皮だけ遺された死体
「君の出番だ。今すぐ来てくれ。」
警察に呼び出される。迅速に用意をして、指定された場所へ向かう。用意というのは、自分の仕事道具だけではない。心の用意が必要である。
私は警察の要請が会った時のみ、事件の記録をしている。それらはニュースに出来ないものばかりで、世の中に情報が出回ることはないため、一般の人は知ることは無い。
いったい今回はどんな怪事件か・・・私は深呼吸をして、現場へ向かっていく。今日もまた・・・。
田んぼのあぜ道で、女性のものと思われる遺体があった。中身がほとんど残されていない、皮だけの、死体が。
「最初は陰湿ないたずらかと思ったよ・・・。本当に人間なのかどうかも疑わしくて・・・。事件性はあるんだけど、真相にたどり着くわけがないんだよね。」
刑事は諦めモードで、その惨状を目の前に、半分笑っていた。
「たしかに、こう言ってはあれなんですけど、作り物っぽいですね。」
「例えば、誰かが殺害して中身をくり抜いたとすれば、必ずその跡が残るははずなんだ。しかしこの遺体には、それらしい形跡が全くない。まるで、中身だけ溶けてしまったかのように。」
「確かに・・・手とか足の指先だけ、中身が辛うじて残っているんですね。」
「まあ、とりあえず君が記録しておいてよ。これを発表することはないから。」
写真と、自身の目で見た印象とで、記録を行っていく。
刑事が言った、溶けてしまったのではないかというのは、あながち間違いではないような気がする。皮膚は濡れているように見えるが、それは水ではなさそうだった。手袋を付けて触ってみると、長く糸を引く。つまり、中身が溶けて液体のようになってしまったのではないか。そういった、人間の中身を溶かしてしまう薬剤を使った事件なのか・・・。
そんなことを思いながら記録をしていると、近くでポチャンと音がした。
見ると、カエルだった。水面から顔だけ出して浮かんでいる・・・と、そのカエルが急にもがき始めた。後ろに、何かがくっついている。・・・タガメだ。特徴的な鎌でがっちりとカエルを捕えている。もう、残念ながら逃げることは出来ないだろう。
「すいません!」
ぼうっとその様子を眺めていた時に、後ろから声をかけられた。
「はい?何でしょう?」
「記録が終わったら、片付けたいのですが・・・。」
「いいですよ、終わりましたんで。」
警察陣も、もう引き上げる様子だ。後処理はあっという間で、一時間もかからないうちに、皆が一斉に帰っていった。気が付いたら、私一人が現場にとり残されていた。
「僕も早く帰ろ!」
車に乗り込んで、帰宅する。辺りはもう暗かった。
田舎の田んぼのど真ん中ということがあり、街灯がほとんどなく、車のライトがなかったら周りが全然見えない状態だ。
「あれ?なんだあれは。」
車のライトに照らされて、人が二人見えた。遠くの田んぼのあぜ道で。
田舎だし、暗い田んぼのど真ん中だから、誰も見ていないだろうとでも思っているのだろう。熱烈なご様子で。異様に肩幅が広い男性が、若い女性を後ろから両手でがっちりと抱きしめている。さらに女性の首元に、口で熱いキスをしており、こっちが見ていられない状態だ。
「まったく、何しているんだか。」
僕は不快な気持ちを抱えながら車を走らせ、無事に帰宅するのであった。
読んでいただき、ありがとうございました。




