入学 06
目の前がぐらぐらと揺れる。
いつも見慣れている学園が、今日だけは違って見えた。
「セシルが……?アルストロメリア……?何の冗談よ、笑えない……」
「許さない……あのどんくさい女が私よりも優秀だなんて、絶対に認めない……そうよ、あいつに不正を認めさせればいいんだわ、あの子がアルストロメリアに選ばれるわけがないもの!」
……遠くから男の声が聞こえる。
「終わりだ……。アルストロメリアから落ちたなんて知られたら、家に帰れない……」
「全部あの1年の女のせいだ……俺の人生をめちゃめちゃにしやがって……」
その言葉を聞いたロベリアは二っと口角をあげた。
◇◇◇
結果発表の翌日。
教室に入ると、またざわざわとしていた。
「セシル、あのね……っ」
ポピーちゃんが駆け寄ってくる。
私の机に何かあるようだ。おもむろに駆け寄ると、煤けた匂いが強く、顔をしかめた。
昨日引き出しに入れておいた教科書が全て丸焦げになっている。
「私たちが登校してきたときにはもうこうなっていて……」
「……」
すぐにマートン先生によって机は取り替えられ、教科書も用意されたが、犯人は結局分からずじまいでモヤモヤだけが残った。
本当はロベリアが頭をよぎったのだ。しかしロベリアは氷魔法しか使えないはず。
放課後、ソニア様に誘われたお茶会でもモヤモヤとしてしまい、それが顔にも出ていたのか、ソニア様に
「何か困ってることでもあるの?セシルちゃん」
と聞かれてしまった。
おずおずと
「実は……」
と話し始めるとソニア様の顔が一瞬曇った。
でもすぐに
「そうなのね。それはそれは心を痛めたことでしょう。セシルちゃんには私がついていますからね。私だけじゃなく、アデルも、リオンも。」
と続けた。
「セシルちゃんに嫌がらせか~誰かさんも命がいらないようだね」
「あまり賞賛すべき行為じゃないな」
「アルストロメリアが馬鹿にされているとも捉えられますからね。セシルちゃんは今後身の回りに気を付けてね」
「はい!分かりました……!」
そうして、今日の放課後のお茶会はお開きとなった。
◇◇◇
セシルが帰ったことを確認し、2人をもう一度机に向かわせる。
「それで、セシルちゃんのことだけど……」
「うん」
「あの子は天使か何かなのではなくて??」
「うん……?」
「今日の私へのあの表情、にこにこと微笑みながら、私の淹れたお茶を美味しいと、幸せですと言っていたあの顔……国が滅ぶわ……」
「まあソニアの言っていることはなんとなくわかるし、セシルちゃんが可愛いのは認めるよ、なあリオン?」
「…………まあ……そうだな、比較的可愛いとは思う」
「え、」
「え、」
「リオンが女の子を褒めた……?」
「明日はきっと槍が降るわね」
「まあセシルちゃんは僕のものだけどね」
「アデル、セシルちゃんに何かしたら私が許しませんことよ。」
「何かってなんだろうね~」
「……。まあ、いいですわ。それで、早速本題よ。さっきセシルちゃんが言ってた教科書焼失事件の犯人、2人とも見当ついてるわよね……?」
「まあ、十中八九リヒトだろうな。あいつ炎魔法しか使えないし」
「アルストロメリアから落ちた当てつけってとこだろうね」
「そうね。でもまだ証拠がないわ。だけど私の大切なセシルちゃんに傷がついたら許せないの。だから2人も交代でこっそり護衛についてちょうだい。」
「……ソニアがやればいいんじゃ」
「私ではだめだわ。セシルちゃんに危害を加えると思った瞬間、命を奪いかねません」
「まあ、僕もセシルちゃんが心配だし。なんとなく見てみるよ。僕が難しいときはリオンお願いね」
「……分かった。」
「はい。任せたわよ。それじゃあこれで、解散。お疲れ様」




