第5話 覚醒から二日目②
「ふぁぁ、よく寝た」
寝る前にクッキーを食べたから、口の中を綺麗にしないと。
『クリーン、虫歯菌、歯周病菌も除去』
これで、歯もつるつるだし、虫歯にもならないぞ。
父さまや母さまはどうしているのだろう。
『クリーン』の魔法は使っても、虫歯菌や歯周病菌は知らないよね。
年をとって、歯周病になったら大変だ。
教えるわけにもいかないから、勝手に魔法を掛けてしまおうか。
いや、他人に魔法を掛けてバレないのか。
これも、女神様案件だな。
女神様といえば、『お取り寄せ』魔法の許可が出たんだった。
早速、作りましょう。
地球だけでなく、この世界からも取り寄せをしよう。
『創造魔法、お取り寄せ。地球とこの世界から危ない物以外は全て購入可。支払いは魔力か現金、または物品と交換で対応』
頭の中を確認すると『お取り寄せ』がある。
よし、上手く出来た。
試し買いをしてみよう。
『お取り寄せ、可愛いレターセット、支払いは魔力で』
身体に異変は感じられない。
たぶん、購入した品物の価格が安かったのだろう。
持って行かれた魔力も微量だから気がつかなかったのかも。
無限収納には、可愛い柄のレターセットが入っていた。
これで女神マリー様に手紙を書いたら喜んでくれるかな。
この世界のことは何も知らないからどうしようか。
歴史書ならあるかも。
この屋敷にも図書室くらいはあるだろう。
『サーチ』
二階にあるようだ。
図書室内を『サーチ、この国の歴史書』
何冊かあるね。全ての本をコピーして、無限収納に入れる。
ついでに、魔法関係の本と貴族名鑑を探す。
私が小説で知っている魔法以外にもあるかもしれないから魔法の本とどんな貴族が居るのか知っておけば困らないだろうと選んだ。
派閥とかあるだろうしね。
『サーチ、魔法関係の本と最新の貴族名鑑をコピーして無限収納に入れて』
無限収納を確認すると、歴史書、魔法関係、貴族名鑑の本が入っている。
真面目に読んでいては時間が掛かりすぎるのでズルをしよう。
『創造魔法、読み取り』
本を一冊ずつ取り出し、『読み取り』をしていく。
面白いように頭の中に情報が流れてくる。
だけれど、頭が混乱するようなことはない。
これならば大丈夫かと、次々と『読み取り』を行う。
『うん、これで魔法も大丈夫でしょう』
そうだ。バリアにウイルス除去を追加しよう。
花粉とか風邪菌などは防がないとね。
健康な身体に作ってもらったけれど、幼児の身体には何が起こるか分からないもの。
一旦、解除して『創造魔法、バリア、花粉や風邪菌や未知のウイルスを除去する機能を追加』
ふぅー、これで安心だ。
いや、まだだ。
毒耐性はあるが万が一ってこともある。
知らないうちに口にしないように、自動で発見できるようにしよう。
『創造魔法、毒自動察知』
一先ず、今考えられるのはこんなところか。
トントン「アリシアお嬢様、入ります」
「起きられましたか。いかがですか。体調は悪くありませんか」
「はい、大丈夫です」
「果実水をどうぞ」
「はい、ありがとう」
「お着替えもしましょう」
お昼まで時間がありますが、何かされますか」
「絵本を読みたいです」
「どの本にしますか」
「昨日とは違う本で」
「今日は、この絵本にしましょう」
「カレンが読んでください」
カレンは、本を読むのが上手だ。
声も心地よい声なのだ。
「今度は、私がよみます」
頭の中ではスムーズに読めるのに口に出すと、口が回らなかったりつっかえたりする。
言いにくい言葉は何度も練習する必要がある。
何度か読んでいるうちにスムーズに読めるようになる。
この絵本はクリアしたな。
アナウンサーのように、早口言葉で練習するか。
発声練習するときに使う、『あえいうえおあお』もあったな。
あとで、『調べる君』で探してみよう。
「そろそろ、お昼の時間ですから食堂に行きましょう」
「あら、アリシアちゃん、騎士の訓練はどうだった」
「はい、かっこよかったです」
「それから、沢山の騎士がいました」
「そうね。ここは辺境だから騎士は沢山いるのよ」
「アイクの訓練も見たのよね」
「はい、アイク兄さまもかっこよかったです」
「ふふ、アイクが聞いたら喜ぶわ」
「アリー、早いのね。騎士の見学は終わったの」
「はい、沢山いてかっこ良かったです」
「エレノア姉さまは、なにをしていたんですか」
「私は、勉強をしていたの」
「勉強ですか」
「そうよ。色んな勉強をしなくちゃいけないの」
「アリーも、もう少し大きくなったらするようになるのよ」
「アリーは、僕の訓練を見てくれたんだよ」
「かっこいいって言ってくれたんだ」
「ふふ、良かったわね。アイク」
「あれ、アリーも兄様たちも早いね」
「揃ったから、食事を始めましょう」
「父さまは」
「父様は騎士の皆さまと一緒に食事をとられます」
お昼は軽食となる。
スープ、サンドイッチ、サラダ。
相変わらず、スープだけが薄い。
なんだろうな。出汁が効いていない感じか。
野菜だけでも味が出るはずなんだが。
「アリシアちゃんは、お昼寝をしたら、エレノアの護身術を見学するのよね」
「はい」
「邪魔をしないようにね」
「分かりました」
「お昼寝ですから、着替えましょうね」
「このままじゃダメ」
「ドレスがしわになってしまいますよ」
仕方がない。もっとスポンと着られて、スポンと脱げる服はないものか。
これも、五歳までの我慢か。苦痛だ。
ベッドに入ると、交代もあるがカレンは部屋から出ていく。
今のうちに、女神マリー様に手紙を書こう。
購入したばかりのレターセットを使う。
女神マリー様
お手紙ありがとうございました。
そして、何度もお手紙を書いてすみません。
また、いくつか質問させてください。
・以前にも異世界人はいたのか。居た場合いつ頃なのか。
・転生者のことは、家族に話してもいいのか。
・魔法を使った時に他者に気がつかれるか。
・他人を鑑定した場合に気がつかれるか。
・自分が鑑定されると、どう感じて、どう表示されるか。
・他人に魔法を使った時に気がつかれるか。
・魔力や魔力の痕跡で個人を特定できるのか。
今日、侍女や騎士が傍にいる時に、『創造魔法』を使いました。
何もリアクションがなかったので、気がつかれてはいないと思います。
父さまたちに、寝ている間に、虫歯にならないように、『クリーン魔法』で虫歯菌除去をしたいのですが、気がつかれるのか心配でしたので。
今回も質問内容が多いので、お手すきの時にご返事をお願いします。
アリシアより
お手紙はこれで良しと。
お昼寝から起きられるように、目覚ましを掛けたいな。
これも、魔法で出来るかも。
『創造魔法、体内時計タイマー付き』
一時間後にタイマーをセット。
音も聞きなれた『ピピピピッ』に設定。
トントン「アリシアお嬢様、入ります」
「お着替えをしたら、レッスン室に行きます」
「レッスン室?」
「はい、色んなレッスンを受ける為のお部屋です」
へぇー、そんな部屋があるんだ。
レッスン室に行くと、エレノア姉さまと指導の先生がいらした。
「アリー、来たのね」
「こちらは、護身術を教えてくださる、シャーリー・クラークソン先生よ」
「こんにちは、アリシアです。今日はよろしくお願いします」
「こんにちは、クラークソンよ。ご挨拶ができて偉いのね」
「今日は、護身術を見学するので良かったかしら」
「はい」
「では、椅子に座って見ていてね」
「これから、護身術を教えますが、年齢や性別によって教える内容が違います」
「たとえば、アイク様とエレノア様では年齢も性別も違いますので、戦い方も変わってきます」
「それは、分かりますか」
「はい、分かります」
「アリシア様とも違うのは分かりますか」
「はい、分かります。アリーでは幼すぎますから」
「そうです。身長も違いますし、体力も違います」
「ですから、今日、お教えするのは7歳の女の子のエレノア様に合った対処法です」
「年齢が上がり、身長も伸びたらまた変わってきます」
「はい、分かりました」
「これから、大切な主なことを説明します」
「1.逃げること。2.大声で助けを求める。3.子供が出来る反撃をする」
「まず襲われたら、逃げることが一番大事です」
「戦おうと思ってはいけません」
「力や技術で負けてしまいます」
「二番目に大切なのは、大声を出して助けを求めることです」
「普段ならば、淑女が大声を出すことはいけないと教わりますが、襲われた時は別です」
「なるべく、大きな声で助けを呼ぶことが大切です」
「三番目は、足を踏む。手や腕を噛みつく。目を指で突く。手足をバタつかせ手を取られないようにする」
「三番目が一番難しいと思いますが、逃げるためには必死に抵抗するしかありません」
「次は、腕を取られた時の抜け出し方を教えます」
「大声を出す練習からしていきましょう」
「普段から練習をしていないと、いざという時に声が出せません」
「そんなことがあるのかと思うかも知れませんが、人は恐怖を感じると声が出せなくなってしまうことがあります」
「ですから、普段から助けを求める声を出すことが重要なのです」
「それでは、始めましょう。助けてとやめてを大声で言ってください。恥ずかしがってはいけませんよ」
「たすけて~、やめて~。たすけて~、やめて~」
「はい、いいでしょう。それを10回言ってみましょう」
「たすけて~、やめて~。たすけて~、やめて~・・・」
「はい、お疲れ様でした。果実水を飲んで喉を潤してください」
「あまり何度も続けては、喉がつぶれてしまいますからね」
「次は、相手の足を踏む練習です。実際に足は踏めませんので、土を詰めた袋を用意しました。これを思いっきり踏んでください」
20cmくらいの袋が用意された。
「はい、やってみます」
エレノア姉さまは、何度も袋を踏んだ。
「いいでしょう。袋を踏んだ感想はどうですか」
「思っていたよりも難しいです」
「なかなか足に力が入れられません」
「そうよねぇ。一番ダメなのは、つま先から踏むことね。まず力が入らないから」
「かかとから足を下すか、足を平らにしておろすかのどちらかね」
「これも練習を続けていけば、出来るようになります」
「三番目の手足をバタつかせるは、そのままね。大きく手足を動かして相手に手や身体を触れられないようにします」
「その隙を狙って逃げられるのが一番ね」
「では、やってみましょう。手は伸ばして前、横、上とバラバラに動かしましょう」
最初は恥じらって出来なかったが、決心したのか大きく手を振り出した。足も前後と左右に動かして相手を近づけないようにしている。
パンパン「はい、上手です。なるべく手も足も大きく動かすことが大切です」
「最後は、手を掴まれた時です。引っ張ったり振ったりしても外れません」
「自分の手首を外側に回します。簡単に外れます」
「やってみましょう」
先生がエレノア姉さまの手首を持つ。
姉さまが手首を回すと外に外れた。
「そうです。良く出来ました。何度かやってみましょう」
何度か練習して、よりコツを掴んだようだ。
「それともう一つ、もしも最悪捕まってしまい、近くに家族や知り合いが居ない場合は、自分がいた痕跡を残すことです」
「たとえば、名前が刺繍されたハンカチを残す、上着を残す、誰のか分かるアクセサリーを残すなど、何かしらの証拠を残すのです」
「また、家族や知り合いが傍にいながら、うかつに話せない時は、相手が嘘だと分かることを話すのです」
「家族ならば、お土産をありがとう、お菓子をありがとうなどと、直接誘拐とは関係の無い話しをするのです」
「特別なことを言うのではなくて、身近にありそうな話しをするのです。身に覚えがなければ不審に思ってくれるでしょう」
「その辺りの事は、事前に家族と合言葉のように決めておくと良いです」
「知り合いも話す内容は同じ感じでいいですが、事前に合言葉を決めるのはダメです。信用しないわけではありませんが、どこから情報が洩れるか分かりませんから注意は必要です」
「はい、分かりました」
「今日は、ここまでにしましょう。次回も同じ内容になりますが、繰り返し練習することが大事です」
「身体に覚えさせて、頭で考えなくても自然と行動に移せるようになるのが理想です」
「突然襲われると、恐怖で声も身体も動かすことが出来なくなります。ですから、身体に覚えさせることが重要なのです」
「はい、分かりました。今日はありがとうございました」
「お疲れ様でした」
「アリシアお嬢様はどうでしたか」
「とても、勉強になりました」
「はい、良く出来ました。見学することも大切です。何も知らないよりは、今日見て知ることが出来たことは良い事です」
「はい、ありがとうございました」
「アリシアお嬢様、お部屋に戻って休憩しましょう」
「エレノア姉さまもありがとうございました」
「アリーも参考になったのなら良かったわ。私もとても勉強になったから」
「何かお飲みになられますか」
「果実水をおねがいします」
「夕食まで時間がありますが、どうしますか」
「父さまから鉛筆を頂いたので、何か書きたいです」
「名前を練習するのはどうでしょう」
「それはいいかも」
「では、お手本を書きますから、真似て書いてください」
アルファベットと似ているようで、少し違う。
この小さな手では書きにくい。
日本語ならばまだ書けるが書体が違うとこうも書けないのか。
ノート1ページに書いたら、疲れた。
これは、毎日練習あるのみ。
この歳(享年92歳+3歳)になって、字の練習から入るとは。
まあ、字が読め書けて話せるだけましか。
夕食の時間ですから行きましょう。
「エレノア、初めての訓練はどうだったか」
「木剣が重たかったですし、素振りも大変です」
「続けられそうか」
「なんとか、頑張ります」
「護身術のほうはどうだ」
「大声で助けを呼ぶのと、相手の足を踏むために土の入った袋で練習しました」
「それから、手足をバタつかせて、相手を近づけさせない練習もしました」
「あとは、捕まった時に身に着けている物を残すようにと、それから相手に分からないような合言葉を決めておくようにと言われました」
「合言葉とはどんな感じなんだ」
「たとえば、お土産をありがとう、お菓子をありがとうとか、違和感のない普段使うような言葉をいくつか決めて、相手には気がつかれないように会話するとか」
「それは捕まった後の話しなのか」
「そう、捕まって家族が傍にいても話せない時」
「なるほど、それはいいかも知れないな」
「言われて見に覚えのない言葉だと、不審に思うはずだからと言われました」
「確かに、あげてもいないのにお土産の事を言われたら、なんだと思うな」
「すぐには決められないから、とりあえずは、その二つが候補だな」
「アリシアはどうだった」
「はい、とても勉強になりました」
「そうだな。アリシアも覚えておけば、いざという時に役に立つぞ」




