王との対面
ギリギリセーフ!ギリギリセーフです!今回は間に合いました!……まぁでも、続けることって大事ですよね。改めて今回そう思いました。
盛大なファンファーレとともに、扉が開いていく。
そこにはあの大広間のような場所のよう豪華な装飾がほどこしてあったが、あそことは違う場所があるとしたら集まっているのが鎧を着けた騎士たちではなく豪華な装いをしたおそらく貴族に値するような人々だということだろう。
そして最も違う箇所があるとしたら、それはちょうど自分から見て正面のこの部屋の最も奥に存在する、玉座に座っている一人の男性の有無だろう。
おそらくではなく確実に、彼こそがこの国の国王であり、姫様のお父さんに当たる人だろう。名前は誰からも聞いていないが(というよりこの時点でこちらの世界の住人の中で自分が名前を知っているのがミンカだけというは結構おかしな話である。ついでに自分の名前を知っているのも彼女だけである)。
……そして、扉が開ききったのを確認すると、さきほどミンカに言われた通りまっすぐまっすぐ歩いていく。
ちなみになのだが、この時点での自分の服装はこちらの世界にきた瞬間にいつのまにか自分の部屋のタンスにしまっていた1番まともな服の組み合わせになっていた。パジャマはどこに消えたのだろう。
それはさておいて、横にいる貴族たちのさまざまな視線を浴びながら王様の前まで歩いていく。
そして王様との距離がいい感じのところで止まり、そのまま膝をつけて頭を下げる姿勢をとる。
入り口から見たときは気づかなかったが、王の玉座の横にはさきほどまで行動を共にしていた姫様がただこちらを見て突っ立っていた。
どういう気持ちで今の自分を見ているのだろうと考えながら、王様の前で頭を下げ続ける。
……そうして、玉座に座っている男性が声を発した。
「顔を上げて欲しい、勇者よ。そなたはこの国の勇者であると同時に、この国に訪れた客人でもあるのだ。だからとは言わないがもっと堂々としててもよいのだぞ?」
その声はまるで言葉の中にあった客人にかけるような感じではあるが、それでもしっかりと王としての威厳を感じさせるようなものだった。
……しかし、どうしたらいいのだろう。ミンカからは確か頭を下げ続けろと言うのは聞いていたのだが、そのあとの部分がどうにも緊張からか思い出せない。
いちかバチか、膝をつけたまま顔を上げてみる。
「…………」
なにも言ってくれない。不安が募る。なにか間違えてしまったのだろうか。
額から汗が一筋垂れる。
「……皆様。」
そのとき、姫様が貴族たちに声をかける。
緊張が恐怖に変わる。たとえミンカがあのことを気にしなくてもいいと言ってくれても、姫様はそうでないかもしれない。
決して、ミンカが信じられない訳ではない。いや、むしろさっきの会話から誰よりも信頼してるかもしれない。
けど、それとこれとは話が別だ。彼女と姫様は違う。もし昔から一緒にいたとしても、まったく同じ考えとは限らない。それも母親の話となったら特にそうだろう。
……そして彼女は口を開いた。
「……できればでよいので、お父様と、わたしと、勇者様だけにしてもらえないでしょうか。できればでよろしいですので……」
それは……
自分のなかでの恐怖心が募っていく。
なぜ、3人だけにしたいのか。どうしても理由がこのときはわからなかった。
貴族たちが少しだけざわついたあと、代表者であろう白髪のアゴ髭が長く伸びていて豪華なマントを着けた老人が王様の前にでてきた。
自分はそれをじっと……いや、口を開けてなにが起こるのかということを考えながらその人を見ていた。
「……姫様。それは……どうしてなのでしょうか?」
当然の問いだ。むしろ自分もそれを姫様に聞いてみたいぐらいだ。
姫様はその問いの答えを誰にも聞こえないようにするためか、その老人に近づき小さな声で会話をはじめた。
そして王様は別にそれを気にしていない様子で、その会話を見ている(聞こえているのかどうかはわからない)。
そしてどうやら話がついたのか、老人が貴族たちの方に振り返り響く声でこう言う。
「皆のもの!ここは姫様の言葉に従い、一度王の間から出ていくこととする!わたしの決定に意義のあるものはいるか!」
貴族たちは少しだけまたざわつくものの、わりとすんなりと部屋から出ていく。
……舌打ちのようなものも聞こえた気がするが、多分気のせいではないだろう。ミンカの話の通りなら、勇者……というより自分のことをよく思っていない人たちもいるだろうから。
そうして背中からざわめくような音が聞こえなくなると、さきほどの老人がまだ膝をついている自分に近づいてくる。
「……心配する必要はない。あぁ見えて王は優しい御方であるし、姫様も弱くはないさ。それに、もう立っても良いだろう。その体勢も疲れたことだろうしね。」
……どこまで知っているんだろうか。
底知れない恐怖に襲われる。理由はないが、姫様に自分がしたことについてどこまで知っているのか。
「さぁ、立ちたまえ、王が君との話を楽しみにしておるよ。」
そう言われるがまま、つけたままの膝を宙にうかし立ち上がる。
そうして立ち上がると、老人はすぐに立ち去ってしまった。
前を向くと、そこには玉座に座ったままの王様と、そして姫様がいた。
彼女には言わなければならないことがある。自分からどうしても……
「……あ……」
「すちませんでした!!!」
……はい?
「あ、いや、違くて、えっと、あの、あの……」
姫様が言葉をいい間違えたことからなのか顔を真っ赤にしながら言葉に詰まる。
違う、違う、その言葉を言うべきなのは俺で、君が言うべきじゃない……!
「……もう良いだろう、クレア。勇者殿が困っているじゃないか……」
突然でわからなかったが、その言葉を発したのは自分の目の前にいる、この国の王様だと気づくのには少しの時間が必要だった。
「で、でもお父様!悪いのはわたしで勇者様は悪くなくて……」
「しかし、勇者殿はそう思っていないのではないか?むしろお前の考えすぎなのでは?」
「そ、そんな、悪いのはわたしで……」
な、なんでそうなるんだ?おそらくさっきの姫様のお母さんの話をしていると思われるが、あの状況から考えても悪いのは自分なのに……
「あ、あのぅ……」
おそるおそる声を出す。なんだかこのまま放っていくともっとややこしくなる気がする。
「ゆ、勇者様!!」
「は、はい!」
急に姫様に大声をかけられて、少しビクッとしてしまった。
「さきほどは申し訳ありませんでした!急に泣き出して、勇者様に迷惑をかけるような真似をしてしまって……」
それは違う!
「そ、それは自分が!貴方に思い出したくないものを思い出させてしまったからで、貴方はなにも悪くありません!悪いのは自分です!」
ややこしくなる前に自分が思っていることを口にだす。しかし姫様は
「で、でも!母のことを思い出して勝手に泣いてしまったのはわたしで!あの場では勇者様にご心配おかけしないように泣かないでいるべきだったのにわたしは泣いてしまって……」
そこで彼女は一度言葉を止めたあと
「わたしは……わたしは……お母様の分までちゃんと……していけないと……ダメなのに……」
彼女が涙を流す。なんで、なんでこうなる。何を言っても、どれだけ謝ろうとしても、彼女は泣いてしまう。いったい、いったいどうしたら……
「……そこまでにしておきなさい、二人とも。」
重々しく響く声の主に顔を向ける。
この国の王で、姫様のお父さんで、姫様のお母さんの夫である彼に。
「……おとうさま……」
彼女も軽く泣きながら王様に顔を向ける。
「やれやれ、姫であろう者がそう簡単に泣いてはいけないじゃないか。」
そういって玉座から立ちあがり、彼女を抱きしめる。
「ごめんない……ごめんなさいおとうさま……」
彼女もされるがままにその身を委ねる。
自分はその光景を横で見るだけだった。彼女になにもできないまま……
「すまないね、勇者殿。待たせてしまって。」
そういって王は自分に話しかけてくる。
その後ろにはさっきまで泣いていた姫様がいる。どうやらまた泣き出してしまったのが相当恥ずかしかったのか、顔を一切見せようとしてくれない。
「いえ、自分には……なにもできませんでしたから……」
さっきまで思っていたことを正直に王様に話す。少し自分でも無礼であると思えるが、この人には全部正直に言ったほうが良いと無意識に思っていた。
「……!……」
「……そうかい。」
自分の言葉に対して、王様は簡単に一言で返し、姫様は王様の後ろに隠れながら無言で反応をしてくれた。
「……では、そろそろ本題に入るとしようか。」
そういって王はさきほどまで座っていた玉座に座る。
隠れる場所がなくなった姫様はすこし慌てながら、こちらを顔を赤くしながら見つめてくる。
そうして、今疑問になったことを真っ正面に王様に聞く。
「あの……本題とは……?」
そう聞くと、王様はその言葉を待っていたかのようにこう返してくれた。
「一応クレアからある程度簡単にこの世界の説明は受けていると聞いている。」
クレアというのは、おそらく姫様の名前だろう。ここでようやく二人目のこちらの住人の名前を知れた。さっきもちらっと聞いた気がするが。
そうして、王様はさっきの言葉に続けてこう言った。
「だから私からは細かい部分の話を君に聞かせよう。この世界のこと、この国のこと、そして…………」
…………そして……
「この国を、この世界を脅かす、魔王の話を私から君に聞かせよう。」
はい、やっと出ました!王様やっと出ましたよ!予定より1話2話遅かったです!!どういうことなんだ……?
今回の話をまとめると、王様初登場回ですね。ようやく出れたね王様。あと前回冒頭で退場した姫様ことクレア様も、今回は前回ミンカちゃんに奪われた出番を取り返す勢いででてきましたね。
今回は前回そういう風にしたから仕方がないんですが、ミンカちゃんの出番はありませんでした。主人公がミンカちゃんの名前を心の中で出すことはありましたけど、本人は出ていまん。あの子はあの子で姫様とは違う感じで主人公と絡ませやすいんですが、結構難しいですね。姫様の前だと護衛モードですし。
想像以上に今回出ていないミンカちゃんの話が長くなってしまった……
というわけで今回はこれで終わります。
あといつも通り、誤字・脱字などがありましたら教えてもらえると助かります。
……次回王様の世界観説明で終わりそうだなぁ……