2 離宮の騒動/タルタロスへ
弓槻悠がグランフィリア王国の召喚離宮から逃げ出した次の日の事、離宮は騒然としていた。
ニーナは朱雀院達を広間に集め、
「あなた方の中に人に仇なす魔王がいます。魔王よ姿を表しなさい、楽に殺して差し上げます。」
ニーナは強く怒気を孕ませた声でそう告げた。
それからの朱雀院達は混乱の一途を辿った。
あるものは声を上げてニーナを非難し、又あるものは日頃気に入らなかった相手を魔王じゃないのかと弾劾する。そして又あるものは疑心暗鬼になる。
そんな中、
「おい皆、弓槻が部屋から出てこないんだよ! 返事もしない。」
その言葉にニーナは
「その方が魔王かもしれません。早く!」
怪盗ジョブのクラスメイトが部屋の扉を開けると見えた物に、何人かのクラスメイトは吐き気を催したのかトイレへ駆け込む。
弓槻悠の部屋にあった物は、
原形を留めないぐちゃぐちゃの死体だった。
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「魔王様もエグい事考えるなー自分の部屋に死体を置いてくるなんて、あれを置いてくるの大変だったんですよー、と言うか用意するのが。何かご褒美下さいよー」
魔王に愚痴を垂れる魔王配下、ルルーシェ。
「五月蝿い。」
最初こそ萎縮していたが今では友人のように喋っている。このしゃべり方のおかげで友人などいなかったのだが。
俺は今、魔導飛空艇で魔大陸を配下達と飛んでいる。配下達の治める街を転移魔法で見て回った後、魔大陸の端から見せつけるように、魔導飛空艇で飛んでいる。最終目的地はタルタロス、俺が真の魔王かそこで解るらしい。魔導飛空艇の窓から外を眺めているとそれはあった。
闇があった。深い闇が、深淵が。
「深淵を覗くとき、自分もまた深淵に覗かれている。だったか」
闇を見て俺が思った事はそれだった、自分でも笑えてくる。
「魔王様ー着きました、頑張ってください。生きて戻ってきてくださいね、お気を確かに。」
ルルーシェが訳の解らないことを言っている。
「強くなって帰ってこい。」
アウグストも
「妾が血を吸うまで死ぬではないぞ。」
エドナも
「兄さん生きて帰って来いよ。」
ジャックまで
「お兄さん、死んでも大丈夫魂さえあればジャックが私の作った身体に帰って来られる、でも魂がないと無理。」
メアリーも
「まぁ頑張れや。」
エリュシカでさえ訳の解らないことを言っている。
どういうことか聞こうとした瞬間、落ちて行く。深淵の闇、タルタロスへと。
「ふざけるなよ! 絶対に戻ってくるからな! 覚えとけよ!」
魔王は闇へ消えた。




