3 タルタロスの中
太古の昔、初代魔王が死んだとき、その死体は完全な闇になった。死して尚、魔王は世界に傷痕を残したのだ。闇は深く遂には回りを飲み込み始めた。魔族の族長達はこれを結界で押し留め、こう言った。
「この闇を沈めし者が次の魔王だ。それまで我々はこれを保護し管理する、タルタロスの番人になる。」
洞窟のようなドーム状の部屋で目を覚ました。
俺は現在時刻を確認するためにウィンドウを開く。
時刻は9時を少し過ぎた頃、そう言えば自分のステータスはあまり詳しく確認していなかったな。
◇◆◇◆◇
名前:弓槻悠
種族:魔王
ジョブ:魔王
Lv:1
ギフト:異世界言語理解 女神の祝福 魔王の素質 同調
スキル:闇魔法 隷属魔法
称号:異世界からの来訪者 魔王見習い タルタロスに挑むもの
ふむ、闇魔法と隷属魔法か。
女神の祝福は女神に召還されたからだよな、魔王が女神の祝福を受けて良いのか?
同調はまぁ、たぶん俺の能力なんだろうな。と、ステータスについて色々思案していると一人の男が声をかけてきた。
「オイ、坊主。」
年は三十代後半から四十代前半、しかし老いを感じさせない筋肉や骨格を兼ね備えた、男の俺から見ても格好いい男が立っていた。
「お前が次の魔王か、こんなやつを送って来るなんてルルーシェ達も何考えてんだか......」
どうやらこの人は俺みたいなへなちょこが魔王をやるのは嫌みたいだ、しかしこの人は......?
「貴方は誰なんだ?」
「あぁ俺か、俺は初代魔王で先代魔王、闇竹筍也。暗闇の闇に竹林の竹、筍に何とかなりの也で闇竹筍哉分かったか?この台詞通じる奴は久しぶりだぜ宜しくな、日本人の弓槻悠君。」
なっ.......
「驚いてる驚いてる、お前気に入ったよ能力の覚醒を手伝ってやるよ、いくらここが現実から切り離されているとしても時間は有限だ。どうする?」
この人は人の話を聞かないタイプのひとだ......しかし、選択肢のない選択だなこれは......
「お願いします。」
今はこの人に付いていくしか無いだろうし、説明を求めても無視されるだろう、ならば最初からする必要などない。
次の瞬間、闇竹は俺に向かって左手をとてつもないスピードで振り下ろしていた。
俺は反射的に避けようとする......が避けられず右腕に鋭い痛みと衝撃、そしてそのまま壁へと吹き飛ぶ。
ここまで所要時間一秒。
「グァァアアアアアアアアアアア!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
俺は咄嗟に右腕を見るが、二の腕の途中から先は無かった。
体の節々も痛い。
闇竹を見ると奴は右手に槍を持ち振りかぶっていた。
「能力ってのはな、イメージが大切だ。お前のイメージでこの状況を打破してみろよ。」
そう言いながら奴はこちらに槍を投げてくる。
俺は逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる奴の槍の投擲は断続的に俺に向かってくる、俺は逃げながら考える。今この状況を打破する方法を、俺の能力は同調、闇魔法、隷属魔法、この中で隷属魔法は除外、同調はどんな能力か分からない、闇魔法もどんな能力か分からない。
俺は考える、生きるために。