王様に会う前に
寝ましたね。盛大に。誤字・脱字修正終わらせて安心しきったところに眠気が来ましたね。負けましたね。投稿遅れましたね。すいません!!
姫様と女騎士に連れられて長く横幅の広い廊下を歩く。
廊下の両端には高そうな置物や、おそらくこちらでは有名な方が書いたのであろう絵画が一定の間隔で交互に置かれていた。
そんな廊下をあまり首を動かさずなるべく目玉だけを動かして見回す。
その際の歩く順番としては案内役として姫様が先頭に立ち、その次が自分、そして自分の後ろに女騎士の順番で縦に並んで歩いて向かっていた。
……さっきのこと、姫様はどう思っているのだろうか。
気にせずにはいられなかった。
きっと彼女にとってはもう一生思い出したくはなかったものだろう。そんなことがこの魔王という存在が生きている現状で出来るとは思えないが、出来るだけ思い出すのを避けていたのだろう。
そんな記憶を、自分が掘り下げてしまった。この世界のことをなにも知らない自分が。彼女の気持ちも考えないで。
そんな重い気持ちで廊下を歩く。他の二人が何を考えているかわからないが、きっと自分が想像できるものではないだろう。
「着きました、勇者様。では、扉が開くまでここでお待ちください。わたしは先に中に入ってお待ちしておりますので、後のことは彼女に聞いてください。」
そういって姫様はいつのまにか着いていた、少し大きめな扉の中に静かに、自分に中が見えないように入っていった。
さきほどの豊かな表情を見せてくれた彼女とはもう別人のような振る舞いで。
……というか、彼女に聞いてくださいって、もしかしてその彼女って……
「……ふぅ……じゃあ、わたしがこれからこの部屋に入るときの作法を教えてやる。特に難しいことではないから1回しか言うつもりはないから1回で覚えろ、いいな?」
「……はい……」
やっぱりこの女騎士になるのかぁ!
正直さっきの言葉から、ちゃんと教えてくれる気配がないのだけど……
「んーと、えー、どうしようか、あー、えー、んー、じゃあ……」
「……じゃあ?」
嫌な予感がする。本当にちゃんと教えてくれるのだろうか?
「部屋の中に入るだろ?実はというか、部屋の中は王様がいるわけだから、部屋自体はかなり広いんだが、ある意味お前と王様のはじめての対面というわけだから、この部屋の中には偉そうな貴族が沢山いる。もちろん全員が全員そういうわけではないが、姫様と違ってお前を歓迎しないものも中にはいるだろうな。」
なるほど、勇者を歓迎しない人ってのも中にはいるわけだ。あと想像以上にちゃんと教えてくれた。これならあとの説明も大丈夫だろう。
「そういうわけだから、えーと、あー……」
……どうしたのだろうか。さっきの説明はかなりちゃんとしていたようだったが。
「……あまり無礼にならないように頑張れ!!」
急に適当になった!!
「……あのー」
さすがにこれはダメだろうと声をかけた。というかもっと教えてもらわないと1番困るのは自分だ。
そうすると女騎士は今まであったような冷静な感じを薄れさせながら
「い、いや!違う!違うんだ!そもそもわたしは人に教えるのが苦手でな!今だって急に姫様に教えてくれと言われている状況なんだぞ!?」
かなりあわてふためいていたが、急に、ということは本来は姫様が教える予定だったのだろか。
……さっきの魔王の話で、彼女にとって思い出させたくもないものを思い出させてしまったのが原因だろうか……
まだ消えない罪悪感を心に持っているなか、目の前の扉のなかからファンファーレが鳴り響く。しかし思っていたよりもわりとすぐに鳴り止んだ。
「あ……そうか……おい勇者、このあともう一度音楽が流れたあとにゆっくりと扉が開く。完全に扉が開いたらまっすぐ、ただまっすぐ歩いていけ。そうしたら奥に王様が玉座に座っているはずだ。近すぎないところまで歩いたら、膝をつけて王様がなにかおっしゃるまでそのまま膝をつけているんだ。いいな、わかったな?確かに言ったからな!」
女騎士が慌てて、説明をしてくれる。最初からそれ言っておいてくれよとは思うが、急に説明を頼まれた彼女にそれを求めるのは酷だろう。
「じゃあわたしはこれから先別の仕事に戻るから、ここで一旦お前とはお別れだ。」
「え、あ……そうなのか……」
一緒じゃなくなってしまうのか……と、思ってしまった。たとえ最初は睨まれていたとしても、こちらに来てからまだ数少ない話し相手だったのですこし寂しい感じがする。話した内容があれでも。
そんな心の内が顔にでていたのか、女騎士はこちらに少しだけ微笑んで喋りかけてくる
「なに、大丈夫だ。中には姫様もいらっしゃるし、王様もお前を召喚することに賛成してくれた御方だ。多少の無礼なら笑って許してくれるさ。それに……」
「……それに?」
「さっきの姫様のお母様のお話、気にしてるんだろう?顔をとその仰々しい態度を見ればわかる。だがな、別にお前に気にしてもらう必要は一切ないとわたしは思う。それに、その場にいなかったお前を責める奴がいるわけがない。もしそんな奴がいたらわたしがそいつを叩き斬ってやるし、姫様もそんな奴を城の中に入れたままにはしないだろう。お前は、ただこれからお前がやれることを精一杯やるだけでいいさ。ま、わたしの騎士団にくるようならそのときは遠慮容赦なくこきつかってやるがな。」
ばれていた。さすがに顔と行動に出ていたか。まぁ、あれだけ考えていれば仕方ないといえば仕方ない。
「……ありがとう。少し、気が楽になったよ。」
「んぇ?あ、あぁ……そうか……ありがとう……か……」
なぜか妙な反応を彼女は見せる。
「いや、なんというか、お礼を言われるのは慣れてなくて……ほら、どちらかと言われればわたしは形式的なお礼を言う側だからさ……」
どうやら騎士というのもいろいろ大変そうだというのがその言葉で伝わってくる。
そしてさきほど鳴っていたファンファーレが、もう一度大きな音を奏でる。
彼女は「あぁ……」とため息をついたあと
「どうやらそろそろ本格的に時間らしいな。それじゃあ、また後で姫様と一緒に会うことがあるだろう。それじゃあな、勇者。」
そういって彼女は立ち去ろうとするが、どこか行ってしまう前に自分から1つ言っておきたいことがある。
「あ、あのさ!」
「ん、なんだ?なにかまだあるのか?時間が本当にやばいんだが……」
「お、俺の名前!ゆ、勇者じゃなくて刀弥だから!」
どうにも勇者勇者言われるのがさっきからずっと気になってはいたんだ。どう考えても自分は教えてもらっている立場なのに、その呼び方だけがどうにも場の雰囲気に合っていなかった。
それを聞いた彼女は静かに
「……そうか、それがお前の名前か。…………ま、覚えておいてはやろう。」
そういって彼女は扉の前から立ち去ろうとする。
しかし、立ち去ろうとして少し歩いたあとに、彼女は振り向いて
「ま、名前を知っとかないと不便なところもあるだろうから、わたしの名前も教えておいてやるよ。……わたしの名前はミンカ。忘れずに覚えておけよ、勇者」
笑顔で言ったあと、彼女は今度こそ立ち去ろうとする。
教えた名前ではなく今までと変わらない勇者呼びのはずなのだが、なぜだか今までよりも親近感を感じる。気のせいなだけな可能性もあるが。
彼女が……ミンカがどんどん離れていくにつれて、目の前にあった扉が開いていく。
この先に姫様のお父さんが……この国の王様がいる。
最初は姫様のお母さんの件でどういう顔をして入ればいいのか分からなかった。
けど、ミンカと話をして少しだけ気が楽になったし、もう扉の前についたばかりの不安な気持ちは全然ない。
むしろ今あるのは、こういうとき当然のように沸き上がってくる緊張感ぐらいだ。
さっき、急ぎ足ではあるけどミンカに教えてもらったことを頭の中で復唱しながら、しっかりと前を向く。
そして、開ききった扉を前にして一歩一歩、確かに前に踏み出して、自分は王様に会いにいくのだ。
この国の国王に。姫様のお父さんで、そして魔王に見せしめに殺された姫様のお母さんの夫に。
今回の話をまとめると、王様に会う前のちょっとした間の時間にあった女騎士……ミンカとの会話の話ですね。姫様は序盤に退場みたいな感じで。
実はもともと今回は王様に会って話してうんたらかんたらするつもりだったんですが、頭の中がうんたらかんたらしたらこうなりました。なにがあったんでしょうね頭の中で。
ミンカ主体の話自体は前回の冒頭の部分がありましたから結構いろいろ考えないといけなかったんですが、まぁ個人的にはうまい感じに落としこめられたかなーって思いますね。そもそもそんな考えるならもっとあとにミンカと絡ませる話しろよって話なんですけど。
後書きがいつも通り長くなって来たのでこれで終わります。
一応確認は毎回してるんですが、もし誤字・脱字などがありましたら教えてもらえたら助かります。