第4話 覚醒から二日目
パチリと目が覚める。
幼児にしては、寝起きはいいようだ。
中身が92歳だからだろう。
ベッドの上で、軽くストレッチをする。
全身を伸ばすことで、血行がよくなる。
①仰向けに寝て、腕を頭の上まであげ、足の指を伸ばす。
②腹胸式呼吸。
③両膝をたてて、両膝を揃えて左右にたおす。
④足を伸ばし、片足ずつ胸まで引き上げる。
⑤四つん這いになり、背中を丸め、背中をそる。
⑥足を広げて座り、上半身を横に傾ける。
この時、傾ける反対の腕を上に伸ばし、上半身と一緒に傾ける。
各ストレッチは、一回ずつ行う。
覚醒して、まだ二日目だから無理はしない。
起きたから、歯を磨かないと。
あっ、侍女がしてくれるんだった。
でも、その前に綺麗にしたいな。
良く聞く、生活魔法って使えるのかな。
口の中を『クリーン』。
歯がつるつるになった。
問題なく使える。
じゃあ、ついでに、全身を『クリーン』。
これで、歯も見がいたし、顔も洗ったことになるよね。
そうだ。女神マリー様からお手紙の返事がきているかなぁ。
無限収納のレターボックスを見ると、ピコピコ点滅している。
取り出して中を見るとお手紙があった。
あれ、たしか手紙が届くと、『ピコン♪』が鳴るはずだよね。
熟睡していて気がつかなかったのかも。
アリシアへ
お手紙ありがとう。
礼拝堂にある神像は、創造神イシノス神様です。
神は、軍神、大地の神、海の神、火の神、水の神、豊穣の神、愛と美の神、天空神、雷神の9柱です。
教会には、9柱の神像があります。
礼拝堂には、神像が無いことが多いです。
もちろん、人々は9柱の存在は知っています。
地域や人によって、強く信仰する神が違うこともあります。
また、分からないことがあったら、お手紙をください。
女神マリーより
神様たちが認知されていて良かった。
また、女神マリー様に聞きたいことが出来たんだった。
地球から『お取り寄せ』がしたいこと。
出来ることならば、慣れ親しんだ地球の物が欲しい。
異世界に来たのだから、地球との生活は忘れるべきなんだろうが、なんせ便利すぎた世界だ。
美味しい物や娯楽、便利な物が沢山ある。
読みたい本もある。
異世界得点として希望すれば良かったんだが、その時には思いつかなかったのだ。
それに、海外の本も原作を読むことが出来るかも知れない。
こんな素晴らしいことは無いよね。
早速、お手紙を書いちゃおう。
女神マリー様
お手紙ありがとうございます。
9柱の神様のことは、よく分かりました。
続けてお手紙を書いてすみません。
欲しい魔法を創造魔法で作ってよいのか確認をしたかったのです。
地球の物や食べ物を購入できる、『お取り寄せ』魔法を作ってもいいでしょうか。
もちろん、危険な物は購入しません。
地球には便利な物、美味しい食べ物、娯楽製品が沢山あります。
今後の生活にも役立つと思いますので、是非許可を頂きたいです。
海外の本を原作で読めたりするのではと期待もしています。
支払い方法は、現在お金もないことから、魔力か現金払いまたは現物払いが出来ると嬉しいです。
この世界に、生活魔法はありますか。
地球のファンタジー小説には、生活魔法があり、綺麗にする、火を灯す、小さな明かりを出す、コップ一杯の水を出すという魔法が書かれていたりします。
私のステータスや鑑定には無かったので気になりました。
こちらも急ぎませんので、お手すきの時にご返事をいただけると幸いです。
アリシアより
『お取り寄せ』が出来るようになったら、可愛らしいレターセットを買おう。
また、創造魔法で新しい魔法を作ろう。
『創造魔法、飛行魔法』
これで、空も飛べるはず。
『創造魔法、念話』
何かトラブルになった時に必要そうじゃない。
トントン「アリシアお嬢様、おはようございます」
「おはよう」
「今日もご自分で起きられたのですね」
「なんか、目が覚めたから」
「顔を洗ってお着替えをしましょう」
カレンと一緒に食堂に向かう。
「おはよう、アリシア」
「おはよう、アリシアちゃん」
「「「おはよう、アリー」」」
「おはようございます」
「昨日は、よく眠れたかな」
「はい、すぐに寝ました」
「お祝いで、はしゃいだからな」
「アリー、今日は僕の訓練を見にくるんだよね」
「はい、見に行きたいです」
「アリシア、父様も見てくれ」
「はい」
朝も楽しく会話しながら食事をした。
「お着替えに戻りましょう」
「また、着替えるの」
「そうでございます」
「カレンみたいに、エプロンを付けるんじゃダメなの」
「ダメでございます」
「あら、それもいいわね」
「奥様・・・」
「たしか、可愛いエプロンがあったわよね。それなら大丈夫じゃないかしら」
「アリシアちゃんは、まだ小さいから何度も着替えていては疲れてしまうのでしょう」
「はい、お着替えはとても疲れます」
「カレン、あのエプロンを持ってきてちょうだい」
「かしこまりました」
「アリシアちゃんは、お母さまとサロンで待ちましょうね」
「アリシアちゃんは、騎士の訓練を見るのよね」
「はい、たのしみです」
「大勢いるけれど大丈夫かしら」
えー、そんなに沢山いるのぉ。
大丈夫かな。
「誰かを護衛につかせましょう。それならば安心だわ」
「はい」
訓練を見るだけなのに、危ないのか。
「エレノア姉さまも、今日から訓練ですか」
「そうよ。午後から始めるのよ」
「見てもいいですか」
「そうねぇ。どうしようかしら」
「護身術だけならば、いいわよ」
「はい、ありがとうございます」
カレンがエプロンと帽子を持って戻ってきた。
「そうそう、これよ。これならば、ドレスも隠れるし大丈夫じゃないかしら」
「はい、そうでございますね」
「午後からアリシアちゃんもエレノアちゃんの護身術を見学するからよろしくね」
「かしこまりました」
カレンに連れられて外に出ると一人の騎士がいた。
「本日の護衛をします。クリス・ビーズリーと申します」
「ビーズリー様は、騎士様ですか」
「はっ、ビーズリーとお呼びください」
「はい、ビーズリー様」
「いえ、様は不要でございます。アリシアお嬢様」
「えーっと、ビーズリーさん」
ちょっと、年上を呼び捨てには出来ないよ。
ていうか、私のほうがずっと年上だけれどね。
なぜか、カレンとキャサリンは呼び捨てでも平気なのだ。
覚醒する前からそう呼んでいたから気にならないのかもしれない。
「はぁ、今日は、それでかまいません」
てくてくと歩いていくが、なかなか進まない。
なんせ、三歳の足だからね。
「アリシアお嬢様、時間が掛かってしまいますので、私が抱っこして行くのでもかまいませんか」
「はい、お願いします」
抱っこされたから、急に視線が高くなった。
そうそう、この高さよ。
つい一昨日までは、大人の背丈だったのに、こんな小さくなったから周りがよく見えなかったのよね。
騎士に抱えられたら、すぐに訓練場についた。
広いグランドには、100名ほどの騎士がいた。
近くまで行くと、ベンチが用意されていた。
「おー、アリシア遅かったな」
「歩いていたら、遅くなりました」
「そうか。だから、抱っこされているのか」
「父様のところにおいで」
「はい」
「凄いだろう。皆うちの騎士なんだぞ」
「沢山の人です」
「まだ、これで全員じゃないぞ」
「アリシアは、ベンチに座って見ていなさい」
「訓練をはじめ」
父さまの掛け声で、一斉に打ち合いを始める。
打ち合いというか、型の確認のような感じだった。
しばらくすると、アイク兄さまがやってきた。
「アリー、これから僕も訓練するからよく見ていてね」
「はい、アイク兄さまがんばって」
よく見える場所に移動して、騎士と訓練をするようだ。
兄さまが打ち込み、騎士が受け止めている。
時々、注意されながらも、打ち込みをしている。
子供相手だとあんな感じで訓練するんだ。
父さまは、打ち合いをしている騎士たちを見回り、時々木剣を持って身振り手振りで指導している。
「アリー、どうだった」
「アイク兄さま、かっこうよかったです」
「そうだろう」
「アイク様、汗をかかれているのでお着替えに行きましょう」
「じゃあ、また後でね。アリー」
「はい、アイクお兄さま」
「アリシアお嬢様も、そろそろお部屋に戻られますか」
剣の訓練も見られたし、もういいか。
「お庭がみたいです」
「それでは、お庭に行きましょう」
父さまに挨拶するべきか迷ったが離れているところにいるので、このまま帰ることにする。
また、ビーズリーさんに抱っこされて庭まで行く。
「ありがとう」
庭に着いたのでお礼をいうと、「このまま見て回りますか」
「えっ、いいの」
「ええ、今日はアリシアお嬢様の護衛なのでかまいません」
「お願いします」
抱っこされているので、高い目線から庭が遠くまで見える。
「わぁ~、きれい」
「これから秋までは、沢山の花が咲くんですよ」
これだけ広いと小さな私では迷子になりそう。
そっか、地図を作ればいいんだ。
今、ここで魔法を作っても大丈夫かな。
ピカッとか光らなかったし大丈夫だよね。
一応、下に下ろしてもらおうかな。
「下ろしてください。近くで花を見たいです」
「了解しました」
てくてくと歩いては立ち止まり花を見る。また、てくてくと歩いては花を見る振りをしている。
この辺でいいかな。
『創造魔法、地図』
『創造魔法、マッピング』
頭の中で地図をイメージすると、周囲100mあたりの地図が出てきた。
白い丸い点が三つある。
これは、私とカレンとビーズリーさんだろう。
庭園があり近くには建物がある。
建物の裏手には、畑らしき一面もある。
なるほど、これは某地図メーカーと同じようなので、見慣れているから助かる。
これならば、迷子とか、万が一誘拐されても場所が特定できるね。
畑のほうを見に行こう。
「あっちに行きたいです」
「了解しました」
「野菜がたくさんある~」
「そうですよ。この畑の野菜はお屋敷でも使いますが、緊急時用の食料でもあるんです」
「緊急用 ???」
「ハハ、まだ、お嬢様では分かりませんよね」
「町の人たちが困ったときに食べる分も入っているんです」
「へえー、だから、こんなに沢山あるんだぁ」
この時代でも災害用食料を保管しているなんて凄いな。
「おや、アリシアお嬢様、こんなところにいらっしゃるなんて珍しいですな」
「だあれ」
「わしはトムじゃ。庭師じゃ。この庭に手入れをまかされております」
「トムさんが一人で」
「いいや、息子も一緒に働いております」
「大変じゃないの」
「大変じゃが、育てるのは楽しいからな」
「そうなんだ。また、見に来てもいい?」
チラッと侍女を見る。
侍女がうなずくと、「いつでもお越しくだされ」
「アリシアお嬢様、そろそろお部屋に戻りましょう」
「はーい」
「じゃあまたね。トムさん」
「ありがとう。ビーズリーさん」
「どういたしまして」
「さっ、アリシアお嬢様はお茶にいたしましょう」
「果実水とミルクのどちらがよろしいですか」
「果実水で」
果実水とクッキーが用意される。
外にいたせいか、のどが渇いていたようだ。
おかわりをした。
「アリシアお嬢様、お疲れでしょうから、少しお休みになられますか」
「ちょっと、休みたいかも」
「では、お着替えをしてベッドでやすみましょう」
「このまま、ここで寝るのじゃダメなの」
「ソファーで寝たら落ちてしまいますよ」
「えー、落ちないよ」
「アリシアお嬢様は、お着替えが嫌なのですか」
「めんどうだし、つかれちゃう」
「子供は、寝ていてもよく動くので危ないんですよ」
「えっ、あたしそんなに動いている」
「ええ、そうです。子供はよく動くんです」
あれ、そうだったかな。
そういえば、息子も娘も孫も小学生のころは寝相が悪かったような。
「分かった。ベッドで寝ます」
「ふふ、良い子ですね。では、お着替えをしましょう」
今、パジャマに着替えたということは、起きたらまたドレスに着替えるのか。
はぁ、仕方ない。
ベッドに入ると、カレンは部屋から出て行った。
外に出るときは紫外線をカットしないと、日焼けしちゃう。
結界魔法が使えるから、バリアを張れるかな。
バリアをイメージする。
おっ、身体に膜が出来たような感じがする。
触ってみると薄く何かあるような。
これって、他の人が触っても分かるのだろうか。
分かったらまずいよね。
もっと薄いほうがいいのか。
一旦解除して、うすーくバリアがあるようにイメージする。
これならどうだ。
自分では分かるが、他の人には分からない薄さだろう。
あとはこれに、紫外線カットして、物理耐性も付けよう。
これで、転んでも怪我をしないはず。
あっ、紫外線全カットはダメか。
幼児は5分くらいだったかな。
紫外線5分後にカットに変更。
『ピコン♪』
あっ、女神マリー様からだ。
起きていてよかった。ピコンが聞こえたよ。
アリシアへ
お手紙ありがとう。
『お取り寄せ』ですが、危ない物を取り寄せないことを条件に認めましょう。
但し、他の人には分からないようにしてください。
今後、大人になった時は分かりませんが、今は他の人に分からないように気をつけてください。
支払い方法も、魔力と現金、または物品での交換も可能としました。
生活魔法はあります。
ほとんどの人が使えますが、使えない人もいます。
綺麗にする、火を灯す、水を出す、明るくすることが出来ます。
人によって、得意だったり不得意だったりします。
どれも、小さな成果で、お皿を数枚綺麗にする。薪に種火を付ける、コップ一杯の水を出す、電球くらいの明るさを出す程度です。
取得した魔法とは違い攻撃などは出来ません。
あくまでも、生活の補助的な目的でしか使えません。
ステータスや鑑定で表示されなかったのは、あるべき魔法と認識されたのかも知れません。
今後、鑑定する時に詳細さを強く思えば、もっと表示される項目も増えると思います。
アリシアからの質問は、当然のことと思いあまり認識していなかったことが、不思議なことなんだと再認識出来て、参考になります。
また、疑問に思ったり相談したいことがあれば、手紙をください。
女神マリーより
そっか。生活魔法はあるべき魔法だったんだ。
それでも、使えない人もいるのって不思議だし、ちょっと不公平だと思うよね。
考えるのはここまでにして、少し寝ましょう。




