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大丈夫
翌朝。
太陽が顔を出して、少しずつ街も人も目覚める時間。
大通りでは市場の支度が始まっています。
もぞもぞと動き始めた街を行く、二つの影がありました。
花籠を抱える少女と、その数歩前を歩く猫です。
「じゃあ昨日言った通りだ。いいね?」
「……うん」
「君がそんなに弱気でどうするのさ。大丈夫。昨日の君は素敵だった‼」
「そ、そんなこと…」
ない、と続いた少女の言葉は大きな音にかき消されました。
ゴーンゴーンゴーンと三回。
この街中に響く鐘の音で、街はまだ眠いと半分閉じていた目を開けるのでした。
市場が始まる合図です。
「あ、ほら、鳴っちゃった‼」
「えっ……あっ……」
鐘の音に急かされた一人と一匹は、裏路地への入り口、近くのテントから少し離れたところへ収まりました。
そして少女は大きく息を吸い込むと、
一瞬だけ止めて、
吐き出された息に音をのせて。
少女は歌い始めました。
…ほんとは三回に分ける予定だったのに三回どころじゃなくなりそうです…もうしばしお付き合いを…(´・ω・`)