもできないことを聞いたのは昨日の夜なんだぞ?それでもちゃんとお前に昨日の今日で基礎の基礎のトレーニングをしてやってるだけありがたく思え。」
「それ姫様に頼まれたのがだいたいの理由では……?」
「……まぁ、それもある。」
それしか理由ないだろう……思うだけだ。多分口に出したら今よりもっと走り込みが辛くなるだろう。だからやめておく。もうかなりキツい。
「で、それからどうしたんだ?まだわたしにお前のことが伝わるまであと1日ぐらいはあるだろう?」
「あー、えっと、確か……」
少し少しなにがあったのか思い出しながら彼女に話を続ける。
「い、今なにもなくても勇者様は勇者様です!きっとなにか、なにかあるはずです!」
姫様が王様と、そして自分の能力を調べるために集まったであろう人達にそんなことを言う。
しかしその人達の言葉は残酷で、けど冷静にこの状況を理解した言葉をそのうちの一人が言う。
「……いえ、姫様。残念なことに、彼には一切なんの能力も、才能も見当たりません。われわれの勇者の召喚はおそらく…………失敗したのです。」
失敗
その言葉が自分に深く突き刺さる。
結局、なにもできない。可能性をもとめて異世界にきても、何一つできることはない。
わかっていたはずなのに、目をそらしていた。どんなことをしたって、自分には誰かの役にたつようなことなんてなんにもできないって。わかっていた、はずなのに、自分は、自分は……
「そんなことありませんっ!!」
「……!」
姫様の聞いたことないような大きな声に、嫌でも反応せざるをえなかった。
周りにいた人たちも姫様に驚いたのか、みんながみんな姫様の方を向く。
「失敗だなんて言わないでください!勇者様を無理矢理連れてきたのはわたしたちで、勇者様は何一つ悪くありません!」
「しかし、姫様。これでは魔王に対する戦力が足りません。彼は体力の測定もしたところ平均以下の体力のようで、わが国の農民よりも戦力になりません。失礼ですが、これでは彼はただの役立たずということに……」
先ほどから喋る代表者のような人が、そういったあとに一瞬だけこちらを見る。
きっともしもの時のために普通に戦わせることも考えていたのだろう。しかし、自分にはどうやらその資格すらもなかったようだ。
「勇者様は役立たずなんかじゃありません!きっとなにか、なにかあるはずなんです。」
……やめてくれ。もう、これ以上君が自分をかばう必要なんてないんだ。君が、辛い思いを……
「だって、勇者様がなんにもできないって言うなら、わたしは、どうなりますか?」
その一言で、周りの様子が一変するのが空気でわかる。
「みんなからお世話されて、大切にされて、それが悪いことだとは言いません。みんながわたしを大切にしてくれた証拠でしょうから。でも、お母様が目の前で殺されるっていうのに、わたしはなにも、なにも、できませんでした。なに、ひとつも……」
姫様の目からまた、涙が流れる。先ほどの代表者も、周りの人間も、みんなが声を黙らせる。もちろん自分も。
しかし一人だけ、この場で姫様に対して声をかけられる人がいた。
「そうだな。悪かったよクレア。わたしが、わたしたちが悪かった。勇者殿に対して、とても無礼な振る舞いをしてしまった。」
王様はそう言ったあとこちらを振り向いて
「勇者殿も、本当に申し訳なかった。君がいる目の前で、あのような話をしてしまい。」
「あ……いえ……」
急に声をかけられて、流石にすぐに反応できたとはいえないが声を返すことはできた。
そうして、少しの間沈黙が続いたあと、姫様が自分に話しかけてきた。
「……勇者様。ひとつ、お願いがあります。」
「お、お願いとは……?」
今更自分になにをお願いするというのか。
そんな疑問を心のなかに、彼女の言葉を待った。
そして彼女は、自分にひとつだけの可能性をくれたのだ。
「この国で、一人の騎士として、わたしたちのために、この国のために、一緒に魔王と戦ってはくれませんか……?勝手なお願いなのは承知の上です。けど、わたしたちと一緒にこの国を、守っていただけませんか……?」
「なるほど。でも、それだとさっきの1日余った説明がなくないか?」
「多分だけど、1日は、俺に対する認識の変化とか、お前みたいなやつに説明するのとかの、時間だったんじゃないか……?」
さっきの話のあと、続きを話す前にまた1周走ったので息がまだとぎれとぎれではあるが一応は全部話すことができたと思う。
「なるほどな……あと、お前じゃなくて団長か名前で呼ぶように。一応形式的にそうしてもらわないとたまに困ることがあるからな。」
「あぁ……わかったよ……ミンカ。」
「……やっぱり名前も駄目だ。団長と呼べ団長と。」
なぜか顔を自分の反対方向に向けながら彼女はすぐに名前呼びを却下した。
……すぐに名前呼びが拒否されてしまったのはちょっと悲しい。
しかしすぐに彼女はまだ息を整えきれていない自分の方を向いて
「ま、でも事情はだいたいわかった。だったらなおさら、お前は頑張らないとな勇者。」
彼女はそういって、少しだけ言葉を止めたあと
「じゃあ、何はともあれ体力や筋肉をつけないとな!おい、立て勇者!もう一回走りにいくぞ!お前のそのヘタレ根性を叩き直すにはいい機会だ!」
「え、えぇ!?まだ走ったばっかだぞ!?流石に体がもたない……」
「そういうのがダメなんだ!ほら、さっさといくぞぉ!!」
彼女に連れられて、また走らされる。
きっとこれからはこれが当たり前になるんだろう。この苦しい日々が、自分にとっての当たり前になるように、もっと、もっと、頑張っていかないと……!
後書きどうしましょうね。とりあえず今回の話としては普通に前回の話の続きと確か第3話ぐらいの話のミックスですね。時系列が結構移動しながら動いてますね。
ちなみに今回の話には関係ないてすが前書きに書いた就寝事件で一時間までなら寝ても間に合うことがわかりました。もう2度と寝起きでに書きたくないって思った。
今回の後書きは今回で終わります。
今回急いで書いたので多分あとでかなり修正はいると思いますが、それでもまだ誤字や脱字があったら教えていただけるとありがたいです。