魔法特訓 03
翌日の放課後。
私は学園の裏にある郊外の広い場所に、リオン王子を呼び出していた。
そして、魔力のコントロールがうまくいかないこと、そもそも自分の魔力がどのように自分に宿っているかあまりイメージがつかめないこと、昨日アデル様にまずは自分の魔力の全体量を知覚しろと言われたことを説明した。
ちなみにリオン王子は炎、氷、雷の3種類の魔法を使えるらしい。
アルストロメリアのなかでも攻撃特化型である。
「なるほど。だから俺をここに呼び出したと。」
「すみません、なんだか介護みたいな感じの練習で……」
「別にいい、どんな練習でも。魔法を鍛えるためには順番があるし、それが後々のセシルのためになる。俺はセシルが強くなるために、この練習を引き受けたんだから」
ここ最近のリオン王子は、なんだかとても優しい気がする。
今まではクールで、あまり喋らず、近寄りがたい雰囲気だったが、今はなんというかこう親身に寄り添ってくれている感じだ。私はそれがとてもうれしいし、王子には感謝している。この気持ちが伝わるといいなと思う。
「ちなみにセシルはなんの魔法を使うんだ?」
「……えっと……炎と雷……です……」
「……良かった。どっちも俺が見てあげられる。」
「っ……!」
くしゃっと笑うリオン王子の破壊力はすさまじく、同時に罪悪感で吐きそうになった。
「じゃあ、きっと全体量をつかむなら炎のほうがいいな。雷は少し特殊だから」
「わかりました」
「よし。じゃあ、手を前に出して炎を徐々に大きくしていく感じだ」
ふう、と息を吐くと手を前に出す。
感覚と結果を覚えること。自分の魔力を全て出す。ただこれだけなのに、今まで一度もしたことがないからか少し恐怖を覚える。
そんな緊張が顔に出てたのか、少し遠くからリオン王子が
「大丈夫、何があっても必ず助ける」
と伝えてくれる。先日の騒動もあってか安心感が半端じゃない。
「……よし。」
グッと手に力を入れ、身体の魔力全てを魔法に変換していくように、全身の魔力を手に集中させるように強く強く念じていく。
あっという間に自分の身体より大きくなった炎の球はどんどんどんどん成長していく。
自分の魔力量が限界に近づいてきて、少しふらついてきたとき、その炎の球は今自分のいる郊外の開けた土地のさらに奥にある森を丸ごと飲み込んでいた。
その記憶を最後に私は地面に倒れこんでいた。
次に目を開けて、飛び込んできたのは、切れ長な睫毛にくっきりとした目鼻立ち、美しいという言葉で表すに惜しいほどのリオン王子のご尊顔だった。
どうやらその、リオン王子に膝枕をされている……らしい……。
「お、目が覚めた?」
「……っ、はい……」
「魔力ポーションを持ってきといてよかった、ここから保健室まで運ぶのは少し遠いからな」
どうやら気絶した私に魔力ポーションを飲ませ、起きるまでずっと膝枕で待っていてくれたらしい。
「あの、すみません……!すぐどきま……っ、あれ……」
身体を起こそうとしても、上手く力が入らない。
「魔力を全部使ったんだ、もうちょっと休んだほうがいい」
そういってまた膝枕の体制に戻ってしまった。
私の顔を覗き込んで何故かにこにこしているリオン王子のあまりのお顔の良さに、体が熱くなるのを感じた。
「大丈夫か?顔が少し……赤いようだが。」
「っ……大丈夫です、すぐに治ります……」
「そうか?でもこれ以上は練習できないだろうから、少し話して終わりにしようか。」
「……はい」
神様仏様リオン王子様。私は前世でどれだけ徳を積んだら、王子に膝枕されながらおしゃべりができるのでしょうか。
国でも救ったのでしょうか……。
「あれが見えるか?」
そういったリオン王子の指さす方向を見ると、なにもなかった。
いや、あれは森があった場所だ。となると……つまり……
「森、いや山ごと消したな」
「え……」
私の魔力量というのは、どうやらとてつもなく大きいらしい。
「あれだけ大きな炎、この国に出せるやつはいないな」
「すみません、ご迷惑をおかけして……
「いや、いい。むしろ面白いものが見られた。それで、なんとなくの魔力量の知覚は出来たのか」
「っはい、魔力全てを吐き出す一歩手前で、身体が空っぽになる感覚がありました。それを感じてからは、今どのくらいそこに自分の魔力があるかや、なんとなく体内に流れる魔力の流れもわかってきました。そして今身体にある魔力の量はおよそ普段の百分の一、全体的な魔力量から考えて、自分より少し大きい炎を出せるかどうか……といった感じだと思います。」
「ふっ……」
「リオン様、今笑われて……!?」
何か変なことを言ってしまったのだろうか。
「いや、すまない、つい、な。
セシル、お前には魔法の才があるのだな。単純な魔力量だけではない、魔法に対しての造詣や感覚など、慈しむべき才能だ」
「……リオン様のお言葉、とてもうれしいです。この感覚が分かるようになったのも全て、リオン様やアルストロメリアの皆様が支えてくれているおかげです。本当にありがとうございます。」
この気持ちが少しでも伝わるようにと、笑顔で伝えると気のせいか、リオン様のお顔も少し赤らんでいた。




